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商品説明
【大佛次郎賞(第37回)】ロシア人はどのようにして日本の北辺を騒がせるようになったのか。ロシア・アイヌ・日本の三者の関係をとおして、北方におけるセカンド・コンタクトの開始を世界史的視点で捉える。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
渡辺 京二
- 略歴
- 〈渡辺京二〉1930年京都生まれ。法政大学社会学部卒業。日本近代史家。河合文化教育研究所特別研究員。「北一輝」で毎日出版文化賞、「逝きし世の面影」で和辻哲郎文化賞を受賞。
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紙の本
近藤重蔵って、有名人なんですねえ、こんな本にも登場する。私としては、『北門の狼 重蔵始末〈6〉蝦夷篇』もいっしょに読めば、楽しさ倍増、なんて思います。知っているようで、案外知らない黒船前夜・・・
2010/12/08 19:20
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
渡辺保『江戸演劇史』『歌舞伎の見方』でも書いたんですが、『逝きし世の面影』を読みかけたままにしてあるものですから、江戸で渡辺、とくると、渡辺京二しか思い出さない。で、二人を混同して、あ、やっぱり歌舞伎にも興味があるんだ、流石、江戸時代研究の第一人者、なんてとんでもないことを思ってしまう。で、確認のためネットで『逝きし世の面影』を検索したんです。
まそっちは、順調に行ったんですが途中で面白いものにぶつかりました。それは、『逝きし世の面影』を最初に出した葦書房のHPの〈「逝きし世の面影」絶版 再度のお知らせ 07/2/15〉という文章です。長くて、前文を引用できないので、一部を省略して写しておくと
*
「逝きし世の面影」絶版については、すでに05/6/8に当ページ(下部に掲載)にてお知らせしておりますが、本日、あらためて絶版にしたことをお知らせいたします。先日、地方小さんから2/11付け某新聞(新聞名は不明)に掲載された、逢坂剛氏の「逝きし世の面影」を絶賛した書評添付で、在庫の有無の問い合わせFAXをいただきました。同書評には版元として当社葦書房の名前のみが記載されていましたので、当社で重版したのかとの誤解をもたれたのかもしれません。その後、書店さんからもご注文のFAXが届いおります。その都度絶版にしたことと、現在は平凡社ライブラリーとして文庫化されているとのご返信を差し上げていますが、今後も当社にご注文がくる可能性もあると思われますので、再度、絶版にしたことをお知らせいたします。悪しからず、ご了承ください。(07/2/15 久本福子)
(中略)
02年10月にわたしが葦書房の経営を引き継いだ当時は、三原時代に増刷した『逝きし世の面影』9刷分がほとんどそのまま倉庫に残っておりました。しかし02年の年末頃から03年の年明けにかけて動きが活発化しはじめ、以降、注文は途絶えることなくつづいておりましたが、平凡社から版権譲渡の申し入れがあったのは、ちょうどその頃のことです。9刷分の在庫の山も半年余りで見事に消えてしまいましたが、それでも注文が絶えず、同年10月に10刷目を重版しました。
しかしこの10刷も半年ほどでなくなりました。当然11刷も重版する予定で書店をはじめ読者の皆様にもその旨お伝えし、待っていただいておりましたが、予定がどんどん延びて、在庫切れが1年以上もつづくという事態にまでなております。なぜ売れる本なのに重版しないのかと思われるかもしれませんが、ある時期から売り上げが急減しはじめ、資金繰りの目途がまったく立たない状況にあるからです。02年9月末の代表交代時には全新聞に大騒動として報道され、かなりのダメージを受けての再出発でしたが、売り上げが急減するなどいうことは起こらず、巨額負債もあえぎながらも返済しつつ、新刊や重版も何冊も刊行してきました。
しかし突然の売り上げ減に見舞われ、その回復もすぐには望めないと思われますので、やむなく当初は怒りをこめて断った平凡社に対し、本年05年3月24日に、こちらから版権譲渡を申し入れました。しかし今日までその事実を公表できずにきたのは、当社への信用失墜を恐れたこともありますが、上に述べたような心情的なふっきりがなかなかできなかったからです。実は、今日は久本三多の命日に当たります。霊を弔うには悲しい出来事ですが、三多への報告もかねて皆様にお知らせ申し上げます。
長らくお待たせいたしましたままで、絶版のご報告をしなければならずほんとうに申し訳なく存じますが、ご容赦ください。なお平凡社からは今年の末か来年早々に平凡社ライブラリーとして出版される予定だとのことです。
●平凡社から刊行 『逝きし世の面影』が、9/9に平凡社ライブラリーとして刊行されます。2、3日前、平凡社から同書が送られてきましたのでお知らせします
*
というものです。いや、脱線だろ、って言われると、そういえないことも無いんですが、ロングセラーを持っていても、他のものが売れない出版社経営者の苦悩が伝わってきて、多くの人にHPで全文を読んでもらいたいなあ、って。えへ、だけじゃあないんです。実は、今回の『黒船前夜 ロシア・アイヌ・日本の三国志』、タイトルからは想像できないんですが、『逝きし世の面影』の続編なんです。
げ、です。だって、『逝きし世の面影』という題に溢れる郷愁、過去に寄せる想い、なんていうのは『黒船前夜 ロシア・アイヌ・日本の三国志』のどこにも無いじゃありませんか。しかもです、経営が持ち直したらしい葦書房でも、版権を受け継いで平凡社ライブラリーとして20刷以上増刷している平凡社でもなく、洋泉社からの出版です。コミックスの白泉社じゃありません、趣味のムックを出したり、歴史関係の新書を出している出版社からです。
いや、きっとここにも隠れたドラマがあるんだろうな、なんて思います。葦書房、平凡社、洋泉社、そして渡辺京二のあいだに何があったんだろう、って。もう民主党の小沢、鳩山、管、検察に匹敵する隠された綱引きがあったんだろうな、なんてね。つまりです、葦書房の久本福子の文章を長々と引用するにはするだけの理由というか繋がりが『黒船前夜』にはあるんです。ああ、疲れた。ちなみに私、葦書房からでた渡辺京二『江戸の幻景』を読んでいるのです、完忘でしたけど・・・
さて、装丁の間村俊一、装画の中村賢次は悪くはありません。ただ、帯に
*
ロシア・アイヌ・日本の三者の関係をとおして、北方におけるセカンド・コンタクトの開始
を世界史的視点で捉える。――異文化との接触で生じる食い違いなどエピソードに満
ちたこれこそ人間の歴史! 渡辺史学の達成点を示す待望の書、ついに刊行!
