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霊長類との付き合いは数百万年にも及ぶ最も身近な病気、それが風邪。生涯でおよそ200回ほど起きるこの病気は、その身近さゆえに誤解も多い。また風邪ウィルス自体200種以上に及ぶため、その全容はほとんど解明されていないと言う。本書は、そんな風邪をテーマに徹底的に真相に迫った一冊である。
◆本書の目次
序章 :風邪の赤裸々な真実
第1章:風邪を求めて
第2章:風邪はとれほどうつりやすいか
第3章:黴菌
第4章:大荒れ
第5章:土壌
第6章:殺人風邪
第7章:風邪を殺すには
第8章:ひかぬが勝ち
第9章:風邪を擁護する
付録 :風邪の慰みに
冒頭、著者自身による風邪の人体実験の描写から始まる。通常は不意を打たれたように疾患する風邪に、こちらから意図的に罹りにいくのである。風邪ウィルスが身体を冒して行く模様を実況中継さながらにリポートしながら、いつのまにか風邪の世界へと引き込んでいく。また、イギリスで抜群の知名度を誇るCCUという組織の話も興味深い。風邪の人体実験に応募した被験者達は、二人ごとに一室あてがわれるのだが、そこでの経験を楽しみ、そこで生涯の伴侶を得たものも多いという。見知らぬ二人が風邪の冒険を共にするという特異性が、絆を深めたのだろうか。
諸説あるようだが、風邪の原因は鼻にあるというのが最有力だ。そして鼻が風邪をうつす主犯格なら、共犯者は手である。驚くべきことに人は1時間に平均5回程度、鼻をほじっているそうだ。「どうも風邪をひいたようだ。」などと周囲でぼやく輩は、自分が鼻をほじっていると白状しているに等しいということになる。ちなみに、この理論を適用すると、私もこの行に到達するまでに、既に2.5回鼻をほじったことになる。しかし、私は今風邪をひいていないから、本ブログを通して風邪がうつることはない。その点は安心してほしい。
一般的に、風邪の苦しみとは、病原体が産生する毒性によって引き起こされると考えられがちだ。しかしその実体は、ウィルスが撃退あるいは破壊される炎症プロセスによって引き起こされるということが分かっている。風邪の症状はウィルスの破壊的影響ではなく、侵入者に対する身体反応として、私たち自身が作りだしているのである。
風邪ウィルスの最大の特徴は、そのインテリジェンスにある。風邪ウィルスは毒性と伝播力を天秤にかける進化上の取引を行っているのだ。毒性が強すぎて宿主を機能不全にしてしまうと、自分自身の宿がなくなり伝播して子孫を残すことができなくなってしまう。そのことをウィルス自身が良く理解し、適度な苦痛を与えるに留めているのだ。弱さこそが、最大の強みというわけである。
ある新たな研究によると、誠意ある医者に、共感を寄せてもらいながら診察を受けた患者は羅患期間が短縮するということが分かったそうだ。それでなくても、風邪をひいてしまったがゆえに、優しく看病してもらい、ちょっと良い思いをしたなどという経験を持つ人も多いのではないだろうか。風邪に罹った弱さを武器にする。人類もまた、ウィルスから学んだことなのだろうか。
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知っているようで知らない風邪のしくみ。少なくとも二〇〇種類以上のウイルスが関与しているため治療薬を作ることが難しいというのが、風邪を根絶できない理由なのだ。
とにかく、今までの知識がほとんど迷信のたぐいであるというのがわかり驚いた。抗生物質がウイルスに効果がないことは最近では常識だけど、殺菌効果をうたった石鹸やシャンプー、ローションも効果がないということはよく考えたらそうなんだけど、何となくこれらを使うとウイルスまで除去できたと勘違いしてしまっていた。抗生物質は細胞壁をつくることを阻むことで細菌を殺す。細胞壁をもたないウイルスには効果がないのだ。
本書の帯にもあるように風邪予防に一番効果があるのは、8時間以上寝て、外出や人と接触するたびに石鹸(普通の)で手をしっかり洗うことと手で鼻や目を触らないこと。って言っても触っちゃうよなあ。
洗濯しても安心できない。洗濯で99%除菌できても1%菌が残れば感染する。これは考えてなかった。洗濯したら大丈夫って皆思ってるよ。「お父さんの靴下と私の洗濯ものいっしょに洗わないで!」って科学的に根拠のある要請だったんだね。
