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地震学者で早くから日本の原子力発電政策を批判してきた(ということは、最近テレビで放映していた、地震学会での講演によって知った)編者による、原子力発電をめぐる論集。
正直、玉石混交だと思うのだが、編者の以下の記述をまずは紹介することで大方この本のよさは分かってもらえると思う。
「原発は世界共通の本質的問題を抱えているが、現実的には、変動帯・日本の原発はフランスやドイツの原発とは違う。日本列島の原発は「地震付き原発」という特殊な原発なのである。危険性を制御しきれない「地震付き原発」は、生命と地球の安全と清浄のために、存在すべきではない。つまり、地震列島・日本における安全な原発とは、それが無いことである。」(p.127)
著者のこの発言の背後には、日本列島が地震の活性期に入ったとする認識がある(『大地動乱の時代』岩波新書)。日本の原発は、幕末から関東大震災に至る自身の活性期のあとの、相対的安寧期(高度成長期はその時代に当たる)に建設されたということを忘れるべきではないという。
今後への希望は?
最近マスコミにもよく出る飯田哲也氏の「エネルギーシフトの戦略-原子力でもなく火力でもなく」を読むと、私たちが目指すべき方向が見えてくる。
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我が滋賀県は「卒原発」を発信した。
ポスト原発と言い換えてもいい。要するに、脱原発という対峙概念ではなく、すみやかに原発信仰を捨てていこうということだ。
およそ50年もの歩みをストップさせることは容易ではない。しかし、今こそ「離れよう」としなければ、あまりにも愚かではないのか。
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311後、原発関連本を多く読んだが、本書は14人の識者の手によるためか、原発の構造、放射線、医学、地質学、経済、財政等々、多様な視点から解り易く書かれている。そして説得力がある。
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「フクシマ」に関して13人の学者・ジャーナリストの意見を集めたもの。著者によりレベル差があれど、理系学者による原発の構造説明や3.11事故発生時の記録などの基礎的な説明から、文系学者・ジャーナリストによる制度問題や今後の方策等について総合的に概観できる。
特に終盤の吉岡氏、飯田氏、諸富氏などの指摘は重要。原発村の制度的な特異性と、政策としてやるべき方法が具体的に示されており、原発を超えたエネルギー問題を考える上で勉強となりそう。
ただバランス面で、原発推進側の理論や主張を知りたい場合は、池田信夫氏http://goo.gl/ipbWや、藤沢数希http://goo.gl/QS8Xなどを参照すれば、より深まるかもしれない。
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マスコミの報道だけではわからない原発の真実(だと思う)が記されている。
原発はまだ人類には早すぎる装置なのではないだろうか。そう思わされた。日本のような地震多発地域でなければまだよいが、いつ地震・津波がくるかわからない国で自分たちの手に余る装置を弄ってはいけないと思うのだ。例えば、過去数百年地震も起きてないし断層もないし海岸もない地域で地震や津波がくれば「想定外」といえるけど、そうじゃないんだから。
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111019on朝日by大江健三郎・定義集 央芝
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福島第一原発事故により、原発の安全神話は完全に崩れ去った。 私たちには原発から脱却する以外に道はない。 脱原発以外に道はないのだ。 そして、それは可能だ!!!!!! これまでも原発の危険性に警鐘を鳴らしてきた14名が、事故を徹底的に検証し、原発の問題性を多角的に考察。 原発を終わらせるための現実的かつ具体的な道を提案する。
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1 福島第一原発事故
(原発で何が起きたのか 事故はいつまで続くのか 福島原発避難民を訪ねて)
2 原発の何が問題か―科学・技術的側面から
(原発は不完全な技術 原発は先の見えない技術 原発事故の災害規模
地震列島の原発)
3 原発の何が問題か―社会的側面から
(原子力安全規制を麻痺させた安全神話 原発依存の地域社会
原子力発電と兵器転用―増え続けるプルトニウムのゆくえ)
4 原発をどう終わらせるか
(エネルギーシフトの戦略―原子力でもなく、火力でもなく 原発立地自治体の自立と再生 経済・産業構造をどう変えるか 原発のない新しい時代に踏みだそう)
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石橋 克彦
1944年神奈川県に生まれる。1968年東京大学理学部地球物理学科卒業。1973年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。東京大学理学部助手、建設省建築研究所国際地震工学部室長、神戸大学都市安全研究センター教授を経て、神戸大学名誉教授。専攻は地震テクトニクス
