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商品説明
ロールズやシンガーら現代の倫理学は私たちの生を肯定しているのか? 障害者の視点から従来の倫理学説を再検討し、レヴィナスやデリダの問題提起を引き受けながら、生を無条件に肯定する倫理を構想する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
野崎 泰伸
- 略歴
- 〈野崎泰伸〉1973年尼崎市生まれ。立命館大学非常勤講師。倫理学専攻。共著に「はじめて出会う生命倫理」など。
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紙の本
「救命ボート問題」は問題の設定が間違っている
2011/09/21 11:51
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちひ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「自分を棚上げにしない」生命学の立場から語られる、生が無条件に肯定されるべきであるとする哲学・倫理の書。
著者は生命倫理系の研究者・論者では国内随一であると思われる森岡正博と立岩真也に師事している。自身が障害者でもある。
シンガー等の一般的な「生命倫理学」は、乱暴にざっくりとらえると、「(私の認める)〈パーソン〉以外は生きていなくても良い(ある種の意思を持たない生のあり方を否定することが可能である)」と主張する哲学・倫理である。
森岡はそのような生命倫理学的な論を検証して(非常にざっくり言えば)「それはおかしいのではないか」と言い、「生命学」を提唱している。(『生命学に何ができるか』2001年)
自分を棚上げにしない、つまり自分が入り込んでいく哲学・倫理・生き方である「生命学」にはさまざまなカタチがある。野崎氏のこの本も「自分」という視点からの哲学書である。
この本の中で私がいちばん衝撃を受けたのは「救命ボート問題は問題が間違っている」という証明であった。サンデル教授も取り上げる代表的な「倫理課題」は、実は単なる「処世術」なのである。たしかに、真に倫理的であるならその課題に答える必要はないのだ。
哲学は思考の継続そのものであり、結論が出たら哲学ではないのかも知れないが、結論が出てもなお、よりよい生を肯定する倫理を求め続けていく著者の姿勢は「生命学」そのものであり、哲学そのものであり、中途半端な「生命」倫理への宣戦布告であるとわたしは思う。
ともかく、生を肯定する倫理への著者の挑戦は今後も続いていく。