紙の本
カバー写真も雰囲気出てる!
2021/08/29 16:56
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
手に入りにくかった作品だったが、ようやく読むことができた。
上巻を読み終えて思ったのは、この作者は純然たるミステリー作家というより、人間ドラマ、もっと言ってしまえば閉塞感に囚われた人間そのものに興味があるひとなんだということだ。
前に読んだ「黄昏の彼女たち」もそうだったが、主人公たちは現在の社会と折り合いのつかない事情を抱えており、その葛藤のなかでミステリー的な事件に遭遇する、そのことがさらに彼らを追い詰めてゆく・・・という流れは今作も同様である。
さらに今作ではオカルト的要素が加わり、登場人物はその不可解な現象に振り回される。上巻ですでに古き良きお屋敷に怪異現象が起こり、あっという間に当主がその犠牲になって舞台から退場してしまう。かなり展開が速いことが、この一族の物語に一気に飲み込まれ、読者も一緒に押し流されてゆくような勢いが感じられる。
また、田舎の荘園のかかりつけ医が物語の語り手であるというのも、よくある設定だが、ミステリー好きの読者なら、クリスティの「アクロイド殺人事件」をすぐに思い起こし、この医師の語りの行間を読もうと頭を絞る。家族の事情に通じた親身な医師の、当主一族への関心と傾倒は、はたして誠実さから出たものなのか?
そして、不安だ、怖いと言いながら、全くの他人であるメイドのベティが逃げ出しもせず、ここで起こる全てを観察しているという不可解な状況・・・。
登場人物は限られているだけに、犯人さがしというより、屋敷で起こっていることは一体何なのか?誰かの恣意が働いているのか、または時代に取り残され、追い詰められた当主一族の必然の成り行きなのか?と次々疑問が湧いてきて不安感は途切れることなく続いてゆく。
下巻が楽しみだ。
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(2010/09/20購入)(2010/09/23読了)
以前から気になっていた作家。読む。
斜陽の一途を辿るエアーズ家。一家を襲う悲劇は自然の成り行きなのか?何者かの策略なのか?それとも…?
━━ 「(省略)けど、こんな家、守る価値があると本気で思いますか?姉さんを見てみればいい!この領主館が姉さんから命を吸い取った――ぼくから吸い取ってるみたいに。そうなんだ、この領主館は。ぼくらを滅ぼしたいんだ、一族郎党根絶やしにしたいんだ、こいつは」(280頁)
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「茨の城」にいろんな意味でときめいたり沈みこんだりしながらニヤニヤ読み終わって、「半身」だと不安や憂鬱や、お前そっち行ったら危ないだろ!って心配やどんよりした共感を持ちつつ、一気に突き落とされてしばらくぼんやりした、
ということがあったので、サラ・ウォーターズは気軽に読めないし読んだ後楽しくはならない、という印象。
だから覚悟はしていたはずなのに、いろいろ予想以上だった。
「一人称・回想・伝聞まじり」の語り方は大好きで、巧いことやられると本当にすっかり騙されたりまんまと感情移入してつらくなったりするけれども、まさにそんな状態。
登場人物はだいたい厭らしい部分や小汚い部分の方が多くて、それでもだんだん好きになったり心配したりするようになる、というのが陰影のある描きかた、ということなのかと今回思った。
あと「信用できない語り手」を実感。
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巧みなストーリーテリングに引き込まれる。あらすじを見ずに読めば驚きはもっと大きかったと思う。
下巻が楽しみ。
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ミステリーとカテゴライズしていいのかどうか…。
かつて隆盛を極めたエアーズ家が没落していく。
その姿を主治医の視点から描く。
とはいえ、主治医ファラデーがエアーズ家に出入りする段階で、土地は切り売りされ邸宅は荒廃している。しかも使用人は、家に悪霊がいると言い出す。
ホラーであれば、怪異を体験するのは語り手なのだ。
が、ファラデーは決してそれを認めない。
彼の根底には、上流社会に属しているエアーズ家の嫉妬がある。
また、悪霊がいると、エアーズ家をでていきたがっていた使用人は、結局ずっとこの家に居続けた。
誰一人として信用がおける語り手が、傍観者がいないのが、この物語の恐怖の源なのかもしれない。
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サラ・ウォーターズが百合描写を封印…ということで不安だったのだけれど、杞憂だった。印象に残ったキャラはベティ。『荊の城』のスウといい、この作家は「ちょっとしたたかな女の子」をとても魅力的に書いてくれる。八重歯が似合いそうなキャラ。サラ・ウォーターズのもう一つの持ち味を認識できた作品でした。
ロデリックが重い中二病を発症させてしまったことで物語はどう転がっていくのか、下巻に期待。
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サラ・ウォーターズの新作。
長篇4作目。
英国のウォーリックシャー地方で、200年以上の歴史を誇るハンドレッズ領主館。
近在で診療所を営む医師ファラデーは、友人デイヴィッドの代診で、館へ往診に出向く。
母親がメイドとして館に勤めていたことがあり、30年前に一度、園遊会の時にこっそり入ってみた思い出があった。
館がすっかり寂れている有様に、驚愕することに。
家族は、先代の奥方エアーズ夫人と娘キャロラインと息子ロデリック。
奥方は美しかった名残をとどめて品があるが、昔を懐かしむばかり。
館の当主となった息子は責任を感じて奮闘していたが、経済的な危機は土地を切り売りしても追いつかない。
見るからに具合が悪そうで、戦場で顔にも火傷を負い、足を引きずる状態。
娘のキャロラインはしっかりした様子だが、身分に似合わぬ家事もしていた。
美人とはいえず、あまりの貧しさに将来の道は閉ざされそうだった。
部屋は一部しか使っておらず、住み込みの女中はまだ少女のベティが一人いるだけ。
そして、次々に怪しい出来事が起こってくる‥?
