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商品説明
小島百合巡査は、村瀬香里のアパートに侵入した強姦殺人犯の男を逮捕するが、男は脱走し行方不明に。1年後、香里に脅迫メールが届く。必死の捜索にもかかわらず、不気味なメールは何度も届き…。道警シリーズ第4弾。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
佐々木 譲
- 略歴
- 〈佐々木譲〉1950年北海道生まれ。「エトロフ発緊急電」で日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、日本冒険小説協会大賞、「武揚伝」で新田次郎文学賞を受賞。ほかの著書に「警官の紋章」など。
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紙の本
北海道警察シリーズ第4弾。『うたう警官(改題 笑う警官)』『警官の紋章』は読んでいる。「警官」ではなく今回は「巡査」である。警察小説のタイトルに「巡査」は珍しいのではないだろうか。
2010/02/20 22:29
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
巡査とは法で定められた警察官組織の最下位の階級であり、それをあえて強調しているところに佐々木譲らしさがある。警察小説の第一人者となった佐々木譲が「刑事」という肩書きを使わないところもそれが正規の役職名ではないからであって、著者なりの筋の通し方をうかがわせる。
佐々木譲の警察小説では警察官の使命は市民の生命・身体・財産を保護することであるとする者たちが、したたかにその信念を貫いていく生き様を一貫して描いている。
特に道警シリーズは佐伯宏一を中心に、この市民警察の矜持を誇る数人の最下級巡査たちの友誼を高らかに謳いあげているところが他の警察小説と一線を画する魅力がある。すべてがシステムで動く警察組織のなかで人と人とのかかわりに重きを置いた佐伯らははみだし者であり、冷や飯を食わされている仲間であるだけに、その結束力が見せる活躍は痛快である。今回はグループとしての行動はなかった。それぞれが単独で事件に対処する場面が多かったのだが、シリーズを読んで彼らの個性を知っている読者であれば、無謀とも思える行動を評価してくれる仲間が存在するという精神面で安定性があるから、組織の論理を超えて突っ走ることができるのだと受け止めることができる。そして友人との絆は私たち自身が生きていくうえでとても大切なことだと、しみじみ思うのである。
その一人・小島百合は冒頭、母とその同棲の男から虐待されている幼女を救出する。保育所から児童相談所への通報があり、児童相談所はなすすべなく、次に保育所は警察に通報、警察はこれをまた児童相談所へと実効なきたらいまわし。見かねた小島百合はダーティ・ハリーもびっくり、アパートに乗り込み計算された獰猛さで彼らを制圧する。最近、幼児虐待や凶悪ストーカーからの被害を警察が通報を受けながら、機動的に対応できず殺人事件に至るケースが増えている。おいそれと動けないのが警察組織の論理なのだろうが、文句のひとつも言いたくなるのが市民感覚だ。だから余計に小島百合の過激さには爽快なもの感じるのだろう。リアルな事件性を読者に印象づける、物語として巧みなオープニングである。
「強姦殺人犯のストーカー鎌田光也は村瀬香里のアパートに侵入。警護に当たっていた小島百合巡査が取り押さえ逮捕する。だが、鎌田は入院中に脱走し行方不明となる。一年後、脅迫メールが村瀬香里へ届き、再び小島百合は警護に命じられる………。」
よさこいソーラン祭りの主役格の踊り手である香里と護衛する百合。ダンス競技のトップを目指し乱舞する参加者たち、熱狂の大群衆と祭典警備の警察陣。姿を見せない脅迫者は確実にふたりをとらえていく………。もっぱら小島百合のマンハントサスペンスを中心に読ませる構成であった。
ただ、『警官の紋章』とよく似たパターンで『警官の紋章』の完璧さを超えていない。
闇に葬られた組織犯罪を執拗に追う佐伯宏一のシリーズとしてのストーリーは『警官の紋章』で大団円を予感させる余韻を残して、良いラストだと思っていたところ、『巡査の休日』まで引っ張り、それを佐伯の情と理の葛藤で幕引きにしたところが私を消化不良にした。
『うたう警官』
『警官の紋章』