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紙の本
アルチュセールある連結の哲学
著者 市田 良彦 (著)
哲学者は何をどこまで思考したのか? 歴史の構造ではなく「状況の理論」を追究し続けた思想家アルチュセールの理論的な曲折を、理論と実践の間の消尽点にまで追いつめる。【「TRC...
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商品説明
哲学者は何をどこまで思考したのか? 歴史の構造ではなく「状況の理論」を追究し続けた思想家アルチュセールの理論的な曲折を、理論と実践の間の消尽点にまで追いつめる。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
市田 良彦
- 略歴
- 〈市田良彦〉1957年生まれ。京都大学大学院経済学研究科修了。神戸大学国際文化学研究科教授。専攻は社会思想史。著書に「闘争の思考」など。
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超過激で難解な《理論的》伝記。
2010/11/16 10:21
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わたなべ - この投稿者のレビュー一覧を見る
難解な著作である。少なくとも、アルチュセールの主著及びその生涯、そして背景となるフランスを中心とした戦後ヨーロッパの知的状況に対する基礎的な知識が読者にあることは前提とした上で、アルチュセールのさまざまに変転した「理論」と「実践」をめぐる彼が残した錯綜し矛盾した「言葉」を、ひとつの《理論》のいわば《運命》として記述した、きわめて抽象的で凝縮されたそれ自体極めて理論的、かつ実践的な本となっている。
著者は浅田彰の盟友としても知られ、ニューアカデミズムのブームも一段落した90年初頭に『闘争の思考』という単著を発表した後は主にフランス語で論文を執筆し続け、日本ではネグリ、アルチュセールなどの翻訳などの活動を行い、07年に突然破格のランシエール論である『ランシエール/新〈音楽の哲学〉』を上梓し、そのたぶんに挑発的な内容でしずかな衝撃を与えたのだが、「1990年代の前半、IMECのアルチュセール文庫に入り浸って」公刊された著作のみならず自筆の草稿などに丹念に向き合って翻訳/研究を進めたアルチュセール論は、まさに「待望の」ものであったのだが、こういう「待望」の著作はえてして「幻の」著作となる例が多いので、本当に刊行されたのは驚きというしかない。
著者はアルチュセールの理論を、まず「状況(の理論)」というモチーフから再構成していく。1967年、文化大革命(毛沢東主義)によって、スターリニズム(ソビエト独裁)の共産党を、マルクス主義(党)の内在的な運動として批判する視座を獲得したとみなし、アルチュセールは「来るべきもの」としての「状況の理論」を提起するのだが、そこでの、具体的なフランス共産党や学生たちとの関わりの中での、アルチュセールの苦渋に満ちた「書くこと」の逡巡や錯綜を著者は丁寧にあとづけ、分析、解釈を施し、そこにモンテスキューとマキャベリに学び、ヘーゲル的なモチーフを変換していく理論的なほとんど錬金術的思考を導いていく。マキャベリが、状況を厳密に分析記述批判していくことで、いまだそこには存在しない《理論》を、いわばネガティヴなかたちで提示してしまっている、というアイロニカルな発想が、「無」からの「はじまり」としての理論と実践、政治と哲学の連結点としてきたえあげられていき、ラカンとの交流(とそれからの批判的離脱)を通して、新しい「主体」の理論化を促し、さらには狂気と事件を経て、「個体であろうと社会であろうと現実的なものはすべて出会いによって発生する」という「出会いの唯物論」に到達する。
著者は言う。
「「マルクス主義」まで無効にすることにより、彼はマルクス主義を守った。結果として残るマルクス主義は、この逆説のなかに宙吊りにされ続けるほかなく、あまり意味がない。それは「ある」とも「ない」とも言えるものでしかないだろう」
このような「技法」を、アルチュセールの著作のなかに読み込んでいく著者の記述は、それ自体きわめて《理論》的な「技法」を感じさせるもので、アルチュセールが解体し、そうすることでマルクス主義を「守った」ように、アルチュセールを解体することで、現在と鋭く対峙する彼の《理論=政治》の「技法」を継承する(=守る)のを目指しているかのようだ。
アルチュセールの著作/草稿への何度でも立ち戻り、読み返し、読み直しを迫るハイテンションで密度の濃い著作。初心者にはまったく勧めないが、哲学と政治のかかわりに関心のある読者は必読の過激な本。