紙の本
続 『密室殺人ゲーム』 (Web.2.0 バージョン)
2010/03/10 11:35
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『密室殺人ゲーム王手飛車取り』の続編。
『密室殺人ゲーム王手飛車取り』のラストが一見リドルストーリー(読者に結末をゆだねる)の体をとっていたのが気になって手にとってみた。
しかしその期待は見事に裏切られた。
「続編」といっても想像していた「それ」とは大きく異なっていたのだ。とはいえ、がっかりしたかといえばそんなことはなく、むしろ前作よりも愉しんでしまった。
『密室殺人ゲーム王手飛車取り』では「素晴らしいトリックを出題するために現実の殺人を犯す」という設定が受け入れづらく正直読んでいてキツカッタのだけれど、本書においては―――免疫があるせいか―――ただ純粋に楽しめた。
大きな流れとしては『密室殺人ゲーム王手飛車取り』と同じく、チャットメンバーの一人による出題(殺人+トリック)と出題者以外による解答のパタンなのだけれど、本書では作品の真ん中あたりから物語が大きく展開する。
どう展開するかはネタばれになるので書かないが、その替わり、表紙の内側にある著者の言葉と作品冒頭の注釈を引用しておくことにする。(この二つが作品の特性を最も表していると思うので)
―――映画『ソウ』シリーズのすばらしいところは、前作までに使われた驚きをふまえたうえで、同一線上から少しだけずらした驚きを提供することにある。焼き直しではなく、まったく違うということもなく、少しだけずらすことにより、シリーズの世界観を拡散させることなく奥行きを与えている。自分もそういうずらしができればと思い、『密室殺人ゲーム』の続編を書いた ――歌野晶午
―――Web2.0(ウェブにーてんぜろ)
従来Web上で提供されていたサービスは、特別なスキルを持った送り手がコンテンツを作った段階で完結し、受けてはその情報をただ取り込むだけの一方通行であった。対してWeb2.0では、受けてと送り手の垣根がなくなり、誰もが情報を発信できる。利用者が増えれば増えるほど提供される情報の量が増え、その蓄積が巨大な集合知となり、サービスの質も高まる傾向にあるといわれているが、その一方で、誰もが機能に手を加えることができるため、そもそもの制作者が初期に意図したものとは違った方向に行ってしまうこともある。
投稿元:
レビューを見る
これ書店で見るまで前作を読んでいたことすら忘れていた...。
読み始めてみたら序々に記憶が蘇ってきた...。たしか大阪出張の
帰りに新幹線で読んだんだった。
歌野氏のコメントにもありますが映画「SAW」シリーズに感化されての
このシリーズの続編だとか。言われてみれば今回のシチュエーションは
前作と比べたときに感じる違和感の正体そのものだったのねー。
ふむふむ。
ここまであっけらかんとゲーム性を高らかに謳われると
読んでいる方もゲーム感覚で読める分、まだ安心。純粋に
5人のゲーマーたちの仕掛ける密室トリックに頭を捻って読み進められます。
まぁ、自分で導き出した正解はaxe君のトリックのみでしたが...。
これ「SAW」と同じようにシリーズ化されるのかなー。
投稿元:
レビューを見る
“「ちーす。今日は冷えるな」
「ほかに何か言うことは?」
早速aXeがつっかかった。
「缶コーヒー買ってくるんだった」
「四十分も遅れてそれですか」
「わりぃ、遅れた」
「次からは来なくていいですよ」
「粘着」
「ワタクシは常識を説いているだけですが」
「人殺しがお説教しますかそうですか」
「ズバリ、次の問題の仕込をしていたんだね?」
頭狂人が割って入る。
「正解」
「どういう仕込み?」
「それを言っちゃあネタバレだろ――て、ジブン、ツッコまれるのを見越して言ってるだろう。いやらしいやっちゃ」
「仕込での遅刻なら、まあ許してもよかろう。しかしそうそう遅刻されては、早晩我輩のストックも底をつくぞ」
教授が言う。
「ストック?」
「場つなぎに、軽めの問題を出しておったのだよ」
「ああ、いつもの脱力系」
「癒し系」
「どんな問題よ?」
「聞かなくていいと思う」
頭狂人は笑った。
「じゃあ聞かない」”
頭狂人に044APD、aXeにザンギャ君に伴道全教授。
再び彼らが繰り広げる密室殺人ゲーム。
出題者=殺人犯という狂ったような内容。
前の巻の終わり方があれだったので、さては生きていたのかと少しは思ったが、まさか彼らを騙る奴らの話だったとは。
最後のトリックは結構初めにわかったけど、あれは読者にわざとわからせてそれでもわからない物語の中の彼らを見てスリルを味わうっていうやつ?それとも普通はわからないものなの?
