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- カテゴリ:一般
- 発売日:2010/10/28
- 出版社: 文藝春秋
- サイズ:19cm/230p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-16-373170-4
紙の本
助けてと言えない いま30代に何が
派遣切り、ホームレス、孤独死。社会から孤立する30代が急増している。なぜ彼らは「助けて」と声を上げないのか。就職氷河期世代の孤独な実態を描く。NHKテレビ番組「クローズア...
助けてと言えない いま30代に何が
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商品説明
派遣切り、ホームレス、孤独死。社会から孤立する30代が急増している。なぜ彼らは「助けて」と声を上げないのか。就職氷河期世代の孤独な実態を描く。NHKテレビ番組「クローズアップ現代」を書籍化。【「TRC MARC」の商品解説】
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書店員レビュー
2009年4月に九州...
MARUZEN&ジュンク堂書店札幌店さん
2009年4月に九州で30代の男性が孤独死しました。
所持金は9円。布団の横には出されることのなかった「助けて」と書いた
封筒があったそうです。
彼は生活保護の申請に窓口まで行きながら、自ら申請を断ったのです。
こういった事実をありがちな行政批判をするのではなく、助けてと言えなかった30代の心に視点をおいたNHK取材班のルポです。
同年代として考えさせらることの多い1冊です。
社会担当
紙の本
助けを求めるためには強さが必要
2011/03/20 12:51
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
平成22年度は大学卒業見込み者の内定率が過去最低となった(平成23年2月1日時点)。働きたくとも働けない、まさしく超就職氷河期である。しかし、就職氷河期という言葉は、いまできたものではない。バブル崩壊後、いわゆる団塊ジュニアが就職を目指した時が最初ではないだろうか。日本経済は就職に一時の間氷期を与えて、いまの超就職氷河期となったのだが、団塊ジュニアの中には長就職氷河期の真っ只中にいるものも多い。そして、彼らが30代を迎えた昨今、この問題は最悪な形で表出しはじめた。
本書はNHKの番組クローズアップ現代での取材内容をまとめたものである。北九州在住の39歳男性の孤独死をきっかけに事に本質へと肉薄したものである。
衝撃的だった。
「助けて」とだけ書かれた紙きれを封入した投かんされることのなかった封筒。この一言が発せられないがために、多くの30代が苦しんでいる。高度経済成長期にいわゆる「企業戦士」として戦った団塊世代を親に持つ30代。努力は結果となることを強く教え込まれ、自己責任の呪縛に取り疲れられた30代。できないのは自分が悪いから、努力不足だからと自らを追い込み、弱音を吐くことができない30代。
自己責任論と弱音を吐くことができない性質に育てられた彼らは、経済成長を果たしてきた親のような生活を送ることが当たり前にできるよう頑張ってきた。彼らが社会に飛び出そうとした矢先、バブルが崩壊。就職内定率は激減し、非正規という立場で社会に出ざるを得なかった者も多かったに違いない。企業は新卒者に狭いながらも門戸を開く。間氷期には、その時代の新卒者が就職し、30代は蚊帳の外に追いやられた。そして、リーマンショックである。
新たな超就職氷河期を受けて、政府は新卒者の資格を3年以内の既卒者にまで適用しての受付を呼び掛けるという奇妙な方策を打ち出した。おそらく団塊ジュニアの轍を踏まないようにとの配慮であろう。それも企業側の対応いかんであろうが、団塊ジュニアには企業の対応に身を委ねることすらできない。30代となった彼らからは非正規職やアルバイトすら若い世代に奪われていく。
それでも「助けて」と言えない。支援者が手を差し伸べてもその一言が発せられないという。「大丈夫だから」、「自分で何とかするから」そう言って支援の手からすり抜けていく。彼らの中には団塊世代の親が築き上げた家があり、親も健在という。しかし、「心配をかけたくない」と家からも遠ざかっていくとのこと。
取材のきっかけとなった39歳の男性は孤独に飢死した。この死に対して「緩慢な自殺」というコメントが本書に掲載されているが、自らの意思を持った30代の自殺者の人数は激増しているという。
彼らは努力不足や実力不足のせいでいまの立場に陥ったわけではない。他人を頼らないような性格に教育され、競争に勝つことが是とされてきた。産声を上げた時は誰でも誰からの庇護が不可欠だ。しかし、それを良しとしないよう教育されてきたのだ。そして、人災とも思えるような不景気により自立への梯子を外されてしまった。それでも30代は誰を責めるでもなく、自らを奮い立たせて消耗していく。
少子高齢化が進行するこの国は、高齢世代を下の世代で支えるシステムを築き上げた。いい加減な管理や資金乱用で破たんしたこのシステムの維持に必死な国は、根本的な失策を早く是正すべきではないだろうか。高齢世代を支えるためには現役世代という土台が何よりも必要であるにも関わらず、30代の現状を考えると土台は穴ぼこだらけと言わざるを得ない。元気な高齢者には働いてもらうことも大切だが、もっと目を向けるべき世代があるのではないだろうか。
全ての世代の方に一読してもらいたい本である。