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商品説明
蝉丸にとり憑いた妖女の正体は?晴明の呪、博雅の笛とともに平安の闇を祓う蝉丸の琵琶。盲目の法師の哀しい過去がいま明かされる—。【「BOOK」データベースの商品解説】
平安の都で起きる怪しく妖しい事件の数々。若き陰陽師・安倍晴明と笛の名手・源博雅が、幽鬼や怨霊たちが引き起こす怪事件を鮮やかに解決! 「瓶博士」「器」「紛い菩薩」ほか全8編を収録。『オール讀物』掲載等を単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
瓶博士 | 5−48 | |
---|---|---|
器 | 49−87 | |
紛い菩薩 | 89−114 |
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紙の本
いつ頃からそう思い始めたのかは分かりませんが、夢枕獏の陰陽師シリーズは極めて上質なミステリなんです。長くなったシリーズも平安時代版捕り物帳って割り切れば許せるかも。だってレベルが高いんだから・・・
2010/08/21 21:04
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
雑誌掲載分も追いかけて読む、というほど熱心ではない獏ファンとしては、今回の『陰陽師 天鼓ノ巻』が、『陰陽師 夜光杯ノ巻』以来、2年半ぶりといわれても「あ、まだ続いているんだ」なんて思うんです。このお話も、栗本薫のグイン・サーガと同じで獏の飯のタネになっちゃったのかな、なんて思ったりもします。分かるんですよ、この世界の居心地のよさ。読者もそこにどっぷり浸っている。
まして、このお話はグイン・サーガと違って、一編一編が読みきりのわけで、いつ終わってもおかしくありません。読む側も、巻数を見渡せば長いなあ、と思うのですが、ともかく毎回お話は完結しているので、それをあまり意識しない。でもねえ、そういう世界って、なんていうか著者にとっても読者にとってもぬるま湯に浸かっている状態ではないか、と思うんです。そろそろ止めるなり、一旦休載したほうが長い目ではいいのではないか、なんて・・・
とはいえ、このシリーズ、作品のポテンシャルは少しも落ちていません。それは認めます。特に、『陰陽師 夜光杯ノ巻』あたりから顕著になってきたミステリ的な話の運びは、実はこのシリーズが表向きこそ同じですが内実が変化していることの証かもしれません。無論、少なくともある怪異があって、それを清明と博雅のコンビが解決していくというスタイルは当初から少しも変わっていないともいえます。
ただ、読者のほうは同じ場所にはとどまっていません。平安時代の怪異の世界が当たり前になってくると、興味はその暗い闇から抜け出し話の構造、あり方に向かってくるのはいたしかたのないもの。だから、このシリーズをミステリとして読み直すべきではないかと思ったりするわけです。もしかして、平安時代の捕り物帳といった位置づけも可能かもしれません。
そうなれば、半七捕物帳68話(一説69話)、銭形平次捕物帳383話に追いつくまではまだまだ時間がある、ということもできる。うーむ、休載する必要なんかない、っていう矛盾した結論になるか。で、唐突に思うんですが、そろそろ今までの事件が起きてた場所を示す手描きの地図を付けてみたらどうでしょう、もっとこの世界が身近になると思うんですが。お馴染みの素晴らしい装画・装丁は村上 豊、AD 上楽 藍。
以下、目次に従って各話の初出と簡単な内容紹介をします。
・瓶博士(「オール讀物」2008年2月号):決して開けてはならぬと言われた瓶(かめ)のなかを覗いたらなかにはなんと赤子が入っていたり・・・
・器(「オール讀物」2008年4月号):都の大路を哭きながら歩いていく男・勧進坊、そして蝉丸の笛の音に涙する盲目の尼・・・
・紛い菩薩(「オール讀物」2008年6月号):菩薩さまだと思って屋敷にはびこる蛇退治を頼んだ相手の正体が妖(あやかし)だった・・・
・炎情観音(「オール讀物」2008年10月号):博雅の友人として清明が打ち明けられたのは夜ごと、貴子の顔を齧りに来る獣がいるという・・・