名著『逝きし世の面影』から十余年…。
いま漸く、その続編が書き継がれた!
*
と書く以上、もっと『逝きし世』を継承したデザインの方がよかったんじゃないか、って思います。ま、その時、すでに絶版となった葦書房版に倣うのか、現在も版を重ねる平凡社版を受けるのかで、かなり雰囲気が違うし、第一、本の大きさ、違うし・・・。ともかく、これを続編と位置づけなくてもいいかな、なんて思ったりもします、はい。
知っていること、知らないこと、色々ありますが、個人的には、近藤重蔵が登場するのが面白いです。ま、私のように小説命みたいな人間しかいないわけではないので説明しておくと、逢坂剛が書き続けている幕末を扱った時代小説に重蔵始末というシリーズがあって、その六巻が『北門の狼 重蔵始末〈6〉蝦夷篇』です。これと船戸与一の『蝦夷地別件』を併せて読めば、固有の領土なんて実にいい加減なものだな、なんて思います。勿論、北方領土だけじゃなく、沖縄も尖閣列島も同じようなものなんだろうなって。脱線ばかりの評になりましたが、十分面白い本ではあります。
紙の本
黒船前夜の日本を動かしていた「天命の思想」
2010/05/04 20:08
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る
ペルリ率いる黒船が襲来するしばらく前の時代のロシア、アイヌ、日本の交渉を描くこの本は、1)アイヌの人々の類まれな人間性と高貴なまでの文化的生活、2)強権南下侵略国家という通説を打ち砕くほとんど牧歌的なロシアの蝦夷地への接近、3)前記2項に対してきわめて柔軟かつ賢明に対応していた江戸幕府と松前藩の役人たちの存在、をいくつもの例証をあげながら教えてくれるという点できわめて有益です。
とりわけロシアから交易を求めてやってきたラクスマン、レザーノフ、ゴローヴニンと本邦とのかかわりについて述べた箇所は、下手な小説より興味深いものがあります。
文化三(一八〇六)年、長崎でいたずらに時間を空費させられて激高したレザーノフの指示で、彼の部下が北方各地の幕府勢力の拠点を焼き払い、多くの日本人を殺傷すると、その報復として幕府がゴローヴニンを拘留し、それに対抗したロシアがあの「ウラーのタイショウ!」高田屋嘉兵衛を捕まえます。
当時としても、また現在から考えても稀に見る逸材であったこの商人と交換に、捕囚ゴローヴニンが釈放され、ここに日ロ関係はめでたく一件落着となるのですが、不幸なことにこの段階で、日本はロシアに対する交易友好の可能性をみずからの手で封印してしまったのです。
歴史に「もしも」はないのですが、それでもあのとき「ほんのちょっとした偶然」が手助けしていれば、倒幕勢力による尊王攘夷運動のシュトルムウンドドラングをさかのぼることおよそ50年前、近代ナショナリズムが誕生し列強の砲艦外交が開始される以前に、徳川幕府のイニシアチブのもとで、平和裏に、日ロ修好通商条約を締結するチャンスがあった、と著者がいうのですから、これが実現していればその後の日本と世界の歩みは通史とは大きく異なっていたはずです。
それにしてもこの時代にはペルリ時代と比べてなんと優秀でユーモアを解する人々が大勢いたことでしょう。
幕閣に対して「ロシアと日本の蝦夷地の紛争を解決するには国家の一大事よりも天よりの評判が一大事」と平然と天命・天道思想をもちだす松前奉行、日本のためロシアのためよりは「天下のために」この紛争を解決しようと命を投げ出した一介の商人の「天の思想」は、その後西郷隆盛の「敬天愛人」を経て夏目漱石の「則天去私」の思想につながり、現在もなお私たちの倫理を人間存在の地下で根深く支え続けているのではないでしょうか。
♪MGMのライオンのごと吠えることわが唯一の特技なりけり 茫洋