紙の本
何かが足りない、それは「ものを作る体験」だ。
2012/09/15 13:40
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
作家としても知られている工学者の著者が、「技術というもの」「物をつくるということ」について綴ったエッセー。『科学の栞』(瀬名英明、朝日新書330)で紹介されていたので読んでみた本の一つである。
「理科離れ」とか「マニュアルどおり」とかいわれてきた近年の若者たち。著者は、学生に設計を教えたりしながら感じたことを通して、どこがどう違ってきて何が問題なのかについての考えを述べていく。軽くさらりと書かれているので、重たいところも軽くさらりと読めてしまうが、じわりと染み込んでジワリと感心する。
著者の考えでは、足りないものは「ものを作る体験」。どんなに知識を持つことができても、自分の体も使わないと自分の手足のように使えるものにはなかなかならない、というところだろうか。情報が多すぎるほどの社会になり、すべてを実際に体験することはできないからいろんなことを他人に任せている。それは仕方のないことだけれども「自分の知っている範囲は限られていること」を忘れるな、という警告でもあるだろう。簡単にわかるためのマニュアル的なものはどんどん増えているけれど、どれも「それを読めばできる」訳ではなく、「それを読んでやってみればわかる(はず)」のものでしかない。
実際に「自分でやってみる」ことは、子供には特に難しくなっているのではないか。遊びで何かを作ろうとしても「危ない」「汚い」と止められることも多い。「これなら安全」「教育的」と与えられるものばかりでは、与えられたもの範囲以上には進まない。ゲームも著者のそんな観点からすっぱりと功罪を断じられてしまう。
体を動かして、体でも考え、工夫し、覚えることは人間が生まれた時から生きていくための基本なのだろう。「ものづくり」は自分の人生をつくること、と最後の方で著者はいうのだけれど、「自分づくり」もある意味「ものづくり」かもしれない。一生モノの。
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技術のこつ・衰退を憂える森博嗣。実際に「物」を使って手で作るということが減っているから確かに困ることも多いと思う。
技術を数値化して平均的な物はできるかもしれないけれど、独創的と呼ばれるような物はできないんだろうなと思ったし、今のトヨタ・ホンダ・ソニーの衰退はこういう所から始まっているのではないかとも思えてしまった。
プログラマとして設計だけできればいいという人も多いかと思うんですが、やはり作ってみないとだめですよ。その上でプログラマも工作者ではない。
その点、Makeなどでいろいろ経験してみるのもいいのかもしれない。
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もの作り(工作)の極意、精神、上達のコツなどを知りたいと思って読んでは行けない本。単に、自分の子供の頃からのもの作りに関する自伝(自慢話)と最近の話をだらだらと述べてあったり、工作に関する著者の思いを綴っているだけ。著者のファンでもなければ読む価値は無いと思う。
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以前、ものを作る仕事に就いていた。後輩を指導して、ものをどう作るのかを教えていたこともあった。その際に毎回思っていたのは、自分がもの作りに悩んでいた時の環境と、他人のそれとはずれがあることだった。その差をどう埋め、どう指導していくかを常に気にしていた。「創るセンス 工作の思考」は、もの作りとは結局どういうことか、というのを簡潔に説いた本である。著者のブログにて時たま見受けられたものがこの本1冊に凝縮されている。
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物を作ることに対する著者の思いが分かりやすく綴られている。私も工作が好きだが、自分よりも上の年代の方々の方が高度な工作を体験されていると感じていたが、これほどまでに年代による差があるとは思わなかった。著者は時代背景を理由に挙げ、個人の責任ではないと言明しているが、このまま放置しておくことで技術者のレベルの低下が不可避であることは自明であろう。子どもの将来を憂うならば親が手本を示さなければならないという思いをいっそう強くさせられた。
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著者が書いている通り、特に深い考察の末に書かれた文章ではないということは、最後のまとめでよくわかる。
いわゆる文章の全体的な完成度、まとまりとしては、正直「もうちょい」感があるが、断片的な内容としては、とても共感できる部分が多かった。
特に印象深かった一文。
