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商品説明
マニコミオ(精神病院)をなくし、全土に敷いた公的地域精神保健サービス網で重い統合失調症の人々を支え得ることを証明したイタリア。日本とイタリア、好対照な2国の現実をルポし、日本の精神保健のあるべき姿を提言する。【「TRC MARC」の商品解説】
目次
- はじめに
- 第1部 日本の悪夢――1970年,鉄格子の内側に潜入
- 1 恐怖と絶望と退屈の病棟
- 2 私設強制収容所
- 3 不肖の息子とその親
- 第2部 目からウロコ――1986年,精神保健先輩国を訪ねる
- 1 精神病院を廃絶?
- 2 世界の精神保健事情
著者紹介
大熊 一夫
- 略歴
- 〈大熊一夫〉1937年生まれ。ジャーナリスト。元朝日新聞記者、元大阪大学大学院人間科学研究科教授。著書に「ルポ・精神病棟」「母をくくらないで下さい」「ルポ・有料老人ホーム」など。
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紙の本
大きな変化が求められている時代
2010/12/26 20:05
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mikimaru - この投稿者のレビュー一覧を見る
イタリアでは1978年に法律(通称バザーリア法)が制定されたことで精神病院の解体がはじまり、内部にいた患者らが医療スタッフの助力のもとに町で自主的な共同生活を営むなど、世界でも例を見ないほど解放が進んできているのだそうだ。
いっぽう日本では、1964年にライシャワー米国駐日大使が統合失調症の少年に刺されて重傷を負った事件をきっかけに精神衛生法の改正が強く叫ばれたこともあり、そのころ時代としてはまさに「患者は精神病院に収容しろ」という流れの中にあった。
もっとも、80年代以降は入院患者虐待や不審死事件が大手の精神病院で発覚しはじめ(大和川病院事件、宇都宮病院事件)、結果として95年にふたたび法律が改正された。地域の行政のあり方が精神病院の偏在を許してしまった時代が長く(例:P.199によれば、80年代に住民あたりの精神病院数は、都内であっても格差120倍以上であったという)、また、薬や拘禁に依存する診療方針も根強く、本書で描かれているイタリアの事例には、まだまだ及ばないのが実情のようだ。
本書は朝日新聞、朝日ジャーナル、週刊金曜日などに連載した記事をもとに、追加編集したものであるとのこと。
冒頭から、著者自身がかつて(1970年)アル中を装い12日間の入院をした体験からはいる。かなり衝撃的だが、これは以前の著作やその後の出版物でも書かれている話のようだ。わたしは初めて読んだので、その内容と行動力にショックを受けてしまった。ろくに診察もされず、退院を普通に申し出ても許されなかったが、家族が「入院費が払えない」と言ったら、出してもらえたという。
メインの部分としては、イタリアでの取材をもとに、バザーリアという人物と法律制定までに協力した数多くの人々についてつづっている。イタリアも以前は患者の拘禁や放置、虐待が見られ、多くの患者や司法精神病院(精神病の人が法を犯した場合などの収容施設)は、積極的に外へ出すほどの理由付けが見たらないか、引き取り手がないからそのまま留め置くうちに、さらに状態が悪化してしまった人たちであふれていた。
バザーリアという人物の登場は、まさに時代への大きな風穴となった。協力者がこの時期に多く現れたこともまた、運が彼に味方した、イタリアという国に味方したのだろう。
そっくりイタリアに倣えとは言わないが、日本にもまた、何らかの形でのバザーリアが現れることを祈っている。