紙の本
一途さと粘りと、そして心優しきエンジニア達
2003/06/08 21:22
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:松浦晋也 - この投稿者のレビュー一覧を見る
6月1日に池袋・サンシャイン60の「サンシャインプラネタリム」が閉館するなど、最近逆風が吹いているプラネタリウムの世界。多くのプラネタリウムは数千個から2万個の星を投影する構造になっている。
ところが著者が1998年に開発した「メガスター」はなんと170万個の星を投影することができた。私はその投影を昨年見ることができたが、星空のリアリティは想像を絶するもので「プラネタリウムの星空」ではなく「バーチャル星空」というべきものだった。その後も開発は続き、この6月に初公開される「メガスターII」は410万個もの星を投影する能力を持っている。
真に驚くべきことに、これらのスーパー・プラネタリウムは、企業が巨額の開発費を投じたのではなく、1970年に生まれた長身の若者が手探りで開発したものなのだ。
本書は、著者である大平さんが自らの生い立ちと「メガスター」シリーズ開発の経緯をまとめたもの。いや実にとんでもなく、本当に感動的だ。演出であざとくお涙頂戴を狙うNHKの「プロジェクトX」は、本書の前にひれ伏し、吹き飛ぶだろう。これこそ正真正銘の個人の営為による開発物語なのである。
著者は小学生の時にふとしたきっかけから、プラネタリウムを作ることにとりつかれる。最初は、夜光塗料で紙の上に星を描いただけだったが、やがて高校ではピンホール式の投影機を作り、大学に入ってからは本格的なレンズ式投影機「アストロライナー」を自作、就職後は前代未聞の星空を映す「メガスター」開発へと邁進する。その途中ではロケット開発にも熱中し、高度2km、音速突破まで達成する。「ロケットボーイズ」もびっくりだ。
読後、印象に残るのは著者の才能ではない。不器用なまでの一途さと超絶的な粘りだ。そしてそんな著者を折に触れて導き、見守り、助ける日本のエンジニア達のやさしさである。エンジニアリングのイロハを教えてくれた隣家の杉浦さん、本物のプラネタリウムを操作させてくれた川崎青少年科学館の若宮さん、「レンズ式プラネタリウムが作りたい」と尋ねていった小学生の著者(その行動力にも驚かされるが)にきちんと応対し、レンズを無料で分けてくれたトキナー光学・町田工場。皆、なんとも素晴らしい心ばえではないか。
本書の最初には、子供の頃の思い出として「学校では典型的ないじめられっ子で、ずいぶんひどい目にもあわされた」とさらりと書いてある。が、おそらく我々凡俗が本書から学ぶ部分があるとするなら、まさにこの部分だろう。あなたはひょっとして、身の回りの真にユニークな人材を変わり者扱いしてはいないだろうか、世間のレールから飛び出そうとする我が子に、むやみやたらと「あぶないから止めろ」「勉強しろ」と言ってはいないだろうか。身近にいるかも知れない「もう一人の著者」を自分の無知と偏狭さで圧殺してはいないだろうか。
子供を持つ全ての人に、元気をなくしている勤め人に、希望をなくしかけている子供達に——すべての人にお薦めできる一冊である。
(松浦晋也/ノンフィクション・ライター)
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自作のプラネタリウムといっても、素人が趣味で作ってしまったような中途半端なものではない。
大平氏の最新機メガスター?は12.5等星、実に410万個の星を投影できる。プラネタリウムメーカーが作る最上機で8等星まで4万弱の投影能力なのだ。しかもこのクラスの投影機は全高3メートル、重さも数トンとかなり大型になってしまうのだが、メガスター?は高さ60センチ、重量も約30キロと簡単に持ち運びできるコンパクトさなのである。
IPS(国際プラネタリウム協会)でも絶賛される、桁外れの凄いプラネタリウムを大平氏はほとんどひとりで作り上げてしまったのである。
小学生の時に見たプラネタリウムに感銘を受け、夜光塗料で最初の作品を作る。それから20年以上の歳月を費やし、試行錯誤を繰り返し、数々の困難を克服してメガスターを完成されるまでの過程が語られているのだが、その内容に圧倒される。
恒星原版(メガスターの心臓部にあたる32枚の金属製の板)を作る作業では、わずか直径5センチのプレートに0.0006ミリの穴を約20万個もあけるのだ。この工程に必要な機械も市販のものでは対応できず、大平氏は自分で作ってしまうのである。
このような信じられない作業も、ほとんどが自宅の7畳の部屋で行われるのだから驚異である。
大平氏はこれまでの人生をほとんどプラネタリウムの為に費やしてきたのだが、単なる物づくりが好きな技術屋ではない。
プラネタリウムを作る原動力は、美しいものを作り出し、多くの人々に見てもらう喜びにあると語っている。そんなところにも、とても好感がもてた。
素直に感動できて、自分自身もなんだかやる気が湧いてくる一冊であった。
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読んだのは、ネスカフェのCMをみて、ネットで調べたことがきっかけ。
この本に、好きなものへのキラキラしたものが気持ちが、文章いっぱいに詰め込まれてるような気がしました。
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メカや電気、星のことを知らなくても大丈夫。
分かりやすくて読みやすい。
普通の人でも、何かに打ち込んで頑張り続ければ、こんなに凄いものができる。そう思わせてくれる本。
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メガスター製作者としての作者の事は知ってはいましたが、これを読むと個人の力でプラネタリウムを作る事の困難さ、すごさがよく分かります。
読んでからホームスターを動かしてみると感動もひとしお。
ぜひメガスターの投影も見てみたくなりました。
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著者の自伝。
素直に感動できて、自分自身もなんだかやる気が湧いてくる一冊であった。
大平氏のプラネタリウムをまだ見ていないので、是非行かねば。
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Megastsrの製作者として有名な大平貴之さんの本です。天体好き、プラネタリウム好きにはとても嬉しい本です。大平さんが今に至るまでの道のりを通してプラネタリウムの本当の素晴らしさに触れることが出来ます。
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一気に読めるような感じの本.
