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商品説明
【直木賞(142(2009下半期))】ほんとは二人ともベストの相手がほかにいるんだ−。愛するべき真の相手はどこにいるのだろう? 「恋愛の本質」を克明に描き、さらなる高みへ昇華する。表題作ほか全2編を収録。『Feel Love』掲載をまとめて書籍化。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
ほかならぬ人へ | 5−179 | |
---|---|---|
かけがえのない人へ | 181−295 |
著者紹介
白石 一文
- 略歴
- 〈白石一文〉1958年福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋勤務を経て、2000年「一瞬の光」でデビュー。「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」で第22回山本周五郎賞を受賞。
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紙の本
人は愛すべき真の相手「ほかならぬ人」 にめぐりあえるのでしょうか。
2010/02/28 20:41
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サムシングブルー - この投稿者のレビュー一覧を見る
深津千鶴さんの装画が素晴らしい。文庫本の表紙には左目を手でおおい、涙を流さずに泣いている女性が描かれています。ページをめくるともう一人の彼女がいます。大久保伸子さんの装幀がいいです。
名家の出である宇津木家の三男に生まれた主人公・宇津木明生(あきお)は、二人の兄たちに劣等感を持ちながら育ちます。普通に暮らすことが夢である明生は就職を機に家を出ます。三年後、なずなと結婚しますが、二年余りしてなずなの元恋人・真一が離婚したことを聞いたなずなは家を出て行ってしまいます。愛は人を狂わせるのでしょうか。
課長職の東海さん(33歳)は明生にとって理想の上司です。いろいろな哀しみを経験した彼女は明生の機微がわかります。愛は人を救えるのでしょうか。
明生から離れていくなずな、許嫁でもあった幼友達の渚の死によって、明生の心は折れていきます。愛は人を孤独にするのでしょうか。
そんな明生を東海さんは弟のように可愛がり、子どものように叱ります。明生にとって彼女がベストの人になっていきます。愛は永遠なのでしょうか。
自暴自棄になった渚に明生は言います。
「人間の一生は、死ぬ前最後の一日でもいいから、そういうベストを見つけられたら成功なんだ。言ってみれば宝探しとおんなじなんだ」(156頁)
愛は宝探しなのでしょうか。
第142回直木賞受賞作「ほかならぬ人へ」は愛の残酷さを描いた小説であるように思います。人は愛すべき真の相手「ほかならぬ人」にめぐりあえるのでしょうか。
紙の本
あなたはもう会いましたか?
2010/02/21 22:07
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:RIKA - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ほかならなぬ人へ」「かけがえのない人へ」という、同じテーマで綴られた2編が1冊になった本作。「ほかならぬ人へ」の主人公、明生は名家の三男。育ちに恵まれながらも優秀な兄たちに比べてぱっとしない人生を送っており、親に反対されながら元キャバクラ嬢と結婚します。「かけがえのない人へ」の主人公みはるは、容貌にコンプレックスがあるものの、学歴も仕事も整っており、同じ会社のエリートと婚約中。
恋愛において、何もかも恵まれた人だったら、選択肢は多いか極端に少なくなるだろうし、色々なことにハンデを持っている人は選択肢が少なくなる。多くの人は、その間にいて、どこかで折り合いをつけているのでしょう。結婚するときには、「恋愛結婚」という名目のもと、相手を選ぶのもある程度自由です。好きな人を選ぶのも選ばないのも。親の反対する人を選ぶのも選ばないのも。
しかし、結婚をある程度続けたあとに、「やっぱりこの人が運命の相手だった」と思う人は、少ないのではないでしょうか。事情はそれぞれ。運命の相手を見つけることが、幸せか不幸せかを論じません。
怖いのは恋愛が自由にできるからこそ、私たちはいつも危険にさらされているということ。運命の相手がどこかにいる、と思うことができる。また、なぜか惹かれる気持ちを肯定することもできる。あるいは、「もしかしてあの人が」と、後になってから思うことだってある。
2人の主人公は、決して自分の人生にドラマチックな展開を求めていたわけではありません。運命の人を探してさまよっていたわけでもない。でも、出会ってしまう。小説の中の言葉でいえば「明らかな証拠」をもった人と。それが、ほかならぬ人、かけがえのない人。表面上でごまかせても、自分だけがはっきりとその人とわかる人。
そして、真実が救いになるとは限らないわけで、運命の人がどこかにいるかも、と淡い願望をもつうちはまだ平和です。読みやすいけれど、今の恋愛のある部分をきれいに切り取っていて、かつ毒もある。そういう小説だと思いました。
紙の本
