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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2004.7
- 出版社: 早川書房
- サイズ:22cm/372p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-15-208579-7
紙の本
世界を変えた地図 ウィリアム・スミスと地質学の誕生
著者 サイモン・ウィンチェスター (著),野中 邦子 (訳)
数知れぬ地層観察と類稀な洞察力で、ダーウィンに先んじて聖書の世界観を覆す発見をしたウィリアム・スミス。「地質学の父」と呼ばれる彼の知られざる波瀾の人生を描いた歴史科学ノン...
世界を変えた地図 ウィリアム・スミスと地質学の誕生
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商品説明
数知れぬ地層観察と類稀な洞察力で、ダーウィンに先んじて聖書の世界観を覆す発見をしたウィリアム・スミス。「地質学の父」と呼ばれる彼の知られざる波瀾の人生を描いた歴史科学ノンフィクション。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
サイモン・ウィンチェスター
- 略歴
- 〈ウィンチェスター〉オックスフォード大学で地質学を学ぶ。ジャーナリストとして世界中を飛び回り、現在、ノンフィクション作家。著書に「博士と狂人」ほか。
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紙の本
アングラ地図がオーバーグラウンドになるとき。
2004/10/16 15:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いってみれば、イギリスの伊能忠敬。伊能忠敬が日本の地形を驚くべきほど精緻に正確な地図にしたが、ウィリアム・スミスは「1815年」イギリスのアンダーグラウンドを地質図として世界で初めて刊行した。こちらも正確さではひけを取らない。ろくな測量道具もなかったはずなのに、ひたすら歩いて、調べて。
地質学は、身近なところでは防災だろうか。地震や地滑り、火山の噴火などの起こりやすい場所を分析・判断して、対策を講じる。そのおおもととなったのが、彼が作成した一枚の地質図だ。
「地質学が三次元の観察を必要とする科学だと初めて理解した」男。
地質は地球の履歴書。彼は、たびたびの測量の中で地質には「一定の法則性」があることを発見する。
「特定の時代に、特定の場所で堆積した岩石はすべてほとんど同じ性質をもっている。その最たるものといえば、同じ化石を含むこと、また垂直方向に同じ順番を行っていることである」
いまは山の中でも、海辺と同じウニの化石が発掘されれば、かつてそこは海で、同一の地層、すなわち同一の年代であると。現在は子どもでも知っているようなことだが、当時は、トンデモ理論だったらしい。
いまでもイギリスには運河が毛細血管のように張り巡らされているが、彼は運河の工事にも尽力し、今でいうところのロジスティクスの発達に貢献した。
それまでウエッジウッドの陶器は、馬車で運んでいた。悪路ゆえ、破損はかなりのものだったはず。水路になれば、その可能性も低くなり、いちどきに大量に輸送もできる。
ほかにも、名高い温泉保養地、Bathの語源でもあるバースの温泉が枯渇する危機に見舞われたとき、彼は原因を突き止め、見事、湯が噴出する。
名声も次第に高まり、長年の夢であった地質図作成に取り掛かるが、資金繰りに行き詰まり、挙句の果てに投獄されてしまう。
しかし、ついに「15年」もの歳月をかけて調査してようやく一枚の多色刷りの地質図ができあがる。と、まあ、山あり谷ありの人生。
宅地の造成などで地面が削られると、地層が見える。まあこのへんは関東ローム層なんで、益子焼か備前焼の肌合いのようで、いまいち地味なんだけど、そのバームクーヘン状の重なりを眺めているだけで、時の流れを感じてしまう。
紙の本
「イギリス地質学の父」は相当珍しそうな人物だった
2004/08/26 19:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:上原子正利 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウィンチェスターのこれまでの本は、テーマの選択が絶妙で、記述は詳しく、派手さは無いが無味乾燥にはならない印象の良いものだったが、本書もその通りだ。今回は1800年前後のイギリスを舞台に、科学としての地質学の成立に重要な役割を果たしたウィリアム・スミスという人物が描かれている。
当時のイギリスでは、主流派がキリスト教の信念に支配される一方、知識人は科学的な思考を受け入れ始めていたようだ。世界観の過渡期に生まれたスミスは、測量士として炭鉱に入るうち、地下の世界の重要な法則を発見する。その法則は、地層は一定の順序で重なりそれぞれ一定の化石を含むという、今日では当り前だが当時は誰も気付かなかったもので、これによってスミスはイギリスの広範囲の地質図を初めて、しかも独力で作り上げることに成功し、後に「イギリス地質学の父」と呼ばれるようになる。
という科学上の業績も重要だが、本書で面白いのはスミスの人生全体だ。彼は田舎の鍛冶屋の息子であり、科学界の中心の上流階級と同化できずに盗用され排斥される一方、能力の高さ故に援助され名誉を回復される。宗教との関係も微妙で、彼の発見は科学的世界観の大きな部品であるにもかかわらず、敵対関係にはならない。性格や行動は特徴的で、「落ち着きがなく、おしゃべりで、飛躍が多く、ぞんざいなところもあ」り、定職に就かず技術者の腕一本で国中を飛び回り、無計画な金遣いで債務者監獄に放り込まれ、22歳年下の妻は精神に異常をきたしている。色々な意味で境界にいる、相当珍しい人物だったようだ。著者は詳細を省かないため(余談も多い)、当時の状況がよく再現されている。
ただし本書には、大げさな表現や軽薄な単純化が所々で目に付くという問題がある。劇的な演出を狙ったのだろうが、詳細を重んじる著者の資質は安易な単純化の対局にあるため、無理をして失敗した感がある。読む時はこの点に注意を払う必要があるだろう。
(上原子 正利/bk1科学書レビュアー、km_bk1@mail.goo.ne.jp)
紙の本
内容紹介
2004/07/17 13:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:早川書房 - この投稿者のレビュー一覧を見る
18世紀の末、まだ科学界が貴族と神職者で占められていたころ、鍛冶屋の息子ウィリアム・スミスは各地でアンモナイトやウニの化石の性質や分布を調べ、世紀の大発見を成し遂げようとしていた。地層に含まれる化石の種類を特定することで、地層の動きを追うことができるのだ。この発見は、当時の聖書の世界観をくつがえす異端的なものではあったが(この説では天地創造以前に生物がいたことになる)、目に見える「実利」がその異端的側面を覆い隠した。時を同じくして産業革命がはじまり、未曾有の石炭採掘・運河建設ブームが始まったのだ。地層を知りつくしたスミスは、どこにどのように石炭が埋蔵されているかを正確に予測できたので、測量士としてひっぱりだことなった。スミスは職を得て一財産を築き、科学界にも共鳴してくれる友を得る。彼は仕事で各地を旅しながら露頭の観察を続け、ついに地面の下の地図、地質図の制作にとりかかる。
しかし、その幸運は長くは続かない。スミスは「家」に対して並々ならぬ執着を持ち、不相応なまでにロンドンやその他に多くの地所を買い求めた。また、スミスは自らの発見と発明(地質図)を秘密にすることなく、多くの人に教えていたため、他人はそれをタダで利用した。また、彼は測量士として生計を立てていたが、その職も突然に失った。金への執着のなさのため、彼はついに債務者監獄に繋がれることとなる。
出獄後も、貴族科学者に地質図を剽窃されるなど不幸はあるが、徐々にその功績は認められ、ロンドン地質学協会から名誉職を与えられるまでになる。現代においても彼は「地質学の祖」として知られている。