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商品説明
取り返しのつかない、色んなこと。今までもいっぱいあったし、これからもいっぱいあるんだろう。忘れられない苦い記憶。知ってしまった笑顔の裏側。新直木賞作家が人生に射す影を捉えた受賞後第一作。【「BOOK」データベースの商品解説】
取り返しのつかない、色んなこと。今までもいっぱいあったし、これからもいっぱいあるんだろう…。忘れられない苦い記憶や、知ってしまった笑顔の裏側を描く。表題作を含む全8編を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
マスカット・グリーン | 9−34 | |
---|---|---|
腹中の恐怖 | 35−46 | |
微塵隠れのあっこちゃん | 47−69 |
著者紹介
北村 薫
- 略歴
- 〈北村薫〉1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。91年「夜の蟬」で日本推理作家協会賞、2009年「鷺と雪」で直木賞受賞。ほかの著書に「玻璃の天」など。
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紙の本
謡口早苗の絵がいいです。それもカバー画ではなく各話の扉の絵。それとお話のタイトルが素敵。ベストスリーは、「微塵隠れのあっこちゃん」「三つ、惚れられ」「よいしょ、よいしょ」かな・・・
2010/02/18 19:19
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
装丁の坂川事務所は御馴染みですが、でも所長の栄治さんや、いつも+でコンビが表記される田中久子さんの名前がありません。もしかして別の坂川事務所なんでしょうか。それと装画の謡口早苗、あれ、なんだか記憶があるぞ、とまあ自分の読書メモを検索。するとですヒットしたのが『語り女たち』『紙魚家崩壊』『玻璃の天』『1950年のバックトス』『野球の国のアリス』『鷺と雪』と北村作品だけがズラリ。
ああ、作家に気に入られているんだな、なんて思います。ちなみに、カバーイラスト提供の大一電化社は初見。何だろう? って思って、今度は広大なネットの海を検索。なんと100種類以上のエスプレッソマシンをイタリアより直輸入するかなり有名な会社さんらしいです。ふむ、奈良の天理に会社があるんだ・・・
ついでに書いちゃえば、謡口早苗の扉の口絵では、「マスカット・グリーン」が好きです。それと、「微塵隠れのあっこちゃん」。モノトーンでも優しさが伝わってくる感じ。そしてなんといっても色合いが素敵なカバー画。でも、R2-D2って、こんな形じゃあなかった・・・何ていう人は、表題作を読めばその謎が解けます。
ちなみにこの本、出版社のHPの言葉を借りると
*
直木賞作家の受賞後第一作!
《取り返しがつかない》という、時の中を生きる人間にとっての切ない思いを描いた表題作ほか、忘れられない苦い記憶、ふと見てしまった笑顔の裏側など、人生にふと射す影を描いた短編集。
*
なんだそうです。何度も候補に上がっていたので、もうすこし前に直木賞を取ったかと思っていたんですが、冷静に思い出せば、つい最近なんですね。これが受賞第一作とは。でね、北村はあえて断るわけです。表題作については、怖いお話だから妊婦さんは読まない方がいいかも、って。うひゃ、です。私、怖いの嫌いだし。恐る恐る本の中身を覗いてみると・・・。
以下、各篇の初出と簡単な内容紹介です。
まえがき
マスカット・グリーン(「青春と読書」2007年10月号):同じ会社の雑誌と小説の編集部で働く涼子と親明夫妻。朝食の時、デザートを食べながら夫が口にした「――皮を剥き羞じらいて出すマスカット」の句・・・
腹中の恐怖(「小説NON」1997年12月号):白萩加奈のもとに全く知らない耳川鈴江という女性から届いた手紙。そこには、もう一通の手紙が同封され・・・
微塵隠れのあっこちゃん(「小説すばる」2008年6月号):大きくはないデザイン事務所に勤める二宮あつ子が仕事で付き合うことになった広告代理店の担当、五堂大輔という男、間違えばかりしてそれを人の責任にして、なおかつ尊大で・・・
三つ、惚れられ(「小説すばる」2008年3月号):陽子のところに配属されたのは、賑やかで色白でぽっちゃりしている、失敗ばかりしていて、それでいて憎めない若砂亜梨沙、陽子にワカスナ子が告げたのは・・・
よいしょ、よいしょ(「小説新潮」2008年1月号):よく利用することから市立図書館友の会に誘われた瞳が、不要図書の整理をしている時見つけた雑誌。息子・純太の中学校の授業参観に出かけることになって・・・
