紙の本
死刑制度を冤罪から考えない
2009/09/01 09:11
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
死刑制度と冤罪の問題を描く社会派ミステリー。
京都の鴨川で、ホームレス支援を行っていた合唱団の
男子学生長尾靖之、女子学生沢井恵美が、
同じ合唱団の中心的メンバーである八木沼慎一に殺されます。
しかし、慎一は冤罪であり、しかも死刑判決が出て4年を過ぎ、
いつ執行されてもおかしくない時期を迎えています。
彼の冤罪をはらすために、元弁護士の父親は
ひとり、京都の町に住み、駆け回っています。
彼と慎一は高校生のころから絶縁状態で
今も慎一は面会を断っています。
奇しくも慎一の弁護士は、事件当時、苦労しながら
司法試験を受け続け、慎一とも顔見知りだった石和洋次。
慎一は21歳で司法試験に合格した京大生という立場が
現在では入れ替わっています。
ひとつの事件をきっかけに、人生や生活が
逆転してしまう現実を鮮やかに描く冒頭から
真犯人「メロス」と名乗る男との接触、
冤罪が晴らされるかどうか(=雪冤)、事件の真相への疾走と
グイグイと引っ張っていく力量に圧倒されました。
後半、事実が二転三転するのは、わかりにくく、
もう少しすっきりと描いたほうがよかったでしょう。
ただメロスの正体をあれこれと読者に考えさせる伏線と展開は見事でした。
裁判員制度が始まり、死刑制度を考える機会も増えるでしょう。
冤罪から考える死刑制度という流れに、一石を投じています。
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死刑制度のあり方を問いたかったのだろうが、「走れメロス」とダブらせようとするあまり、後半から話がわかり辛くなる
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横溝正史ミステリ大賞受賞作。真摯な文章で考えさせられる
テーマを真っ向から正面切って、筆圧の高いメッセージが
伝わってくる。サラリと読む事が自然と出来ずに、体力を使う
作品だったように思います。
ミステリとしての体裁をキープしつつ、しっかりとしたメッセージや
問題提起をしていく事は、選評でも触れられていますが、作者の
強い思いと初期衝動に近いチカラを感じます。
途中、二転三転する推理や幾人かの人物描写などで、ストーリーを
追っていく事がやや苦痛になってきますが、この結末を見届けたいと...
思わせるパワーが勝っています。
死刑制度、冤罪、そして今作における事件の真相...あまりにも
真面目過ぎて...エンターテイメントとしての小説だとすると疲れてしまう。
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平成5年初夏―京都で残虐な事件が発生した。被害者はあおぞら合唱団に所属する長尾靖之と沢井恵美。二人は刃物で刺され、恵美には百箇所以上もの傷が…。容疑者として逮捕されたのは合唱団の指揮者・八木沼慎一だった。慎一は一貫して容疑を否認するも死刑が確定してしまう。だが事件発生から15年後、慎一の手記が公開された直後に事態が急展開する。息子の無実を訴える父、八木沼悦史のもとに、「メロス」と名乗る人物から自首したいと連絡が入り、自分は共犯で真犯人は「ディオニス」だと告白される。果たして「メロス」の目的は?そして「ディオニス」とは?