「レシピや設計図の数値などは、かなり詳細なデータ化によって、再現性や精度を高めることは可能だが、それは単に『コピーの解像度』の問題であって、ものづくりのセンスではない。」
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工作好きな私にとっては、内容にも納得がいく書籍でした。内容は工作文化に関する事です。著者と私は14歳程度離れていますが、育った社会環境が似ていたのか、懐かしくもありました。
自分時間を増やし、散らかした工作の続きをしたいこのごろです。
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おそらく「センス」というものに対して一番多くの言葉を用いてかかれた新書
その「センス」とはものづくりに対しての「センス」だ
だが結論としてセンスは言語化できない
映像的なものであることもある
でも先天的なものであるとは著者は思っていない
センスは経験である
磨くものである
そしてそれによって目覚めるもの
でもものづくりが好きであること、それに尽きる気がする
失敗することはあたりまえ
好きなら克服できる、その根気があることがまずは大事
++++++++++++++++++++++++++++++++
著者は建築の教授であり一度プログラム(ソフト)で設計してそのあと建築物(ハード)におこす。
そのソフトからハードへの隔たりが最近の若者は苦手だと。
頭が良い子はソフトは得意だがハードになった途端できなくなる。
ハードになったらそれが得意な子にバトンタッチすることになる。
ハードにはハードの経験とセンスがいるからだ。
これってサービスを商売にしている人にとってはどうあてはまるだろうか?
つまり作り手(ソフト)→受け手(ソフト)のプログラマーの話。
まあでも同じなんじゃないかと勝手に推測する。
受け手にウケるにはその経験とセンスがやっぱり必要なんだろう。
そういう風に変換してみるとどんなクリエーターにも当てはめることができる。
センスとはなにか?センスを手に入れるには?それを知りたくなったら読んでみるといいかも。
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思考が垣間見れて、
書かれている小説についてなんだか納得しちゃう本。
そして、
子供の教育論としても興味深い。
個人的には、祖父が製茶機械を生業にしていたこともあって、ものづくりの環境の中に育つことができたから、云わんとしていることはものすごくわかる。
楽しそうにものづくりをしていて、そして凄いものを作ってしまう姿を見たら、子供は本当になんでもできそうだ!とどんどん近寄っていくもの。
実際、私はそうだったなー。
そんな風に、いろんな大人のスゴイを子供が見られる風景を
つくりたいなぁって本当に思う本でした。
それによって、好奇心が芽生えるし、将来の選択肢も広がりそう。
そんな空間をつくるのが夢です(^^
引用は、主に、パクりんちょしたくなる名言たち♪
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[ 内容 ]
かつての日本では、多くの少年が何らかの工作をしていた。
しかし、技術の発展で社会が便利になり、手を汚して実際にものを作るという習慣は衰退し、既製品を選んだり、コンピュータの画面上で作業することが主になった。
このような変化の過程で失われた、大切なものがある。
それは、ものを作ったことのない人には、想像さえつかないものかもしれない。
「ものを作る体験」でしか学べない創造の領域、視覚的な思考、培われるセンスとは何か。
長年、工作を続けている人気作家が、自らの経験を踏まえつつ論じていく。
[ 目次 ]
1章 工作少年の時代(最後の工作少年;TVゲームとパソコンの登場 ほか)
2章 最近感じる若者の技術離れ(心配する能力;理科離れとは? ほか)
3章 技術者に要求されるセンス(コツとは何か;どうしても必要なセンス ほか)
4章 もの作りのセンスを育てるには(なにもかもがつまらない?;楽しさは自分で作るもの ほか)
5章 創作のセンスが産み出す価値(作品の価値;ほかにはないもの ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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1章
・ものを作るときに予期せぬ問題は必ず起こる
・ばらつきを知る
・他人がわからないことを理解することがわかるということ
2章
・慌てない→精神的に安定していること
時間的余裕を作る
・誤差を知ること
・設計はあくまで目安に過ぎない
3章
・悲観してかかる姿勢
・抽象に本来の価値がある
4章
・楽しさは自分で作るもの
・好奇心は目覚めるもの
5章
・ものを作ることは「凄さ」を見つけること,「凄さ」を形にすること
