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紙の本
舞姫 改版 (新潮文庫)
著者 川端 康成 (著)
舞台の夢をあきらめた過去の舞姫波子と、まだプリマドンナにならない未来の舞姫品子の母子。もとは妻の家庭教師であり、妻にたかって生きてきた無気力なエゴイストの夫矢木と両親に否...
舞姫 改版 (新潮文庫)
舞姫
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商品説明
舞台の夢をあきらめた過去の舞姫波子と、まだプリマドンナにならない未来の舞姫品子の母子。もとは妻の家庭教師であり、妻にたかって生きてきた無気力なエゴイストの夫矢木と両親に否定的な息子高男。たがいに嫌悪から結びついているような家族の中に、敗戦後、徐々に崩壊過程をたどる日本の“家”と、無気力な現代人の悲劇とを描きだして異様な現実感をもつ作品。【「BOOK」データベースの商品解説】
舞台の夢をあきらめた波子と、未来のマドンナ品子の母子。エゴイストの夫・矢木と両親に否定的な息子・高男。嫌悪で結びつく家族の姿の中に、敗戦後、徐々に崩壊過程をたどる日本の家と、無気力な現代人の悲劇を描きだす。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
感情の揺らぎの美しさ
2016/10/28 09:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:une femme - この投稿者のレビュー一覧を見る
感情に揺れながら、常識という枠から出ることにためらう人たちと、それを見ている者、その様子に、はっきりとした反発も賛同もできない子供たち。戦後という時代、そして、戦争の予兆のような空気。そのような、<曖昧さ>のなかにいる人たちの姿を、巧みに映しとっていると思う。そして、そのような、人の心に在る<あいまいさ>に、何か、非常に共感する。
物語を通して、特に、女性たちの感情の揺らぎが、美しく描かれていると思う。バレエの練習や、その稽古場での小さな出来事、バレエ鑑賞を中心にした日々のなかで、また、戦後の空気のなか、主人公の波子と娘の品子、物語中盤まで登場する、バレエ稽古場のアシスタントの友子の、揺れる心が、とても繊細に描かれている。一方、男性の登人物らは、傍観者でありつつ、なにかしらうろたえながらも、それを隠しながら、それぞれに思うことを、その時々の行動に移す。しかし、それは、自らの意思というよりは、流れに乗るようにして、または、流れに逆らわないように。それは、揺らぎであり、迷いであるだろう。
何か、その時代の、また、その家庭の、あるいは、個人の宿命のようなものが、登場人物らにはある。そして、そこには、やはり<哀しみ>がある。川端氏の作品は、人生の哀しみを、儚く物語っているように思う。
紙の本
虚無感に酔いそう。
2012/03/19 16:35
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きゃべつちょうちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦後のバレリーナの母娘の話ということで読んでみたが、
ひとつの家庭が崩壊してゆく不気味な物語だった。
読後感はあまりよくなかった。
川端康成の作品はこれまでもそう感じたものが多かった。
ただ、重苦しい物語なのに最後まで読ませる力はあると思う。
風景などの描写に、はっとする美しさが散りばめられているが、
わたしの最大の関心は、
踊り子マニア(!)の川端がバレエをどう描くか、についてだった。
専門用語や、ときの著名なダンサーの実名なども出てきて、
丹念にしらべた形跡は見受けられるのだが、
踊りそのものの描写には、心を揺さぶられるものがなかった。
それは、肝心のバレリーナ母娘たち本人が
踊る姿が描かれていないだからだ。
バレエのシーンは、娘がちょこっと練習しているところか、
劇場で観ている場面だけなのだ。
劇場で展開されるバレエシーンは、モダンな振り付けの日本のストーリー(!)で、
それはそれで斬新ではあったが、感動は伝わってこない。
作者が狙っているのは敗戦後の無力感ということらしいので、
わざとこの母娘を情熱的に描かなかったのかもしれない。
母親の波子も娘の品子も、まるで「細雪」の四姉妹のようにゆったりしている。
しかし、「細雪」のように、ヒロインたちに華やかさは備わっていない。
まるで能面をつけた人形のようで、生命力はあまり感じられない。
彼女たちの家には、とんでもないモンスター・矢木が住んでいる。
矢木の部屋にある掛け軸には『仏界は入り易く、魔界は入り難し』と書かれている。
一休のことばらしいのだが、矢木の部屋にそのことばは溶け込んでいて、
その存在が、なにかが崩れていくようなこわさをよく表している。
品子は『魔界というのは、強い意志で生きる世界なんでしょう?』と尋ねるが、
のんびりとした品子にこの言葉を言わせるのでは、説得力はない。
(品子はバレエに情熱を注いでいるようには見えない)
魔界とはもしかしたら、人が一心にかたむける世界を指すのだろうか。
そのすべてを虜にしてしまうような世界のことを。
作中でもいちばんの無気力人間である矢木は、
波子たちが浸るバレエの世界を、魔界とみなしていたのだろうか。
それにしても、ダンスという情熱的なアイテムをつかいながらも、
これだけ無力感の漂う世界を描けるというのは、すごいことなのかもしれない。
ダンスどころか、戦争という一大事も、この物語のなかでは
虚無感を語るための道具でしかない。
砂でつくった城がさらさらと壊れていくような、しずけさがひろがる。
ラストシーンでは、崩壊のあとに、新しくはじまるものの予感があるが、
読み終わって本を閉じると、薄いもやに包まれたようで、
さいごまでこの母娘の目が捉えていたものを見ることはできなかった。
紙の本
不存在の美。
2016/12/04 18:19
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うりゃ。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
過去の舞姫と未来の舞姫、そのどちらも舞台の上の描写はない。
そしてその舞台裏ともいえる家庭内は崩壊し、バレリーナ仲間は金のために浅草のストリップに出ることを決断して去る。
「絵にも描けない美しさ」とはよく言うが、実在よりも想像の中の美は素晴らしい。ならば存在しないものほど最も美しく思われるということをよく知っていた著者の計算され尽くした構成なのだろう。
紙の本
中途半端感がどうしても残る
2022/01/22 22:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
読後に中途半端感がどうしても残る。もっと話が展開していってもいいはずだ。何も始まっていないし何も終わっていない。これが川端康成の作風かもしれないが、脇役でももっと突っ込んで描いてほしい人物が何人かいる。家族の崩壊をほのめかせて終わっているが、終わり方の問題ではなく、途中の描写の問題である。