紙の本
ネット上で進む帝国主義からジャーナリズムと文化をどう守るか
2011/04/24 19:27
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MtVictory - この投稿者のレビュー一覧を見る
米ネット企業のサービスを無邪気に礼賛するのではなく、ジャーナリズムや文化、国益から考えよう、という書。 Google検索を初めとして、ネット上のサービスの多くは米国企業により提供されている。本書ではネットにおける米国支配、米国依存の進展を警告している。著者はそれを米国ネット企業による「帝国主義」と捉えている。マクロの観点、国益の観点からネットの現状を批判的に考えてみようとしている。
「タダほど高いものはない」というように、ニュースなどのコンテンツがネットで無料で入手できる。それが当たり前になってしまっていることで、コンテンツ提供側としては一方的なコスト負担により苦境に立たされている。それにより最終的には我々は「ジャーナリズムや文化の衰退という形で中長期的に大きな対価を負担させられることになる」と言う。こうした状況を放置せず、何らかの形でコストを負担し、収益を分配する仕組みを構築することが必要なようである。
また、海外のネット企業とも競争力のある同様のサービスや手段を国内に持つことは、安全保障の観点からも重要だと説いている。今、流行のクラウド・コンピューティングについても注意が必要だとしている。グーグル、アマゾン、アップルなど米企業のビジネスに我々日本人もうまく乗せられている。この過度な依存状況は果たしていつまで続くのか?
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流通独占と無料経済による「文化とジャーナリズムの衰退」と「米国による世界支配」が、いかに危機的な状況であるかが解説されている。
ネット経済で一番利益を得ることができるのは「プラットフォーム」。プラットフォーム産業の利益が増えるに従って、コンテンツ産業の経営は悪化し、文化は衰退していく。さらにプラットフォームのほとんどが米国企業という・・
web上のメディアでは、こういったネット上の自由を否定するような考えは、既得権益扱いされてほとんど黙殺されてしまうので、この本に書かれている考えに触れることは重要。
ぼくのような一日の大半をネット上の社会で過ごしている人間にとって、「国益」なんていうのは古い考えかたじゃないかと思っていたけど、日本のコンテンツ産業が衰退するのは確かに悲しい。
まあ、いづれにせよ、ぼくら日本のweb業界の人間が頑張らなければということだ。
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既存のメディア大崩壊を喧伝する本を読んで溜飲を下げている人も、
「基本に立ち返って、面白いコンテンツを作ることに取り組むべきだよ」なんて言ってる人も、
まずは、この本を読むべきです。
いま起こっていることは何なのか、何が問題なのか、
極めて冷静な視点から、簡潔な文章で分かりやすく綴っています。
そこに派手さがないだけに、
一見なにも新しいことを言ってないように見えるかもしれないけれど、
この立ち位置、視点から、語っている人には初めて出会いました。
必読の一冊です。
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+++ ヒットしたフレーズ +++++++++++++++
・ネットが引き起こしている2つの社会的問題。1つは、民主主義を支えるインフラである「ジャーナリズム」と社会の価値観を形成する「文化」が衰退しつつあること。もう1つは、ネット上での米国による世界制覇。
・音楽の違法ダウンロードは万引き。
・身の回りのモノやサービスが米国製ばかりになったら大騒ぎするのに、情報の多くを米国に依存しているのに問題視する人が少ない。
・ネットのレイヤー構造。①端末→②インフラ(NTT、CATV等)→③プラットフォーム(Google、アマゾン等)→④コンテンツ(TV、新聞、出版、音楽、映画等)。
・かつては「コンテンツが王様」といわれていたが、今はプラットフォーム企業に流通を押さえられてしまった。
●同時多発テロを受け、45日後に成立した「米国愛国者法」。当局は当局はプラットフォーム企業に対し、サーバーに蓄積されている情報の提供を求めることができる。フリーメール、無料アプリ、検索履歴等の蓄積情報は安全ではない。
●「他国を押し倒す」ハードパワーに加え、「他国をひきつける」ソフトパワーが重要。検索サービスに手を加えることで、米国に有利になる情報から出るようにすることも可能。
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昨年話題になった、トーマスフリードマンのグリーン革命(上)を、日本の視点からIT業界に置き換えて描いたような一冊。
クリスアンダーソンのフリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略が、昨今のフリーミアムという動きを、
ユーザーのメリットという側面から描いているのに対し、
本書はマスコミをはじめとするコンテンツ産業のデメリットという反対側の側面から描いており、
古いようで新しい視点である。
TV、新聞、雑誌の凋落などと、暗い話題の続くマスコミ業界の人には、打開策のヒントが詰まっている良冊。
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グーグルの繁栄の陰に既存の新聞 マスメディアが衰退してゆく。一国のテインターネット検索というインフラがアメリカ企業に独占されてよいのか。
立ち遅れている日本のネット戦略に警鐘をならす
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少数意見であって正しい訳でもないと思う。
先ずネットとはインターネットを指すとしている。米国のIT企業が繁栄し帝国を作っている、と考える。
今やジャーナリズムや音楽などの文化が崩壊していると主張する。新聞社の売上が減りCDが売れなくなる。音楽がダウンロードされるからだ。
> AO: ダウンロードされても売上になる。新聞が売れないのは読者が買わないからで売れる記事を欠くべきだ。契約記事なら新聞が有利だ。日本がグーグルにやられる等という話しは自業自得なのだ。
> AO: 日本がやられている?戦略も提案も無い負け犬論だ。
> AO: 中国ですら自動車が自転車を駆逐している。
