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商品説明
20XX年、掃除は日本固有のスポーツとして連綿と続きつつも、何らかの理由により統制下に置かれていた。高校で掃除部に所属する樹は、誰もが認める才能を持ちながらも、どこか冷めた態度で淡々と掃除を続けている。しかし謎の美少女・偲の登場により、そんな彼に大きな転機が訪れ—一級世界構築士三崎亜記がおくる奇想青春小説。【「BOOK」データベースの商品解説】
20XX年、掃除は日本固有のスポーツとして連綿と続きつつも、何らかの理由により統制下におかれていた−。高校掃除部を舞台に描く「どこにもない王道」のスポーツ小説! 『野性時代』掲載を加筆・修正し単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
三崎 亜記
- 略歴
- 〈三崎亜記〉1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。2004年「となり町戦争」で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。ほかの著書に「廃墟建築士」「刻まれない明日」など。
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紙の本
目の前で駆け巡る人物たち!!
2012/01/24 11:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:小金魚 - この投稿者のレビュー一覧を見る
三崎亜紀ファンにはたまらない作品であること間違いナシ!!
しかも、今までの作品とは格段にその想像力のスケールが違う。
まず、「掃除」という架空のスポーツがしっかり細部まで作りこまれていることに驚いた。この驚きは、ハリーポッターシリーズの「クディッチ」以来の衝撃だった。しかし、日本的な雰囲気のスポーツであること、世界各地域で異なるスタイルがあることなど、「クディッチ」以上の作りこまれ方だと感じた。
また、登場人物たちは動きをとらえるのが大変なくらい、様々な動きをする。もしこれが映画化、などという話になればかなり大変なのはもう、明らかだ。
三崎亜紀さんの本は、何度も読み返せる作品ばかりだと思う。でも、この本くらい、読み終わったとたんに、もう一度読見たいと思ったのは初めてだ。読み深めて、さらに登場人物たちのスムーズな動きを感じたい。自分の中で登場人物たちをスムーズに動かせるようになるには、少しコツ?修行?が必要な気がする。
紙の本
「掃除はキライ、埃じゃ死なない。でも掃除部には入りたい。」とムスメが言う。DNA鑑定などしなくても、我が子だと実感する。読後感想を語り合えるだけ幸せか…。
2010/06/21 11:01
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はりゅうみぃ - この投稿者のレビュー一覧を見る
毎日毎日、雨が降る…。
こんなお天気じゃ掃除も出来ないもんね、などと、都合のいい大義名分を用意しつつ、読書タイムに突入する。
近頃のお気に入りはコレ。ジメジメ気分を吹き飛ばす、痛快青春小説、三崎亜記さんの「コロヨシ!!」である。
この作者の描く世界は独特だ。
平凡な日常生活の中に、一点だけドでかい荒唐無稽をほおり込んで、素知らぬ顔で淡々緻密にストーリーを語っていく。あまりに見事な素知らぬ顔ぶりに、初めは激しく戸惑って、まるで、見知らぬ町で独り取り残されたかのようなオロオロ感を味わうが、落ち着けばまわりは見えてくるもので、見えてきたら今度は景色の非凡さに魅了され、気づけば他作まで追いかける立派なファンのいっちょあがりとなる。←私のことです
いくつか作品を読むと、更に違う景色が見えてくる。
作者の描く「荒唐無稽」、廃墟をわざわざ建築したり、「町」が消えたり、鼓笛隊が襲ってきたりと、一見ナンセンスなピラメキに思えてしまうこれらのモチーフで、作者が浮かび上がらせたいのは、作者の考える「人」の定義なのだなと、分かるのである。
「建物」は人を厄災から守るために構築するもの、その建物が集まれば「町」となり、町が群れると「国」になる。
人嫌いと公言する人でも、大洋の無人島ではなく「人」が作った建物に住み、「人」の提供したライフラインや娯楽を利用し、ルールに従い生活を送る。
縛られたくない、自由になりたい、と言いながら、枷多い「町」の暮らしを選ぶのは、本当の自由が寂しさとイコールであることを知っているからだ。
束縛があって、初めて自由を満喫できる「人」。もう、ケモノには戻れない。
「構築」と「集合」は作者の考える「人」の証し、様々な荒唐無稽・構築と集合を描くことで、そこに浮きだす虚の中の真、泥の中の玉、不変の「是」なるものを伝えてくれる。
と同時に、人として生きる読者に「是」、それでいいんだ、安心して?と伝えるためにも作品を書いているように思うのだ。
だから、微妙にシュールな世界をたっぷり読まされても、読後感はいつも爽やか、時に暖かいものでいっぱいになる。作者はいつも、欲しい言葉をくれるから。
作者初の王道青春小説だという、この作品も同じだ。
「掃除」という謎の競技やら、部活やら国家の陰謀やらと、「団体」「仲間」「競技」「学校」「国」という人の集合に、荒唐無稽と日常を折り込みながら、作者の思う「是」を描く。
この世に絶対にないと言い切れる世界なのに、ビジュアルまで浮かぶほどはっきり理解できるのは、毎度の卓越した構築手腕と、もう一つの作者の魅力「言葉の妙」が、今作では特に光っているからである。
言葉とは文字の集合とも言えるが、これまでバラして再構築するのが、作者の作話の根源とも言える。
ビルにある7階、ではなく 7階のあるビル。
本を「納める」図書館ではなく、本を「治める」図書館。
守る蔵ではなく、蔵を護る。
そして、今作の主人公の高校生・樹。
高校の掃除部に所属している彼は、突出の才能を持ちつつも、なぜか競技に夢中になることが出来ず、周りに流されるまま漠然と部活動を行っている。が、良き仲間、ライバル、師を得て、パートナーと共に、己と技を磨こうと懸命に生き始める姿を描いたのが今作だ。
「掃除」というスポーツがキテレツである他は、まさしく青春スポ根小説。必殺技や陰謀、ほんのり恋心まで出てきて、わくわくと大変面白い。
が、この「掃除」という競技こそがクセものだ。
謎の競技「掃除」は、武道のような、フィギュアスケートのような、不思議な競技だが、間違いなく家事の「掃除」でもある。
家事・「掃除」とは、舞う埃を集めて綺麗にする行為、磨き上げられた床や窓を見て誇らしく思う作業である。結果、人は美しい住まいで健やかに暮らせるのであるが、これを作者のもう一つの魅力で料理すると…。
誇り(ホコリ)を懸けて舞い、舞う塵埃(ホコリ)を回収する。そのために床を磨く技に、磨きをかける。
…のが競技・「掃除」というわけだ。ぷっ、わはは、ダジャレギリギリ!
