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レヴィ=ストロースの思想の歴史。
1章 学生活動家レヴィ=ストロース‥社会主義のモラルをもとめて
1、「社会主義学生集団」事務局長 2、西欧の外へ
2章 批判的人類学の誕生‥修業時代
1、ブラジルへ 2、ニューヨークで
3章 野生の思考へ向かって‥模索の時代
1、神話研究への助走 2、ユネスコと野生の思考
4章 もうひとつの豊かさの思考‥神話論理の森
1、神話の新世界の踏査 2、双子であることの不可能性
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学生時代から「入門書」が嫌いでした。音楽でいえばベスト盤を聴くような感じでしょうか。
概略をつかむうえでは有効でしょうが、その代わり著者、編者の偏向がそのまま植えつけられるおそれもありましょうし。
とか思ってたんですが、アラフォー世代に突入した頃から、抵抗なく入門書に当たれるようになってきました。さすがにもう内容を鵜呑みにできなくなっちゃってますし、いい意味でも悪い意味でも。
さて、レヴィ=ストロース死去という絶妙のタイミングで出版されたこの本。
ちょうど氏の思想に再チャレンジしようと思ってたので、新書サイズの本書を手にしたんですけどね、どちらかというと、入門書ではなく伝記でありました。
ただ、氏の人生を辿ることにより、その壮大な思想の変遷を垣間見ることができます。いや、むしろ中途半端な入門書よりも得るところは多いでしょう。
著者のレヴィ=ストロースへの「好き好き」オーラが溢れてるのがまた好いのですよ。
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レヴィ=ストロース。哲学という孤高の世界にありながら、眼差しに優しさを湛えているところが尊敬する理由。
自分達欧米社会の常識を否定する勇気。企業社会にいながら、自分達の価値観を絶対視せず、常に真実を求め思考を続けることの大切さを教えてくれる彼の言葉に、驚愕を覚えずには居られません。
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ポスモダン思想の端緒を開いた人文科学に於ける構造主義の祖、レヴィ=ストロースの足跡を辿る。10代の頃から社会主義の学生新聞を編集したり党の代議士の秘書として政策立案に関わったりしたその早熟にまず目を見張り、やがて政治から人類学へと舵を切らせる時代の据えた分岐点とのちに生み出される数々の著作が切り拓いた知の領域の大きさに思いを馳せる。本書を足掛かりに少しずつ読んでみようと思う。充実の入門書。
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〝「近代」の思想に終止符を打った構造主義〟といった理解だったが、この本で覆された。射程がマルクス的。つまりレヴィ=ストロースが葬った近代とは西洋中心主義なのだ。マルクスはというと、労働者階級のインターナショナリズムで基本的に非西洋も等価に置いた。発展段階説を直線的に解するのは誤り。人間と自然の原初的関係を出発点とするのは、唯物史観と共通。「野蛮人とは何よりも先ず野蛮が存在すると信じている人なのだ」。この辺の相対主義がマルキストには鼻につくのだろうが、脇において置けない問題だと思うのだが…。
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レヴィ=ストロースが思想を形成するプロセスに光を当てた本。若き日のレヴィ=ストロースの思考の軌跡をたどることで、「構造主義以前の構造主義の感覚」に触れることがめざされている。もう少し著者自身の解釈を前面に押し出してもよかったのではないかと思う。なお、巻末に詳細な「レヴィ=ストロース著作・論文リスト」が付されている。
レヴィ=ストロースは音韻論的な知の適用領域を、言語によるディスクールの空間から、自然の多様性そのもののリアリティに根拠づけられた思考の空間へと解き放つことで、文化の中に自然を根づかせた。『生のものと火にかけたもの』における、人類が火を獲得する神話の分析は、火を用いて料理することが、自然から文化への移行を印づける出来事であることを示している。のみならず、「料理により、料理を通して、人間の条件がそのすべての属性を含めて定義されて」いると述べられる。
自然と文化を峻別するのではなく、自然の中に文化を根づかせることがレヴィ=ストロースの狙いであったとすれば、「人間とは交換するものである」という人間の本質の解明が彼の狙いであったという理解はあたらないということも理解されるだろう。著者は、個人が集団に帰属するという「同一性の論理」を超えて、「交換と循環による水平方向への関係の展開と伸張」に、今日なお理解されていない、レヴィ=ストロースの思想の意義を認めている。さらに著者は、ネイティヴ・アメリカンが、白人の持ち込んだおとぎ話をみずからの伝承に適合するように手なおしして取り入れた思考のあり方に、同一化の論理を超えた、「到来すべき他者の場所をあらかじめ用意する」という倫理の形を見いだそうとしている。
