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紙の本
秋月記 (角川文庫)
著者 葉室 麟 (著)
筑前の小藩・秋月藩で、専横を極める家老・宮崎織部への不満が高まっていた。間小四郎は、志を同じくする仲間の藩士たちとともに糾弾に立ち上がり、本藩・福岡藩の援助を得てその排除...
秋月記 (角川文庫)
秋月記
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商品説明
筑前の小藩・秋月藩で、専横を極める家老・宮崎織部への不満が高まっていた。間小四郎は、志を同じくする仲間の藩士たちとともに糾弾に立ち上がり、本藩・福岡藩の援助を得てその排除に成功する。藩政の刷新に情熱を傾けようとする小四郎だったが、家老失脚の背後には福岡藩の策謀があり、いつしか仲間との絆も揺らぎ始めて、小四郎はひとり、捨て石となる決意を固めるが—。絶賛を浴びた時代小説の傑作、待望の文庫化。【「BOOK」データベースの商品解説】
筑前の小藩、秋月藩で、専横を極める家老への不満が高まっていた。間小四郎は仲間の藩士たちと共に糾弾に立ち上がり、その排除に成功する。が、その背後には本藩・福岡藩の策謀が。武士の矜持を描く時代長編。【商品解説】
著者紹介
葉室 麟
- 略歴
- 1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒。地方紙記者などを経て、2005年『乾山晩愁』で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞。『いのちなりけり』『花や散るらん』『恋しぐれ』が直木賞候補、『秋月記』が直木賞及び山本周五郎賞候補となる。
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紙の本
葉室麟文学の原型を感じる
2019/10/03 16:26
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
葉室麟氏のこの作品は、第141回直木賞(2009年)の候補作に選ばれたが、残念ながら受賞には至らなかった。
受賞に至らなかっただけにこの時の選評を読むと厳しい意見が多い。
その中で、宮城谷昌光氏の「私は氏の誠実さをみたような気がしている。時代小説作家の資質に天才は要らない。誠実さを積みあげてゆく不断の努力が要るだけである」という選評には、おそらく葉室氏も感激したのではないか。
宮部みゆき氏の選評に「名前のついた登場人物が大勢出てくるのも、史実をないがしろにしない誠意がある」とあるように、この作品は歴史小説に分類されるのであろう。
九州福岡藩の支藩であった秋月藩に実際に存在した間小四郎というと一人の武士を主人公にして、本藩の度重なる陰謀に翻弄されながらも、自らが生まれた藩を守ろうとする男の生き方を描いたこの作品には、のちに葉室氏が描き続けた、耐える男の原型があるような気がした。
「自らの大事なものは自ら守らねばならぬ、そうしなければ大事なものは、いつかなくなってしまう」。
これは主人公の小四郎の言葉だが、この思いは終生葉室氏の作品に流れているように思える。
主人公の造形だけでなく、のちに葉室氏が作品として結実させた広瀬淡窓や葉室氏が愛してやまなかった漢詩の多様など、この作品が葉室氏の作風に残したものは大きい。
先の宮部みゆき氏の選評は「史実から自由に解き放たれた葉室さんの作品も読みたい」と続くが、その作品『蜩ノ記』で直木賞を受賞するのは、第146回(2011年)まで待たなければならない。
紙の本
武士としての矜持
2023/05/31 23:51
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ランディ・B/M - この投稿者のレビュー一覧を見る
小さな支藩のためと思って取った行動が本藩から利用されたことに気づき、後悔し、本藩の介入を阻止するために身を捨てようとする主人公とその友。それを果たすためにその友とも仲違いしても貫く辛さ。武士としての矜持に心打たれた。
紙の本
悪名厭わぬ武士の系譜に連なった男の覚悟とは
2021/09/13 19:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:永遠のチャレンジャー - この投稿者のレビュー一覧を見る
『秋月記』を読むと、別の作家の作品を思い浮かべてしまう。描かれる時代や風土が異なるのに、何だか妙に懐かしく感じた。