今作はストーリー的には第一部、「国技」のない「この国」と掃除の関係をほのめかして終了しているが、もし掃除が国技になったなら…国民が国の保護で技を磨き、結果「美しい国」が生まれることにならないか。もはやダジャレではなく風刺に近い。
マツリゴトとは、祭り事でもあり、政つり事。
作者は、ダジャレかいなと思えば笑える言葉遊びの余裕を持って、構築と集合を賞賛している。
「遊び」という言葉が、遊興と勉学の二面の意味を持つことを考えれば、この作者は物語を書くように生まれついた、としか思えない。
オモシロ仕込みは他にもまだまだある。
独特の景色鑑賞、王道スポ根の楽しさの他に、隠しアイテムやボーナスステージを探すようなお楽しみのおまけ付きというわけだ。作者からの挑戦状と言えなくもない。
悔しいことに、私も全部は見つけられていない。だから、また読んでしまう。現在連載中の第二部を読めば、きっともっと見つかるだろう。そして、見つけた仕込みを誰かに話したくなる。
だって私も、町に住んでる「人」だもの。
雨が上がった。
梅雨の合間の貴重な晴れ間だ。気が進まないが、我が家も掃除しないとね。
掛け声でもかけて、気合入れるか!どっこいしょ、ではなく、「頃良し!!」と
紙の本
競技は「掃除」。しかし、普通の掃除とはまったく違う!
2011/05/26 09:05
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る
三崎亜記は現実をちょっとズラした世界を作り、そのズレの中にリア
リティを生み出すユニークな作家だ。そんな三崎が、なんと青春スポー
ツ小説に挑戦。しかも、競技が「掃除」というのだから興味は募る。
さて、その「掃除」だが、長物(ながもの)という道具を使い、舞い
上げた塵芥を回収するという採点競技。しかも、この競技、なぜか「国
家保安局」の管理下にあり、高校の掃除部に入ると「特定管理スポーツ
従事者名簿」なんてものに登録されてしまう。なんだか謎の多いスポー
ツ?なのだ。うたい文句は、スポーツもの、青春もの、ではあるけれど
「国家統制のスポーツ」というのは従来の三崎ワールド。けっしてこれ、
新境地ではない。今までの作品に登場する「居留地」「西域」なんて場
所も登場する。初めて三崎亜記を読む人にとっては、物語の世界を広め
るうえで有効なのだろうが、ずっと読んでいる人間にとっては反対に世
界を狭めてるようで「それはもういいから!」と言いたくなってしまう。
主人公は高校生、藤代樹。彼の周りにも謎が多く、物語が進むに連れ
てさらに謎は深まる。本当に物語が動きだし、おもしろくなるのは少し
だけ謎が解け、さらに多くの謎が生まれる最終盤。これからって時に終
ってしまうのだが、やはり続編があるらしい。そうかぁ…、では続編に
期待!あっ、コロヨシは「頃良し」。「掃除」開始時の一声!
紙の本
三崎亜記さんの新境地は、怪しげで危険な雰囲気を街を舞台とした「青春小説」
2011/06/29 16:45
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YO-SHI - この投稿者のレビュー一覧を見る
これはハマってしまった。著者の作品を何冊か読んで、「なるほど三崎亜記さんは、こういう物語を書くのだな」などと、何か分かったような気でいた。しかし、本書は私が思っていた三崎作品とは全く違う物語だった。
主人公は高校2年生の藤代樹。「掃除部」に所属している。そう、本書では「掃除」はスポーツになっている。「長物」という棒状のもので、「塵芥」という羽根を扱う演舞で、芸術性や技術の高さを競う。彼は、昨年の新人戦で優勝し、今は掃除部のエースになっている。
主人公を一人紹介しただけで、ちょっと設定が風変わりなものの、本書がいわゆる「青春小説」だと想像する人は少なくないだろう。その通りだ。樹は、仲間に支えられ、友情を育み、家族と葛藤し、挫折を乗り越えて成長する。もちろん淡い恋もする。本書には「青春小説」の要素が詰まっている。
しかし、普通の青春小説とは一味違う。それは舞台となる世界のせいだ。現代の日本のようで、少し軸がズレたような異世界。「西域」「居留地」といった地名や習俗から、「失われた町」の舞台と同じ世界であることがわかる。そして、その怪しげで危険な雰囲気が、そのまま引き継がれている。「あの街に「爽やかな青春」は似合わないでしょう?」と思うのだが、これがうまくハマっているのだ。
ただ、この物語を単純に「青春小説」だと思ってしまうと、設定や背景に違和感を感じてしまうだろう。近未来SFであり、ミステリーであり、ハードボイルドの要素もある。「失われた町」と同じで、この「多ジャンル性」もしくは「無ジャンル性」が、本書の強みにも弱みにもなる。これらをひっくるめて全体として「三崎ワールド」が姿を現しつつある。