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2010.06 ネットビジネスのプレイヤーの階層とそれぞれの現象がわかった。シンプルでわかりやすい。
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正直。読んでいて結構いらいらした。いや。言っていることはしごくもっともなのだけど。今のマスメディア守る必要はどこにもない。すごく護送船団的な発想に見える。まぁ。役人だから仕方ないのか。いや。文化はプロがつくるんだっていうのは、ちょっと傲慢な感じもするんだよな。守らないといけない、と思うかどうかは、その時代の人たちが決めることであって。新聞だって、本だって、出はじめはけなされてたわけだから。文字だってそうだったみたいだし。まぁ、それもわかってるっぽいから余計イライラするんだろうな。
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岸博幸『ネット帝国主義と日本の敗北ー搾取されるカネと文化』
(2010)を読む。
一読すると、グーグル、アップル、アマゾンなど
インターネットの世界をリードしてきた企業を
アメリカのネット帝国主義と結びつける趣旨かと思う。
しかし、読み込んでいくうちに
そう単純な結論でもなさそうだと思い直す。
フリーミアムの時代を活用する個人利用者の視点でなく、
1. 日本という国家がインターネット時代に
どんな戦略を持ち行動すべきか。国益に合う道はどこか。
2. 社会に必須であるジャーナリズムと文化が
プラットフォーム企業による利益独占により
危機に陥っている。どう回避すべきか。
この二点の考察に耳を傾ける価値があると判断した。
岸は森総理のIT戦略本部で "eジャパン戦略"の原案を作成。
その後は、竹中総務大臣の政務秘書官として
小泉内閣の構造改革の立案・実行に関わる。
現在は、慶大大学院メディアデザイン研究科教授であり、
エイベックス・グループ・ホールディングス取締役である。
(以上、本書の著書プロフィールから抜粋)
著者は言わばインターネット国際戦争における
日本国の参謀を勤めた人である。
責任ある立場から「日本の敗北」について
総括、提言した本として僕は本書を読んだ。
確かにインターネットや情報端末を使いこなす個人としては
これまでになかった可能性が開かれているのが現代である。
人類コミュニケーション史上、
もっともスリリングな時代を私たちは生きている。
一方で、コンテンツ、ジャーナリズム、文化を創造する
プロフェッショナルの立場からは
個人としても組織としても存亡の危機に置かれているのが
いまである。
個人として便利であるというだけで思考停止するのは
確かに危険だ。
同時に社会、国家の視点から風景を眺め、
分析して考える必要がある。
マクロの問題はどこかで誰かが考えているだろう
と他人事にしがちだ。目先の利益も見えづらい。
重要だが、つい他人事になるマクロの視点を
岸は環境問題にたとえて説明する。
ウェブ時代の昂揚に水を差すかのような印象の本書も、
俯瞰から時代を眺め、思考の材料にするなら
有益な一冊になりうる。
(文中敬称略。政治家の肩書きは当時のものを使用)
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日経トレンディネット推薦
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/special/20100806/1032599/?P=5
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よくありがちなインターネットやGoogle賛美の観点ではなく、マクロな国益の観点からインターネットの現状を批判的に捉えた良著。
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プラットフォームレイヤーはもうかる。コンテンツレイヤーはもうからない。
イタリアはハードパワーは強くないがソフトパワーは強い。イタリアを見習うべきだ。
アメリカによる情報支配。こんなことは戦後から同じ。
ICT以外の環境、ヘルスケア、教育といった分野を伸ばすにあたってもICTの働きに期待するという構図になっている。
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[ 内容 ]
今ネットの世界では、グーグル、アマゾンなどに代表される米国ネット企業だけが莫大な収益を上げ、一人勝ちしている。
これらの企業は、オバマ政権の後押しも受け、その帝国主義的拡大をさらに押し進めている。
一例であるグーグル・ブック検索の問題では、ヨーロッパ各国政府がグーグルの提示した和解案に反対の姿勢を明確に示し、国家の威信をかけた抵抗が始まった。
このままでは、いつまでも毅然とした姿勢を示さず政策を間違い続ける日本だけが、カネと文化を搾取されてしまう。
国益の観点からネットの危機的状況を初めてあぶり出す。
[ 目次 ]
第1章 ネット上で進む一人勝ち(ネットがもたらしたプラスとマイナス;ネット・バブルの歴史;ネット上のサービスの構造)
第2章 ジャーナリズムと文化の衰退(新聞の崩壊;音楽の崩壊;社会にとってのマイナス)
第3章 ネット上で進む帝国主義(米国の帝国主義を助長するエコシステム;プラットフォームの米国支配の問題点)
第4章 米国の思惑と日本が進むべき道(グーグル・ブック検索;米国の戦略と野望;ネット上のパラダイムシフトの始まり)
第5章 日本は大丈夫か(プラットフォームを巡る競争の激化;ジャーナリズムと文化をどう守るか;日本はどうすべきか)
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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期待ほどの内容ではなかった。
米国プラットホームレイヤー企業による世界の席巻。
その状況により、各国のコンテンツレイヤー企業の利益が搾取されているという。
新聞業界、音楽業界を例にジャーナリズムと文化の危機的状況を謳う。
以上の内容が広く浅く展開されている。
ジャーナリズムも文化もインターネットの中での衰退が語られているが、それらの衰退は決してインターネットによるものではなく、他の視点からの影響も小さくないはず。
きっと言いたいことは深いのだろうと思うが、例の挙げ方がまずく、読者にそれが伝わってこない。