中篇2篇からなる直木賞受賞作。直木賞の“大衆作品”という主旨に基づく側面的な意味合いにおいては読みやすい作品でぴったしの受賞作かもしれませんが、いかんせん主人公に共感が出来なかった。むしろデビュー作『一瞬の光』のインパクトの方がずっと印象的で切ないながらも首尾一貫しているところが個人的には受け入れれたのだけど。テーマ自体は愛で深いのですが、私にはそれほど深遠な作品には感じられなかったのが残念です。
2010/02/15 19:45
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
第142回直木賞受賞作品。
前作の『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を受賞、そして本作で直木賞を見事受賞。
これで文壇のスターダムへとのし上がった白石さんですが本作を読む限り、果たして直木賞の受賞が妥当だったのかどうか甚だ疑問を感じた私である。
過去の直木賞の受賞作を振り返ってみても、なぜこの作品が選ばれたのだろう、なぜあの作家じゃなくてこの作家が選ばれたのだろうともちろんいろんなタイミングが合るのでしょうが。
もちろんいろんな作風があってしかりなのであるが、やはり内省的で思慮深いのが白石さんの登場人物への共感が白石さんの一番の魅力なんだなと思ったりするのですね。
たとえ少し道をはずれていようが。
本作は全体的に焦点がぼやけている印象は拭えませんわ。薄っぺらいというか。
本来の白石作品というのはあくまでも個人的な意見ですが、10人が読めば2~3人の人に大きな共感を得てもらうという
前作でも強く感じたのですが、やはり作者の倫理観・世界観がちょっとはずれているような気がするのですね。
本作で言えば女性の容姿に対する人生における損得が生じる描写。
女性読者が読まれたらどう感じるのでしょうかね。
思えば以前の直木賞は良かったです。
かつて金城一紀がデビュー作の『GO』で受賞されたのが約10年前ですね。
本作が直木賞受賞できるなら、デビュー作の『一瞬の光』でもよかったのじゃないかなと強く思いました。
読者が少なくともどっぷり嵌れるレベルの作品かどうかで言えばデビュー作の方が上だったと思います。
逆に本作は普段あんまり本を読まない人は読みやすくっていいかもしれません。
少なくとも言えるのは白石作品は直木賞は取れても本屋大賞は取りにくいでしょうね。
そこら辺りが一番の直木賞の現状の問題点じゃないかなと思ったりします。
2篇ともコンプレックスを持った人が主人公ですね。
「ほかならぬ人へ」の明生は名家の三男に生まれますが、優秀な父母や兄弟に対してコンプレックスを持っています。
家からも断絶された状態で、家族の反対を押し切ってキャバクラ勤めの女性と結婚するのですがなかなか上手くゆきません。
主人公の曖昧さというか判断力のなさにイライラしつつも、3人の女性のコントラスト(美人妻のなずな、許嫁の渚、そして上司で不美人の東海)をそれなりに楽しめる作品でもあります
「かけがえのない人へ」の主人公はみはるという女性で容姿に少しコンプレックスを持っています。
彼女も良家の出で父親が会社社長ですね。エリートの男性との結婚が近いのですが、かつての不倫相手の黒木と関係を復活させてます。
エンディングどちらも悲しいです。
悲しいんだけど胸がいっぱいになって本を閉じることとなることはなかなか出来ません。
表題作はやはり親の言うことを聞かなかった主人公のなれのはて的な流れですね。
“やっぱりこうなったか”的な。
そして後者は男性作家が描くから余計にそう思うのでしょうが、みはるが真実の愛を模索しているというよりも黒木にとっての都合のいい女のように見受けれるのですね。
深みのある恋愛というよりも、人生に迷いを生じている男女の活写という作品のような気がしました。
小説を読んでいて、たとえ間違っていても突き進んでほしいという作品と、間違っているのでイライラする作品があるのですが、完全に後者に分類できる類の作品だと思います。
私は良い意味で“理屈っぽい白石作品”前者的な作品の方が好きですわ。
生き方を模索しているよりももっと自分の生き方を貫く主人公がいいですね。
2篇とも私の観点で言わせていただいたら“必死に恋愛していない”ような気がします。
その一因として少し作者を擁護させていただくとやはり“枚数が足りなかった”のでしょう。
白石さんは根本的に長篇作家だと思います。
逆を言えば、これは出版社の巧みさだと思うのですが、他の白石作品と比べて行間も広くて読みやすいです。
まるでライトノベルを読むような感覚で読めますね。文章自体は以前よりも読みやすいと思います。
少し苦言を呈したいのは、登場人物の出身大学名に実名を使っている点ですね。
よりリアルになるのは間違いのないところでしょうが、フィクションの世界ではどうなんだろう“掟破り”なんじゃないでしょうか。
その大学の出身の方が読まれたらあまりいい気はしないでしょうね。
具体名を出すことによって却って類型的に感じられ、小説としてのインパクトに欠けているように感じました。
皮肉なエンディングになりますが本作はその読みやすさにおいては直木賞に相応しい作品であると思います。
ただ個人的にはデビュー作のように10人が読めば2~3人の人に“大きな共感”をもたらせることもないと思います。
一番この作品に欠けている点は“主人公に感情移入出来ない”ことなんですね。
心に響く作品を書ける作家なのになという残念な気持ちで本を閉じました。
この感想を読まれたあなたも確かめてほしいなと思いますね。
そしてできれば『一瞬の光』も合わせて読んでください。