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商品説明
「N」と出会う時、悲劇は起こる—。大学一年生の秋、杉下希美は運命的な出会いをする。台風による床上浸水がきっかけで、同じアパートの安藤望・西崎真人と親しくなったのだ。努力家の安藤と、小説家志望の西崎。それぞれにトラウマと屈折があり、夢を抱く三人は、やがてある計画に手を染めた。すべては「N」のために—。タワーマンションで起きた悲劇的な殺人事件。そして、その真実をモノローグ形式で抒情的に解き明かす、著者渾身の連作長編。『告白』『少女』『贖罪』に続く、新たなるステージ。【「BOOK」データベースの商品解説】
瀬戸内の島の東屋で、ビルの窓掃除のゴンドラの上で、古いアパートの一室で、わたしは「N」を守ることを決意した…。悲劇的な殺人事件の真実を、モノローグ形式で解き明かす連作長編。『ミステリーズ!』連載を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
湊 かなえ
- 略歴
- 〈湊かなえ〉1973年広島県生まれ。武庫川女子大学卒。2007年「聖職者」で小説推理新人賞、09年「告白」で本屋大賞を受賞。ほかの著書に「少女」など。
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紙の本
明るさのない恋愛小説、ってあんまり好きじゃありません。それとユーモアのないミステリ。やっぱり小説は、そこから得るものがなくちゃ・・・
2010/08/24 20:52
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
『告白』一冊で人気作家として地歩を固めた感のある湊かなえですが、我が家ではへそ曲がりの私が、自分が見逃したヒット作品は意地でも読まない、という方針を崩していないため、『少女』『贖罪』に続く三冊目ということになります。前の二冊はどちらも重苦しい内容の、読み終えて目に前が明るくなるような作品ではありませんでしたが果たして、今回も人間の暗黒面を覗くことになるのでしょうか。
この重苦しいような色合い、綺麗とはいえない花がカバーを埋め尽くした様子、私などは佐伯佳美の装画を見ただけで、明るい内容をあきらめました。岩郷重力+WONDER WORKZ。の装幀は、好きですけれど、いかんせんカバーの印象が暗いので、そのままハッピー、っていうわけには行きません。早速内容に入りましょう。カバー折り返しにはこう書いてあります。
*
「N」と出会う時、悲劇は起こる……。
大学一年生の秋、杉下希美は運命的な出会いをする。台風による床上浸水がきっかけで、
同じアパートの安藤望・西崎真人と親しくなったのだ。努力家の安藤と、小説家志望の西崎。
それぞれに屈折とトラウマがあり、夢を抱く三人は、やがてある計画に手を染めた。
すべては「N」のために──。
タワーマンションで起きた悲劇的な殺人事件。
そして、その真実をモノローグ形式で抒情的に解き明かす、著者渾身の連作長編。
『告白』『少女』『贖罪』に続く、新たなるステージ。
*
初出は、〈ミステリーズ!〉vol.33-37(2009年2-10月)です。ちなみに、タイトルにある「N」の意味は・・・
今回は、その謎を解くヒントとして人物紹介をしていきたいと思います。
成瀬慎司は、事件当時はT大学経済学部国際経済学科4年生、22歳でした。愛媛県の人口三千の小さな青景島の出身で、上京して有名フレンチ・レストラン「シャルティエ・広田」でアルバイト中をしていました。杉下とは高校三年の時、同級生として出会い、杉下の行為に恩義を感じ、淡い恋心も抱いています。実家は伝統のある料亭でしたが、慎司が高校3年生のときに倒産。クラス会で再会した杉下に、一日一件というディナーの出張サービスを教えたことから、事体は動き出します。
杉下希美は、事件当時、K大学文学部英文科4年生で、22歳。「野バラ荘」の一階に住み、清掃会社でアルバイトをしていました。慎司と同じ青景島の出身です。スキューバダイビングのツアーがきっかけで野口夫妻と親しくなります。趣味は将棋で、安藤とはよく対局していました。誰かのための苦労を厭わない優しさを持つ一方で、冷静に人を分析するところもあります。
あとで触れる西崎の隣人で、大雨で床上浸水があったとき、一階の部屋にいられなくなり、同じ一階に住んでいた西崎とともに、2階の安藤のところにに避難し、知り合いとなります。安藤とは互いに親近感を抱いていますが、彼女が好きなのは同郷の成瀬です。彼女の場合は、家庭環境に問題があり、特に母親が酷い人間としかいいようがありません。故郷で成瀬と再会したことをきっかけに思いついた計画が、思わぬ方向に・・・。
