紙の本
どの作品から読み始めても楽しめる線ではなく環構造な短編集
2010/04/05 13:21
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぜのぱす - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近、寝本として、読んでいたのは、『9の扉』、作家9人による『リレー短編集』である。
この手の企画モノの話を、耳にすることはあったが、実際に読んだのは、今回が初めて。
冒頭を飾るのは、この企画の云いだしっぺの北村 薫で「くしゅん」。次の作家に法月 綸太郎を指名し、お題を[猫]と指定。
それを受けた法月は「まよい猫」を書き、次に[コウモリ]のお題で殊能 将之を指名(作品は「キラキラコウモリ」)、というように、以下、鳥飼 否宇(お題[芸人])「ブラックジョーク」、麻耶 雄嵩(お題[スコッチ])「バッド・テイスト」、竹本 健治(お題は[蜻蛉])「依存のお茶会」、貫井 徳郎(お題[飛び石])「帳尻」、歌野 晶午(お題[一千万円])「母ちゃん、おれだよ、おれおれ」、辻村 深月(お題[サクラ])「さくら日和」。
お題の処理の仕方も、作家それぞれであり、また、前作を受ける物語もあれば、無関係な物語もあり、指名する方も(and/or お題を出した方)も、出された方も、お題がどんな変化を遂げて、どんな物語が展開するのか、恐らく、予想不可能であったろう。その『化学反応』を楽しむために、冒頭の扉には『・・・どうぞ、リレーならではの展開を最初の一編から、お楽しみください。・・・』とある。
確かに、読み進んで行くに連れ、コレは最初から読まないと駄目だよなぁ、と思ったのも事実であるが、実は、私には、或る種の予感もあり、それは、物語の最後で的中した。
結論から云えば、この短編集は、どの作品から読み始めても楽しめる、線ではなく環構造になっているのだ。
見逃してはならないのは、『あとがき』である。お題が伝わった、逆の順で、それぞれの作家の感想があり、それを受けて、ひとつ前の作家が、感想を書くと云うように、本編とは、逆向きの小さな物語(一般には裏話とも云う)が展開しており、面白い。只、こちらは、残念乍ら、環にはなっていない(笑)。
紙の本
最高の化学反応
2009/09/23 12:51
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:山茶 - この投稿者のレビュー一覧を見る
リレー短編集って読んだ記憶があんまりなくて、
ほぼ初体験で読みました。
なかなか面白い化学反応ですね
次の作家さんにお題を伝えて、それを小説にする。
こんなことが出来る作家さんたちはすごいです。
4人目鳥飼否宇「ブラックジョーク」に
2人目法月綸太郎「まよい猫」の登場人物がちらりと出てきたり、
その「ブラックジョーク」と
5人目麻耶雄嵩「バッド・テイスト」は
完全に続きのお話ですし、
しかも続きの話だと最後のほうまで気づかなかった。
脱帽でした。
7人目貫井徳郎「帳尻」と
8人目歌野晶午「母ちゃん、おれだよ、おれおれ」も
完全に続いてます。
こんなんアリなんだぁ!とニコニコしてた。
1人目北村薫「くしゅん」だけちょっと話が違うかなぁと感じつつ読んでると、最後辻村深月「さくら日和」でものの見事に繋がっており、
満足度が増しました。
あとがきは今度は最後の辻村深月から戻るやり方で
それはそれでどういう趣向で書いたかがわかり
さらに満足です。
リレー短編集なので、
どれが良かったとはなかなか言いがたいのですが、
まあ見事にバトンを繋いだ麻耶雄嵩と歌野晶午とが良かったかな。
最後の辻村深月の小学生の気持ちの表現の仕方には
いちいち納得できて脱帽でした。
本当に小学生が書いているのでは?と思うほどです。
そして題名にふさわしく少しお母さんの行動がサクラ日和でした。
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著者それぞれの「旨み」アリ!
