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紙の本
怪奇小説という題名の怪奇小説 (集英社文庫)
著者 都筑 道夫 (著)
「第一章では、私はなにを書くか、迷いに迷って、題名もつけられない」—長篇怪奇小説の執筆依頼を受けた作家だったが、原稿は遅々として進まない。あれこれとプロットを案じながら街...
怪奇小説という題名の怪奇小説 (集英社文庫)
怪奇小説という題名の怪奇小説
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商品説明
「第一章では、私はなにを書くか、迷いに迷って、題名もつけられない」—長篇怪奇小説の執筆依頼を受けた作家だったが、原稿は遅々として進まない。あれこれとプロットを案じながら街をさまようが、そこで見かけたのは30年前に死んだ従姉にそっくりの女だった。謎めいた女の正体を追ううちに、作家は悪夢のような迷宮世界へと入り込んでいく…。奇想にあふれた怪奇小説の傑作が現代に蘇る。【「BOOK」データベースの商品解説】
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書店員レビュー
傑作の待望の復刊です...
ジュンク堂書店吉祥寺店さん
傑作の待望の復刊です!
まずタイトルからして惹きつける。なんだ、このタイトル!読んでいくうちにぐるぐると迷路に紛れ込んだような感覚を覚えます。
怪奇小説の依頼を受けた推理作家が、筆が進まずに苦戦するうちに未翻訳の海外小説の盗作を思いつき、徐々に幻想世界に迷い込んでいく。途中著者の推理小説論的な部分もあってそこも読みごたえがあります。ミステリなのかSFなのか幻想小説なのか…とらえどころがないのにもかかわらず、ぐぐっと世界に引き込まれます。現実と虚構が入り混じり、気づけばあっという間に読み終わっていました。後半はもろに怪奇小説なので好みは分かれますが、読み終えてみると「なるほど、タイトルに偽りなしだな」と唸ってしまう一冊です。
文庫担当 O
紙の本
まいったなあ。うかつにも買わされ、まんまと読まされ、すっかりおちょくられてしまいました(>_<)読後は、ぽーんと蹴飛ばされ、大気圏外に弾かれたかのような思ってもみなかった感があり、そこまで飛ばされてしまっていたのかと、自分にびっくり。これほど先の読めない展開って、めったあるもんじゃない。
2011/01/26 10:46
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本の宣伝広報は、どちらかというと派手なものは少なく、題名と著者名ぐらいで立ち向かって行かなければならないところも多い。だから、「それでも」の効果についてよく知る関係者は、寝ても覚めてもの入れ込みで、いっしょけんめいインパクトある題名をひねり出そうとする。そんな当たり前については、もう読者も十分に感じ取っている時代になってきているはず。
「何なのだ、それは?」「何だか面白そう」「そう来たか、おまえは!」と、未来の読者に感じさせる題名をつけられたなら、第一関門は通過。
この『怪奇小説という題名の怪奇小説』は、ありがちな題名でありながら「おやっ?」と誘ってくる。読まないと内容が分からないとワナを仕掛けるものだが、一行ぽっきりでのレイアウトなら、「へえ、どういう話かな」と気を引くぐらいである。だが、タイポグラフィー(文字のレイアウトデザイン)を許される余地ができると、表紙カバーでお分かりのように、より刺激的な表情を見せる。
文字組みを含めた装丁は、クラフト・エヴィング商会のもの。
これが新聞広告に躍っていたときに、何かウイルスのような強烈な誘引物が、脳の奥に入り込んでしまったようだ。となると、目につけば、やはり気になるので買ってしまう。第二関門も追加。
「一筋縄ではいかない内容なのよ」と題名自体が警告を発しているわけだから、どこからどこまでが前振りか、どこからどこまでが仕掛けかなどと十分に警戒して慎重に読み進めていったつもりなのだ。けれども、どうも、どこまで読んでいっても構成が見えてこない。
筋は少しなら書き出すこともできる。私という、都筑道夫氏本人とおぼしき語り手がいて、物語り出す。エッセイめいた語り口だ。
「怪談、恐怖小説、怪奇小説――呼び名はなんでもかまわない。とにかく、超自然の恐怖をあつかった長篇小説を、私は書く約束をした。」と書き出され、200~300枚で7章から9章ぐらいの小説の原稿依頼があったので、さてどうしたものかと考える。