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原子力発電の仕組み、限界。普及のからくり。福島第一原発事故で何が問題だったか。今後の道筋。14人の著者の論考が並びます。断片的には理解していたつもりですが、これだけまとまっていると腹にずっしりときます。ほとんどの著者が冷静かつ真摯で、説得力をもって迫ってきます。彼らはたぶん、ずっと反原発運動をしてきた一方で、今回の事態に責任を感じている。そこがイエロージャーナリズムと違う。もちろん、責任は僕にもある。それを痛感させてくれました。読む価値のある一冊と思います。
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原発について発言してきている、田中三彦、後藤政志、鎌田遵、石橋克彦、吉岡斉、飯田哲也氏ら15人ほどの筆者が、いろいろな角度から原発の問題に迫る。新書版でこれだけの筆者だと、掘り下げは限界がある。
概要をつかむにはいい本だろう。
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14人の論者が,原発の抱える本質的問題を指摘,脱原発の必要性を説く。どのようにそれを実現するかも。それほどヒステリックな感じではなく,現実的な解が示されている。
四部構成で,第一部は今回の原発事故の真相。原子炉の元設計者(田中三彦・後藤政志)が執筆しててなかなか信憑性ある。一号機は,津波による外部電源喪失より前に,地震動で配管系が損傷し,冷却材が失われていった可能性が高いそうだ。
原子力災害対策本部が,6月初めにIAEAに出した事故報告書には,一号機の事故後経過シミュレーションが記されていたそうだが,それを酷評(p.34)。シミュレーションと合わない水位データを信用できないと切り捨てててけしからんとのこと。
第二部,第三部では,それぞれ原発の技術的問題点,社会的問題点を挙げる。放射性廃棄物の処分問題,中性子による照射損傷問題,「地震付き原発」という問題,労働被曝問題,立地自治体の財政・経済構造を破壊する問題,産生されるプルトニウムの兵器転用問題…。
中性子の照射を受けて,炉壁の脆性遷移温度が上昇する問題が印象に残った。鋼鉄は低温になるとちょっとした外力で脆性破壊する性質をもつが,長年の運転で大量の中性子線を受けると,もっと高温でも脆性破壊するようになってしまう。その脆性遷移温度がどの程度上がるのか,というのがきっちりとは解明されていないらしい。それは危ない。執筆者の井野博満らの「原発老朽化問題研究会」が警告しているが,保安院の回答は「ひとを喰った官僚的回答」(p.92)だったそうだ。
第四部は,脱原発をどのように実現するか。即時全面停止などという非現実的な話ではなく,徐々に全廃へというもの。「福島県はきわめて暴力的な形で『無原発』状態になった。他の原発立地地域は幸いにして、平和裏に原発依存脱却への道を歩む機会を手にしている。」p.206
具体的にはやはり省エネと再生可能エネルギーが重要。ドイツなどの実績を挙げて,国民皆の電気料金の引き上げで,再生可能エネルギーの普及を図るのが有効とする。天然ガス火力もいいと思う。ロシアからパイプラインで輸入できるようになったら随分いいよなあ。
原発立地自治体について。原発の作りだす雇用やもたらす補助金はかなりのもので,自治体にとって「麻薬」と言われてきた。一機作るともう一機、次々求めてしまう。これは原発受け入れを検討する地域へは意味のある警告かもしれないが,すでに立地した地域へはむごい表現だ,との指摘。
「安全神話」は瓦解した。立地自治体も将来展望を描けるよう「麻薬神話」にも訣別しなくてはならない。「住民や自治体主体の『地域力』に、われわれはもっと信頼を置いていいのではないか」p.210。としているが,うまくいくだろうか。具体的方策は何が考えられるんだろう?
確かに脱原発はやむなし,と思う。ただ「技術を捨てる」っていうのはなかなか難しいんだろうとも思う。地震国というせいで,日本はあきらめる。それは正しい選択かもしれないが,やめない国もあるわけで。人類は原子力をほんとにどうすればいいのかな。
ちょっと疑問な記述も散見。例えば,「原発を動かす限り、放射線管理区域内での労働はなくならない。息子を被曝労働が原因でかかった白血病で亡くした…さんは…被曝労働の悲惨さ、不条理を訴えている。」(p.82)というくだり。本当に「被曝労働が原因でかかった白血病」と言い切れるのだろうか?原発で働く人は,直接の因果関係が立証できなくても労災が認められるという法的措置になっている。救済をより重視する制度だ。
あと,p162に単位の間違い。「現在、私たち電力消費者が収める電気料金は、1000キロワット当たり375円が、電源開発促進税として電力会社から国に納入されている。」 これは「1000キロワット時」でしょう。同頁他の箇所も。
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推薦理由:
大規模な被害をもたらした福島第一原発の事故を多角的に検証し、これからの日本は原発からの脱却以外に道はないとしてその具体的な道筋を提案する本書は、エネルギー供給の将来性を考える上での必読書である。
内容の紹介、感想など:
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震による東京電力福島第一原子力発電所の事故は、大量の放射性物質を環境にまき散らすという最悪の事態となり、未だに収束の目途も立たない。本書は、「今こそ日本は原発と決別しなければならない」と考える14名の執筆者による、原発事故の徹底的な検証、科学・技術的側面及び社会的側面からの原発の問題性の考察、そして日本を原発に依存しない社会にするための具体的な道筋の提案を述べたものである。
第1章「福島第一原発事故」では、各原発の地震対策は十分であり、今回の事故の原因は地震の揺れではなく想定外の大津波であると主張する政府と東電の見解を検証し、事故の原因が地震の揺れである可能性を提示するとともに、原発事故を収束させることがいかに困難であるかを説く。