前著者のストーリーを受け、続編として描かれた作品などは、
とても楽しんで読めた。
中にはイマイチなのものもあるが、全体としてはまとまっていたように思う。
あとがきの著者のひとこともお得感があり、良かった。
《2009年7月31日 読了》
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北村薫
法月綸太郎
殊能将之
鳥飼否宇
麻耶雄嵩
竹本健治
貫井徳郎
歌野晶午
辻村深月
という豪華な9名によるリレー方式の短編アンソロジー。
言いだしっぺは絶好調の北村氏のようですが、これは
成功した良い例の作品集だと思います。
リレー方式とは言え作家さんによって様々は展開を見せつつも
ラストの辻村氏で、凄く上手く全体が纏まったように思います。
いいアンカーでしたねー。
こういった内容だと書く側や作り手サイドの満足感や企画した
という面白さのみが浮き彫りになって内容自体は微妙だったりそうですが
さすが一線級のプロ作家さんたちですね。読者も充分に楽しめました。
個人的なベストは貫井〜歌野の繋ぎがピカイチでしたー。
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積み上げていく面白さ。貫井徳郎さんのお名前があるのを見て、おっと思って買った本ですが、どのお話もよかった。リレー短編、面白い!最後の辻村さんのまとめ方がまた秀逸。いろんな作者の方を知れて、あとがきまで面白く読めちゃう、なんともお得な一冊。間違いなく楽しめます。
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リレー短編集って読んだ記憶があんまりなくて、
ほぼ初体験で読みました。
なかなか面白い化学反応ですね
次の作家さんにお題を伝えて、それを小説にする。
こんなことが出来る作家さんたちはすごいです。
4人目鳥飼否宇「ブラックジョーク」に
2人目法月綸太郎「まよい猫」の登場人物がちらりと出てきたり、
その「ブラックジョーク」と
5人目麻耶雄嵩「バッド・テイスト」は
完全に続きのお話ですし、
しかも続きの話だと最後のほうまで気づかなかった。
脱帽でした。
7人目貫井徳郎「帳尻」と
8人目歌野晶午「母ちゃん、おれだよ、おれおれ」も
完全に続いてます。
こんなんアリなんだぁ!とニコニコしてた。
1人目北村薫「くしゅん」だけちょっと話が違うかなぁと感じつつ読んでると、
最後辻村深月「さくら日和」でものの見事に繋がっており、
満足度が増しました。
あとがきは今度は最後の辻村深月から戻るやり方で
それはそれでどういう趣向で書いたかがわかり
さらに満足です。
リレー短編集なので、
どれが良かったとはなかなか言いがたいのですが、
まあ見事にバトンを繋いだ麻耶雄嵩と歌野晶午とが良かったかな。
最後の辻村深月の小学生の気持ちの表現の仕方には
いちいち納得できて脱帽でした。
本当に小学生が書いているのでは?と思うほどです。
そして題名にふさわしく少しお母さんの行動がサクラ日和でした。
★★★★(8点)
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◆「くしゅん」北村薫
◆「まよい猫」法月綸太郎
◆「キラキラコウモリ」殊能将之
◆「ブラックジョーク」鳥飼否宇
◆「バッド・テイスト」麻耶雄嵩
◆「依存のお茶会」竹本健治
◆「帳尻」貫井徳郎
◆「母ちゃん、おれだよ、おれおれ」歌野晶午・・・妻と娘に無理心中され、保険金として7000万円が手に入ってしまった男。2人の命の重さを感じるため、全て現金でおろしてみた。大きめのブリーフケース1つとセカンドバック1つ。たったこれだけに入ってしまうくらいなのだ。しばらくそのまま家に置いていたのだが、家に世話をしにきてくれていた母親が、外から帰ってきた自分に向かって妙に喜んで変なことを言う。「間に合ってよかった、本当によかった。死んだ淑子さんがあなたを助けてくれた、そうでなかったらあなたは指を詰められて東京湾の海に沈んでいたわ」。
◆「さくら日和」辻村深月
以上、9人の作家が順番に作品を書き、そして次を担当する作家にお題を1つ出し、出された作家はそれをテーマに作品を書いてつなげていく。それぞれは個々に短編として成立しているので、ただのアンソロジーのようにも思えるが、中には完全に続編となっているものもある。登場人物や、名前だけがちらっと出てくるようなものもある。9人全員が、次の作家へメッセージも残している。
こういう作品は初めて読んだ。私はてっきり1つの物語を導入、展開、解決・・・と、部分部分でわけて書いていくのかと思っていたが、そういうわけではないらしい。初読みは鳥飼否宇氏のみで、作家陣は今回わりと知っている顔ぶれ。北村薫氏はやっぱり自分には合わないらしく、何が良いのか全然わからず出足でくじかれそうになったが、以前ドロップアウトした法月綸太郎氏の作品は今回は読めた。アンソロジーは以前ダメだった作家さんに再チャレンジするにもいい機会。竹本健治氏の話は趣味の問題もあるのだろうが、完全なる茶道の世界の話でほぼついていけず。この作家陣の中では一番若手、そして最近初めて触れた辻村深月女史の作品は、幼い女の子の甘酸っぱい切ない恋心いっぱいで、そして先頭の作品にもきっちりつないでいて、良かったな。やっぱり他の作品も読んでみたい。
◆母ちゃん、おれだよ、おれおれ・・・リレーで前を書いていた貫井徳郎氏の作品の登場人物や設定をそのまま引き継ぎ見事に続編を作り上げ、「ハッピーエンドにさよならを」の短編たちのように、ブラックに締めている。作家さん独自のワールド全開で、これこそが期待していたリレー小説。貫井氏の、
この種の企画に参加したことは何度かあるのですが、
今回ほど驚いたことはありませんでした。
何しろ、自分が書いた作品の続きが知らぬ間にできていたのですから!
