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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2010.6
- 出版社: アスキー・メディアワークス
- レーベル: メディアワークス文庫
- サイズ:15cm/431p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-04-868660-0
紙の本
憧憬の先にあるもの (メディアワークス文庫)
著者 水鏡 希人 (著)
異能力者の集団である百星衆に生まれた獅堂宗は、荒廃した世界で孤立した繁栄を続ける新東都に留学生という名目でやってくる。しかし、新東都では政府要人と同朋を狙ったテロが立て続...
憧憬の先にあるもの (メディアワークス文庫)
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商品説明
異能力者の集団である百星衆に生まれた獅堂宗は、荒廃した世界で孤立した繁栄を続ける新東都に留学生という名目でやってくる。しかし、新東都では政府要人と同朋を狙ったテロが立て続けに起こっており、宗が配属された“調査二課”では、キャリアも年齢もいろいろのメンバーが、それぞれの思惑を抱えて働いていた。自分が思い描いていた新東都での生活からは程遠く、戸惑う宗。そして、宗は徐々に憧れの新東都で起こっている事件の真相に近づいていく。—そこで彼が見た光景とは。電撃小説大賞“金賞”受賞者・水鏡希人、渾身の力作。【「BOOK」データベースの商品解説】
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紙の本
どんな世界でも変わらず
2010/06/27 02:19
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある時、世界は大崩壊と呼称される連続自然災害に襲われ、人類社会は崩壊の危機に瀕した。国家はほとんど機能しなくなり、地表にはどこからともなく魔獣と呼ぶべき生物が現れ、人間を襲った。
しかし、自然界のバランスのなせる業か、もはや由来も途絶えて久しいが、いつの頃からか一部の人間が異能に目覚め、魔獣を退けつつ大規模な結界を張り、城壁を築いて都市を形成していった。大崩壊より五百年、今でも魔獣と人間の生存競争は続いている。
一応とはいえ平和な場所が作られれば、それまでは外敵に対して一致団結していた人々もバラバラになり始める。特に、異能を持つものと持たざるものがいれば、その間隙に猜疑と恐怖という楔が打ち込まれることは明らかだ。
紆余曲折の末、異能力者たちは結界都市を離れ、自らの拠点を築きながら、都市を守る戦力として一族の一部を供給しつつ、生活物資などを対価として受け取る関係に落ち着いた。
そんな交流の一環として都市に来ることになった獅堂宗は、留学生として初めて城壁の中の社会を知る。そこには彼の知る魔獣との戦いはなく、主義主張の違いによる人間同士の静かな争いがあった。
壁の外は異能力者バトルが繰り広げられている世界でありながら、描かれるのは文明社会の中の組織同士の対立や、思想の違いによるテロリズムの応酬がはびこる世界だったりする。まるで現代社会の病巣を描く、みたいに見えなくもない。
獅堂宗の行動の原点は憧れにあるけれど、その先にあるのは甘い世界ではない。たとえ世界がどんな状況であっても、社会という集団が形成されれば起きることはいつも同じなのだとしたら哀しい限りだ。
最後に微妙に伏線ぽいものがあったり、人間関係的にも色々と発展の余地がありそうではあるので、その辺りが明らかにされる機会があればそれも面白い。でも、曖昧なままでもそれはそれで綺麗な終わり方なのかも知れない。