眼からウロコが落ちる読み物でした。
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いろんな事例を用いながら、いかに風邪に効くとされることがあまり効果をなさないかを説明。とりあえず、鼻をさわらないよう意識的に心がけることと、風邪を引いたら無理はしない。
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かぜは、ライノウィルスに代表される200種類以上のウィルスに感染することにより発生する病気。かぜへの一般的な対処法は間違っているものも多く、この本では最新医療を紹介している。かぜは、くしゃみやせき等の呼吸器からの感染が多いと思われているが、実は手を介して感染している。特に病院や公共交通機関での感染や子供からの接触で感染することが多い。また、挨拶の習慣である「握手」による感染も非常に多いので、日本式の「お辞儀」に変えたほうが良いという提案もある。かぜの予防には、様々な対処法がある。(巻末の付録が充実していて参考になる)日本人はマスクをかぜの予防として有効と考えているが、ウイルスに対しては、ほとんど効果が無い。これはエチケットと考えたほうが良い。かぜは何もしなくて安静にしていれば、大体7日程度で治る。かぜ薬を買うお金で、この本を買って安静にしながら読んでみるのも良いかも。
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カゼについて、サイエンスライターが書いた分かりやすい解説書だ。
「疲れるとカゼにかかりやすい」とか「免疫力が低下するからカゼにかかる」というのは誤りだそうだ。
カゼというのは、ウイルスの進入による人間の免疫反応が主な原因で、免疫力の調整がうまくいけば、カゼに感染しても症状の出ない人もいるそうだ。アレルギー反応のようなものだ。
カゼにかからないようにするためには、
・人ごみをさける。
・手洗いを頻繁にする。
・鼻や眼にさわらない。
カゼにかかってしまったら、
・睡眠をしっかりとる。
・リラックスする。
特に特効薬などはなく。しいて言えばブラシーボ効果が一番有効薬のようだ。
高速で遺伝子組み換えをしてしまう、特殊能力を持つウイルスたちは、我々生物の先祖である可能があると締めくくっている。
楽しい読み物だった。
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気楽に読める科学エッセイ、といいたいところだが。読みやすくはないが、楽しい知識が詰まっている。
かぜのウイルスや治療法に関する最新研究、推奨される対処法、古くからの民間療法、かぜに罹った際の慰みにちょうどよい本(!)など、話題は多岐に渡る。
かつて、かぜのウイルスの培養は困難で、ヒト以外の実験動物は感染せず、インキュベーター中でも培養できなかった。ある研究者がウイルスは鼻の環境を好むと考え、その温度に着目して、インキュベーターの温度を33℃に下げたところ、培養に成功。ここからライノウイルス(ライノ(rhino)はラテン語で鼻)と名付けられたという辺りがおもしろかった。
それと大学で行われているかぜの感染実験の話が興味深かった。鼻孔にかぜウイルスを注入し、その後、ホテルの部屋に缶詰になって、試験薬とプラセボのいずれかを投与されて経過観察されるというものだが、日本でもこんなことやっているのかな? ちょっと楽しそう(?)ではある。
いろいろ言いつつも、結局のところ、かぜをひいたら「おとなしくして寝ていろ」「たまにはかぜくらいひいたっていいじゃないか」というあたりが結論のようです(^^;)。
3点の理由は
・いかんせん、「読みにくい翻訳書」という感じなのである。ネイティブが原語で読むとウイットが効いていてよくできた読み物なのだと思う。が、冒頭から、かぜのcommon coldから洒落を絡め、それにいちいち原語が付いてくるとなると、日本語としてさらっと気楽に読めるという感じではない。
・表記のゆれがちょっと気持ち悪かった。タイトルが「かぜ」なのに、本文では「風邪」とか。同じものなのに「呼吸器合胞体ウイルス」と表記されたり「呼吸器シンシチウムウイルス」と表記されているところとか。
・アメリカのTV番組のタイトルとか列挙されてもピンとこないと思う。例えばクイズ番組とかトークショーとか、ざっくり訳してもよかったんじゃ・・・?