家老宮崎織部の専横を許せば御家が危ういと、主人公小四郎ら秋月藩の若侍たちが君側の奸排斥を藩主に直訴しようとする場面では、黒澤映画「椿三十郎」での加山雄三、田中邦衛らの勇姿が瞼に浮かんだ。
映画は山本周五郎『日々平安』を原作とするが、本作品には三船敏郎扮する素浪人役は出て来ない。代わりに、石橋完成を機に奪われた恋人を返してくれと迫る長崎の石工が、家老供廻りの姫野三弥に斬殺される。
この二天流剣士は醜聞の噂さが絶えない得体の知れぬ新参者で、藤沢周平『蝉しぐれ』に登場した犬飼兵馬を彷彿させる。小四郎が三弥との決闘を制し、織部処分が流罪に決すると郡奉行に抜擢され、まさに牧文四郎の出世をなぞらえる。
福岡本藩の隠密(忍び)「伏影」は仕物(暗殺)で黒田家に仕える者らしいから、『秘太刀 馬の骨』に似てなくもない。主人公を慕う男装の令嬢、猷(みち)が登場するに至っては、池波正太郎『剣客商売』の女剣士佐々木三冬を想起するが、藩校教授の娘で漢詩に秀でた論客で酒豪という猷の似て非なる点が面白い。
ところで、柔術の達人海賀藤蔵が二度も「辻投げ」を仕掛け敗れた居合の遣い手で、謡曲を口遊むカタバミ紋の中年武士は一体誰か? 小四郎の上役の差配役となった井出勘七なのか、それとも通り縋りの秋山小兵衛(『剣客商売』の無外流の達人)か、とても気になる。
山仕事の合間に寒根蔓を晒す葛作りに精を出し、換金作物として役立てたいと、労咳に侵されながらも気高く生きた亡き石工の恋人いと。評論家の縄田一男をしてその「心の高潔さ」に「何度落涙したことか」と解説に書かしめた薄幸の登場人物は、「作品の陰の主人公ともいうべき」清涼な存在感を醸し出す。
藩政を掌握した織部に倣い、吉田小四郎改め間(あいだ)余楽斎が悪名厭わぬ武士の系譜に連なったのも、「逃げない男」となる決意に殉じた証。藩の独立を護るために藩政の中枢にあって手練手管を駆使した男の覚悟が町に漂う「静謐さ」で報われたと信じられぬ者たちは、権力に近づかぬが一番良さそうだ。
電子書籍
葉室作品の真骨頂!秋月の美しい情景に彩られた歴史青春一代記
2021/06/03 09:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Ryohei - この投稿者のレビュー一覧を見る
福岡出身の私にとって秋月は小さい頃何度か行った思い出の土地である。覚えている記憶は、紅葉と葛餅。最近では台風や水害で話題になっているが、本作は私の知っている秋月をふんだんに詰め込んだ作品だった。
話自体は歴史物でよくある巨悪と対峙する青春一代記物。怖がりの小四郎が同年代の仲間とともに乗っ取りを狙う福岡藩と戦い、自藩を守っていく。戦いの場面や友情の話などそれぞれの要素で高揚するものがあったが、それがどれも秋月の美しい風景に根付いているのが素晴らしい。
史実に根付いているからか、最後の悪に徹しても自藩を守ったというのが少し納得はいかなかったが、「織部崩し」の青春期から守るものが増えた「成年期」の葛藤など現代にもよく観られるテーマも歴史小説らしく清廉に美しく描いていて、読んでいて清々しかった。
その中でも、いとが「葛」を見つけ出し、それを名産に借金を返していくことに繋げるシーンは鳥肌物だった。ここが葛餅の原点なのかと。
紙の本
秋月記
2017/05/09 12:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雨読 - この投稿者のレビュー一覧を見る
筑前の小藩、秋月藩は福岡藩の支藩でであったが、財政難、飢饉、悪政等様々な問題を、若き藩士の志で仲間とともに藩政の改革に取り組むなかで、様々な事件に巻き込まれて行くが、大局を見据えた、主人公の間小四郎(隠居して間余楽斎)の行動には共感するところがあります。
また幼少期に自分の弱さから妹の命を救ってやれなかった後悔を生涯持ちつつ、その後の生き方には後悔することなく、流罪になって安堵の思いに至った。自分の弱さに打ち勝とうとして今まで生きて来た。
そんな生き方が現代にも共通していると思いました。
電子書籍
やや急展開な場面も
2015/08/29 08:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kape - この投稿者のレビュー一覧を見る
政治家って基本的には今も昔も変わらないなと感じる作品。
テンポよく読めたが、距離を置いていた友人たちが、小四郎に助太刀する場面はとてもおもしろかったが、その後再び距離ができて、ラストにつながっていくのが急展開過ぎる印象を受けた。
思いがけず母校の名も登場して、ちょっと嬉しかった。