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商品説明
都新聞の花柳演芸記者を勤め、長唄、清元など演芸全般に通じた粹人平山蘆江は、泉鏡花、喜多村緑郎らと夜な夜な「怪談会」に打ち興じる怪談好きとしても知られた。本書は、蘆江がものした怪談小説十二本に随筆「怪異雑記」の附録つき。「火焰つつじ」など二三の作品がアンソロジーに収録されただけで、令名のみ高く、その全貌を見たものが殆どいなかった幻の怪談集を、昭和九年の初刊以来七十五年振りに復刊。
収録作品一覧
お岩伊右衛門 | 8−31 | |
---|---|---|
空家さがし | 32−57 | |
怪談青眉毛 | 58−83 |
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紙の本
超絶技巧!…なのか?
2009/11/18 20:44
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:迷跡 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最後に置かれた「大島怪談」は、実話怪談で、ある歌舞伎俳優の若いときの経験の聞き書きです。
三原山に身を投げて自殺しようと大島にやってきた“私”ですが、いざ火口のふちに立つと飛び込めません。すごすごと下山して、その日は麓の船着場の旅館に泊まります。
宿泊客はというと
宿には私が山へ登る前に同じやうに、美術学校の生徒が三人と、品のよい若女房が一人泊まって居りました。
“私”は疲れきって早めに寝につくのですが、夜半、周りが騒々しくて目が覚めます。夕刻外出した若女房が戻ってこないというのです。折りしも外は、凄い強風が吹き荒れていました。部屋を検めると書置きが出てきました。あわてて皆で捜索に出ます。
私たちは主人と番頭を加へて都合六人手に手に提灯を振りかざしながら、外へ出ました。
結局、海に身を投げて岩場に打ち上げられた若女房の死体を発見して回収します。旅館に戻っても、“私”と美術生たちは落ち着きません。
「何だか淋しくつてたまらない」
「いつそ一緒に寝る事にしようぢやないか」と皆で申しあつて私も美術生の仲間入りをさしてもらひ五人には少し狭い部屋へ固まりました。
気を利かした番頭が風呂を沸かして勧めます。
「どうも皆さん、大層御迷惑をかけまして済みません。只今お湯を沸かせましたから、一風呂身体をお清めなすつてお伏せりを願ひます」と云いましたので、渡りに舟、五人揃つて湯殿に入りました。
この後の湯殿での恐怖体験が作品の白眉なのですが、それはさておき、お気付きでしょうか?
いつの間にか美術生が三人から四人に増えているのです!
“お、これは叙述トリックというか、叙述怪談!”とわくわくして読み進んだのですが、結局最後まで、当然の如く美術生は四人なのです。東雅夫編集長の各怪談の解題つきの解説でも言及なし。
首をかしげてしまいました。
単なる作者の勘違いなのか?
あるいは、メタ叙述トリックとも言うべき超絶技巧なのか?
具眼の士に是非解明していただきたい謎ではあります。