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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2009.10
- 出版社: 新潮社
- サイズ:20cm/223p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-10-521713-6
紙の本
ガラスの街
ニューヨークが、静かに、語り始める—オースターが一躍脚光を浴びることになった小説第一作。【「BOOK」データベースの商品解説】深夜の間違い電話をきっかけに、私立探偵となっ...
ガラスの街
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商品説明
ニューヨークが、静かに、語り始める—オースターが一躍脚光を浴びることになった小説第一作。【「BOOK」データベースの商品解説】
深夜の間違い電話をきっかけに、私立探偵となったクイン。彼は都市の迷路へと入り込んでいく…。透明感あふれる文章と意表を突くストーリーで、著者が一躍脚光を浴びることになった小説処女作を新訳。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ポール・オースター
- 略歴
- 〈ポール・オースター〉1947年ニュージャージー州生まれ。作家。70年代から詩、戯曲、評論の執筆、フランス文学の翻訳などに携わる。
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紙の本
ポール・オースター1Q85柴田元幸200Q
2010/01/11 18:24
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kc1027 - この投稿者のレビュー一覧を見る
村上春樹風に言うところの「そうではなかったかもしれない」現在の姿は、
そこに至るターニングポイントがあると思う。本書を読むことは、
そういったポイントを迎えることにもなりうることで、少なくとも私は、
本書の旧訳の第2章で、9年間暗所に幽閉されていたスティルマンの異様な
「言葉」のかたまりに初めて触れたとき、それ以前とは異なる言語の世界に、
もっとはっきりとした認識で言えば「異なる現実」に、入ってしまった。
本書を読まなかった現在を想像することはなかなか困難なのだ。
本書は1985年に発表されたポール・オースター初の小説で、日本での
代名詞的存在である柴田元幸先生による新訳が長らく待たれていた名作。
1本の間違い電話から始まるオフビートな探偵物語。探偵する側は一体
何を探偵しているのか、探偵される側は一体何をしようとしているのか、
それらを語っているのは誰で、語られているのは誰なのか、幾層もの
入れ子構造になった物語の世界は、ポール・オースターの生理的な
現実認識そのもので、著者の次作以降の語りの構造が凝縮されている。
実を言えば、今読んでも90年代前半に読んだようなパラダイムが転換する
ような感動はない。当たり前だ。本書によってパラダイムを変えられた
世界の中で私はそれなりに生きてきてしまったのだから。でも今の地点から
初読の頃のことを思うと、はっきりとした意識の中で、本を読むことのものすごさがありありと認識されてくる。
本書の主人公は、間違い電話で掛かってきた探偵の依頼を引き受けて
その任務を遂行するうちに、底なしの都会の深遠にはまりこみ、おのれの
存在の根拠を失っていく。言葉が尽きたときに存在も消える。あとには
ただそれまでに書き綴られた言葉だけが残され、残されたものはその
言葉を追うことしか出来ない。
このあまりに抽象的な物語を、年の功であまりに抽象的だと退けることは
私には出来ない。この物語は、物語の創出なくして生きられない人間という
存在を、私に認識させた。柴田先生の訳し直しから伝わってくるのは、
生きるためには、いつだって自らの物語を創出する必要があり、
いつだって書物は、今の現実認識を乗り越えていくためにあるということ。
そんなことを思わせてくれる危険な書物は、人生の中でもそう多くはない。
紙の本
ニューヨーク三部作の第1作目の作品。今回柴田さんの訳本が発売され3冊とも柴田訳で読めることになった。本作は孤独な主人公の人間としての根源にあるものを謳う作品なのでしょうが、作品の良し悪しよりも柴田さんの素晴らしい訳文に浸るべき作品と言えるかもしれませんね。
2010/01/15 13:47
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ポール・オースターのデビュー作が念願の柴田元幸訳で読めるようになりました。
現在、翻訳家としては人気実力ともに第一人者と言える柴田さん。