・霹靂神(「オール讀物」2008年12月号):蝉丸と博雅の琵琶と笛、それにあわせて清明の屋敷の屋根の上から鞨鼓の音が・・・
・逆髪の女(「オール讀物」2009年4月号):博雅と蝉丸が清明の屋敷で桜の木の下に見たものは、髪を逆立て恐ろしい眼でこちらを見つめる女・・・
・ものまね博雅(「オール讀物」2009年6月号):弱り切った博雅が声明に打ち明けたのは、自分と全く同じ姿かたちをした博雅と名乗る男のこと・・・
・鏡童子(『京都宵 異形コレクション』光文社文庫2008年所収):闇の中をさまよう童子をめぐって争う年齢不詳の女と白髪・白髯の老人・・・
あとがき:今回は俳句が長くなってしまった詩がたくさん披露される
どれも極上のミステリですが、「霹靂神」だけは、怪異の一面を切り取ったような小品に仕上がっていて、おお、と思います。果たして次が出るのはいつになることか・・・
紙の本
今回もまた、ほろほろと酒を飲むように、気がつけば読了していた次第。晴明と博雅のやりとりが、よいですねぇ。
2010/02/03 14:08
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:東の風 - この投稿者のレビュー一覧を見る
春は桜あるいは藤の花が、秋には菊の花が咲き、匂う安倍晴明(あべのせいめい)の屋敷の庭。簀子(すのこ)の上に座した晴明と源 博雅(みなもとのひろまさ)が、酒を飲みながら言葉を交わすうちに、「ゆこう」「ゆこう」そういうことになって、平安の世の都の怪異に出会う話を収めた連作短篇集。『陰陽師 夜光杯ノ巻』以来となる、二年半ぶりのシリーズ最新刊。相変わらずのゆったりと雅やかで、ほろほろと親しみながら頁をめくってゆくことのできる心地よい空気感。もったいないけれど、あっという間に八つの収録作品を読んでしまいました。
今回は、盲目の琵琶法師、蝉丸(せみまる)が登場する作品が多かったですね。彼が弾く琵琶の音(ね)が、月明かりと花の香のあわいに嫋嫋(じょうじょう)と響く中、博雅の吹く葉二(はふたつ)の笛が、ほろりころりと和する調べの美しさ、合奏の酔い心地。何とも言えず、良いですねぇ。このふたりの妙音にもうひとりの楽器が絡んでトリオとなり、満月が冴え返る秋の天に三つの楽の音が溶け合い、響き合う作品に魅せられました。「霹靂神(はたたがみ)」の一篇。十頁ほどの掌編ですが、これ、よかったなあ。
ほかにも、
「博雅よ、それはそうとしてもだ。おれには、もうひとつ、生きてゆくに必要なものがある──」
「何だ!?」
「おまえさ、博雅」
晴明は、ちらりと博雅を見やり、赤い唇の端で微笑した。
p.47 より
というふたりの対話にドキリとさせられた「瓶博士(かめはかせ)」。
“桜の木の中から、巨大な手が真っ直ぐに下におりてくる”という視覚的映像に ! と息をのんだ「逆髪の女(さかがみのひと)」。
いつもならそこから話の歯車ががたりと動き出す“「ゆこう」「ゆこう」そういうことになった”のやりとりが、ここではラストに配されているところに妙味を感じた「ものまね博雅」。
こうした短篇も、よかったですねぇ。
初出掲載は、以下のとおり。
「瓶博士」「器(うつわ)」「紛い菩薩(まがいぼさつ)」「炎情観音」「霹靂神」「逆髪の女」「ものまね博雅」が、『オール讀物』の2008年2月号~2009年6月号にかけての掲載。最後の「鏡童子(かがみどうじ)」が、『京都宵 異形コレクション』所収の作品。
これからも、ずっと続いていってほしいシリーズ。次の巻をまた、楽しみに待つことにしましょう。
紙の本
情とあやかしの世界はさらに奥深く。
2017/08/16 18:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うりゃ。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
蝉丸法師ってのは、実は盲目の琵琶法師集団の擬人化とかいう説もあるそうですがそれはさておき。
このシリーズのキャラクターとしての蝉丸法師の人間味が一番表れていると個人的に思うのが「逆髪の女」。
「霹靂神」も読後感がいいのだけれど、ラストシーンのインパクトにかなわない。