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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2010.6
- 出版社: 新潮社
- サイズ:20cm/542p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-10-537202-6
- 国内送料無料
紙の本
メイスン&ディクスン 上 (Thomas Pynchon Complete Collection)
世は植民地時代。領地紛争解決のため、天文学者チャールズ・メイスンと測量士にしてアマチュア天文学者のジェレマイア・ディクスンは大地に境界を引くべく新大陸に派遣される。後世に...
メイスン&ディクスン 上 (Thomas Pynchon Complete Collection)
紙の本 |
セット商品 |
- 税込価格:54,010円(491pt)
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商品説明
世は植民地時代。領地紛争解決のため、天文学者チャールズ・メイスンと測量士にしてアマチュア天文学者のジェレマイア・ディクスンは大地に境界を引くべく新大陸に派遣される。後世にその名を残す境界線、すなわち、のちにアメリカを南部と北部に分けることとなるメイスン‐ディクスン線を引くために—。アメリカの誕生を告げる測量道中膝栗毛の始まり始まり。驚愕と茫然が織りなす、飛躍に満ちた文学の冒険。ノーベル文学賞候補常連の世界的作家の新たな代表作が、名翻訳家の手によりついに邦訳。【「BOOK」データベースの商品解説】
【ニューヨーク・タイムズ「ベスト・ブック・オブ・ザ・イヤー」】【日本翻訳文化賞(第47回)】世は植民地時代。領地紛争解決のため、天文学者メイスンと、測量士にしてアマチュア天文学者のディクスンは、大地に境界を引くべく新大陸に派遣される。のちにアメリカを南部と北部に分けることとなる線を引くために−。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
トマス・ピンチョン
- 略歴
- 〈トマス・ピンチョン〉1937年ニューヨーク州生まれ。コーネル大学英文科卒業。「V.」でフォークナー賞、「重力の虹」で全米図書賞を受賞。
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紙の本
珍道中ものの白眉。ネタ満載の文学ショー
2010/09/11 16:06
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:abraxas - この投稿者のレビュー一覧を見る
メイスン&ディクスン。脚韻を踏んで調子のいい響き。ロミオ&ジュリエット、ジキル&ハイド、フラニー&ゾーイ。二人の名前の組み合わせを表題にした作品は数多ある。丸谷才一は『文学のレッスン』の中で、作品を評価する点における登場人物の魅力をもっと評価するべきだというようなことを言っていたが、人物の名前がタイトルになっているということだけ採りあげてみても、この作品の魅力が人物の創造にあることが分かるというもの。もっとも、この二人、実在の人物。メイスン=ディクスンと口に出せばその後には(線)ラインとくる。後に南北戦争で敵味方の領地を分かつことになる自由州と奴隷州を分断する境界線を引いたのがこの両名。今でもその境界線のことをメイスン=ディクスン・ラインと呼ぶのだそうだ。
そのメイスンが書き残した日誌を下敷きにしながらも、史実がどれくらい残っていることやら。フランクリンやワシントンといった有名人から耶蘇(イエズス)会の密偵、王立協会の面々その他胡散臭い酒場の客まで数え上げたら切りのない野放図なまでに大量の登場人物。その中には人語をしゃべる英国博学犬や人間に恋する鋼鉄製機械仕掛けの鴨、果ては幽霊さえ出てくる始末。厖大な資料を駆使して、同時代の歴史的事件から天文気象の話題まで網羅しつつも脱線、逸脱の繰り返し。千一夜物語よろしく語り手の話す物語の中の登場人物が次の物語の話者になる入れ子構造になった小説で展開されるのは全くの法螺話、与太話、SF的な地底国探検譚、あっけにとられるほどの荒唐無稽な話をでっち上げた、これは二十世紀最後の稀書であるとともに、紛う事なき傑作。
一つ一つのエピソードを煮詰め、それに相応しく手を入れたら綺想の短篇、手に汗にぎる冒険譚がそれこそいくらでもできるだろう。こんなに簡単に繰り出して見せてもいいのかと思うほど贅沢なネタ満載の文学ショー。前作『ヴァインランド』で、その語り口の巧さに舌を巻いたものだが、今回の作品は、構想の規模、想像力の奔放さ、表象の華麗さで、その上を行く。
