紙の本
つよくて、やさしくて、よわい
2010/01/19 22:05
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はぴえだ - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み始めると、揺らぎの中に嵌り込む。
過去に引きずられて、引きずられて、抗って。
前を向こうとして、無理をして。
その姿が、強くて、優しくて。
それでも、音を立てて崩れ落ちた時の脆さ。
壊れた時にまた新たに見えるものがある、未来。
キャラクターに温度感が感じられず、うすっぺらかったり、脆弱なイメージを抱かせたりもするのだか、それがこの作品の特徴であり、ガラスのような繊細さを際立たせている。
ストーリー運びもまどろっこしいくらいに動かない。
それこそプールに沈んで、じっと浮上を待つ感じで。
急激な変化を見せない。けれども変化しないわけではなく、緩やかなもので。実際のところ、現実もそんなものだし、その辺りがリアルで秀逸。
ピンポイントで、アラサー世代の話だと思われるのだが、それ以下、それ以上でも重なる部分はあるはず。青春が誰にでもあるように。
大人びていたあの日。
大人になりきれていない現在。
揺らぎと閉塞感。
明日への一歩。
それらを淡々と描き出した、青春の終焉の物語である。
紙の本
僕の呼び名に関する青春の記憶
2010/01/25 12:32
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
1995年、17歳の少年と中学1年の少女が出会う話と
13年後、殺人罪で捕まった元少年の留置所での回想を
クロスカッティングしていきます。
この頃、流行りの軟弱な草食系男子の「僕」は、
少女との間では「イルカ」と呼ばれ、
もう一人、物語の主要登場人物の由利など
友だちには「マザ」というあだ名で呼ばれます。
この呼び名ひとつにしても
「名前っていうのは付けられるもので、名乗るものじゃない」
など、独特の世界観を最初から醸し出します。
さらに小学校時代の同級生の死など、
暗さをまとった小説として冒頭から惹きつけられます。
また、もう一人の強い女子「由利」の存在がいい。
僕との友情の強さを感じるし、それを言葉ではなく、
BFの嫉妬、彼女の父親の死などエピソードで語っているのが秀逸。
女子と男子の友情をうまく描き出しています。
欠点はあるものの、殺人罪、同級生の死の意外な真相など、
隠されたものが出てくれば出てくるほど
物語がおもしろくなっていきます。
巧みなリーダビリティで、読者を引っ張る力を感じました。
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▼読み終わった。辻村路線大好き人間としてはヒャッフー! な作品です。
▼惜しむらくは、ミステリー要素が軽かったことかな。それ以外は大満足。
▼こういう……こういう、J-POPみたいな青春ものに弱いんだよ。この分量は絶対J-POPじゃ歌いきれないけどね!
▼兎に角読んでほしいなと思います! 純愛好きに! できれば男子に!
(09/12/12 読了)
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実に見事です。プロットもさることながら会話の絶妙さは伊坂に通じるものがあって、もし彼を越えるとすればこの人かもしれないとまで思わされました。とにかく1人でも多くの人に読んでもらいたい作品です。実にメフィスト賞らしからぬ作品でもあり、ある意味審査員を見直しました(笑。2010年2冊目にしてBest1が決まったかも!?。
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メフィスト賞受賞作、辻村深月さんのコメントが素敵なので読んでみようかと。
徐々にいろいろなことが明らかになって、少しずつ霧が晴れていくような展開は素敵でした。
しかし、いかんせん、霧が晴れた先にある事実が、もったいぶったワリには・・・。
著者次回作に期待というところでしょうか。
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ミステリー要素はほぼなく、青春ものだった。
主人公が留置所の中で昔を思い出すのが基本となっているのだが、その中でも更に子供の頃の思い出を持ち出したりして、やたら過去を振り返るのが尺を伸ばしているように感じてチョット気になった。
まぁ淡々と物語が進行して、色んな人達が実は繋がっていて、最後もなんとなく綺麗にオチて終了。そんな感じでした。
文章自体はとても心地よく一気に読了したので楽しめたのは確か。次作に期待!
