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平安時代の日本に似た、蕃東国は臨光帝の御世のお話。この世界では日本の代わりに蕃東国があるという訳ではなく、共通の文化を持ち交易などしながらも別個の国。歴史や地理など詳細な設定を窺わせながら、どこか輪郭は曖昧で淡く、夢の中の小さな日本という感じ。化怪の物が人に害をなすこともあっても、激しい対立や怨念があるわけでもなさそうで、「そういうものもいたな」という距離感が面白い。蕃東国では、人の心の不思議と超自然の怪異が等価であるかのような。そういう点で面白かったのは「有明中将」、あと正統冒険譚風ながら独特の味の「気獣と宝玉」。
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日本語の美しい響きを感じられながら読めた。
途中に挟まれた、それぞれの蕃東国に関わる文章が、
この物語の方向性を変えている気もするけど。
幻想文学に載ってたそうなのでなるほど。
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2/22 読み終えました。
それぞれの章としては読みやすい長さでペース配分としてはよかったと思います。
しかしながら全体の文章としてどうも 過去形の「た」で終わるところが多すぎる気がしました。
伝え聞いた物語というコンセプト上仕方なかったのかもしれませんがそこばかりが目について少々前半での物語にたいしての集中力が持てない部分がありました。
しかしながら過去形の効果からか全編にわたってぼんやりと時代がいつなのかつかめないような雰囲気でありながら各章の幕間に挟まれたまことしやかなもっともらしい引用文をもってさらに夢かうつつかの空気はうまく表現されていたと思います。
全体の内容のまとまりとしては一部の登場人物が重なっている他は一連の物語も起きず、少々物足りなさを感じるほどに個々がまとまっていたように思えます。
表紙からもうかがえる独特の世界観の空気を味わいながらも昔国語の授業で紐解いたような古文短編を読んでいる気分にもさせてくれる作品だと思いました。
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日本とは違う、倭でもなく唐でもなく、その地は「蕃東国」。
その地に伝わる不思議な物語と世界観は、聞いたことがあるような話だったりするので、うっかり信じてしまいそうになります(苦笑)
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不思議な現象や妖しが日常にいる、という生活を淡々と書いたものなら、梨木香歩の方がいいなと思った。どうにもこの世界に入りづらい。起伏がなさすぎるからか。それとも私が所謂キャラクター小説というものに慣れすぎたせいか。ラストの『気獣と宝玉』で、結婚しろと言われ条件で(?)ある宝玉を苦労して持ち帰ったのに、相手が他の人との結婚を決めちゃってたという話は女性の心理としてある意味リアル。
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この世界観、すっごくツボ!
表紙に一目ぼれ、文章の雰囲気に一目ぼれで買ったんですが、よかった!
なんかこう、説話集を読んでるみたいな、不思議な感覚です。
飾り気なく、淡々と、地味に文章が綴られている感じがすごく気持ちよかったです。
何より妖怪とか不思議現象を、綺麗に馴染ませているところがいいなぁ。
蕃東国というものが本当にあるような書き方で、一瞬「私が知らないだけで蕃東っていう場所あるの!?」とか思いました(笑)
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風邪っぴきの熱にうかされたアタマには、こういう幻想的なのもよかった。古代中世あたりに日本海に位置した架空の国の物語。異世界描写にひたっているのも楽しい。
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日本海に位置する、中国と日本の影響を強く受けた架空の島国でいつかあった話をいくつか。蕃東国という、架空の世界でありながら、その世界観には破綻がなく、今ある現実の1層か2層薄い膜を隔てたところに確かに存在していそう。こういう、現実から違和感なく入り込める物語は好きだ。ただ、年代記というわりに時間の流れを感じられなかったのと、一つ一つの物語の立ち位置というか、本としてもっとまとまっていたら、本としてぐっと読み込めたのになあ。エッセイみたいにさらさら読むタイプ。
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日本の近く、実在しない国の物語。
旅行者になった気分。物珍しさも手伝ってちょっと高揚した気分で歩いていると、思わぬところで深い闇をのぞきこんでしまう。
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蕃東(ばんどん)という日本海に位置する国家のお話。文化は中国と日本の影響を強く受けている。
帯の字体が好きだ!色合いもいい!
