紙の本
人の本質は声に現れてしまう
2010/03/14 18:17
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
トリックよりも、探偵と助手のやりとり、共感覚という特殊能力を軸に置いた構成などに主眼が置かれている感じがする。共感覚とは、五感のうち一つの刺激を受けることによって、他の感覚も刺激される特性のこと。この作品の探偵である音宮美夜は、音に色や形が見える共感覚の持ち主だ。
この共感覚は、作中の説明によれば十万人に一人程度で現れる特性で、別に超能力というわけではない。探偵助手役を演じる高校生天祢山紫郎が指摘しているように、音が色や形で見えるだけなので、音響解析などの存在を考慮すれば、際立って飛びぬけているという能力ではない。しかも、人とは違うものが見えるせいで、その認識に引きずられてしまう気もする。
だが考えてみると、科学捜査は誰かが異常性に気づかなければ実施されないのだから、何気なくいるだけで普通は気づかない関連性に気づいてしまえるというのは、やはり明らかに突出しているのだ。そして、もう一つの音宮美夜の特殊性により、本来の目的を達成する。
読後に何を思うかは人によってかなり異なるだろう。犯罪捜査の在り方としていかがなものかと思うかもしれないし、前半に登場するセリフが強烈な皮肉として響いてくるかもしれない。そして、この結末から共感覚を見直した場合、全てを超越する神の能力の様にも思えてきてしまうのだ。
紙の本
共感覚をもつ銀髪の探偵
2010/06/28 17:42
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
2007年に『ぼくには数字が風景に見える』など
共感覚のノンフィクションが話題になりましたが
その新しい素材を使って
おもしろいミステリーを作り上げたのが本作品。
共感覚とは、「文字や音、数字、人の性格に色が見える」
といった色彩を伴った感覚を持つ人が多いのですが
より珍しいケースも多々あるそうです。
本作の探偵、音宮美夜も音に色が見える共感覚者。
警視庁の依頼によって殺人事件などを推理しています。
本作では、連続殺害焼却事件のミステリーを
共感覚と推理によって解き明かします。
被害者の女子高校生の幼馴染で
仲のよかった天祢山紫郎(あまね さんしろう)が
音宮美夜とともに犯人を追います。
描写力不足を感じるものの、
大切な共感覚の描写やセリフなどはとてもうまい。
巧みなミスリードで物語を引っ張り、
美夜を追い詰めていくのがいい。
もちろん、殺害動機と犯行プロセスに弱さはありますが
共感覚という新しい素材を上手に使いこなしています。
紙の本
不思議な力を持つ魔性の少女。
2018/01/11 02:30
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投稿者:シオ・コージ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ダークな味わいのなかにユーモアがまじるファンタジックなミステリー。シリーズ第1弾です。
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殺害後焼却する連続殺人事件の被害者となった女性の幼なじみの男子高校生と、全ての音を『色』で見ることが出来る共感覚を持つ美少女探偵の物語。
2人で捜査に乗り出し、探偵は喋る声音で犯人を見つけるが、物的証拠がない。
そこでその犯人の提案により、24時間監視をするのだが、その間に新たに殺人事件が起こる。しかも被害者は男子高校生の友人。
はたして探偵が見つけた犯人は本当に犯人なのか?それとも、、、
『オルファクトグラム』のような『見え方』の描写はあまりされず、またその能力を駆使するようなこともなく、あくまでも物語内での道具としてその能力を使用していた。そのかわり、後半の流れは推理小説の王道のようになっていて、オチも読めなかったので、結構楽しめた。
テーマは『食』
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第43回メフィスト賞受賞作。
個人的にはやや肌の合わない感のあるメフィスト賞
なんですがどうしても気になって読んでしまいます。
今作は共感覚という能力(?)を持つ少女探偵が見せる
サイコキラーとの対決をメインに展開。音や言語...
様々な音が色彩を伴って眼に見えるという少女探偵
「音宮美夜」の共感覚は殺人願望者、自殺願望者などの
声の色を見て捜査をする...。
という設定自体は個人的には受け入れOKだったので
意外とサクサクとそして結構面白く読めたりして。
ライトノベルを読んできた成果(?)が表れてますなー。オレ。
設定からしてややトリッキーが故、犯人の動機もまた
然りで設定を受け入れた時点でフェアな動機だし、
驚きつつも納得せざるを得ません。好き嫌いは置いておいても
ちょっとだけ「おおっー」となってしまいました。
が、もう一段階のギアチェンジしたかのような「狂感覚」
ってのは強引すぎて頂けないっす。ちょっと醒めてしまうなー。
ミステリ色濃厚なライトノベルと思えば充分面白いんですけど
その割には表紙のイラストは...こあいよー。美少女感伝わらずw。
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ヒロインの共感覚のおかげで早いうちに犯人の目星はついてしまうのですが、そこから色々あって、最後はヒロインの必殺技!
