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- カテゴリ:医療従事者
- 発行年月:2009.8
- 出版社: 日総研出版
- サイズ:26cm/279p
- 利用対象:医療従事者
- ISBN:978-4-7760-1458-4
紙の本
患者と作る医学の教科書
著者 ヘルスケア関連団体ネットワーキングの会 (編著),『患者と作る医学の教科書』プロジェクトチーム (編著)
患者と医療者が協働して作った臨床系教科書。慢性頭痛、認知症、心臓病、乳がんなど、あらゆる疾患を取り上げ、各疾患の病気の成り立ちを患者の目線から解説し、症状や生活を患者の言...
患者と作る医学の教科書
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商品説明
患者と医療者が協働して作った臨床系教科書。慢性頭痛、認知症、心臓病、乳がんなど、あらゆる疾患を取り上げ、各疾患の病気の成り立ちを患者の目線から解説し、症状や生活を患者の言葉で説明する。演習問題付き。【「TRC MARC」の商品解説】
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患者のための教科書の部分と、医者のための教科書の部分とがあります。
2010/02/22 17:06
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
医療関係の団体のプロジェクトチームの著書で、「刊行にあたって」には「患者さんと医療者が協働して作った初めての臨床系教科書」とあります。「患者さんにもわかりやすい書き方になりました」とはあるのですが、どちらかといえば患者の気持ちを汲み取った医療をするための、医療者の教科書だと思いました。
幾つかの病気について、それぞれ「病気の概念・説明(特徴など)」「初診時の様子(症状、診断後の気持ち)」「治療、患者の悩み、問題」等、10余りの項目が挙げられています。
「病気の概念・説明」「医療制度、問い合わせ機関」などは、「患者のための教科書」的部分でしょうか。どんな治療があるのか、薬の名前・副作用などが書かれています。「患者が書いた」というだけあり、わかりやすい文章です。薬は薬物名ではなく商品名で書かれているので、もらった薬がわかる利点はあります。しかし、その薬物がどんな原理で作用するのか、を学べるほどの説明は紙数の限りもあるのでしょうが載っていません。
個々の具体的な病気(心臓病、1型糖尿病など)を項目にしているので、取り上げられていない病気も多く、全般的な「病気の教科書」ではありません。このことは冒頭に断り書きもあります。難病と言われるようなあまり身近ではない病気も載っていますので、それらを勉強しなくてはいけないと思う人には役立ちそうです。それでも紙数の制限もあるのでしょう、個々の病気の説明は短いので、「知るため」のとっかかりぐらいだと思います。
「誤診されやすい病気など」や「診断時に気遣って欲しいこと」「医師や看護師などに望むこと」など、かなりの項目は「医療者側のための教科書」として書かれています。「理解してもらえない」「いきなり告知されるのはショック」など、さまざまな患者の側の気持ちの事例、要望も載っています。巻末の練習問題も、医師と患者になってのロールプレイングなど、やはり「患者の気持ちを汲み取る医療」を目指したものになっています。
こういう教科書を出さなくてはならないということは、それだけ「患者の気持ちが汲み取られていない」現実が切実だということなのでしょう。なんだか、こんな教科書ができなくてはならないこと自体が、あたりまえのようなことがあたりまえでなくなっていることが、一番問題な気がしました。
実際の、現場の臨床医の方が読んだらどんな感想をもたれるでしょうか。「このぐらいわかっているけれど、なかなか実行できないんだよね」という声も聞こえてきそうです。患者の気持ちをゆっくり受け止めている時間(と心)の余裕の無い医師。
すぐに「ちゃんと気を使ってくれない」と不満を感じる側にも問題がない、とはいえないかもしれませんが(不満を感じるぐらいの元気がある人はまだいいんですよね)、現代の人間関係のおかしなところがこの本に滲み出ているようにもおもいます。
患者としてはどうやったら医師から適切な治療・情報を引き出せるのか、医療側はどのようにしたら患者が安心して心を開ける医療にできるのか。その双方からの物の見方を考える契機にはなりそうですが、根本的な解決の道はこれからまだ、模索しなくてはいけないようです。
取り組み自体の方向は良いものだと思うので、よりよい方向を目指して提案をしていって欲しい、と書評と言うよりは希望を述べておきたいと思います。