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商品説明
出版界からはみ出したキャリア20年の小説家が漂着したのは、閉店目前のユルくて荒れたコンビニだった!悲喜コモゴモ、憤怒バクハツの店員サン体験記。【「BOOK」データベースの商品解説】
東京は葛飾・高砂の落ちこぼれコンビニで、漂泊の作家は何を見たのか!? 出版界からはみ出し、50代半ばにしてコンビニでバイトをすることになった乱歩賞作家が綴る、悲喜コモゴモ、憤怒バクハツの店員サン体験記。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
へこたれないよ!!
2010/05/18 09:10
10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:りっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
東京新聞の「へこたれない人々」欄で森雅裕の名前を見て、「ん!?」。懐かしいなぁ。図書館でよく借りました。芸大出身のソプラノ歌手、生意気でいて、スタイル抜群、根が優しくて、頭もいいし、性格悪い、いえ、強いし、大好きだった。お相手の男性との会話がなんとも楽しくて・・・シリーズものになるかと思っていたのに、刀ものになって、その後がなく、どうしてかなぁと思っていたのだった。
著者本人が「生意気」だから干されたんだって。えーっ。私は大昔のか、外国物の推理小説しか読まない。今の日本のはあまり面白くないのだもの。ロマンがないというか、生身の人間が見えないというか。例外的に、この人のはすごく面白いと思っていた。有能な人を干すなんて、もったいない。だから本が売れなくなっちゃうんだよ。
この本は残念ながら推理小説ではない。ホームレス一歩手前で、必死に就活して、何とかコンビニの店員さんになったものの、若い人たちとの夜勤は身に応えるし、客層は荒れているし、啖呵をきりたくてもそこは「お客様は神様です」の上の指示に従わなくては、飯が喰えなくなる。つらいねぇ。
乱歩賞作家なんて肩書きが付いているのにコンビニのオジサンをやるのは、これまたつらいものがあるかも・・・
それでも真面目(???)に働くのです。何とかお店が存続できるように、頭も使うのです・・・
「雰囲気を一新するとか、他店との差別化を図るとか、地域の特性にそった品揃えをするとか・・・」。コンビニ教育の経験者も、乱歩賞作家も、「旧日本軍が大学教授も小作農も同じ一兵卒として招集した愚行」同様、使い捨て。「50過ぎてコンビニのバイトをやるなんて、どーせ落ちこぼれの駄目男として見下していたのだろう」・・・男の悲哀も感じさせられます。
何かと制約は多いものの、それでも客との啖呵は痛快である。
「馬鹿にしてんのかこの野郎!!」
「滅相もない。それとも、馬鹿にされる心当たりがおありですか」
「名前をいえ!!!」
「ですから、森です」
「お客様、ひらがなも読めませんか」
『あした、カルメン通りで』と『蝶々夫人に赤い靴』『自由なれど孤独』をまた借りてきて読んだ。買えないのだもの。啖呵、意気が良いねぇ。やはり、同じ著者だわ。
友だちがいつの間にか友だちでなくなったり、もしかしたら、ホームから落ちちゃっていたかもなんて経験は、私と一緒だねぇ。
「時代だけが変わったとは思えない。人も変わったのだ」。新自由主義からこっち、なんだかねぇ。人間が人間でなくなったというか。「貧乏して何よりつらいのは食い物がないとか必要な品が買えないとか、そんなことではない。友達がいなくなることだ」。「管鮑貧時の交わり、という言葉がある。失業中で苦しんでいる友人が私と会うたびに「俺は実家暮らしだから、お前より恵まれている」と福沢諭吉をくれ・・・なのに、何台もの高級車や広い土地建物を所有する金満家たちが、こちらは別に金銭など期待していないのに「迷惑だ」と背を向ける。おかしなものだ。」