読んでて思ったのは,大平さんはプラネタリウム産業を一気に発展させた人なんだろうと思う.
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Megastarの製作者として知られる大平貴之が、自身の幼少期まで遡り、独自でプラネタリウムを作り上げていく過程を綴った本です。必要な情報を集め、材料や道具を入手し、試行錯誤を繰り返す彼の集中力と強い意志に感服させられます。私は天文学が好きなので読みながらの感動は一入でしたが、そうでない人でも、1つの目的に対して努力を積み重ねることの大切さを沢山感じさせてくれる本です。単行本には卓上プラネタリウムが作れるペーパークラフトのセットが付いています☆
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研究者としてそのヴィジョンの大きさに感心させられた。
個人がやれることに限界はないんだなと感じさせられた作品。
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ギネスブックにも載るほどの高性能プラネタリウム装置を開発した、大平貴之さんの書いた本。著者が小さい頃から独学で調べて、自ら旋盤して作成してきたプラネタリウム装置にかける思いが伝わってきます。
ぜひ一度、太平さんの作った装置でプラネタリウムを見てみてください。宇宙は広いんだなぁと心の奥底からわかると思います。
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これまでの制作の記録が淡々と語られるかと思いきや、読んでいるこちらにも、手が震えるような興奮、祭りのあとのかすかな淋しさや成し遂げたことの感動が伝わってきて、胸が熱くなるところもあり…想像以上に良い本でした。さらりと語られるたった一行におさめられた言葉の裏に、どれだけの挑戦と努力があるか。やはりやんごとない人だと思います。自然への畏怖とテクノロジーへのロマン!いい言葉です。
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投影星数世界最高峰のプラネタリウム「メガスター」を生み出した大平貴之さんの半生記。
蛍光塗料の星を部屋に貼り付けた人工の星空から、ピンホール式プウラネタリウム、レンズ式プラネタリウム「アストロライナー」。一歩踏み出す度に技術の壁にぶつかって、時には独力で、時には周囲の人々に支えられながら、手探りで解決法を探していきます。自宅にクリーンルームを作ったり、レーザープロッタも自作したり、冷静に読めば「普通はそこまでやらないでしょ」ということを、淡々と積み上げて、やがてメガスターが完成します。
投影機の仕組みを解説する図版も多く、読みやすい本です。
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ホームスター持ってます!大平さんは、中途半端にやってたらただの変な人で終わる事を、好きすぎてやりすぎてしまった、大変な、まれにみる、素晴らしい方です!!夢を追いかけるなら、とことんやっちゃって良いんだと勇気がわく。しかし、こういう方の生き様を見るたびに、親御さんもすごいなと思います。子供を止めないのね。一見風変わりで、大丈夫かなって思っちゃいそうなのにね。大平家、素晴らしい。
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メガスターを作った大平氏のプラネタリウム作成日記。
小学生のプラネタリウム初制作から、社会人になって、410万もの星を投影する本格的なプラネタリウムを作った話まで、様々な苦労と克服、そして達成感が綴られている。
筆者の素晴らしい人間性によるものなのか、泥臭いことがたくさんあったはずであるにも関わらず周りの人々に支えられた楽しい制作活動の様子が伝わってくる。没頭できるものがほしいなと思わされる本。
そして、メガスターに行きたくなった。