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レヴィ=ストロースの壮大な思想は、安易で図式的な理解を拒む。百年を超える生涯を通じて、彼は何と闘ってきたのか。野性の生きものとの接し方に看取されるレヴィ=ストロースの「世界との接し方」と、構造主義と呼ばれる「ものの見方」とのあいだに存在する関係とは何か。あるいは、「彼らとの出会いの場」を「私によって私の位置」において作出するというレヴィ=ストロースにとっての人類学の企図が、どのような種類の、どれほどの知的な作業を必要とされるものだったか。
レヴィ=ストロースの壮大な思想の足跡を渉猟した本書を、格好の入門書と謂うには些か難解に過ぎようか。
とりわけ後半の3.4章は、もう少し懇切丁寧に論じて欲しい、と思うが‥。
-20091228
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[ 内容 ]
レヴィ=ストロースの壮大な思想は、安易で図式的な理解を拒むが、彼独特の「世界との接し方」を見ることで、構造主義と呼ばれる「ものの見方」にまで通底する、思想家の仕事の核心に肉薄する意欲作。
百年を超える生涯を通じて、彼は何と闘ってきたのか。
現代世界に生きることのモラル、もうひとつの豊かさの思考。
[ 目次 ]
序章 ひとつの長く豊かな人生
第1章 学生運動家レヴィ=ストロース―社会主義のモラルを求めて(「社会主義学生集団」事務局長;西欧の外へ)
第2章 批判的人類学の誕生―修業時代(ブラジルへ;ニューヨークで)
第3章 野生の思考へ向かって―模索の時代(神話研究への助走;ユネスコと野生の思考)
第4章 もうひとつの豊かさの思考―神話論理の森(神話の新世界の踏査;双子であることの不可能性)
[ POP ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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『悲しき熱帯』がとても面白く、レヴィ=ストロースについてもっと知りたくなったものの、なかなか大著には手が出ないので、手引としてこちらを読んでみることに。
期待通り、前衛的な社会主義活動家だった20代から、100歳を超えるまで、多数の著作をものし、ライフワークと呼べるまとまった研究をいくつもまとめ、さらに社会的活動もこなし、芸術にも造詣の深い、圧倒的にスケールの大きな知的活動の地図を示してくれる。
これまで構造主義やポスト構造主義をちゃんと勉強したことがなくて、レヴィ=ストロースの構造主義人類学についての知識も皆無に近かったのだけど、この本のおかげで、とても簡単明瞭に説明のできるような理論ではないということもよくわかった一方、レヴィ=ストロースがめざそうとしたこともちょっとだけわかったような気がする。
人間の発する音声が、音韻構造をもつことで言語となるというヤコブソンの理論から、自然から文化への移行をもたらす構造を見てとり、インセストの禁止から女性の交換を通したコミュニケーションをうながす親族構造を理論化したこと、そして、同じように自然から文化への移行を示す、調理や衣服や装飾の起源を語る神話の探求を通して、他者とコミュニケートする異なる思考をさぐろうとしたこと。それが、「さまざまな社会の豊かさと多様性という、記憶を超えた昔からの人類の遺産のもっとも素晴らしい部分を破壊し、さらには数え切れないほどの生命の形態を破壊することに没頭しているこの世紀」において、世界への接し方についての異なる思想のありかた、すなわち「自分自身から始めるのでなく、人間の前にまず生命を、生命の前には世界を優先し、自己を愛する以前にまず他者の存在に敬意をはらう必要がある」ことをつたえてくれる「正しい人間主義」を探る試みだったのだろう。
もうひとつ印象深いレヴィ=ストロースの言葉が引用されていたのでメモしておく。「私が『野生の思考』といっているものは、それによって『他者』を『私たち』に翻訳したりまたその逆を行うことができるようなあるコードを作りだすのに必要な前提や公理の体系であり、〔…〕私の意図においては、彼らの位置に自分を置こうとする私と、私によって私の位置に置かれた彼らとの出会いの場であり、理解しようとする努力の成果なのです。」