いきなり、小説のアイデアについてはさて置かれ、怪奇やら恐怖小説というものについての洞察が始まり出す。「おばけ花火」についての思い出が語られ、恐怖小説の類型についてのウンチクが披露される流れで、スタインベックの短篇「蛇」の翻訳がのせられるというオマケ付き。
オマケのあとにもエッセイらしく続いていく。頭に浮かんできた怖い絵のことが説明されるのだけれど、その絵についての確認を取りに出かけるというあたりから、どうもエッセイという形式からの逸脱が図られる。
ここまでの内容が「第1章」に当たる。当たるけれど、「第1章 □□□□」というように、章扉には書かれていなくて、「*」で済まされている。割愛されたかのようなマーク。
では次が第1章なのかと思うと、次は「第2章 盗作のすすめ」と明記されている。何かそれも仕掛けくさいぞと警戒して読んでいくと、出版社の依頼に応えるべく何を書いたらいいのかという作家の迷いはつづき、作家が行動し出し、作家をめぐる人々が登場して、にぎやかになってくる。どうやらエッセイではなく、語り手を中心にした小説の風である。
とうに死んだ人によく似た姿の者を追う幽霊譚めいた様相を呈してくるのだが、語り手が読んだ本の内容と語り手の言動がオーパーラップしたり、幻想譚のようになったり、何が何だかもう……。
フィクションの10種競技に巻き込まれた感じで、わけが分からなくなってくる。
それ以上、こういう小説だと説明するにはあまりに字数が要りそうで野暮だし、説明がし切れそうな種類のものでもない。ただ、何が起こるのか常にスリリングで、読者としてのもてなされ方は最高のものであるということだけ言える。
読んでいけは最終章には当然たどり着くのだけれど、そこがまた、これで最終章なのか、何でこういうところにたどり着いてしまったのかと不思議な場所である。数多く通ってきたはずの関門は、行く手にまだ大きな穴を広げて待ち構えているかのよう。
タイミング良く、直木賞作家になったばかりの道尾秀介氏の推薦のことばが帯に付されての今回の文庫新装復刊である。
道尾氏による、本物語を中国神話の怪物「渾沌」にたとえての説明、作家になったらこういうものを書きたいという目標を得たから、音を借りてペンネームをつけたというエピソードなど、読み物として力の入った充実の解説も楽しい。
技巧が才気走って卓越しているというだけでなく、物語から物語を次から次へと脱皮させていく想像力・創造力のみなぎり方、ふっ切り方も圧巻なら、濃厚でなく程良いかげんのエロス、と言うよりは「艶気」のありようもしっとりなまめかしく全篇にえも言われぬ潤いを加えている。
紙の本
脱出不可能な迷宮
2012/01/30 14:23
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る
「私」は、長編怪奇小説の執筆を依頼された小説家。だが筆が進まない。 あれこれとプロットを案じるうちに幼少期の奇怪な体験を思い出し、気になって思い出の場所を見に行く。そこで見かけたのは、30年前に死んだ従姉そっくりの女だった。
謎の女性が気にかかって小説が手につかない「私」は、マーク・ルーキンズという日本では無名な作家の恐怖小説“The Purple Stranger”(未翻訳)を、舞台を日本に移し換える形で盗作するという禁じ手に走る。そして“The Purple Stranger”を読み直してせっせと盗作に勤しむ傍ら、女性の正体を調べようとするが、その過程で次々と奇妙な出来事が起こり、だんだんと深みにはまっていく。
何よりも不気味なのは、自分にふりかかる出来事と読み進めている“The Purple Stranger”の内容が妙に符合することだ。現実と虚構が交錯し、記憶と妄想が混濁し、混沌の中に迷い込んでしまった「私」の運命やいかに・・・
荒唐無稽な展開に思えるが、その実、周到に計算されていて、この作者ならではの巧妙な伏線が張られている。人間にとって一番恐ろしいのは、理解していたつもりが全く理解できていなかったという真相に気づくこと。つまりは、自分の信じていた世界が音を立てて崩れていく局面。怪奇幻想という迷路から脱出するための唯一の光は理性であるが、実はそのライトが全然当てにならない紛い物であったとしたら・・・? 終盤に登場する地下迷宮。あれは本当は、人間の頭の中にあるのだ。