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商品説明
眼下に吉原を望み、日本初のエレベーター、百美人、戦争絵を擁し、絵や写真となり、見世物小屋、広告塔としても機能した浅草凌雲閣、通称「十二階」。「十二階」という器の内外をめぐるまなざしに、様々な角度から迫る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
細馬 宏通
- 略歴
- 〈細馬宏通〉1960年生まれ。京都大学大学院理学研究科博士課程修了(動物学)。滋賀県立大学人間文化学部教授。専門はコミュニケーション論。著書に「絵はがきの時代」「ことば・空間・身体」など。
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紙の本
魔法使いが建てた変ちくりんな「東都のエッフェル塔」
2011/11/30 10:29
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近東京の下町に東京タワーよりもぐんと高いジャックの空の樹というけったいな塔が出来るというので世間ではらあらあ騒いでいるようですが、明治23年11月に浅草に凌雲閣別名浅草十二階が完成したときはそんななまやさしいものではなく、明治一の高塔、東都のエッフェル塔にして至高のランドマークということで、江湖の話題を独占したそうです。
当時は世界でも珍しかった本邦初の電動式エスカレーターを装備し、鳴り物入りでオープンした十二階でしたが、ひとの噂も七五日。明治百美人写真の展示や演芸場のにぎやかしで集客を図りますが、やがて閑古鳥が鳴き、大正十二年九月の関東大震災で倒壊してしまいます。
本書はその浅草十二階がどのような経緯で建てられ、当時の文学者たとえば田山花袋、石川啄木、島崎藤村、北原白秋、木下杢太郎、江戸川乱歩などがこの地上一二階、高さ一七二尺(約五二米)の高塔についてどのような感想を抱いたかを論じるとともに、その社会思想的な意義について興味深い考察を行っていますが、著者が紹介している乱歩の言葉のように「どこの魔法使いが建てたのか実に途方もないへんてこりんな代物」であったこの高塔の謎は、追及すればするほど深まっていくかに思えてなりません。
卑小なる己を神に擬しいと高きところめざす者に呪いあれ 蝶人