安藤望は大手M商事営業二勤務するサラリーマン。長崎県出身で学生時代「野バラ荘」の二階に住んでいて、社会人となったあとは会社の独身寮で暮らしています。事件当時23歳。自信家で向上心が強く、目標に向かって最短距離を探る努力家でもあります。野口貴弘は彼の直属の上司ですが、尊敬しつつも、ある面では逆の思いを抱いています。学生時代に「野バラ荘」に住んでおり、杉下・西崎とはその時代からの付き合い。化学を専攻していて、スポーツは苦手。勉強ができればよい、と思っているような一面があり、彼がとったある行為が、事態を大きく狂わす・・・。
野口貴弘は、事件当時42歳の大手総合商社M商の花形である営業プロジェクト課課長で、安藤の直属の上司。52階建ての有名な超高層マンション「スカイローズガーデン」の48階に妻・奈央子と二人で優雅に(?)暮らしています。実家はかなりの資産家で、部下の安藤やツアーで知り合った杉下を食事に招待し、将棋をするなど親しく付き合います。その一方、負けず嫌いで、安藤との将棋の対戦では常に勝ちに拘ります。優秀で人望も厚いと思われていますが、実際は・・・。
野口奈央子は貴弘の妻で、事件当時29歳の専業主婦。夫・貴弘が勤めるM商事重役の娘で、そこで受付嬢をしていた頃に貴弘と知り合い結婚します。もちろん美女ですが、世間知らずでもあります。お嬢様育ちですが、夫の足を引っ張らないようにと、お料理サロンに通うなど尽くす面も。石垣島で知り合った杉下と安藤を頻繁に家に招いて、杉下を妹のように可愛がります。その華やかな生活に影が見え始めるのは、ある噂からだった・・・。
西崎真人は、自称・作家。事件当時はM大学法学部法律学科4年生で、二年留年しているため24歳。何度か文学賞に応募していますが、落選続き。といっても、一度だけ白樺文学賞の一次予選を通過したことがあります。そのせいでしょうか、自分の作品を理解出来るかどうかで、人を評価します。俳優のような美しい顔を持つが、安藤からは「変わり者」などと言われますが、その言動の裏に、どんな思いを隠しているのか。母親の性格が異常で、それが彼の各小説に影を落としています。
杉下、安藤、西崎が住んでいた築七十年のアパート「野バラ荘」の大家が、野原です。土地を売って欲しいという業者の言葉に耳を傾けることなく、今の生活を望む80歳すぎの元気ものの老人で、住人である杉下、西崎を見る目は温かいし、そこを出て行った安藤のこともよく覚えています。
彼らの間で事件が起き、人が死にます。なぜ、そういうことが起きてしまったのか、それをモノローグを通して浮かび上がらせるのがこの小説です。そして彼らに共通するのが「N」。幾つかの悪意とみんなの好意、それが事件を起こし、混乱させます。たしかに、見方によればこのお話は「ラヴ・ストーリー」です。でも、それはとても苦い味のもの。私は、もっと心が安らぐ恋が好き・・
紙の本
かなり辛口になってしまいました……
2010/03/28 10:40
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カフェイン中毒 - この投稿者のレビュー一覧を見る
モノローグの巧さがクローズアップされ、
ぐいぐい引き込まれて一気読みしてしまった『告白』から数えて4作目。
2作目、3作目で、モノローグが巧いというより、モノローグだけしか書けないのかと訝ったところ、
また今回もモノローグ……ですか。
今のところ、この形式がいちばん安定して読める気もするので、
著者の場合これでいいのでしょうか、よくわかりません。
ある高級マンションの一室で、若い夫婦が殺害されました。
その場に居合わせた、さらに年若い知り合いたちの、おそらくは事情聴取から物語は始まります。
お互いの言葉に矛盾はうまれず、ひとりが刑に処せられるのですが、
その10年後と、当時の本当の話が交差する形で物語は繰り広げられます。
ひとつの出来事を、登場人物のそれぞれの目から見た形。
嘘や秘密があったりなかったり、受け取りかたが違っていたり、
こういう祖語を楽しめる部分は、やっぱり夢中になってしまいます。
そして、著者の最大の魅力は、そういう物語形式に読者を引き込むところだと思うのですが、
形式以外の部分(人の感情、犯罪へ至る心理の甘さ、トラウマ設定など)が、とても稚拙な気がします。
言い切ってしまうには、巧い部分もあるので心苦しいのだけれど、
それでも冊数を重ねると見えてくるものがありました。
ひとつ素朴な疑問があります。
なぜ事件の捜査が、毎度毎度、杜撰なのでしょうか。
いまどき、目の前で倒れている人間を(何の細工もしていないうえ、安易な死に方なのに)、
自殺か他殺か見極められない警察というのは、どうかと思います。
そして、よくよく思い返してみると、どうも登場人物を見逃すためにか、
ずいぶんと都合のよい(もちろん著者にとって)捜査結果が、全作品を通して多い。
推理小説の荒探しなんて、ほとんどしない私ですら気になるのですから、致命的なのではないでしょうか。
悔しいけれど、それでもまた一気読みしてしまったんですよ。
しかし、再読はないと思います。
読後感が悪いというのは、作品そのものの評価に関係ないと思っているのですが、
それでも毎回、あまりにも幼稚な動機で、罪悪感のないまま犯罪に手を染める登場人物たちに、
そろそろ「これが、この人のスタンスなんだ」とがっかり気味です。