元気でいてよ、R2‐D2。(「野生時代」2008年11月号):この町にお別れをする前に、友人とイタリア料理店で食事をすることにした私。喋っているうちに、好きだったこの土地を離れる理由を語り出し・・・
さりさりさり(「小説すばる」2008年9月号):詩織は満足に睡眠をとったことがない。その理由は結婚していった姉が残した猫。久し振りに、その猫と離れて千葉の姉夫妻の家に泊まることになって・・・
ざくろ(「小説すばる」2009年4月号):60歳になった私が思い出すのは、小学生だったときのクラスの仲間たちのこと。いつも悪戯ばかりして叱られていた男の子や、そのとき読んだギリシア神話の話・・・
作品は甲乙つけがたいものばかりなのですが、タイトルでいうと「微塵隠れのあっこちゃん」「三つ、惚れられ」「よいしょ、よいしょ」「元気でいてよ、R2‐D2。」「さりさりさり」が好きです。特に「微塵隠れのあっこちゃん」と「三つ、惚れられ」の二つはいいな、って思います。
紙の本
「微塵隠れのあっこちゃん」だけでも読む価値がある
2009/09/26 23:54
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年直木賞を受賞した北村薫が、2007年から2009年にかけて雑誌媒体に発表した8編を収めた一冊です。
北村薫が「私と円紫さん」や「ベッキーさん」のシリーズで扱ってきたような日常に潜む些細な謎をもとに紡いだ物語でありながら、怪異譚といった性格を強く持つお話がそろっています。
しかし必ずしも多くの読者に好意的に受け止められる物語ばかりではないような気がしました。
表題作の「元気でいてよ、R2-D2。」にはさほど感心しませんでした。
「腹中の恐怖」は確かに怖気(おぞけ)を震(ふる)って立ちすくんでしまうような展開を見せる物語ではありますが、北村薫の長年のファンを自認する私には、彼の紡ぐ物語というものに対してある一定の期待値を持っていて、そこからは遥かに遠い不気味さが残る、後味の悪さが気になりました。
「さりさり」と「よいしょ、よいしょ」にも特に思うところがありませんでした。
一方「マスカット・グリーン」には、人生の路傍に思わぬ形で置かれた密やかな闇を見せられた気がして、実に北村薫らしい一品だなと唸らされました。この物語の闇は誰しもが気づくわけではないものですが、主人公の涼子はふとしたきっかけで気づいてしまいます。闇の持つ妖しさのみならず、気づいてしまうことの痛みにも思いが至ります。
私がもっとも気に入ったのは「微塵隠れのあっこちゃん」。
人生を歩む上で誰もが等し並みにそれぞれ積み上げていく記憶のかけら。あつ子があの日、明るい障子の向こうに見た日常がひときわ大きなかけらとなって彼女の人生を、時 に重く圧(お)し、また時に懐かしい温もりをもって包みこむ。
同様に私にも「きっと、人生の終わり近くになっても、まだ鮮やかに思い出す」その時があるはずだ。
主人公と読者である私が重なる一瞬をそこに見出すことが出来る一編として読むことができ、私は今とても嬉しく感じています。
紙の本
日常のゾッとする瞬間
2009/09/18 12:42
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
「怖い話」の短編集なのですが
「怖い」といっても幽霊ものではなく、
日常の中でゾッとするようなことに出会う話。
1997年に雑誌発表された「腹中の恐怖」が
どこにも収録されていないことから
ほかにも怖い話を書いて一冊作りましょうということになり
本書が出来上がりました。
ですから、やはり「腹中の恐怖」が秀逸です。
ある日、見知らぬ年配の女性から手紙が送られてきます。
その中には、彼女の息子は、以前、
自分のことが好きだったと書かれています。
そして、息子の指示に従うため、この日のこの時間に自ら、
自宅のポストに投函しました、と。
この話は、北村薫自身も
≪妊娠中の女の方は、『腹中の恐怖』を読まないで下さい≫
とまえがきしていて、本当にやめたほうがいい。
できれば、「お母さん」は読まないほうがいい。
表題作の「元気でいてよ、R2‐D2。」もいい。
呑んでいる女二人の話題は、コロコロ変わっていき、
死んだ人の話から、ふと引越しの話になります。
そして、その理由を聞けば、引越したくなった気持ちがわかります。
絶対にわかりあえない人は、世の中にいるものです。
また、後ろにいくにつれて、
だんだん幻想的な話になっていくのは、北村薫らしい。
最後の「ざくろ」は女性の繰り言ですが、
60歳でこんなふうに記憶があいまいになるのは、早いかな。
でも、こんなふうに「腹中の恐怖」も幻想的であってほしいのに、
リアルなんですよね。
リアルであってもおかしくないことは幻想的に、
幻想であってほしいことはリアルに描かれています。