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商品説明
地球のジャーナリスト、リン・ジャクスンに届いた手紙は、ジャムと結託してFAFを支配したというロンバート大佐からの、人類に対する宣戦布告だった。ついに開始されたジャムの総攻撃のなかで、FAFと特殊戦、そして深井零と雪風を待ち受ける、思いもよらない苛酷な現実とは—。【「BOOK」データベースの商品解説】
ついに開始されたジャムの総攻撃のなかで、FAFと特殊戦、そして深井零と雪風を待ち受ける、思いもよらない過酷な現実とは−。「グッドラック」に続く「戦闘妖精・雪風」シリーズ第3作。『SFマガジン』掲載に加筆訂正。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
ジャムになった男 | 7−34 | |
---|---|---|
雪風帰還せず | 35−83 | |
さまよえる特殊戦 | 85−110 |
著者紹介
神林 長平
- 略歴
- 〈神林長平〉1953年新潟県生まれ。79年ハヤカワ・SFコンテスト佳作入選作「狐と踊れ」で作家デビュー。他の著書に「あなたの魂に安らぎあれ」など。
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難しい、でも面白い。そんな神業を見せてくれる作家、そして作品はそうざらにありません。それを新作ごとに達成している神林の小説、お見事、でも山は高く険しい、一筋縄ではいきません
2010/01/23 19:31
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在のところ、というかこの20年間、私の中で日本最高のSF作家の座を占めて動かないのが、筒井康隆と神林長平の二人です。作風が違うので優劣をつける気は全くありませんが、不動である点は、ファンタジーのJ・R・トールキンとアーシュラ・K・ル=グウイン、ミステリのE・クリスティとA・クイーン、探偵小説の江戸川乱歩と横溝正史、西洋歴史小説の佐藤賢一と塩野七生と同じです。
その神林の新作がこれです。少し前からハードカバーになったのは、評価が確定したということもあって喜ばしいことなのですが、せめて『戦闘妖精・雪風』シリーズくらい、ずっと文庫だけで出してよ、なんて思ったりします。でもこのカバーは素晴らしい。この迫力は文庫では出ないか、なんて思ったりして・・・
そんな装画は長谷川正治、装幀は岩郷重力+Y.S。カバー折り返しの内容紹介は
*
地球のジャーナリスト、リン・ジャクスンに届いた
手紙は、ジャムと結託してFAFを支配したとい
うロンバート大佐からの、人類に対する宣戦布
告だった。ついに開始されたジャムの総攻撃のな
かで、FAFと特殊戦、そして深井零と雪風を待
ち受ける、思いもよらない苛酷な現実とは――
*
です。連作、というのではなく長編ですから内容紹介はここで止めます。私は物語の最後
*
「雪風は、魔を祓うために来たのだ」
びゅんという耳鳴りの感じが弓の弦打ちのようでもあり、それからの連想だ。犬井咲見が言っていたではないか、古人は弓の弦を鳴らして魔を祓った、と。あながち的外れな答ではないはずだ。われわれには、少なくともわたしには、雪風という味方がいるのだ、姿の見えない魔のようなジャムに対抗する戦力として。
そのようにわたしは書こう。もちろんロンバート大佐への返信などではなく、地球人に向けて、地球人としてのメッセージを。
わたしの持つペンは、まだ折れてはいない。
*
ここが好きです。その前段として、
*
「あずさ基地の名称は女性の名とは直接関係はありませんが、語源は同じかと思います。アズサというのは、植物名です。あずさ基地のほうに使われるそれは、梓弓の略でしょう。梓という木は弓として使われた。古人は、梓弓には霊力があり、その弦を鳴らせば魔を祓うことができると信じていた。弦打ちというおまじないです。また梓弓は、霊力を持った日本の国を表す言葉でもあります。日本列島の形が弓に似ているところからきた呼び名です。」
*
という犬井咲見という女性中佐とリン・ジャクスンというジャーナリストの会話があります。そして、この一見難解な電脳バトルのような雪風と深井零、桂城少尉と、アンセル・ロンバート大佐と結託したジャムとの虚々実々の戦いは、ジャクソンへのロンバートからの一通の手紙によって火蓋が切られることになります。
雪風と一体化することを望み、それを果たした深井零。雪風を操縦しジャムを捕獲することに成功したかに見えた瞬間、話は一気に複雑化し、今までの風景は姿を変え、人とコンピュータ、ネットワーク、人類とジャムとの関係は溶解し混ざり合い、魔が跳梁する悪夢のような世界に変貌します。
この小説で使われる言葉は決して難しいものではありません。文章もわかりやすいし、登場人物にも魅力があります。それなのに、この難解さはなんでしょう。それが読者にもたらす深い思索と長い時間感覚。メタ化した小説の一つの到達点といえるのではないでしょうか。何度でも読み返しのきく、ある意味、費用対効果の極めて高い本です。
最後に、各章のタイトルと初出を書いておきます。
ジャムになった男(《SFマガジン》2006年4月号)
雪風帰還せず(《SFマガジン》2006年11月2007年1月号)
さまよえる特殊戦(《SFマガジン》2007年11月号)
雪風が飛ぶ空(《SFマガジン》2008年2月号)
アンブロークンアロー(《SFマガジン》2008年7、10、12月、2009年2、4、6月号)
放たれた矢(《SFマガジン》2009年8月号)
本書は右に掲載された作品に加筆訂正したものです。