読んでいると実際ありそうな気がしてくる蕃東国。この世界観は好きだなぁと思いました。あまり見慣れない言葉や読み方が読みにくくもあるのですが、古典を読んでいる感じでひたれます。「奇獣と宝玉」がかぐや姫ぽかったりと日本や中国の話が入っているところも蕃東らしいなと感じられました。
雰囲気は好きですが淡々としすぎていたり、ちょっとわけがわからなかったりおもしろいというのとはちょっと違った話だった。
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なんちゃってアジアンファンタジーでした。雰囲気は大好きです。でも、ちょっとお話を引っ張るパワーが足りないかと。大事件が起きるわけでもないので。
最後のお話はちょっとキュンとしました。あと、章ごとに挿入されている蕃東国に関する文献の引用が面白いです。こういうの好きです。
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倭の国の西、日本海に浮かぶ蕃東国。
そこに住まう人々の幻想怪異譚。
竜の昇天という一大イベントに浮かれる民。お忍びでやってきた御言(天皇のようなもの?)に降りかかった騒動と貴族・宇内が行った不可思議な行動・・・「雨竜見物」
春の海に投げ出され、一艘の舟に乗り合わせた4人の男女。そこで出会ったあやかしの申し出は・・・「霧と煙」
仕事で海林の都へ出向いた宇内の従者・藍佐。有名な遊園で酒を酌み交わすこととなった老人と若い男と、不思議な話を披露しあう事になり・・・「海林にて」
相撲・志波と不思議な生まれの少女・東乃に命を賭して愛された、たぐいまれなる中将の逸話・・・「有明中将」
幼馴染の姫・集流(たかる)に乞われ、彼女への求婚の品として幻の3玉を探すことになった宇内の冒険譚・・・「気獣と宝玉」
以上の5編。
平安の世のおとぎ話をひも解いたかのような、不思議な読後感。
しっかりオチがつく「雨竜見物」「気獣と宝玉」が好みでしたね。
宇内のひょうひょうとしたところが好きだわ。
伏線かと思っていたらそうでもなく、意味なく(と私には思われる)出てくるエピソードはちょっと「???」でしたが、全体的な雰囲気はよかったです。
続編あったら、煙の再登場希望!!
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思わず、百科事典や地図帳を探したくなる(笑)
この感じは、高校時代、ファンタジーノベル大賞受賞作とは知らず酒見賢一『後宮小説』を読んで、本気で世界史の教科書で素乾国を探してしまったあの時の感じに似てるぞ、と思ったらやはり西崎憲もファンタジーノベル大賞を受賞していた方でした。
2002年に受賞作『世界の果ての庭』を出版して以来の単行本、かな。
いやあ、面白かったなあ。
食、小物、衣服、伝来文化や宗教・古書に至るまで、あらゆる習俗が細部まで作りこまれていて、また無理がない。曖昧な和風ファンタジー風としてしまわないで、「日本海」に位置する架空の国、とあえて最初に定義してしまうあたり、律儀というか作者の姿勢が窺える。
「雨竜物語」では後の話でもでてくる宇内が飄々としていていい。最後の「気獣と宝玉」では、まるで「竹取物語」な展開にわくわくしてしまった。気の強い女の子に逆らえず、巻き込まれ型に冒険に出る少年・宇内の意外な行動力に「おお、やるじゃん宇内! 書物ばっかり読んでる貴族様のくせに、どこにそんな体力が!」と手に汗握る、インディー・ジョーンズばりのスペクタクル。この経験があってこそ、最初の宇内の飄々とした動じなさが生まれたのかあ、と納得する。
連作短編だが、一編一編にどこにも無駄なところがなく、物足りなさを感じさせないどころか、冒険譚あり、幻想文学ありと、いろいろな味わいを感じて一冊通して読んで非常に満足な本。
宇内や周辺の人物たちが魅力的で、誰を主役に据えても面白い。宇内の他の話や、まったく別の時代も読んでみたくなる。シリーズ化してくれないかなあ、これ。
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これは和製幻想小説です。舞台は日本じゃないけど。ちょい読み人がイメージする「ファンタジー小説」とは全然ちがいます。 だから起承転結を求めちゃダメなわけで、そのへんで苦手な人がいるかもしれない。
が、
これいいわあー。なんか。作者の遊び心満載で、洒脱で絢爛で上品で。
空気がいい。
大きな事件は無いのだけど、なんかうずうずする。
もっとよみたいなあ蕃東国。
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世界の果ての庭」以来、新作発表が待ち遠しかった西崎さんの労作がついに出版された。あきれるほど細密に作り上げられた架空の国の不思議な中世譚が5つも展開される。序文や各編の最後に付記されている注釈の資料、あるいは図版を読み解くことで、当時の(!)「蕃東国」の地政学的な状況が見えてくるという趣向。 日本(倭国)からの渡来人と唐からもたらされた文化の影響を受けた蕃東国は、日本海に浮かぶ3つの大きな島からなる。本州に置かれた美しい都・景京を舞台に、宮廷・貴族文化が花咲く古い時代の物語だ。日本で言えば中世・平安期が該当する時期だろうか。 収録されている5話は長短があるものの、いずれも世の不思議を伝える内容。主に、有職故実を司る家に生まれた正五位の貴族・宇内とその家来・藍佐の経験談を中心として語られる。冒頭に置かれた、天に昇る生まれたての竜を見物に出かける「雨竜見物」と最後の宝探しの物語「気獣と宝玉」は宇内の豊かな学識と潜在的な機知が窺えて秀逸。若き王子が美しい姫君を娶るために、手にした謎を手がかりに化け物たちと対決しながら宝を探すという古今東西に通じる冒険物語だ。そのきっかけと後日譚がなんとも人間味があって好きだ。 「海林にて」は藍佐が旅先で巻き込まれる不思議話の競演。「霧と煙」と「有明中将」は、何とも形容しがたい不思議譚で、いわば「徒然草」や「雨月物語」の中の一編といった風情。 とにかく、注釈のひとつひとつの虚構性・緻密性に、著者の念入りなまでのこだわりが見えて恐ろしいくらい。ここまで入れ込むからには、是非とも続編が望まれるところだ。