本当にねぇ。「迷惑」って嫌な言葉。
でも、金満家が幸せとも思えないんだなぁ。
「落ちこぼれですけど何か?」。
いいですねぇ。こういうの。私も負け犬の遠吠えをやってます。今の日本はひどい状態だけれど、ほんの少しでも良くしたいから、ま、ひとりでもですね、ぼちぼちとやっていきましょう。
森さん、また失業中のようだけど、この本が売れますように。それで、尋深と音彦のコンビが復活してくれると、わたしの人生もより豊かになれる。
そうだねぇ。落ちこぼれが、生き抜くこと、今の世の中では、それ自身が闘いなのかも知れない。それもできれば楽しく。「迷惑」とほざく金満家たちが羨ましがるほどに・・・森さん、もし、失業が続くようなら、府中緊急派遣村においでよ。
紙の本
人との一期一会を大切にし、約束の重さを実感する世の中はどこへ行ったのか
2010/07/27 22:37
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
1985年に江戸川乱歩賞を受賞して2000年までに30冊もの小説・エッセイを世に出しながら、現在はホームレス寸前の極貧生活を送っているという著者。その著者が近在のコンビニ店で糊口をしのぐために働いた1年余のアルバイト生活を記した書です。
著者によればこのコンビニ、やる気のない本部の責任者たち、ひとくせもふたくせもあるアルバイターたち、そして怪物がごときクレーマーやチンピラ顧客たちのせいで、崩壊寸前。事実、著者はこの勤務先を閉店という形で去ることになるのですが、とにもかくにも書かれている事柄は多くの人々が病んでいるなと感じさせる事件ばかり。読んでいて、唖然茫然、著者と共に憤りを感じて心拍数と血圧が上がる思いがします。
面白おかしくコンビニの舞台裏を描写した書では決してなく、著者は憤怒を込めてコンビニをとりまく病をえぐり出すといった趣の書です。読んでいて決して愉快な書ではありません。読み終えた後の数日間は不快感が胸にこびりつく感じがするほどです。
しかしここに書かれた人々は今や想像を絶するという類いの輩ではなく、日常的な風景となっていることを容易に想像させる世の中になっています。大声で店員を怒鳴りあげる顧客や、接客業のイロハも知らなさそうな非礼なアルバイト店員は、著者が暮らす地域ばかりでなく、私の住む町のコンビニでも見かけることは珍しくなくなりました。
その原因は、著者がそっと忍ばせるように書いている言葉を引くなら、「人との一期一会を大切にし、約束の重さを実感する」(238頁)人々がいなくなってきたということではないでしょうか。ひょっとしたら二度と出会わないかもしれぬ相手に対して、かくも人は無礼になれるのか。そんな好個の例ともいえる本書登場の人々が、「一期一会」という言葉の意味を知れば、何かが変わりそうな気がするのに。
自戒の意味も含めて深くそう感じさせる書です。
紙の本
コンビニで働くたいへんさを描く、ドキュメンタリー
2020/04/13 19:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
ああ、懐かしいと思って読んだ、乱歩賞作家・森雅裕氏の意外なテーマの本。そういえば、長いこと新作が出てなかったかも?と思ったら、なにか大変なことになってたみたいです。ミステリィ小説を書くことなく、コンビニの店員として奮闘していた。今や、大きな社会問題&労働問題となっているコンビニという職場。その問題が公になるずっと前から、こんな悲惨な職場だったんだ。作家が実際にコンビニ店員として働き、店舗閉店のため、ひどいやめさせられ方をするまでの1年半。身近な場・コンビニだけに、一読を強くお勧めしたい。
それと、森氏の小説作品は図書館で借りられるけど、そのほとんどが絶版になっている事実にも驚きを隠せない。DVDレンタルやカラオケみたいに、借りても著作料を払う仕組みがあったらいいのにと思いつつ。いや復刻したっていいんじゃない?
紙の本
明日は我が身?