あと、この本のいいのは図版が多いこと。特に『悲しき熱帯』から興味をもった者としては、猿のルシンダを連れたブラジル探査中の若き日の写真や、銃の暴発で探査隊の若者が手を破壊されたときの混乱の中でレヴィ=ストロースが描いたドローイングをこの本で見られたのが、とてもうれしかった。800円はお安いと思います。
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何度も、もう読むのをやめようと思うのだけど、そのたびにキラリと光る智慧の言葉が現れて感動する。
本書の存在意義はやや疑問。新書なのにマニアックすぎるトピック。レヴィ=ストロースという人物の魅力は、無理に見出そうとしなくても充分に伝わると思うのだが、研究者としてオリジナリティを出そうとして分かりにくくなっているように思われる。
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ウーン難しい。まだまだ勉強が必要。レヴィ=ストロースは元々社会主義の運動を志向していたことが分かりました。
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レヴィ=ストロースの壮大な思想は、図式的な理解を拒むが、「闘う知識人」としての姿を追うことでこの難題に挑む。100年を超える生涯で、彼は何と闘ってきたのか。第一人者による最良の入門書。
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レヴィ=ストロースのことが知りたくて本書を読み始めました。学生のころから名前は知っていても、著書には手を出せませんでした。中沢新一とか内田樹の本を読みながら、でもやっぱりちゃんと原典に当たろうと思って、講演会の記録を読んだり、いくらか図書館で借りて、斜め読みをしたりしました。そして、やっとの思いで「悲しき熱帯」を買い求め読み始めようとしているところです。レヴィ=ストロースの姿は歳をとってからの写真でしか見たことがなかったので、ブラジルなどの原住民の中に分け入る姿があまりイメージできなかったのですが、本書で初めて若いころの写真を見て納得がいきました。ひげを生やしてラフな格好で、どこにでも入り込んでいきそうな勢いでした。さて、本書を読んでレヴィ=ストロースの若いころの生い立ちなどはなんとなくイメージがつかめたのですが、結局研究の内容については、特に神話の話あたりは全く分からずじまいでした。私自身、読解力が弱く、少し難易度の高い文章になると字面を追うばかりで、内容が全く頭に入ってこないことが頻繁にあります。ただ、5回ほど同じ文章を読んでみて、何が書いてあるのか分からないのは(知らないことばが多々登場するということはあるにしても)その文章にも問題があるのではないか、そう思えたりもします。一文が長いというのは読みにくいと思いますが、とにかく主語と述語が遠かったり、主語があいまいだったりで、何のことを指しているのかが分からないということがしばしばでした。さあ、結局予備知識はあまりそろわないまま、レヴィ=ストロースに挑戦します。(「神話論理」などに比べれば「悲しき熱帯」なんてすごく易しい内容なんだろうとは思っているのですが、それでも不安です。)→結局読破できていません。
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前半では、若い頃のレヴィ=ストロースの足取りを丹念に追い、後半では、南北アメリカの神話研究を具体的に結構なボリュームで紹介しているが、「野生の思考」を追っていくその丹念さについていく根気が今の自分にはなかった。第2章後半の音韻論と親族構造の関係についての説明は、今まで読んだ解説本よりよくわかったような気がする。
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戦後のフランス思想家のなかでは、とても安定した精神をもっている感じのレヴィ=ストロース。実際、100歳を超える人生を生きた思想家って、あんまりいないのではなかろうか?
レヴィ=ストロースの分析の対象としたブラジルの部族などは、歴史的な変化の少ない「冷たい社会」であったこともあり、スタティックであるという批判もしばしばなされた。
が、一方では、「野蛮というものがあると考えているほうが野蛮人だ」といった強い西欧への批判の眼差しも常にあって、なんか単純に「いい人」というわけでもない気はしていた。
というところで、「闘うレヴィ=ストロース」という魅力的なタイトルのこの本。
新しいのは、マルキストの理論家・活動的だった若かりし頃の姿。そして、ブラジルでの遍歴時代を通じて、その思想が出来上がってくるところがすごく面白い。
そして、大成しても、やっぱ熱い思いは持続しているし、資本主義、歴史、社会といったダイナミックな視点は常に底流として流れているんだな〜、と。