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実験に基づく考察は分かりやすく面白い。寒さと風邪の引きやすさとの間に相関関係がないとことなど、経験則上にわかに信じ難い結論もいくつかあるが、参考に出来る点もある
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興味深く読んだ。
・風邪のウイルスが細菌と違うのは、細胞膜が無い事。そのため膜を溶かして細菌を破壊する抗生物質は効かない。
・基本空中拡散でなく、物に付いたウイルスが手→目か鼻から体内に入り、繁殖する。
・風邪の症状は免疫機構の過剰反応。
・口内にウイルスが見つかることは稀で、うがいの届かない咽喉の奥でウイルスは繁殖する。
・37度近い体内の温度ではウイルスは活性化しない。鼻の33度程度が適温。
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無理に膨らませたような内容で読むべきところはあまりない。
感冒症状を起こすウイルスは200種類以上もあり、全てに免疫を持つことは不可能。
ライノウイルス自体は無害に近いウイルスだが、免疫反応が活性化されることで感冒症状が引き起こされる。免疫が弱いとかぜを引く、というのも迷信で、免疫賦活剤を服用するとかえって症状が悪化する。
・鼻水の色の変化も実は意味がない。子供がたれる、緑色の鼻汁は好中球の鉄含有酵素の色で、細菌感染症の証拠ではない。
・鼻づまりで飛行機に乗る時、子供の耳管通気法としては立った姿勢でおしゃぶりを口に含ませるかコップで何か飲ませるというのがよい。
・ライナス・ポーリングによってビタミンCの効果が喧伝されるようになったが、これまで一万人以上を対象に30を超える臨床試験が行われたが全く効果はない。マラソンランナーなどのように極端な状況下にある人で若干の効果が確かめられたのみ
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風邪に関するもっとも誤った俗信は、「免疫力が下がると風邪にかかる」というものらしい…。ええ~。
今のところ風邪に打ち勝ったり期間を短くするような薬は開発されてない。そもそも、抗生物質は風邪のウイルスには効かない。だってウイルスは生物ではないから…というなんだかびっくりなようなおはなし。薬を飲んでも飲まなくても、治ると。とにかく大事なのは、鼻や眼を触ったりしないこと。顔にふれないこと!風邪のウイルスが入り込むのは、殆ど眼や鼻から。
勉強になる。
終わりの方に風邪をひいたときの推薦図書リストや格言、抗菌グッズやレシピなどおちゃめなページもあり。
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ひたすら風邪に関する一冊。
風邪に関する様々な研究を取り上げるが、結局、科学的に効果が明確に立証された治療薬や治療法は今のところなさそうだ。
風邪という症状が、未だに分からないことだらけということが分かった。
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序 風邪の赤裸々な真実
第1章 風邪をもとめて
第2章 風邪はどれほどうつりやすいか
第3章 黴菌
第4章 大荒れ
第5章 土壌
第6章 殺人風邪
第7章 風邪を殺すには
第8章 ひかぬが勝ち
第9章 風邪を擁護する
付録 風邪の慰みに
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風邪については語り継がれていることが様々あるがそれらの一部について、実験でもってその効果を検証しているという点においては非常に興味深い。例えば、風邪にならないためには手洗いを良くする、鼻や目を触らない。良く睡眠をとる、ほどよい運動をする、たばこを吸わない、少しの飲酒、休暇を取る、ビタミンやハーブはあまり効かないなどなど。但し、これらの論拠となる様々な実験はあまり結論とは関係ないと私にとっては思われ、非常に邪魔な存在であった。もっと端的に記述してもらえれば読了までの時間が短縮できた。
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風邪についてのライトサイエンスな本。
中に書かれている風邪マメ知識については、ノーベル賞受賞者が本に書いてベストセラーになった「ビタミンCいっぱいとると風邪の予防になる」と、この本で一介のサイエンス・ライターが書いている「ビタミンCいっぱいとると風邪の予防になるのはガセ」というような「どっちを信じるか」というような部分でノンフィクションと呼ばれるジャンルを読んでいない俺にとっては、面白く時間が潰せればどうでもいい。
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かぜは、身近な病気でありながら、特効薬も無く、よく分かっていないことも多い病気です。
そんな風邪についてのいろんな研究内容や、そこから得られた分析などを多数紹介してくれる本です。
『全く同じウィルスの風邪に、二度かかることは無い』とか『世の中にある薬、サプリメント、民間療法では、いったい何が風邪に効くのか』
などの話は、風邪が身近な話題だけにとても興味をひかれます。
そして一番驚かされたのは、「風邪を治すのに最も効果が高いのは『この薬が治してくれると思いこむこと(プラシーボ効果)』」
だったこと。まさに病は気から。
でも、そのせいで(?)プラシーボ効果が無くなってしまった私は、それから風邪をひいても治りにくくなったような…。