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  • カテゴリ:一般
  • 発売日:1996/11/22
  • 出版社: 新潮社
  • レーベル: 新潮文庫
  • サイズ:16cm/575p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-10-207012-5
文庫

紙の本

チャタレイ夫人の恋人 完訳 (新潮文庫)

著者 ロレンス (著),伊藤 整 (訳),伊藤 礼 (補訳)

チャタレイ夫人の恋人 完訳 (新潮文庫)

税込 1,045 9pt

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みんなのレビュー44件

みんなの評価3.8

評価内訳

紙の本

セックスの果ての“自然”

2001/09/17 23:57

9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:クォーク - この投稿者のレビュー一覧を見る

 恐らくは四半世紀ぶりにD.H.ロレンス著の『チャタレイ夫人の恋人』を読んだ。
 完訳版が出たということで、いつかは読もうと思っていたのだが、この連休を使って読み込んでみようと狙っていたのだ。
 昔、恐らくは学生時代だったと思うが、猥褻表現を巡って裁判沙汰にまでなった本ということで、マルキ・ド・サドの『ジュスティーヌ』や『悪徳の栄え』を読むときと同様、幾分なりの好奇心というかスケベ心たっぷりで購入し、一人、下宿の部屋で読んだのだった。
 今、中年となったこの年になって改めて読んでみると、この本、あるいはこの作家の素晴らしさを再認識する結果となった。敢えて再読して十分、満足することが出来た。
 性描写もこの時代、これより過激な描写の作品は溢れ返っていて、小生のように秘めやかな期待を持って読んだりすると、がっかりするかもしれない。
 けれど、この本には単に性の過激な描写が焦点にあるわけではない。
 というより、むしろ“自然”こそがテーマなのである。その自然の一つ、人間にとって大切な自然であるということで男と女という互いに交差する宇宙を繋ぐ行為としてのセックスという営みが謳歌されているのだ。
 話の内容は有名だし、粗筋を説明するほど愚かな行為はないと思うので省略する。ただ、ロレンス自身の許されざる恋ゆえの生涯に渡る逃避行(解説者の安藤一郎氏の言葉を借りれば「旅と遍歴」)が作品の背後に、あるいは彼の詩や文学全体の基底にあることだけは言っておいていいだろう。
 彼、ロレンスが戦った相手とはイギリスのヴィクトリア朝の偽善的美徳だった。その偽善に戦うための武器の糸口を求めて遍歴を重ねたのだが、解説者によれば「キリスト教以前の人々、キリスト教文化に侵されない原始的自然に、深い郷愁を抱いた」しかし、それは解説者によれば「一種の偶像崇拝にも似ている」となる。
 膨大な作品群を残したロレンスの生涯は、今度、解説を見て改めて気づいたのだが、なんと45年で終わっている。短いからどうということではないが、結核に倒れたとはいえ、彼はもっと長く自然を深く味わっていたに違いないと、小生は勝手に思い込んでいたのである。
 今度、知ったことは他にもある。補訳を請け負った伊藤礼氏による「改訂版へのあとがき」によると旧版の初版刊行は昭和39年なのだが(裁判に付される契機となった伊藤整による完全訳が出たのは昭和25年。当然、これは押収されている)、実は、昭和48年には羽矢謙一氏による完全訳が講談社から出版されていたのである。
 これは小生には全くの初耳だった。ということは小生が新潮文庫で検閲された形での伊藤整訳本を読んだ時には、既に完全訳があったことになる。
 まあ、そうした事情には関係なく、D.H.ロレンスの『チャタレイ夫人の恋人』は素晴らしい二十世紀の作品の一つであることは間違いない。

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紙の本

精神と肉体、とか

2002/07/21 16:01

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:白井道也 - この投稿者のレビュー一覧を見る

すごくまっとうな小説だ。都市と農村とか標準語と方言とか精神と肉体とか、近代化にともなうそういった二項対立が物語の根底にあると思う。チャタレイ夫人が森番メラーズとするセックスは、自然賛歌というか肉体賛歌で、それはさすがに男の作家が書いたものだなぁという印象を受けるけど。あと、メラーズがセックスの時、男女同時にオーガズムに達することにこだわっているのも、マッチョな感じだ。

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紙の本

英国女流文学・仏文学が好きな方にもお勧めしたい

2022/07/14 11:33

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:こずえ - この投稿者のレビュー一覧を見る

「チャタレイ事件」があまりにも有名なため、しばしば過激で厭らしい小説と誤解されてしまう本作ですが、まったくそんなことはないです。
寧ろ現代の読者の多くが、「一体この小説のどこがそれほど問題視されたの?」と疑問を感じるのではないかとすら思います。
本作は20世紀初頭の作品であり、日本で完訳版が出版されたのは戦後。伊藤礼氏のあとがきには「思想的にも風俗的にも開放的になった時代」とありますが、それでも現代とは感覚がまるで異なっていたのだろうと感じました。
内容自体は意外と健全……というか、現代人からすれば結構可愛らしい恋愛小説なのですが、自我を持った女性・欲望の主体としての女性がこの時代にこれほど生き生きと(あるいは生々しく)描かれていたことには、やはり良い意味で新鮮な驚きを覚えます。
作者ロレンスは男性ですが、英国女流文学や仏文学が好きな方は面白く読めるのではないかと思います。

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紙の本

溢れんばかりに詰まっている性以外の思想

2023/04/21 06:06

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:マーブル - この投稿者のレビュー一覧を見る

とかく露骨な性描写について話題とされるが、露骨ではあるかも知れないがもはや過激とは言えない現代となって読み返せば、そこには性以外の思想についての言及も溢れんばかりに詰まっている。 流行りの薄っぺらい少年のような身体とは異なる肉感的な肉体を持ったチャタレイ夫人の身体の描写や、森番の性器についての書きぶり、旅行先で見た人々の脚についての観察など、肉体への関心を思わせる部分から、生命の謳歌、よりシンプルな生活への回帰を主張していると感じ取ることができる。露骨すぎるとも思える性描写もその意図なのだろう。

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2005/10/22 02:25

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2006/08/12 11:13

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