文学的な雰囲気ですが、内容はゴシックロマンとミステリとホラーとの融合?
なめらかな文章で、複雑な話もわかりにくくはありません。
ダークで謎の多い展開、精緻な描写で、ぐいぐい引きこまれます。
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ファラデー先生だいすき!エアーズ家の人たち大好き!
と、思っていたら最後のほうつらくてつらくて…
読んでてどきどきするほどでした。
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ある医師と没落領主一家の交流が語られているが上巻を読み終わった時点でもいったいどういう種類の物語なのかよく分からない(ミステリじゃない?)。とはいえどんどん読めてしまうし好きな作家なので下巻でどういう展開をみせるか楽しみ。
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夜、一人で読んでいると周りのちょっとした音にも敏感になってしまう、そんな小説です。
でも、まだまだ序章という感じ。キャロラインの明るさに救われてます。
怖いけど、下巻に手が伸びるのを止められない!
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図書館の本
内容(「BOOK」データベースより)
かつて隆盛を極めながらも、第二次世界大戦終了後まもない今日では、広壮なハンドレッズ領主館に閉じこもって暮らすエアーズ家の人々。かねてから彼らと屋敷に憧憬を抱いていたファラデー医師は、往診をきっかけに知遇を得、次第に親交を深めていく。その一方、続発する小さな“異変”が、館を不穏な空気で満たしていき…。たくらみに満ちた、ウォーターズ文学最新の傑作登場。
いいのか?って思うけどとりあえず詳しくは下巻を読んでからにします。
The little Stranger by Sarah Waters
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楽しみにしていた新作だけれど、エアーズ家の面々の心情がいまいちつかみ切れず、幼い頃からこの家に憧れていた医者の視点からだけは物足りなさが。最後の最後まで、何か「おっ」と思えるものを期待していたのだけれど、それが適わず、かなりの脱力…。残念なことに私は何がいいたかったのか、理解できなかったです。次作に期待。していいのか?!
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え、超常現象?
どこに行きつくのかわからない。この著者のことだから、きっとどこかで転換点があるのだろうけど。
『半身』、『荊の城』を読んだことあるけど、相変わらず独特な雰囲気だなぁ。クラシカルな映画みたい。
■このミス2011海外7位
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これがミステリといえるか否か解釈は微妙かもれない。
多くの方はゴシックホラーとして読むのではないか。
最後に全ての辻褄のあうようなミステリーがお好きな方の好みではないかも。
原題はThe Little Stranger。
邦題の『エアーズ家の没落』として"まるっと"読むならば、これは滅びの物語だ。
ラストに向けて、館はその不気味さを増していき、物語は怪奇ホラーの色を強く帯びていく。
これだけでも充分楽しめると思う。
だが、原題に意図される物語として読んでいけば、どこか”ひっかかり”を感じるはずだ。
そして、それはなぜかと問うていくと、この物語はもっと恐ろしい抑圧された執着と憎悪の物語となる。
そのことは、『エアーズ家の没落』という物語が持つ”遠い国の遠い昔の名家の伝説”から、急に現実感を伴うスリラーとしての意味合いを持たせるだろう。
著者が望むように"深読み"をし、読後にこの物語に"欠けているもの"を推理によって補っていく。
これこそが本書の醍醐味。
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ヴィクトリア朝、そして館……ツボにはまらないわけがない。空いた時間にちょっとずつ読んでいたのだが、その度にすんなりこの物語にのめり込める。