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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2010.11
- 出版社: 講談社
- サイズ:19cm/237p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-06-216585-3
紙の本
和解する脳
かくれんぼと紛争の共通点とは? 将棋の羽生名人と裁判官の頭の中は似ている? ヒトにとって和解とは「快感」だった? 最先端を走る脳研究者と、日々揉め事に奔走する法律家が人間...
和解する脳
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商品説明
かくれんぼと紛争の共通点とは? 将棋の羽生名人と裁判官の頭の中は似ている? ヒトにとって和解とは「快感」だった? 最先端を走る脳研究者と、日々揉め事に奔走する法律家が人間の行動原理を斬新に読み解く。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
池谷 裕二
- 略歴
- 〈池谷裕二〉1970年静岡県生まれ。薬学博士。東京大学大学院薬学系研究科准教授。脳研究者。
〈鈴木仁志〉1966年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。弁護士、東海大学法科大学院教授。
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書店員レビュー
民事事件では、裁判の判決前に依頼者に有利な条件で和解に持ち込む...
ジュンク堂書店ロフト名古屋店さん
民事事件では、裁判の判決前に依頼者に有利な条件で和解に持ち込むということが、弁護士の腕の見せ所のひとつだろう。
しかし、紛争解決の方法を裁判ではなく、はじめから「和解」で目指す弁護士が鈴木仁志氏。彼は、人間は「和解」に対する欲求と能力を備えていると考える。
その能力をうまく引き出すことが紛争解決につながるとし、科学的知見から方法論を探究する異色の弁護士だ。
鈴木弁護士が脳科学者である池谷裕二氏とのコラボレーションを希望し、実現した対談をまとめたものが本書である。
「争うのが脳なら、仲直りするのも脳。」というテーマから、彼らは理系と文系の枠を飛び交いながら人間の行動原理を探る。
脳科学に関する池谷氏の解説は、今回もとてもわかりやすい。読むうちに、脳に対する興味がムクムクと湧いてくるから不思議だ。
二人の熱い対談によって、科学の在り方、日本の法曹界の在り方までも考えさせられる。
彼らが行き着く結論は・・・「明るい未来」に繋がると信じたい。
理工書担当 中村
脳科学の解説に定評の...
ジュンク堂書店福岡店さん
脳科学の解説に定評のある池谷裕二さんの新刊です。
本書は、法律紛争を裁判ではなく、話し合いによる解決=和解をなんとか模索しようとする弁護士と脳科学者の対談の構成です。人がなぜ争い、仲直り(解決)に至るのか、その時の脳のメカニズムに関して主題がおかれています。
今までの池谷さんの著作と同じように、脳科学に関しては、素人でも解りやすく解説をしてくれています。
今、日本の法曹界は、法科大学院や裁判員制度等で、市民目線の法曹を目指しているようです(もちろんこれだけが理由ではないでしょうが)。
法律を勉強していると、何かしら、必ず法律がどうのこうのと言う議論から始める性があるようです。それが、当事者には逆効果で、問題がややこしくなることを、本書は教えてくれます。
本書は、是非、法曹を目指す方、法曹界の方々にも読んで欲しい1冊です。
福岡店 理工書担当
紙の本
訴訟の心理・行動と脳の関係。わかりやすくて深い解説は人間の心理・行動の原点を鋭く考察し、弱点をも指摘する。
2011/01/20 16:57
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
脳を研究している池谷さんはこれまでも最先端の脳研究の知見を身近に感じさせてくれる本を書いておられますが、今回は弁護士さんとの対談です。裁判・法律は科学研究とはほど遠い感じもあります。でも「争うこと、折り合いをつけること」と考えると社会心理や認知機構などを介して脳の活動研究と深くつながっている。池谷さんの解説は今回もわかりやすいけれど深く、とても刺激的でした。
弁護士の鈴木さんが提示する「裁判で遭遇する人間行動の現象」を池谷さんが脳科学の言葉で裏付ける、というのが本書の対談の流れです。
まずは鈴木さんが「ここまではっきり言いますか」と思うぐらいに裁判を表現しているのにちょっと驚きました。曰く「裁判は良い具合に怒りをあおる構造になっている。」「法は村の掟でしかない。」「つまるところ裁判官がどう思ったかということでしかないんです。・・しかし、社会一般の経験則と裁判官の認識している経験則とが一緒かどうかはわからない。」などなど。
池谷さんの脳機能の説明もとても明快です。例えば「脳に善悪はなく、快不快があるだけ」。そこから「訴訟は嫌なことをつつきまわすのだからそれだけでどちらも不快。納得して和解するのは嫌な訴訟の経験が終了することだけでも快と思うことができる。」というように話がまた訴訟にもどります。鈴木さんは「できれば訴訟でなく和解」を勧める主義だそうですが、その理由はこんな脳機能の理解とつながっているのです。
それでも人間は自分が正しいと言ってしまうと「言ったから」と固執してしまうところもあります。「自分だけ不快なのよりは相手にも不快感を感じさせるほうがまだ良い」という「相対的快」で訴訟に踏み切る場合もあるなど、実際どう行動するかは単純ではありません。「情」が走ってもだめ、「理詰め」に走ってもダメ。池谷さんの言葉を借りれば、人間の脳は「不必要に複雑」になっているのかもしれません。
「犯行の責任」があるかどうかで「自由意思」についても語られています。最近のニュースでは無差別殺人などの弁護で精神鑑定がされたりしていますが、本書中では脳研究ではかなり話題になった「リベットの実験」をひきあいに出して「自由意思はないんだから罪はない」と言う弁護が実際にアメリカの裁判であった、という話が載っていました。その裁判の結末は・・どうぞ本書をお読みください。「(犯行の)記憶がない」というのは「反抗した自覚がない」のか、「記憶が後で消えたのか」はわからない。こういう判別の難しさも考えなくてはいけない要因です。
社会的生き物である限り、他者と接触してなにかが起こる。争うことは、次の段階でもっと良い関係を創るために通過しなければならない現象だといえるかもしれません。鈴木さんの「裁判は過去に拘泥する作業。和解はこれからどうするか、の未来の作業」という言葉はとても示唆に富んだ指摘に聞こえました。
人間の脳には「嬉しそうな状況を見るだけで嬉しくなる」という性質(ミラーニューロンの性質といわれている)もあります。そういったところを上手く生かすようにしていくことが大事なのではないでしょうか。
「ヒトも生き物」という観点から社会的な現象を考察していくことも大事という考えは随分広まってきたと思います。まだまだ「大胆予測」でしかない部分も多いようですが、「そう考えると理解できる」部分も増えてきています。脳の発達した生き物としての人間が無理のない形で社会生活を心地よく送るためには、脳の機能を良いところも悪いところも理解していく必要があるでしょう。この対談のような形で、本質につながる実際的な話をこれからももっと読ませてもらいたいと思います。