その中でもポール・オースターはミルハウザーとともに柴田さんが訳されている代表的な作家です。
言わずと知れたことでしょうが(笑)
私に限ったことですが、“ポール・オースターだから読むと言うより柴田元幸訳だから読む”と言ったほうが適切ですね。
それほど安心して訳文に向き合える訳者と言えそうです。
『そもそものはじまりは間違い電話だった。真夜中に電話のベルが三度鳴り、電話線の向こう側の声が、彼ではない誰かを求めてきたのだ。ずっとあとになって、自分の身に起きたさまざまなことを考えられるようになったとき、彼は結局、偶然以外何ひとつリアルなものはないのだ、と結論を下すことになる。』(本文冒頭より引用)
印象的な冒頭分ですが、読み終えて理不尽なことは理不尽なことから始まると言ったらよいのでしょうかね。
本作の原題は「CITY OG GLASS」。
ちょっと内容的には深く読みとろうとすれば複雑ですね。曖昧さゆえの複雑と言うべきなのでしょうか。
邦題の「ガラスの街」の“ガラス”という言葉がこの物語の曖昧模糊的な要素と喪失そして孤独感の漂う雰囲気を上手く表しています。
主人公と言うべき作家のクインはある電話から人生が変わります。
その電話とはクインをポール・オースターという私立探偵と間違えてかかってきた仕事の依頼の電話なのですね。
はじめは無視してたのですが、一転して依頼主に会いに行く所から物語そしてクインの人生が動き出します。
内容的には探偵小説なのですが探偵小説としての醍醐味はありません。
なぜなら明確な結末もないからです。というか読者に最後は身を委ねられていると言えばいいのでしょうか。
読み進めるうちに、ワクワク感と言うよりも不安な気持ちに陥ります、まるで迷路に入ったような感じかな。
その不安な気持ちを柴田さんのしっかりとした訳文がなんとか支えてくれているような気がしました。
印象的だった点を二つほど書き留めますね。
まず最初にクインがヴァージニア・スティルマンに誘惑されるところ。
この物語の中で息抜きともなりアクセントをつけてくれます。
次は「ドン・キホーテ」に関する作者の考察が随所に見られるところですね。
これは“敢えて作者と同名のポール・オースターという作家を作中に登場させての場面”なのでかなりキーポイントとなります。
世界的作家となった現在のポール・オースター、今は考えられないことですが、この作品を上梓するにあたって17の出版社から断られたそうです。
作者の苦悩の表れと主人公がオーバーラップされた方が多かったんじゃないでしょうか。
でもやはり他のオースター作品も読んでから、そしてもう一度読んでみると感慨深いものになるような気がします。
結構“曖昧に書かれているように見えて実は洒脱な作品”なのかもしれません。
読書って人生と同じで奥が深いですからね。
紙の本
なんと作者と同名の探偵と小説家が登場!
2009/12/16 14:19
5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る
ポール・オースター著「ガラスの街」を読んで
照る日曇る日第317回
アメリカの人気作家の処女小説を柴田元幸氏の翻訳で読みました。この推理小説仕立ての物語は、以下のような特徴を持っているようです。
1)本文の英語はいざしらず、文章が春の小川のようにすいすい流れ、物語の推進力と話柄の転換が自在であり、作者は卓抜な構成力を持っていること。
2)なんと作者と同名の探偵と小説家が登場して、作中で重要な役割を果たすこと。
3)推理小説としては破綻しているが、推理小説という形式をとった純文学小説としては成功を収めていること。あるいは推理小説という形式の必然性を持った純文学小説であること。
4)登場人物に仮託して、作者は新しい言語の創造と人類の再統合を夢見ていること。また「ドンキホーテ」という小説の成立と作者セルバンテスの関係についてユニークな考察を行っていること。
5)事件の真相はまったく解明されず、読者は唐突に放り出された地点が物語の結末になるのだが、その不条理な感覚こそが作者の狙いであること。
最後にこの小説のとても印象的な箇所を引用しておきましょう。
「それはit is raining 、it is nightと言うときitが指すものに似ている。そのitが何を指すのか、クインはこれまでずっとわかったためしがなかった。あるがままの物たちの全般的状況とでもいうか。世界がさまざまな出来事が生じる、その土台であるところの物事があるという状態。それ以上具体的には言えない。でもそもそも、自分は具体的なものなど探し求めていないのかもしれない。」
ふむ。なるほど。しかしもっと気になるのはマイケル・ジャクソンのthis is itです。「さあ、いよいよだぜー」などという口語いったい何がitで何がthisだと、はたしてこの希代の踊亡者にはわかっていたのでしょうか。
♪this is itこれがそれそのitってなんじゃらほいMr.マイケル 茫洋