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商品説明
両親は日本人ながらアメリカで生まれ育った栄美は、高校3年にして初めて日本で暮らすことに。「日本は集団を重んじる社会。極力目立つな」と父に言われ不安だったが、クラスメイトは明るく親切で、栄美は新しい生活を楽しみ始める。だが一つ奇妙なことが。気になる男子と距離が縮まり、デートの約束をするようになるが、なぜかいつも横槍が入ってすれ違いになるのだ。一体どうして—?栄美は、すべてが終わったあとに真相を知ることになる。【「BOOK」データベースの商品解説】
日本で新たに高校生活を始めた帰国子女の栄美。クラスメイトは明るく親切で、栄美は新しい生活を楽しみ始める。だがひとつ奇妙なことが。気になる男子とデートの約束をするようになるが、なぜかいつも横槍が入り…。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
貫井 徳郎
- 略歴
- 〈貫井徳郎〉1968年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。「慟哭」でデビュー。「乱反射」で第63回日本推理作家協会賞を受賞。ほかの著書に「後悔と真実の色」など。
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紙の本
このカバーで貫井作品だと思う人は少ないんじゃないでしょうか。爽やか系の青春小説、ヤングアダルト風ですもの。でも、まさに内容は青春小説。しかも、歌野晶午ばりの大仕掛け。いや、りっぱです。ただし、感動は少ないというミステリの宿命。ホームランというよりはクリーンヒットかな・・・
2011/01/28 19:35
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
貫井徳郎の本て黒っぽいものが多い気がしていたんで、この本のカバー、見たときは「おお」って思いました。なんだかNHKの里山のDVDラベルみたいなカバー写真じゃないですか。貫井らしくないな、と思ったんです。ところがです、黒っぽいというのは偶々私が読んだ本がそうだっただけで、過去に出た本をネットで検索すれば、オレンジ色、黄色、緑、青、とバラけています。
黒、って一言でいいましたがグレーもあります。ま、モノトーンの写真、っていったほうがいいんですが、ともかくある。無いのは赤くらい。で、です、この里山風爽やか系、っていうのもそれなりにあります。ま、今になってそんなことに気付くくらいですから、貫井作品の半分以上、読んでません。そう、今から5年くらい前までの作品は一冊『妖奇切断譜』を読んだだけ。正直、「貫井徳郎」っていう名前がジジムサイ。だから敬遠していたわけです。
ところが、その田舎のおじさんみたいな名前の貫井徳郎は、いつの間にか私の中で新刊が出れば読む作家にはなってしまいました。きっかけは『悪党たちは千里を走る』を読んだことです。カバーもタイトルも伊坂幸太郎風ですが、内容もそれらしく軽めのものではありました。次に読んだ『空白の叫び』は、重い内容ですが、よかった。『夜想』も悪くはありません。
『後悔と真実の色』は、今流行の警察小説なので、意外性こそありませんでしたが十分に楽しめました。読み終わったばかりの『灰色の虹』は、『空白の叫び』と似た犯罪の深層に迫るもの。貫井作品は総じて重苦しい印象が強いのですが、これは犯罪を描く以上は当たり前。でも、今回のカバーデザイン(写真 牧野明神、装丁 高柳雅人)を見る限りは、そういう殺伐としたものとは一線を画しているようです。出版社のHPには、
*
日本で新たに高校生活を始めた帰国子女の栄美(エイミー)。淡いときめきも別れの痛みも、いつかは青春の思い出になるはずだった。だが後に知ったのは……貫井徳郎が青春小説に仕掛けた「驚き」とは!?
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と〈青春小説〉の文字があります。それならカバーデザインにも納得がいきます。早速内容紹介と行きたいところですが、〈仕掛けた「驚き」〉という一文がある以上は、軽めの案内に留めるのが礼儀でしょう。全体は、三部構成で、PART1 In the high school、PART2 At Roppongi、PART3 In the university からなります。
PART1 In the high school の主人公は真辺栄美、サンフランシスコで生まれ育ちましたが、金融関係の会社に勤める父親が帰国することになり、高校3年として初めて日本で暮らすことになった17歳の美少女です。一見おとなしそうですが運動が好きで、バスケットボールが得意。頭のよさは普通ですが、当然、英語は得意です。漢字はあまりよく書けません。両親は日本人です。
栄美の同級生で、成績も学年でトップクラス、長身でハンサム、スポーツ万能という高校でも有名な生徒が飛鳥部です。違う意味で栄美の気にかかる同級生が、クロウというあだ名の小金井志郎です。誰に声をかけられることもなく、いつも教室の片隅でひっそりとしています。栄美には、何故彼が孤立しているかわかりませんが、家庭に問題があるといわれています。そして栄美と飛鳥部という美男美女のコンビは付き合い始めるのですが、二人が会おうとするとそれを妨げるようなことが起きて・・・
PART2 At Roppongi の主人公は、ユージです。大学に入ったものの、文学のための英語の授業では物足りず、生きた英語を身につけるため六本木で外人相手にガイドをしてチップをもらうバイトをしています。ガイド、といえば聞こえはいいですが、料金のことを切り出すのは困っている外人を目的地に案内してからなので、親切で案内してくれたと思っている先方の怒りを買うこともあります。
六本木でお金のためにガイドを買って出るユージに、「拾った仔猫の里親を見つけて欲しい」と声をかけてきた年齢不詳の黒人というのがアンディです。お金にならない外人の出現に戸惑うユージですが、アンディはそんな相手の困惑をよそに、ついにはユージのところに押しかけ、無料で滞在するようになってしまいます。迷惑がりはするものの邪険にはしないユージにアンディは・・・
PART3 In the university は、大学生になった栄美と、彼女が行く先々に姿を見せる大学生・山崎の話になります。そして、それは高校時代の恋愛のことになって・・・
全く交わりそうにない二つの流れが、いかに自然に一つになるかが作者の腕の見せ所ですが、さらにそこに仕掛けがあって、驚きが生まれます。私は、歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』を思い出しました。都筑道夫がいうところの「犯人が、ではなく作者が読者に仕掛ける」トリックです。あまりにスマートなので、思ったほど驚きはしませんでしたが、逆に『葉桜』を読んだ時の、それだけかよ、といったような反発は感じませんでした。それと、青春小説にある甘さに、安易に流れないのがいいのかもしれません。
傑作か、といわれれば、ちょっと違うかもしれませんが、クリーンヒットであることは確かでしょう。