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商品説明
一家が惨殺された樹海のなかの山荘。禍々しき森の、いまだ解明されぬ事件。血塗られた伝説に挑む者を襲う悲劇の連鎖!その森に踏みこんだ者は、二度と帰れない。【「BOOK」データベースの商品解説】
その森に踏みこんだ者は、二度と帰れない−。血塗られた伝説に挑む者を悲劇の連鎖が襲う! 祥伝社文庫「樹海伝説」「鬼頭家の惨劇」に新たに書下した「赤い森」を加え、加筆・訂正したもの。真実を秘めた「袋とじ」付き。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
樹海伝説 | 5−128 | |
---|---|---|
鬼頭家の惨劇 | 129−261 | |
赤い森 | 263−372 |
著者紹介
折原 一
- 略歴
- 〈折原一〉1951年埼玉県生まれ。早大第一文学部卒。旅行雑誌の編集者を経て、88年に「五つの棺」で小説家デビュー。95年「沈黙の教室」で日本推理作家協会賞を受賞。
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ミステリに文学的感動を求めるのが間違っている、とはミステリマニアの発言で、それも分からないではないですが、でも読んでよかった、生きていく勇気がわいた、なんていうものがあってもいい。生憎、折原の作品にそれを求めるのは無理、っていうのがなんとなくファンとしては寂しい・・・
2010/11/23 13:20
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
折原一は新作が出れば読むことにしている作家の一人です。最近は叙述トリック大流行なので、折原の一人舞台、という印象は薄れましたが、相変わらず全体の仕掛けは健在です。で、今回は2007年に同じ祥伝社から出た『黒い森』に続く作品、ということになるそうです。そのときのうたい文句は
*
引き裂かれた恋人からの誘い。女は樹海の奥、惨劇の舞台へと―――
迫る罠。一人、また一人と消えてゆくツアー客。封印された「206号室」で女と男は再会できるのか? 『倒錯の帰結』を超える仕掛け満載、心拍数急上昇のサスペンス・ミステリー! 表からも裏からも読める本!―――書下ろし
*
とあり、小説の仕掛けがそのまま本の作りに及ぶというものでした。その点、今回はおとなしい。出版社HPには
*
その森に踏みこんだ者は、2度と帰れない――
一家が惨殺された樹海のなかの山荘。
禍々しき森の、いまだ解明されぬ事件。
血塗られた伝説に挑む者を襲う悲劇の連鎖!
ベストセラー『黒い森』の戦慄をはるかにしのぐ謎と恐怖
“赤い袋とじ”の奥底に隠された衝撃の真実とは!?
あの家で何が起こったのか、誰も知らない……
私はだめな男だ。もうこれ以上、生きてはいけない。可哀相だが、あいつらも私と一緒にあの世へ旅立ってもらおう。
ただ、私たちが生きていた証を後世に残しておかなくてはならなかった。ここで一体何が起きたのか、記録を残しておくことが私の使命だと考えている。
さあて。では、始めるか。
9月2日、午後8時20分、人間狩りのゲームの幕が、今まさに切って落とされようとしていた……。
――本文より
*
とあります。目次に従って初出とともに簡単に各話の内容を紹介すれば
第一話 樹海伝説 騙しの森へ(祥伝社文庫書き下ろし『樹海伝説 騙しの森へ』2002年刊):民宿の主人の忠告を無視して別荘を目指す大学のハイキング部の部長で三年生の児玉俊介、二年生の坂上麻衣、俊介の幼馴染・野々村直樹、二年の片岡哲也・・・
第二話 鬼頭家の惨劇 忌まわしき森へ(祥伝社文庫書き下ろし『鬼頭家の惨劇 忌まわしき森へ』2003年刊):樹海の際にあった山荘は時間とともに木々に周囲を覆われ、樹海の中へと取り込まれていく。小説を書けない作家、画風が変化する妻、そして明るさを失う娘たち・・・
第三話 赤い森 鬼頭家の秘密(書き下ろし):大学教授が解き明かす鬼頭家の秘密とは・・・
となります。本にも「本書は祥伝社文庫書き下ろし『樹海伝説 騙しの森へ』(2002年刊)、『鬼頭家の惨劇 忌まわしき森へ』(2003年刊)に、新たに書き下ろした『赤い森 鬼頭家の秘密』を加え、作者が加筆・訂正をしたものです。」とあります。読み飛ばせばなんていうことはない文ですが、今回の第三話が書かれるまでに7年が経っています。これって凄いことだし、疑問がたくさん湧いてきます。
例えば、2003年に『鬼頭家の惨劇 忌まわしき森へ』が出た時点で、いやそもそも『樹海伝説 騙しの森へ』の執筆にかかった時点で、『赤い森 鬼頭家の秘密』の構想はあったのか。あったとすれば、この7年の歳月は何だったのか。あるいは前二冊はそれぞれ完結している、あるいは二作で完結していたが、『黒い森』を書き終えた時点で、今回のアイデアが湧いたのか、とか。ちなみに、デザイン関係は『黒い森』と同じ川上成夫(装丁)、藤田新策(装画)のコンビです。
一応、この話の中心にいる鬼頭家のことを書いておけば、主人が鬼頭武彦で、樹海の中の山荘に移り住むことでスランプからの脱却をはかろうとしている作家です。妻は眉子、具象的な作風のそれなりに知られた洋画家です。二人には双子の娘がいます。長女はシノブ、次女はユリといいます。最初のうちは樹海近くへの引越しはうまく行ったように見えていましたが、人里離れた土地での生活は、言い出した武彦はともかく、妻の心を蝕んでいきます。
あとは折原の技をゆっくりお楽しみください。ミステリとしての仕掛けには肯きますし、徐々に恐怖を募らせる文章も好きですが、文学的な感動はありません。あくまで、ミステリとして評価されるべき、というところが寂しいです。