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紙の本
運命のボタン (ハヤカワ文庫 NV)
著者 リチャード・マシスン (著),尾之上 浩司 (編/訳),伊藤 典夫 (訳)
訪ねてきた見知らぬ小男は、夫婦に奇妙な申し出をする。届けておいた装置のボタンを押せば、大金を無償でご提供します。そのかわり、世界のどこかで、あなたがたの知らない誰かが死ぬ...
運命のボタン (ハヤカワ文庫 NV)
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商品説明
訪ねてきた見知らぬ小男は、夫婦に奇妙な申し出をする。届けておいた装置のボタンを押せば、大金を無償でご提供します。そのかわり、世界のどこかで、あなたがたの知らない誰かが死ぬのです。押すも押さないも、それはご自由です…究極の選択を描く表題作をはじめ、短篇の名手ぶりを発揮する13篇を収録。【「BOOK」データベースの商品解説】
収録作品一覧
運命のボタン | 伊藤典夫 訳 | 7−25 |
---|---|---|
針 | 尾之上浩司 訳 | 27−34 |
魔女戦線 | 尾之上浩司 訳 | 35−47 |
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紙の本
リチャード・マシスンの紡いできた二つの恐怖
2010/05/29 10:06
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
1950年代から70年代にかけて書かれたリチャード・マシスンの幻想的ホラーの中短編を13作品集めた日本独自のアンソロジーです。
まずなんといっても喜ばしいのは、表題作(原題Button, Button)が邦訳で読めること。
本書巻末の解説で編訳者の尾之上浩司氏が記すように、マシスンの短編集『激突!』(ハヤカワ文庫 NV)の巻末解説の中で「(編者の)小鷹信光氏がこの内容を凄みたっぷりに紹介して」いた作品です。私も中学生のときに小鷹信光氏の紹介だけで震撼させられたことを強く記憶しています。
1979年に日本版≪プレイボーイ≫に邦訳が掲載されていたとはいえ、---今回本書に収められた翻訳は、この≪プレイボーイ≫掲載版の転用だとか---中学生が手にすることなどかなわず、全編を読んでみたいと悶々とした思いを味わったこともまた、よく覚えています。
以来、30年以上の歳月を経て、こうして中学生でも手軽に手にできる文庫の形で邦訳が読める日が来るとは思いもよりませんでした。キャメロン・ディアス主演で映画化されたことの副産物とはいえ、大変うれしいことです。
そしてくだんの「小鷹信光氏の紹介」によってあらましストーリーは分かっていたとはいえ、『運命のボタン』の、実にマシスンらしい強烈な恐怖を伴う結末に、今の私はやはり震えあがったのです。
ディアス主演の映画は見ていませんが、本書解説にある80年代のテレビシリーズ『新・トワイライトゾーン』で映像化された際のものを手元にあるアメリカ製DVDで見直してみました。
原作者マシスンはそのオチの違いに対して「製作スタジオには、他人の脚本をいじってダメにする連中がいる」と嘆いたといいます。確かにテレビドラマ版の結末はマシスンがどういう作品世界を紡いできたかについて全く理解していない人たちが作ったものであることを如実に表しています。
小説とテレビドラマ版との結末の違いをここでつまびらかにすることは避けますが、マシスンの描いてきた恐怖には二種類があり、そのひとつは<他人(ひと)を完全に理解することはかなわない>という絶対的孤独が与える恐怖です。テレビドラマ版ではその恐怖が描かれることはありませんでした。小説『運命のボタン』の結末が人々を凍りつかせるのは、まさにこの<理解できているはずの他人を理解できていない>という現実をつきつけられるところにあるにもかかわらず。
本書の最後に収められた『二万フィートの悪夢』もまた同じ部類の恐怖を描いた物語といえるでしょう。
この短編が与える恐怖のみなもとは、飛行中の航空機を墜落させようとするグロテスクな怪物の存在そのものよりも、その怪物を目撃した主人公の言葉を乗客や乗務員が誰ひとりとして信じてくれないという孤独感です。理解の力が届かないことの恐怖がここでも描かれているといえます。
『死の部屋の中で』の主人公の妻が味わう恐怖もまた同類のものです。
他人を理解することが絶対的にかなわない世界とは、他者との間に理解という名の温もりを絶たれた絶対零度の世界ともいえるでしょう。そこに震えあがる恐怖を感じない読者はいないはずです。
そしてマシスンが与えるもうひとつの恐怖は、<自分が誰であるか、実は本当は理解できていない>というもの。自らが拠って立つと強く信じてきた足場が突如として崩れ、底なしの穴へと落下していく恐怖です。
本書所収作品でいえば『針』、そして『帰還』の二編がこの恐怖に貫かれた作品といえるでしょう。
足場の崩れは、単なるアイデンティティー・クライシスといったものとは質が異なります。自分探しの旅などで再度確かめることが可能なレベルの危機ではなく、それは自分の存在意義がこの世界で絶対的な無に帰すかのような恐怖です。自らが積み上げてきたものが消失する恐怖です。
そうしたマシスンの<自分が誰であるかが分からない恐怖>を突き詰めた傑作ホラー作品が『アイ・アム・レジェンド』でした。
しかしその映画化作品は、興行的にはヒットしたとはいえ、残念ながらマシスンの真意を映像化することには失敗していました。そもそもこの小説の題名は、伝説の怪物である吸血鬼たちと対峙する地球最後のノーマルな人間だと思っていた自分こそが、吸血鬼中心の世界では伝説の怪物(レジェンド)といえるアブノーマルな存在と化してしまっているという視点の逆転を示したものです。しかし映画は、吸血鬼退治アドベンチャー映画に終始していました。
マシスンの作品は近年日本での再刊が相次いでいます。どれもが手ごろな文庫で読むことができるものばかりです。
その一方で、上述した『激突!』(ハヤカワ文庫 NV)が絶版となって久しいのは大変残念です。巻末の小鷹信光氏の解説に突き動かされてこの30年、マシスン作品を収集し読み返してきた私としては、より多くの読者にマシスンの魅力を知ってもらう原点ともいえるこの『激突!』の復刊を願ってやみません。
紙の本
運命を変えるボタン
2023/10/28 19:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:今井 - この投稿者のレビュー一覧を見る
マシスンの作品の特徴は、発想の奇抜さとスピーディーな展開。一番のおすすめは「四角い墓場」。映画「リアル・スティール」の原作である。映画以上にぶっ飛んだ内容で、よくこんな設定考えつくな、と驚いた。