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- カテゴリ:一般
- 発売日:2011/02/01
- 出版社: 新潮社
- レーベル: CREST BOOKS
- サイズ:20cm/414p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-10-590089-2
紙の本
オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (CREST BOOKS)
著者 ジュノ・ディアス (著),都甲 幸治 (訳),久保 尚美 (訳)
オスカーはファンタジー小説やロールプレイング・ゲームに夢中のオタク青年。心優しいロマンチストだが、女の子にはまったくモテない。不甲斐ない息子の行く末を心配した母親は彼を祖...
オスカー・ワオの短く凄まじい人生 (CREST BOOKS)
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商品説明
オスカーはファンタジー小説やロールプレイング・ゲームに夢中のオタク青年。心優しいロマンチストだが、女の子にはまったくモテない。不甲斐ない息子の行く末を心配した母親は彼を祖国ドミニカへ送り込み、彼は自分の一族が「フク」と呼ばれるカリブの呪いに囚われていることを知る。独裁者トルヒーヨの政権下で虐殺された祖父、禁じられた恋によって国を追われた母、母との確執から家をとびだした姉。それぞれにフクをめぐる物語があった—。英語とスペイン語、マジックリアリズムとオタク文化が激突する、全く新しいアメリカ文学の声。ピュリツァー賞、全米批評家協会賞をダブル受賞、英米で100万部のベストセラーとなった傑作長篇。【「BOOK」データベースの商品解説】
【ピュリツァー賞】【全米批評家協会賞】【Twitter文学賞(第2回)】祖国ドミニカを訪ねたオタク青年のオスカーは、自分の一族が「フク」と呼ばれるカリブの呪いに囚われていることを知る。祖父、母、姉、それぞれにフクをめぐる物語があった−。新世紀アメリカの青春小説。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ジュノ・ディアス
- 略歴
- 〈ジュノ・ディアス〉1968年ドミニカ生まれ。ラトガーズ大学とコーネル大学大学院で文学と創作を学ぶ。マサチューセッツ工科大学創作科で教鞭を執る。『ニューヨーカー』などに寄稿。
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紙の本
なんと魅力的な登場人物たち!
2011/05/28 12:41
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
ドミニカ系アメリカ人青年オスカーは太めで童貞。SFとアニメをこよなく愛するnerdだ。そんな彼と姉ロラ、移民一世の母ベリ、ドミニカに暮らす祖母ラ・インカ、そして姉の(元)恋人ユニオールたちの一筋縄ではいかない約50年の人生模様…。
数々のオタク系知識がかまびすしいほど散りばめられ、それについての多弁で夥しい数の欄外註記が付され、さらには訳者によって懇切丁寧な割注まで施される。なんとも独特の体裁をもった、饒舌な長編小説です。
しかしもちろんこの物語の眼目はオスカーの博覧強記のオタクぶりを披露することにはありません。日本人にはなじみのない、もちろん私も知識のなかった、トルヒーヨという長期に渡って独裁的権勢をふるった政治家が、その死後に至るまでもドミニカ系の彼ら登場人物たちの人生を緊縛し続ける悲劇を、独特のユーモアと、ラテンアメリカ文学に特徴的なマジックリアリズム的手法で描き切ることにあります。
マングース、顔のない男、登場人物たちが危機に襲われると車で通りかかる見ず知らずの人びと。この小説に反復して登場する数々の隠喩が指し示すものを、しかと理解できたとは言いません。マングースは希望の光、顔のない男はカリブの呪いフク、通りかかる人びとは独裁に対して密かにささやかな抵抗を示す民衆といったところでしょうか。親・子・孫の三代が繰り返し味わう人生の苛酷なまでの痛み、永劫回帰する悲劇の前に、人の心は生きることをあきらめてしまいがちです。
しかし訳者解説にあるように、日本のオタクとオスカーのような米国のnerdの違いは、前者と違って後者が二次元の女性ではなく三次元の女性にあたって砕ける勇気と行動力を持っていること。そのために命を賭したオスカーは、「ちゃんと生きていた」ことを感じさせてくれる男なのです。
だからこそこの小説は、とてつもない悲劇でありながら、奇妙なまでに爽やかな読後感を与えてくれるのでしょう。
見事です。
紙の本
21世紀究極のハイブリッド文学
2011/12/21 20:32
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:稲葉 芳明 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジュノ・ディアズは“Drown”の邦訳『ハイウェイとゴミ溜め』(新潮社、1998年)が刊行された際その新しい才能に注目したものの、その後全く翻訳が出ず名前を忘れかけていたが、今年2011年になってようやく、待望のメガトン級(日本での)新作がようやく出た。本書は2007年に出版され、全米批評家協会賞とピューリッツァー賞(フィクション部門)を獲り、「TIME」誌ベストワンを始め批評家から絶賛され、大ベストセラーとなった。その話題作の邦訳版が無事出版されたことがまずは目出度い。