2010/05/11 11:57
10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:arayotto - この投稿者のレビュー一覧を見る
フリーランスとなっていつのまにか15年が経ちました。
細々と足し算の仕事を積み重ねてきましたが、さすがにここのところ不調です。(不況と書くべきですが、あえて不調とコトバを変えてみました)。
はて、この先、どうしたもんかいな。
子どもも高校に入学したばかりだし、住宅ローンもたんまり残ってるし、明日の生活を想像すると、背筋が寒くなるほどトホホです。
てなことをフリーランス仲間が集まると、∞(無限)プチプチのように際限なくぼやきあっています。
先日も東京のフリーデザイナーと同じことをつぶやき合ってきました。
彼曰く「ま、最悪はコンビニででも働くわ」と。
お互いひきつった笑いを交わして別れましたが、私には到底無理です、コンビニで働くなんて。あんな複雑で難しい仕事、こんなつぶしの効かないオヤジにこなせるわけがありません。つとまりません。
とくに、「高砂コンビニ奮闘記」を読み終えた今となっては、至極痛感です。
作者は、10年近く出版界から干されている(と自ら言及)乱歩賞作家・森雅裕氏。ホームレス同然の生活から抜け出すため50代半ばにしてコンビニ店員へと。その体験記です。
いつかは我が身、との思いがそうさせたのか、なにげなく手にとった一冊でしたが、さすが小説家!だけあって、その文章力、表現力の巧さに一気読みです。
それにしても不覚でした。
コンビニといえば、夕方や日曜には、高校生がレジ打ってるし、
平日の昼間はおばちゃんが「らっしゃい!」と元気いいし、
最近では胸の名札に、「り」とか「ちょう」とか「そ」とか「かん」などという名前の人が多いから誰でも(ゴメン)できるお手軽なバイトのイメージを持っていました。お詫び申し上げます。まったくの誤解でした。反省しています。
商品のレジ操作の合間に、消費期限チェック、品出し、雑誌の返本、ファーストフードの調理、厨房機器の掃除殺菌、公共料金などの収納にレジ点検と、やるべき仕事は盛りだくさん。
厄介でわがままでやんちゃな客やクレーマーの波状攻撃にも平身低頭専守防衛で臨まくてはならない辛さ。
本部から見下され、客からも見下され、一個の人間としての尊厳やプライドを、尖ったスパイク付きの土足で踏みにじられる複雑な人間関係など、肉体的にも精神的にも休まることのない過酷な労働環境がこの本にはたっぷりと描かれています。
おもしろいところは、ただ単なる暴露的なコンビニ裏話に終わっていないところ。
10年ぶりの出版といえども、さすがに乱歩賞作家。その手にかかると、コンビニという舞台がいきいきと輝いてきます。
アルバイト、客、本部やオーナーなどの多彩な登場人物が織りなす悲喜こもごものドラマはまったく飽きさせません。
24時間365日絶えることなく煌々と輝く蛍光灯の灯りのなかにうごめく、不条理、格差、孤独、異常、非情、攻防、裏切り…コンビニ、そこはまさに「現代の縮図」そのもの。
本書のラストにこんな箇所がありました。
【最近までここにあったはずのMニップ西×岩店も閉店していた。コンビニに勝者なし、の感がある。この西×岩店は自家製惣菜なども工夫しており、特に経営不振ともみえなかったが、高砂、小岩と近隣のMニップが立て続けにつぶれるというのはどういうことなのか。そんな中で新店舗を出すというのはどういうことなのか。
繰り返す。私たちは何のために歴史を学ぶのか。教科書に載っていることだけが歴史ではない。】
私たちも町を歩いていて気づきます。
「あれ、ここって前コンビニあったのになくなっちゃったんだ」と。
そんなとき、ほんの一瞬、こんな思いが頭をよぎります。
脱サラして人生やり直すぞ、と夢見るオーナーがそこにいた。
しかし思ったように売上は伸びない。
本部からはつつかれ、バイトから冷たい目で見られ、集まる客はわがままで乱暴で、それでもお客さまだから我慢我慢を強いられ、やがてそれらがストレスとない、肉体と精神をむしばみ、疲れ果て、店舗を立て直す気力も体力も失い、夢の結晶は風化し、取り壊され、残るはオーナーの借金だけ、というはかなさ。
本部は、夢見るどこかのオーナーの失敗なんて気にもしない。また再び新たなオーナーを見つけ出し、新たな店舗を堂々とオープンすればいいだけの話なのだ。反省しているヒマがあれば、次なる出店だぁ、か。
世の中には2種類の人がいるといいます。お金を奪う人と奪われる人。
大きなお金を奪うことができず、もがき続けている人が、数百円せいぜい数千円というお金を払うことで、「おれは客だぞ」と唯一優位に立てる場所、それがコンビニ。
直接対するのは一アルバイトに過ぎなくても、その背後にある大手コンビニの名前に、数百円で大きな顔ができる優越感があるんだろうな。でもね、ほんの数百円数千円でいばっても誰も尊敬なんかしてくれないよ。虚しいだけ。
コンビニで働いている人、働こうかなと思っている人は、もちろん必読であり、
コンビニを頻繁に利用している人も、自分自身のサービス業に対する態度を振り返るために必読かも。