主題は勿論題名に象徴されているように奴隷制にある。黒人奴隷は言うに及ばず、米蕃(インディアン)対策に見られるアメリカの負の歴史。またアメリカ独立以前の英国その他植民地を持つ国家なら避けて通ることのできない人間の自由に対する迫害、圧迫の歴史。これほど超重量級の作品にしては珍しいほどストレートな主張が小気味よい。下巻最後の方で、ディクスンが奴隷商人に見舞うパンチに快哉を叫びたくなるのは盟友メイスンだけではあるまい。生硬になりがちな主題を、珍妙な道具立てと喜劇的な意匠で演じて見せたところに面目があると見た。
弥次郎兵衛と喜多八、ボブ・ホープ&ビング・クロスビー、と洋の東西を問わず凸凹コンビ二人の珍道中を描いた物語が面白くないわけがない。王立天文台長助手のチャールズ・メイスンは、亡妻が忘れられない憂鬱気質の人物で、地味目の服に鬘を被った小太りの星見屋。それに対するダラムの田舎町の測量士で教友会(クエーカー)のジェレマイア・ディクスンは、派手な赤の軍服めいた服装に三角帽を被ったのっぽで酒と女好きの楽天家。ひょんなことからこの二人がコンビを組むことになり、王立協会の命でスマトラや聖ヘレナ、果ては新大陸まで観測、測量の旅に出る。
二人の性格が対比的に構成されているのは無論のこと。行く先々で対立し、喧嘩しては仲直りしながら、やがてどちらも相手がいなくては自分が自分でいられないような仲になってゆく。小説の中では、次々に登場する奇矯な人物達の奇想天外な振る舞いに目を奪われがちだが、その蔭で、二人の人物像とその関係性がゆるゆると変容し成長を遂げていく。そのためにこそ、この長大な長さが必要だったのだ。小説の終わりが近づく頃には、この二人の好人物に寄せる読者の愛情は確かなものに育っているはず。
翻訳は柴田元幸。大文字を多用した18世紀英語風の原文を黒岩涙香調の漢字にルビ振りという擬古文調で見事翻訳し果せている。頻出する漢字に閉口する向きもあろうかと思うが、慣れてくれば「費府」は、いつの間にかフィラデルフィアと読むし、「伊太利麺麭」はピザのことだな、と表意文字の解読に長けた日本人のこと、ルビなしでも読んでいる。それより、時代がかった言い回しで展開されるやりとりの中に浮かぶ今日的な笑いの妙味を味わっていただきたい。訳者渾身の訳業である。
紙の本
19世紀の南北戦争から
2021/07/18 23:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
分断が続く21世紀のアメリカを見通しているかのようでした。憂鬱症のメイスンと、豪放磊落なディクスンの寄り道だらけの旅も楽しめます。
紙の本
抱腹絶倒の奇書のはずだったが
2010/09/07 13:17
12人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る
この万年ノーベル文学賞候補作家の作品について、格別面白いとか内容が深いとか文学史的な意義があるとか思うたことは一度もない。
ないのになぜこうやってつらつら紙面に眼をさらし続け、唐人いな米人の寝言に耳を傾けているかというと、このいかにも面妖でけったいかつ思わせぶりな作者の悟り澄ましたような面持ちについつい吸引せられて、太平洋の大波のごとく繰り出される話題と思藻と逸話と笑話と小話の数々にあだかも人参に目移りするポニーのごとく広い地球のあちらこちらに引きずりまわされているうちに、とうとうさしたる事件もカタストロフも世界革命も、ありそでなさそで黄色いサクランボの1粒も転がることなく、唐突な巻頭とおんなじ調子でこの世紀の長編大小説が忽然と終了してしまうからである。
全体の構図としては、英国から漂流してきた2人の天文学者兼測量技師メイスンとディクスンが、独立戦争以前の植民地アメリカを舞台に繰り広げる抱腹絶倒のはずの弥次喜多道中膝栗毛であるが、十返舎一九の道中小噺は読んでいて時折くすりと笑えるほどには面白いが、亜米利加版の弥次さんも喜多さんも作者が♪ペペンペンペエンと自分で囃すほどに面白いものではなく、読めば読み進むほどに小澤征爾の指揮と小沢一郎の御託と同様、退屈とあくびの山がそびえたつばかり。
滑稽喜劇小説であるはずなのに巻末では主人公たちのあまり幸福でもない最期にいささかのいたましさを覚える始末でありやんすが、なんといっても致命的なのは、雄大なピラミッドを支えるほどにあまたの岩石で構築されたアネクドートや小噺がそれこそ無機物で無味乾燥で、教養の気付け薬にはなるかもしれないが、吉本興業の下らぬお笑いほどにもくすりとも笑わせてくれないことだ。
上下巻合わせて1094ページの超くだらん放漫脳味噌全開大小説をば、英語フランス語スペイン語の蘊蓄やら西洋史やら天文学やら測量学の専門知識を随所にふりまくペダンチックな作者の驥尾に付して懸命に邦訳された柴田元幸さんご苦労さん。あなたこんな小説必死で翻訳してほんとに面白かったの。
なに、面白そうで面白くないところが面白い。うむ、天下の大小説はみなそうかもしれんて。しかし唯一面白がっているのは作者だけだろう。見上げた根性だ。私には徹頭徹尾つまらんかった。キンチョールのCMで大滝秀治が言う通りだ。
やい、トマス・ピンチョン。お前の話はつまらん。まったくつまらん!
♪どうしようもなくつまらないのにつまるようにもてはやす世間の痴れ者たちよ 茫洋