の言葉に、自分も思わずニンマリ。
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結婚式の日はよく晴れてて、あれが十一月の今頃で、結婚記念日がこの間、過ぎたんだから、もう一年とちょっと経つわけだよね。朝なんか、すっかり冷え込むようになったけど、でも、ほら、今年の夏は、やけに暑くてさ、おまけにクーラーの具合が悪くなったりしたから、いらいらしたわよ。もう、そこら中開けて、換気扇点けて、ぐるんぐるん回しても、お日様が出てる間はどうしようもなくってね。普段なら、うちの中にずっといるのが落ち着くのに、あの時はさ、買い物に行って、スーパーに入ると、もう帰りたくなくなったよ。
(「くしゅん」北村薫 p.9)
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北村さん、辻村さん目当てで読みました。
どれも面白かった!
リレー短編集を味わったのは初めてでしたが、面白いですね。
辻村さんがさりげに北村さんに繋げるラストあたりがゾクゾクしました!
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北村さんに始まり、順にお題を渡された作家が次々と描く短編集。
状況をそっくり踏襲する場合もあれば、全く別の話を作り出す場合もあった。
分量が少ないのでちょうどおもしろく読めた。
最後の辻村さんが、見事に全部をまとめていた、お見事!!
そして巻末の全作者のあとがきもなかなかおもしろかった。
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お題を引き継いでいくリレーアンソロジー(お題というよりモチーフ?)
北村薫目当てだったが貫井も書いてたんだな。辻村 深月という人が拾い物だった。(失礼)
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本当の評価は☆3.5くらいです。
リレー方式に、前の作者が次の作者にテーマを伝えて、そのテーマに沿って、次の人は小説(短編)を書く。。
話は面白いのもあれば、ふぅん といった感じのものもあり、甲乙つけがたい
個人的には全体的にどこかつながった部分がほしかったけど、始めの方の作家の方は個々にやってるなぁ といった感想。
最後の方の物語が個人的には気になった作品が多く、「この人の本を今度読んでみよう」といった新しい作家の探索にはなったので、よかったと思います
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殊能さんの短編目当てで読み始めました。どの話もハズレなしで面白かったです。リレー形式の短編は初めて読みましたが、今まで読んだ短編集の中で一番良かったです。
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先に書いた方が次の方にお題を振るという形で話が進む、リレー短編集。あくまでも短編集なので1話だけでも楽しめますが、色々なところで繋がっているので、続けて読むと面白さが倍増するかと。辻村さん目当てで買いましたが、お題の解釈の仕方が作家さんによって捻っていたりそのままだったりと様々で、それだけでもなかなか面白かったです。でもやっぱり辻村さん贔屓なわたしなので、一番最後が素晴らしかったと思います笑
作家さんと順番は以下の通り。
北村薫→法月綸太郎→殊能将之→鳥飼否宇→麻耶雄嵩→竹本健治→貫井徳郎→歌野晶午→辻村深月(敬称略)
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面白かった〜
すべてよかったけど、特に
迷い猫 法月 綸太郎
キラキラコウモリ 殊農 将之
ブラックジョーク 鳥飼 否宇
バッド・テイスト 麻耶 雄嵩
帳尻 貫井 徳郎
母ちゃん、おれだよ、おれおれ 歌野 晶午
は最高でした! ありがとう:)