この帯に書かれている部分が、なかなか魅力的です。横溝正史賞受賞ということで期待もしていました。特に息子の無実を信じる父親に「メロス」と名乗る真犯人?からの電話・・・・・このあたりまで、なかなか不気味な感じで引き込まれました。
ところがこのあと、急に冗長の感じがする後半になりました。後半は読むのがつらいというか、人物描写がいまいちのような感じで名前だけで判断するような感じでした。ただ、冤罪のことや死刑制度のことなど、取り上げたテーマは重いものがありますが、それぞれに考えさせられるものです。裁判員制度も含めて今風のテーマかも。その言う意味もあって、2010年のドラマ化には、期待したいところです。どんな風にアレンジされているか、特に後半はこのままでは映像化は難しいかと思ったりします。
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横溝正史ミステリ大賞作。
冤罪と死刑制度を深く考えさせられる作品。裁判員制度も始まり、自分たちにも結構身近になった題材なので、興味深く読めました。
ただ、題材のスケールが大きすぎて持論に終始してしまい、ストーリー展開がおろそかになってしまった感じがします。全体の起伏が少なく、どこが盛り上がりなのかな??と思いながら最後まで来てしまった。犯人の種明かしも二転三転して、どんでん返しのつもりなのかもしれないけど、ここまでやると、どうとでも解釈できるよねという心境になってしまいます。
ミステリーならミステリーに徹した描き方があると思うので、自分は何を書きたいのかもう少し自分の中を整理すればいいのになと思いました。
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横溝正史ミステリ大賞・テレビ東京賞(2009/29回)
「ディオニス死すべし」を改題・大谷剛史を改名
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死刑制度の是非についての議論がふんだんに盛り込まれている事で、ストーリーが見えにくくなったように感じたが、その後の展開を読み、それが必要であった事は分かった。また、議論の内容そのものもとても参考になった。
ただ・・・文章が非常に読み辛く、途中から話を追っていくのが面倒になった。最後も少しくどかった。
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私にとっては文章が読みにくく、疲れる本でした。 途中、興味を何度か惹かれ、おもしろい!と思いかけては、また中だるみ・・・の連続であった気がします。
さいごの謎解きで、何度かどんでん返しのようなものがあるのですが、中には「それって、あまりにムリがある」という突飛なものがあり、ちょっとしらけてしまいました。
そのせいで、著者の方が本当に伝えたかったであろうことが、最後まで読めなかったです。
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確かナントカ賞の受賞作…(あやふやですみません
なもんで、拙い部分や勢いで突っ走ってる感はあるんですが
「あーこの作者さんは書きたい事がいっぱいあって
とまらなかったんだろうなあ。小説書きたかったんだろうなあ」
って勝手な想像ですが、
そんな風に熱さを感じるお話でした。
お話自体はねえ、どんでん返しを狙って二転三転…もうちょいくらい
あったような覚えがあるのだけど、
「もういいよ!もう ”実は…”はなくていいよ!」って
若干とめたくなります笑
でも本当…良いお話書いていくんじゃないかなあ、これから。
私も小説書きたいなーって思わされた作品でした。
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これはミステリー・・なのだろう。
久しぶりに横溝賞に手を出してみた・・が、やはり今イチ。
乱歩賞との格差は歴然。審査員もまったく一致していない今回の受賞。冒頭のホームレスとともに合唱するというボランティアの設定に、引き込まれないな・・との印象。読み続けるも、死刑制度是非の論文を読んでいるようだった。
メロスだの、なんとかだの・・というカタカナあだ名にも閉口する。電話をかけてくるくだりも、分かりづらいし、そもそも、そんな動機で、本当にそのような行動をする人が今の世の中、いるのかしら?ガッカリした。
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第29回横溝正史ミステリ大賞テレビ東京賞。
読みにくかったし、そんなにひきこまれなかったけど、最後の最後のオチでびっくりしたので★3つ。
2009.11.26
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横溝正史ミステリ大賞。タイトルから推測できるように冤罪ミステリ、なんですが。冤罪のみならず、死刑制度についての考察がかなり深いです。たしかに死刑って良いものか悪いものなのか議論は多くされますが。その本質をしっかり理解できているのって、どれくらいの人なんでしょうね。もちろん私も分かっているなんて言うつもりはありません。所詮他人事、というのは実際ありますものね。
ミステリとしてもかなりひっくり返されました。ラストのばたばたは凄かったー。「それはないだろうっ!」と突っ込みたくなるような動機考察も、かなり斬新でインパクト大です。そして真相は、知るべきか知らざるべきか……。
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2009年の第29回横溝正史ミステリ大賞受賞作品。
殺人事件の容疑で死刑囚となった息子の無罪を信じる父親を主人公とする犯人捜しミステリー。
終盤のめまぐるしい、どんでん返し連発の展開。そして、死刑の是非についての登場人物たちの考え方。骨太な社会派推理小説として、娯楽性と社会的メッセージの2つを両立させようとする作者の力業、意欲を感じる。
ただ、2つのどちらかを重視してくれた方が読みやすかったような・・・。気がしないでもない。
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後半の流れはちょっとお粗末感があるけど、それは前半グイグイと引き込まれていたからこその感想かも。1日で読めた。
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横溝正史ミステリ大賞受賞作品。
期待して読みはじめたけど、人物が描ききれていないし、筋もわかりづらい。「ディオニス死すべし」が最初のタイトルで「雪冤」(無実の罪をすすぎはらすこと)に改題。作者の言いたいことはわかるが、それと最後のどんでん返しが結びつかない。死刑制度について国民に考えて欲しいからといって、ここまでやるか?無理があまりにも多い。