……とにもかくにも、それでも狂ったゲームは終わらない。
“Q? そして扉が開かれた
五月五日
密室殺人LOVEな十八歳♀です。自分でもやってみたいなあと思っています。興味のある方はカキコお願いします。”
投稿元:
レビューを見る
頭狂人たち、このチャットのメンバーは、常日頃こうして集まって推理ゲームを行なっている。推理ゲームといっても、おのおのが創作した推理小説を披露し、犯人を当てっこするわけではない。おのおのが創作したトリックを駆使して実際に人を殺し、それを肴に、ああでもないこうでもないと推理合戦をする。
恨みでも憎しみでも口封じでも金のためでも劣情からでも嫌がらせでもなく、思いついたトリックを実際に使ってみたい、ただそれだけのために人を殺す。そして、和気藹々、酒を飲みながら推理に花を咲かせる。人を殺すことはべつに快感ではないが、自分の考えたトリックを披露するのは楽しい。
彼らにとって他人の命は遊び道具、テニスボールやプラモデルのパーツと同等の価値しか持たない。彼らには倫理も情けもない。
(本文p.18-19)
投稿元:
レビューを見る
チャットに集まる仲間が自分のトリックを駆使し、実際に密室殺人を犯し、そのトリックを仲間が解いていく話の続編。
今回は、実際に仲間の一人が犯した犯罪ではなく、世間をにぎわす連続殺人の謎を解明していくところから、始まる。
前作とは、ちょっと違う入り方だが、チャットのメンバーは健在。
キャラもしっかり確立されているし、前作を読んでいれば、十分楽しめる。
ただ、幕間で語られる事実のみの報道の記事のようなものがどうリンクしているのか、分からないものがあり、若干消化不良。
投稿元:
レビューを見る
タイトルの「2.0」の通り、シリーズ二作目。
と言うか、やっぱそこは、歌野さんの変化球な訳でして。
「思いついたけど、実際にはなかなか出来ないよなあ」
と言う、机上のミステリ実行部隊。
実行後、チャットに集まってみんなで推理ゲーム。
いつもわいわい楽しそうです。
一作目の方が新鮮で勢いがあって好きでした。
でも、会話中心の進行は前作と変わらずなので読みやすいです。
前作での出来事に触れる部分が多いので、前作読んでからの方がおいしさ二倍!
投稿元:
レビューを見る
▼流水先生の『コズミック・ゼロ』の脇で読み進める。一巻めは確か二年前に読んだ。序文の2.0の説明を読み、背筋がゾワっとする。一巻を読んだ時も、背中がうそ寒い空気を味わったんだけど……あ、そういえば、渡辺浩弐さんの『イキル』と比較しながらネットと殺人の相克関係を考えながら読んだんだっけな……。だんだん当時の記憶が蘇ってくる。
▼読了。ひどい話(笑)だけど面白かった。トリックが面白いんだよ、特に雪密室がよかったかな! かなり分厚いし、問題が難しくて、トリックの予想がつかなかった。あ、大阪のトリックだけはわかったけど、あとはぜんぜん無理。
▼やっぱりラスト事件の酷さと嫌さが凄かったな。続編は難しそうだけど……。(09/10/24 読了)
投稿元:
レビューを見る
シリーズの第二段。前作の面白さにひかれて連続で購入。
密室殺人のトリックと、出題者=実行犯という特殊な状況。このアイデアはやっぱりおもしろいなあ。前作から続いて行く連鎖が、ネット社会らしい暗澹としたものを感じさせる。最後のトリックは全くわからず。有り得ないだろうという所を、二度くらいひっくり返される。
軽いタッチと現代会話でテンポも良く、ストレスもあまりない。推理小説の面白さが随所にもりこまれているのもいい。
投稿元:
レビューを見る
前作の最終章で落ちが付いていたので,どのように続編が出来ているのか気になっていたのだが,前作のクオリティを維持した良作だと思う.
