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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2004.1
- 出版社: 早川書房
- サイズ:22cm/466p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-15-208543-6
- 国内送料無料
紙の本
クラカトアの大噴火 世界の歴史を動かした火山
著者 サイモン・ウィンチェスター (著),柴田 裕之 (訳)
死者3万6千人。だが、史上最悪の火山爆発がもたらしたのは、それだけではなかった。信じ難いほど壮絶な天災の真実と、はからずもそれが後の政治や科学に与えた意外かつ決定的な影響...
クラカトアの大噴火 世界の歴史を動かした火山
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商品説明
死者3万6千人。だが、史上最悪の火山爆発がもたらしたのは、それだけではなかった。信じ難いほど壮絶な天災の真実と、はからずもそれが後の政治や科学に与えた意外かつ決定的な影響を、人に焦点を当てて描く。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
サイモン・ウィンチェスター
- 略歴
- 〈ウィンチェスター〉オックスフォード大学で地質学を学ぶ。ジャーナリストとして世界中を飛び回り、現在、ノンフィクション作家。著書に「博士と狂人」ほか。
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紙の本
圧巻の噴火の爆発力まで伝わってくる
2023/04/09 09:36
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:大阪の北国ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
400ページを超える大作に圧倒的な読後充実感を味わった。
史上最大の火山噴火といわれるクラカトア大噴火。それが今からたったの140年前の出来事で場所は日本からも遠くないインドネシアのスマトラ島とジャワ島の間、噴火音はアフリカやマダガスカルの手前ロドリゲス島でも聞こえた史上最大の自然音、しかも噴火で火山が一つ吹き飛んでしまったと驚きのプロフィールだ。しかし私も含めた日本人が広くこのことを知っているとは言い難い。が、火山や地震に携わっている人々や海洋学の関係者には当たり前の話らしい。海洋学者レイチェルカーソン女史の書物にも登場したため私はこの火山のことを読もうと思った。
読み始めて驚嘆したのは、本書はよくある火山の噴火の科学的分析で留まる本ではなかったことだ。この史上最大の火山噴火に影響を与えた地質学的背景の説明、それは、ヴェゲナーの大陸移動説とその前史から始まり、アジアとオーストラリアの生物学的境界線であるウオーレス線やその前のスクレーター学説、神話にも取り入れられているハワイ諸島の歴史、そして海底ケーブル敷設が契機となった通信会社ロイター、海上保険先駆者のロイズ協同組合などの歴史、果てはインドネシアにおけるオランダ統治の悪行やイスラム教主導のバンテン農民反乱にまで話は及ぶ。火山の本を読んでいたら、いつの間にか大航海時代後の世界情勢の解説書を読んでいたという面白さである。近代インドネシア史、地学史などの知識の洪水に溢れた本である。
この火山の噴火は世界中に影響を与え、ヨーロッパでは太陽が血のように赤く見えたこともあったらしい。ムンクの代表作「叫び」はその影響を受けているとの説も紹介されている。しかしながら、日本では明治15年のこの出来事に、当時の日本国内で、爆音や冷害、津波などの影響を記載した記事は見当たらず、その形跡がないのが不思議である。 また、この地域の地誌や動植物相を詳細に綴った書であるA.R.ウオーレスの「マレー諸島」の冒頭に、この海域に集中分布している火山群の爆発的な活動に触れている箇所がある。しかし同書は1850-60年頃の書であるからクラカタウより30年ほど前のことになる。この順序が逆転していればウオーレス氏の同書にも必ず触れられた筈である。
読みながらも感じていたが、この大著の翻訳に取り組まれ見事に読みやすい訳書を完成された柴田裕之氏の仕事にも敬意を表する次第である。一点、本書で氏はイスラム教の「予言者」と訳しておられる箇所があるが、その箇所で語っている宗教的指導者を表す場合、通常は「預言者」と訳すことをアドバイスしたい。
いま、この大著を読み終えて、大いなる知識の海を泳ぎ切った心地よい疲労感に浸っている。