物語の狂言回しは、ニュージャージーで育ったドミニカ系アメリカ人オスカー。成長するにつれとんでもない巨躯となった彼は、RPGや日本アニメ、SF小説を何より愛する筋金入りの「オタク」で、女の子が大好きなのに全く相手にされない。物語はオスカー、彼の姉、母、祖父、友人を主人公とした章が時系列をバラして挟み込まれ、オスカーの成長譚と彼の家族の年代記が、時間と空間を行き来して語られる。オスカーを巡る物語では、サブカルチャーの膨大な知識がこれでもかこれでもかと注入され、その凝り性と量に窒息しそうになるが、その一つ一つに丁寧な注釈をつけた訳者の執念には唖然かつ感謝。他方、1930年から31年間にわたってドミニカに君臨した独裁者トルヒーヨの悪業三昧は想像を絶するもので(“He was our Sauron, our Arawn, our Darkseid, our Once and Future Dictator”)、成る程これでは生半可なリアリズムでは対抗できるわけもなく、著者は中南米文学ならではのマジック・リアリズムを駆使して、この悪鬼トルヒーヨに対峙していく。
全篇これ性と暴力が充満した猥雑な物語でありながら、最後に語られるオスカーの恋物語など、今時あり得ない様な純愛ロマンスが展開する。饒舌にトリヴィアで行間を埋め尽くしていくのと平行して、重く悲惨で忌むべき歴史が過去から現れてくる。二律背反を平気で共存させ可能にしてしまう、これぞ正に現代的ハイブリッド文学の傑作。
紙の本
まさに凄まじい人生
2020/10/18 22:45
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
サッカーが苦手なブラジル人、ジャズが嫌いなアメリカ黒人、キムチが食べられない韓国人、正座ができない日本人と今となっては甚だしい人種差別も含んでいるこれらの偏見に加えて、この書では「童貞のドミニカ人」という新しい人種差別的ともいえる表現が登場する。タイトルどおりオスカーは凄まじい人生を太く(本当に彼は太っていた)短く生き抜いた。凄まじいばかりのオタクで、AKIRAも宇宙戦艦ヤマトもキャプテンハーロックも好きな真正のSFファンだった。童貞のオスカーが文字通り自分の命をかけて最後に愛した女性と最後には結ばれるというラストはいい。そして最後にあの「トワイライトゾーン」の名作、ピークスビルの話が盛り込まれているのでよけいにいい
紙の本
呪われしモテないオタクの恋と、描き出されるドミニカの歴史
2011/06/19 21:12
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:木の葉燃朗 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ドミニカ共和国出身、アメリカ在住のジュノ・ディアスによる長編第一作。
主人公は、ドミニカ生まれ、アメリカで暮らすオスカー。SFやファンタジー、トーキングRPG(コンピュータを使わず、参加者の対話で進めるゲーム)を愛する巨漢のオタク。女性にはアタックを繰り返すが、なかなか結ばれない。そんな彼の一族には、「フク」という呪いがかけられているという。オスカーの恋が上手く行かないのも、フクのせいだという。その呪いがいつ始まり、彼の一族にどんな影響を与えてきたのか。物語が進むにつれて明らかになっていく。
アメリカのオタク文化についての固有名詞が頻出するとか、自分に馴染みの薄いマジックリアリズム(日常と幻想の融合した)文学ということで、やや尻込みしつつ読み始めた。しかし、最後まで夢中で読んでしまった。固有名詞については、原文の注も訳注も丁寧で、訳者あとがきにある「日本語版は世界初の『読んでわかるオスカー・ワオ』になったと自負している」(p.413)とい言葉の通り。更に、自分にも少しはSF小説やゲームについての知識があるので、この分野の単語の使われ方は興味深かった。
物語の醍醐味は、オスカー個人の悩みが一族の歴史につながり、そこから独裁者トルヒーヨに31年間支配されたドミニカの歴史を描き出していく点にある。この、それぞれのエピソードのつながりには無理がなく、うまくつながっている。オスカーの母、祖父母にどんなことがあったのか、そして彼らの過ごしたトルヒーヨの時代がいかにひどいものだったか、フィクションではあるがリアリティがある。著者の親の世代をはじめ、多くの人々に今も影響を与えるトルヒーヨについて、支配された者の視点から描きたいという強い思いを感じた。
しかし、決して重苦しい一辺倒ではない。独裁者であるトルヒーヨや、物語に登場する力や暴力を悪と位置づけ、それらに対立する存在としてポップカルチャーを配置した効果だろう。暴力に対抗するための文化という構図には、文化の力を信じるものとして希望を感じる。
それでも、ラストは切ない。オスカーは、モテないといっても恋愛から逃げているわけではない。困難な状況にチャレンジして、わずかでささやかな成功と、多くの失敗を繰り返す。ラストは悲劇だが、その前にオスカーは命を懸けて思いを遂げている。その意味では、悲しいが爽やかな読後感も残る。