前作とのつながりにやや強引なものを感じないではないが,出題者=犯人の荒唐無稽な世界感には寧ろマッチしているかもしれない.
密室の浪漫を味わいたい人にはお勧めの一品
投稿元:
レビューを見る
◎本格ミステリベスト10 2010年版(2009年)第1位。
◎第10回(2010年)本格ミステリ大賞受賞作品。
投稿元:
レビューを見る
読むなら、ぜひ「王手飛車取り」→「2.0」の順で読みましょう!!
衝撃が半端なくなります。
【本作および、密室殺人ゲーム王手飛車取りのネタバレ含みます】
前作同様、「頭凶人」「044APD」「aXe」「ザンギャ君」「判道全教授」というHNの五人の「リアル殺人ゲーム」。
しかし、今回起きた殺人事件の犯人も「ゲームで人を殺した」と証言し、〈92 912 928 1013 1024 1104〉という暗号を残す。
しかし、この殺人はチャットのメンバーが起こしたものではない。
他のやつらが同じようなゲームをしているなんて許せるか!!
そうして、5人はこの謎を解き始める。
そして、次々とまた彼らは自分で殺人事件を実行し、「リアル殺人ゲーム」を実行する。
さて、「王手飛車取り」から読んだ身としては、登場人物の名前が一緒名時点で「!?」となるわけです。
前作の最後で、彼らはどうなったのか描かれていない。
まさか全員生還したのか、それともコレは「王手飛車取り」よりも過去の物語なのか(前作で前にいくつか事件を起こしたという表現と、未確認ですがたしか殺人数が不一致はしていなかったはず)。
と、いうのも、各キャラクターの性格、そしてなにより判道全教授が「癒し系問題」をWEBだけで展開しているという前作に似た展開にニヤリとしてしまうため、どうしても「同一人物」と思い込まされる。
「シリーズものだから可能」な叙述トリック!! どういう発想だよ・・・面白かったよ・・・。
そして最後の衝撃にしても「WEB2.0」をもじった「密室殺人ゲーム2.0」だからこそできる「作り手=受け取り手」という仕組み、そしてだからこそ「読者(受け取り手)」は衝撃がとても強いのではないか。
このトリックや「意外な犯人(被害者?)」自体は、もちろん過去に幾度も取り組まれている。
…まあ、私はぱっとコナンと綾辻のどんどん橋しか思い出さないんだけど、なんかもっとあった気がする。
しかし、この衝撃は「2.0」で出題者があくまで身近…というか、自分でもおかしくはないCGMと同じ仕組みだから起こすことが出来た。
「リアル殺人ゲーム」という発想の面白さ、そして演出の巧みさ、叙述トリックの精錬っぷり、やー…面白かった。
もちろん、CGMっぽい=不謹慎っぽさもUPではあるので、眉をひそめる人もいそうですが、バトロワみたいに。
そして、最後にこのリンクを付け加えておく。
「ゲーマーにとって自分の死は快感」研究を考える http://wiredvision.jp/news/200803/2008031822.html
投稿元:
レビューを見る
「密室殺人ゲーム王手飛車取り」続編。シリーズ?としての仕掛けもあるので、前作から併せて読むのが最適(前作のトリックネタバレも少しありますし)。
またしても繰り広げられる、現実には許されない、だけれど読む分には楽しいゲームの数々。侃々諤々の推理合戦には参加してみたいかも。実践は……したくはないですが。
最終話の真相は衝撃的でした。これは考えもしないぞ。
投稿元:
レビューを見る
前作同様、
「密室トリックを使った推理合戦のための殺人」が
次々と披露されていきます。
その、身もフタもない感じは前作以上かもと思いました。
2010年の原書房の「本格ミステリベスト10」で第1位とのこと。
これを1位にするあたり、いいなあ原書房ならびに探偵小説研究会の皆さん。
それにしても、最近書店のノベルズの棚がもの凄く減ってると