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S&Mシリーズで知られる作家が、モノを作ることによって得られる思考・生き方のセンスについて語った一冊。
現在のテクノロジは高度化が進み、一人で一つのモノを作り上げることが不可能なものがほとんど。技術系の出身でも、模型作りや機械いじりをしたこが無い人が案外多い(自分もその内の一人)。
しかし、どんな小さいモノでも自分で作り上げる、それを繰り返すことによってしか培われないものがある。それが本書でいうところの「センス」。それは、「想像力」と言いかえられるものだと思う。
作業行程の全体を見通し、行程中の困難を予想する。様々な失敗を繰り返し、ケーススタディを重ねることで自分なりの方法論を身につける。一般的な「仕事」の経験と重なる部分があるが、本書でいうところのモノ作りは非常にパーソナルなもの。また、失敗すると、その痛手が文字通り目にみえるということ。
昔(30・40年前)の少年達は、そのような経験を通してセンスを磨いてきたのだろう。
本書には「モノ作りのセンス」は「生きるセンス」に通じるとある。昔の人たちのバイタリティは、自らの力で色々なモノを作ってきたことにあるのではないかと思った。
技術的な仕事に従事している人は、自分の仕事のやり方について省みるきっかけになる一冊。
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・ようするに、技術というのは、このような自然のばらつきを知ることであって、人間や生物を扱うこととまったく同じなのだ(違いがあるとすれば、ばらつきの大きさの差異だけである)
・「わからないことを理解すること」が、本当の「わかること」なのである。
・もって生まれたセンスの大部分は、「想像力」である。
作ったものがどのように機能するかのといった結果が、あるいはどのように作っていけば良いかといった過程が、映像的にイメージできる。
・工作というのは、基本的に不可逆的な行為であり、必ず部分的な破壊を伴うものだと理解いただきたい。
・目に見えるものの方が実はどうでも良い部分、つまり「装飾」であり、ものごとの価値は、その内部に隠れて見えない「本質」にある。
・自分の人生が、つまりは毎日の工作と同じだ、と気づくことになるだろう。だから、工作のセンスは、そのまま「生きるセンス」になる。
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新しいメディアーコンピュータのため、「工作」の機会が減った。その様な革命的なメディアとして書物もあげられている。これらは悪い事ではないが、それらメディアでは表現できない様なことへの問題のを取り上げている。
例えば、将来の家に窓がなくなり、代わりに外の映像を映し出す液晶がつけられたとしよう、窓が枠にうまくはまらないといった様な感覚は失われて行く。このような感覚について書かれた本である。
ものづくりは「うまくいかないことが普通」、「こうすればうまく行く」と教えたこと、また鵜呑みにした事が間違い。
ものづくりのセンスとしては、「悲観してかかる」心配性が基本姿勢。また、トラブルの原因を特定するための試行。現場にあるものを利用する応用力、最適化を追及する応用力。が要求される。
それらを育てるには、まず自分がやって楽しむこと。それをみると子供は興味を持つ。
またそれらをのセンスを応用しよう。
「作る」という行為は自分の思考を外部へ出す(アウトプット)行為である。その行為に他者への存在を意識しており、評価とかも、究極的には創作の価値は「人間の凄さ」である。
このほんの中での気づきは、工業と芸術、違いは作ったものに価値を見出すか、作る過程に価値を見出すかである。
全体の感想として、自分で先づ作ってみよう。
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自分自身,化学,物理学を大学のとき学んだ。
自分で研究すると分かる。実験は想定してたとおりにはいかない。
この温度で進むはずの反応が進まない。想定していたものと違うものができる。
現実世界には,非常に多くの変数がある。自身の手先の器用さも変数に影響を与える。
それらがどのように作用しうるか,そのような感覚は経験からしか得られない。
書を読めば知識は蓄えられる。しかしそれらは個別の事象にしか対応しえない。
もう少し抽象的に,普遍的な,再利用可能なものとするうえではどうしても経験が必要となる。
きっと子供の時には分かっていた。
いつのまにか忘れていた。
読む量は減らそう。必要なのは経験。
失敗しよう。
思い切ろう。
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読んでいないなあ~工作少年が小説を書いて好きなだけ工作趣味に没頭できるかというとそうでもなく,過程を楽しむために工作する。それがセンスを磨く~同世代として通じる部分があるけど,今の若い人達には?