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夏の終わり、僕は裏山で「セミ」に出逢った。木の上で首にロープを巻き、自殺しようとしていた少女。彼女は、それでもとても美しかった。陽炎のように儚い一週間の中で、僕は彼女に恋をする。あれから三十年……。僕は彼女の思い出をたどっている。「殺人」の罪を背負い、留置場の中で―。誰もが持つ、切なくも愛おしい記憶が鮮やかに蘇る。第42回メフィスト賞受賞作。
リリカル…リリカルっす…。
紹介文が辻村さんってとこでもうまあ大体それは予測できたのだけれども。
普通に面白かったです。良くも悪くも普通っていうか…。
雰囲気は嫌いではない。
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“人と人が親密になるのに日数はそれほど大事ではないし、歳の差も関係ない。重なり合う部分が多ければ、親密な空気を共有することができる。少なくとも、重要な箇所が重なり合っていれば、自然と肩を並べて歩けるようになる。
「蝉は七日で恋をする」
「恋しない蝉もいるんじゃない?」
「君といると心が休まるんだ」
「イルカさん、あなたは何もわかってない。私はもう死んでいるのよ」
「死んでいる?」
「そう」
「僕には生きているように見える」
「でも死んでいるの。星のようにね。あなたが私といると安心するのはそのため」
「まだ僕にはよく理解できないんだけど」
「私はもうずっと前に死んでいるの。みんなには生きているように見えるけど、それは私が生きていた時に放っていた光を見ているだけ。私はもう終わっているの」
「やっぱり、わからない」
「感じるのよ。星の光も見ただけじゃ、燃え尽きていることがわからないでしょ」
「手を貸してくれる?」
「別に」
それは好意的な方の「別に」だ。
「温かい」
「過去に私の中にあったエネルギーが私を動かしているだけ」
「少しの間だけ目を瞑るよ」”
“泳げないイルカ”の僕は、今殺人未遂の容疑で留置所にいる。
十三年前に出会った“恋をしないセミ”のことを思い返しながら……。
良かった。
ほわほわとした浮遊感がまだ少し漂っている。
言葉の言い回しとか、セミのこととか、最後の展開とか。
全部良かった。
素敵。
“本当に僕は間抜けな人間だ。今の今まで気付かなかったなんて。でもまだ遅くはない。全てを失う前にそれに気付くことができたのだから、今からでも間に合うはずだ。
夜空を見上げた。ぼんやりとした星たちが僕を見下ろしている。ライターと携帯電話しかない僕の身には弱い星の光がくすぐったく、どこか心地よかった。”
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自殺をしようとする少女「セミ」、自殺を止めた高校生「イルカ」。幼馴染のマザと由利の物語。プールで事故死した少年との関係。13年後の物語。
船橋図書館
2010年2月18日読了
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印象としては、良くも悪くも綺麗な話。
ドロドロ感もミステリーっぽい謎もそんなに無いけど、
読後感が非常に良かった。好きな本の部類に入る。
これがデビュー作っぽいので、次作が出たらぜひ読みたい。期待。
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メフィストで序章がちょっと載ってたので、続きが気になり、ちゃんと読みました
過去と現在が繰り返し語られるんですが、二人がどうなったのか、最後の方まで読まないとぜんぜんわからないので、
わくわくしながらあっとゆう間に読み終わりました
最終的な感想としては、☆3.5という感じですが、それまでがおもしろかったので、☆4で。
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第42回メフィスト賞受賞。
簡単にいうと、よってたかって主人公を幸せにしようとする話。
なのに、すごく暗い。
淡々とした語り口、冷めてて女の子にモテる主人公は、もはやライトノベルの定石。
込み入った謎解きもなく、ただ全てが予定調和。
こんな安心設計な小説、一家に一冊あってもいいかも。
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留置場の中で考えるのは、自分の昔…初恋の相手について。
何故彼は留置場に入ったのか。それは初恋の人と関係あるのか。
留置場にいる『今』と、初恋の相手に出会い過ごした『過去』が
1:9の割合で繰り返されていきます。
まさか、と最初に思った状態から外れ、もしかして…と
話半ばで想像した通りの道筋に。
意外性はそれほどなかったですが、淡々と進んでいく様が
ただの日常のように錯覚させてくれます。
どう考えても怒涛の日、なんですがw
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第42回メフィスト賞受賞作だけあって、とてもおもしろかった。
早く結末が知りたくてあっという間に読んでしまった。
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第42回メフィスト賞受賞作。
詰め込み形で、後半の展開が多少ベタで強引な気もするが、
会話のセンスは悪くないし、「書きたいもの」が伝わってくる。
そして何より、小説の雰囲気と装丁が上手くフィットしていて良い。