おや? ジャンルは、ミステリーではなくてヒーローもの?!
結構面白く読めたのですが、せっかく外見に特徴のあるヒロインがいるのだから、もっと内面の暗いところとか書いて欲しかった気がします。
いや、それを書くと本当にダークヒーローものになってしまうのか?!
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「キョウカンカウ」は「共感覚」、何故カタカナ表記なのかは読んでからのお楽しみ。登場人物のネーミングにやや西尾維新的センスを感じるのは残念ですが、メフィスト賞としては妥当なデキでしょう。おそらくシリーズ化されると思うので、飽きるまではお付き合いする予定です。
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個人的にひとつ前の「プールの底に眠る」が
不発だったので「キョウカンカク」は
ヒットでした。
連続殺人鬼フレイムを捕まえるために
やってきたのは銀髪の探偵だった?!
彼女のもつ特殊な能力とは?
しかぁし、
銀髪の設定がどうしても
ペイパーカットと飴屋とかぶりますよ。
帯も上遠野だったし・・・。
パクっているのか??
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第43回メフィスト賞。推薦帯は上遠野氏―「喪われた恋の色を見る覚悟はあるか?」がやたら格好良くてうっかり買ってしまいました。これが噂のジェケ買いならぬ帯買いか…!
推理せずに読みました。寝る前に半分だけと思って開いたのに面白くて一気に読んじゃったのですが…感想書こうと思うと言葉が出てこなくて、どうも美夜嬢があまり好きになれないからだと気付きました。妬みですかね、空想上の人物なのに。個人的に、誰より何より矢萩さんのキャラが興味深かったです。ぶっちゃけ彼が妻子持ちだと言うことに本文中一番ビックリしました(笑)
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共感覚という「特殊な感覚」を持つ人物を探偵役に持ってきたところは面白かった。
ただそれだけ。話の中身としては大分薄い。
まず主人公格2名(主人公と探偵)双方が私としては嫌いな性格・思考パターンであることが災いし、感情移入が全く出来ない。
筆者はこういう短気…というか頭に血が上り易いタイプがお好みなのかもしれないが、主人公など思わせぶりな発言を多々していながら結局アレであるし、探偵側も私的には魅力が皆無。
最初から伏線と思わせるような描写を度々していながら大したことがなかったのも肩透かし。
わざわざ隠すこととは到底思えないのだけれども…×××××を隠し持っていたこととか、××××を××たいとか。(正直大したことでもないのでバラしてしまいたいのだけど、一応ネタバレ回避。)
あと地の文だけでは絶対に読み取れない情報もいくつかあるので、所謂「読者への挑戦」が成り立たないパターンのミステリです。
一寸期待はずれ。
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第43回メフィスト賞受賞作。共感覚を持つ少女探偵という設定は魅力的なんだけど、それに頼りすぎロジック等がおろそかになっている感じ。殺人の動機には新しさを感じただけに残念。
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この動機がすごい!
この作品における連続殺人の動機は驚天動地なのに、きちんと伏線が張られているのがすごいなーと思った。
物語の世界観を含めて、綿密に練り上げられている。
銀髪の美少女探偵の秘密がじわじわと明かされていく過程にも惹きこまれる。
クライマックスで判明するタイトルの意味。かっこいい!
キメキメにスタイリッシュな感じで、深夜ドラマ系で映像化したら似合いそう。
以下、ネタバレ。
主人公の男子高校生が、やな奴すぎて感情移入できなかった(笑)
いや、犯人かも、というブラフにするための構成上必要なキャラクター造型だったのかもしれないけど。
それでいて、「こういう子いそうだな」といういやーなリアリティも感じる。
ネット弁慶ぽい、歪んだ正義感、大事なものだけが大事であとはゴミ扱いの価値観など。
クセのあるキャラクターたちが、それでもじとっとした雰囲気でもなく軽やかに描かれていたのは、作者の軽妙な語り口のゆえだったのかもしれない。
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なかなかいいすね。
能力を仕掛けや動機に使いながらでもちゃんとミステリーをしている。二作目も読もうと思います。
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前半が淡々としていてダルい。中盤以降の盛り上がりは悪くなかった。ただ全体的にこぢんまりとまとまりすぎた感じ。続きが読みたいという感じでは無かったかな。
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第43回メフィスト賞受賞作。
女性を殺して焼却する猟奇犯罪者に幼なじみを殺された高校生山紫郎は、共感覚を持つ探偵美夜と知り合い、彼女の捜査に加わることにする…
共感覚というのは前から興味があった。美夜の能力は色聴といって音を聴くと色や形が見えるというタイプ。井上夢人の『オルファクトグラム』は匂いを見るという話だったが、やはり他の感覚から視覚に繋がることが多いのか。
設定は魅力的だし動機が面白いけど、ミステリとしてはいま一つかな。メフィスト賞らしい作品。