思うのですが。生きかた啓発系の新書に押されて、
ノベルズの棚がものすごく細ーくなってる本屋さんばかりでした。
投稿元:
レビューを見る
1のあとどう続くのか…と楽しみで読み勧めました。
結果、、、そうきたか!!ですよ。
ぜひ、1を読んだあとに読んでください。
これ以上書くとネタばれしそうです。一気に読破とはいきませんが、トリックを考えながらじっくり読んで欲しい1冊です。
投稿元:
レビューを見る
装丁はピエロのが上かな…。
あらすじ
ネット上で推理ゲームを出題しあう5人がいた。お互いの素性も顔もわからぬままクイズを出し続ける光景は、ありふれたネット上での出来事であるが、彼らが出すクイズは空想の問題では決してない。自らが犯人となって殺人を実行したものをクイズとしていたのだ。
登場人物は全員パソコンの前に座りウェブカメラを使って会話をします。
登場人物は以下の5人
頭狂人…ダースベイダーのマスクをかぶる。
axe…ホッケーマスクをかぶる。要するにジェイソン。
伴道全教授…アフロカツラとぐるぐるめがねを装着している。
ザンギャ君…画面には登場しない。画面にはペットの亀を写す。
044APD…画面には登場しない。画面にはコロンボの愛車プジョーの画像が。
5人のうち1人が出題者=犯人、他の4人が回答者=探偵となり、1問1問交互に問題を出し合っていきます。
クイズは自らが起こした殺人事件ですので、ようするに最初から犯人はわかっており、何を答えさせるかは犯人が決めます。
すんません、ここまでの文章は以前書いた「密室殺人ゲーム王手飛車取り」をそのまま使ってます。ただ以前と変わってる部分もあるような…ないような。
Q1「次は誰が殺しますか」
殺人ゲームはいったん中断。同じように殺人ゲームを決行しつかまってしまった殺人鬼(彼らとはまったく関係ない人物)が一体何をたくらんでいたかを暴く。
前作を最後まで読んでいる人間にはいきなり違和感の残る話でした。いってみれば、某漫画で「鬼隠〇編」が終わったと思ったら、次週何事もなかったかのように「〇流し編」が始まったときのあの妙な感覚に似ています。
Q2「密室などない」
伴道全教授&頭狂人出題。実際に殺人を決行しない、架空の犯罪についての出題。この作品はよく時間つぶしと称して架空の犯罪で推理クイズを行うことがあります。それって普通のことなんですが。なのでページは少なめです。
Q3「切り裂きジャック30分の孤独」
ザンギャ君出題。いままで聞いたことも、見たこともない、とてつもないトリックでした。新本格好きなら唸って当然。
タイトルの由来は島田荘司・作「切り裂きジャック百年の孤独」
Q4「相当な悪魔」
頭狂人出題。被害者の女性の容姿がボロクソにけなされるのがひっかかります。それが一体何なんだと思いながら読んでましたが、最後に納得。頭狂人まじで悪魔です。Q1で感じた違和感はここで解消できます。
タイトルの由来は有栖川有栖・作「双頭の悪魔」
Q5「三つの閂」
axe出題。ザンギャ君と頭狂人に比べるとインパクトが弱かったと思います。作中でもそれを指摘されていました。僕もあんまり読んでいません。
タイトルの由来はジョンディクスンカー・作「三つの棺」
Q6「密室よさらば」
0���4APD出題。Q4で頭狂人にしてやられた、彼のリベンジ。前作での044APDが出題した問題も狂ってましたが、今回はもっと狂ってます。007ナイトファイアというゲームの話が出てきますが、このゲームは実際に販売されています。だって私もってますから。
タイトルの由来は……なんだろう?
Q?「そして扉が開かれた」
最終ページにて突然出てくるわずか1ページの文章。おそらく正体は〇〇〇だと思われる…。次回作への予告編ともとれるような…とれないような。
タイトルの由来は岡島二人・作「そして扉が閉ざされた」
(漢字帳)