「原発の何が原因か」について、科学・技術的側面から考察している第2章では、核分裂と放射能を扱う原発は不完全な技術であり、事故が起こればその被害が莫大なものになることや、使用済み燃料を安全に処分することができず、未来に負の遺産をもたらすものであること、地震列島の日本にある原発は常に大事故の危険性があることを述べる。原発の問題性を社会的側面から考察した第3章では、「原子力安全神話」が安全規制行政に欠陥をもたらし、「国策民営」体制が適切な原子力行政を阻害していたことが示される。また、原発が攻撃を受ければ放射能がばら撒かれるし、核物質や穂写生物質が盗み出され兵器として使用される可能性がある事も大きな問題点として挙げられている。
第4章「原発を終わらせる」では、日本のエネルギー供給を、「石炭、石油、原子力」から「再生可能エネルギーと省エネ」に移行する具体的な道筋を示し、今我々は、核エネルギーを軍事はもとより民事にも使ってはならないという現実に直面していると訴えている。
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この本は原発の危険性に警鐘を鳴らしてきた一四名が、事故を徹底的に検証し、原発の問題性を多角的に考察したものでございます。脱原発か?それとも推進か?今に至るまでにそんな議論があること自体にも驚きます…。
この記事を書く前に新聞を読んでいると、原発推進派の学者と脱原発を標榜する学者が公開討論をするという記事があったことを知って、改めてその『意義』について考え込んでしまいました。
この本は地震学者の石橋克彦教授をはじめとする十四人の著名人がそれぞれ、原発事故というものを徹底的に検証し、今後の具体策を提案したものです。しかし、この本は新書ながらかなり内容が専門的で、あまりオススメできるか?といったら疑問符が残りました。
僕はほとんどテレビを見ないので、ここに記されていることがどれだけ報道されているのかがまったくわかりません。ただ、この本を読んでいて深刻だなぁと思ったことは『国策』の名の下に建てられた原発は基本的に過疎地に建設されているということで、原発が町の雇用や産業を支えてきたということで、『原発がなくなると困る』という声があるということでした。その辺はやっぱり『うまいなぁ』ということを思わずにはいられなかったことをここに付け加えておきます。
仮に今止めたとしても廃炉までには何十年と時間がかかる。今回の事故で漏れた放射能はとてつもない年月、大地を汚染し続ける。重い命題をつきうけられますが、本格的にこの問題を突き詰めて考えたいかた向けの本で、万人ウケはあまりしないものでないかというのが、現在の読後感です。
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タイトルで損をしているのでは。
原発の論点を、多角的に整理、概観していて、是非のポジショントークとならない議論の端緒となりうる。
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10年後までに原発をなくしながら、節電発電所で20%、自然エネルギーで30%を賄う。2050年までには化石燃料も全廃し、全廃発電所で50%、自然エネルギーで50%を目指してはどうか。
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『「反原発」の不都合な真実』(藤沢数希著)と並べて読んだ。こちらは、福島原発に思い切り寄った接写。対する藤沢本は思い切り引いたロングショット。感情はこちら、理屈は藤沢本に裂かれる。難しい。
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福島第一原発事故(原発で何が起きたのか◆事故はいつまで続くのか◆福島原発避難民を訪ねて)
原発の何が問題か―科学・技術的側面から(原発は不完全な技術◆原発は先の見えない技術◆原発事故の災害規模◆地震列島の原発)
原発の何が問題か―社会的側面から(原子力安全規制を麻痺させた安全神話◆原発依存の地域社会◆原子力発電と兵器転用―増え続けるプルトニウムのゆくえ)
原発をどう終わらせるか(エネルギーシフトの戦略―原子力でもなく、火力でもなく◆原発立地自治体の自立と再生◆経済・産業構造をどう変えるか◆原発のない新しい時代に踏みだそう)
編著者:石橋克彦、1944神奈川県生、地球科学者、東京大学理学部地球物理学科→同大学院理学系研究科、神戸大学名誉教授 [続きを読む]
著者:田中三彦、1943栃木県生、科学評論家、東京工業大学工学部生産機械工学科卒
著者:後藤政志、1949-、技術者、広島大学船舶工学科卒
著者:鎌田遵、1972-、大学非常勤講師
著者:上澤千尋、1966-、原子力資料情報室
著者:井野博満、1938-、金属工学者、東京大学名誉教授
著者:今中哲二、1950広島県出身、原子力工学者、大阪大学工学部原子力工学科→東京工業大学大学院理工学研究科、京都大学原子炉実験所助教
著者:吉岡斉、1953富山県生、科学史家、東京大学理学部物理学科→同大学院理学研究科、九州大学教授
著者:伊藤久雄、1947-、㈳東京自治研究センター研究員
著者:田窪雅文、1951-、ウェブサイト「核情報」主宰者
著者:飯田哲也、1959-、環境エネルギー研究所長
著者:清水修二、1948東京都出身、経済学者、京都大学文学部史学科→同大学経済学部経済学研究科、福島大学経済経営学類教授
著者:諸富徹、1968大阪府生、経済学者、同志社大学経済学部→マインツ大学→京都大学大学院経済学研究科経済政策専攻、京都大学教授
著者:山口幸夫、1937-、物理学者、原子力資料情報室共同代表・法政大学教授