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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2009.6
- 出版社: メディアファクトリー
- レーベル: 幽ブックス
- サイズ:19cm/369p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-8401-2820-9
紙の本
ナゴム、ホラーライフ 怖い映画のススメ (幽BOOKS)
ホラー映画をこよなく愛する綾辻行人と牧野修が、その魅力をキャッチボール形式でつづり、語り合い、「和み」の対象としてオススメする。書き下ろしショートショートも収録。サイト『...
ナゴム、ホラーライフ 怖い映画のススメ (幽BOOKS)
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商品説明
ホラー映画をこよなく愛する綾辻行人と牧野修が、その魅力をキャッチボール形式でつづり、語り合い、「和み」の対象としてオススメする。書き下ろしショートショートも収録。サイト『理論社ミステリーYA!』連載に加筆。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
綾辻 行人
- 略歴
- 〈綾辻行人〉1960年京都市生まれ。「時計館の殺人」で日本推理作家協会賞受賞。他の著書に「緋色の囁き」など。
〈牧野修〉「傀儡后」で日本SF大賞受賞。他の著書に「水銀奇譚」など。
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紙の本
軽く読めるが中身は濃厚、ファン以外にもお勧めできる「怖さ」を排除したホラー映画についての傑作エッセイ
2009/09/05 12:31
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:いえぽん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ホラー映画、と聞くだけで、その映画を避けてしまう方も少なくないかと思います。私自身、ホラーは苦手で、実際に映画を見るのはもちろん、CMやTV番組での紹介映像や、雑誌での紹介記事も避けてしまうことも少なくないほどだったりします。ホラー映画の肝は、やはり恐怖シーンであるだけに、紹介となると、怖い場面だけが抽出される結果になってしまいがちなのでしょうが、やはり、怖い画像を目撃してしまったりすると、どうしてもスルーしたい気持ちにかられてしまったりします。
そんな中にあって、本書「ナゴム、ホラーライフ」は、完全に異彩を放っていると言えます。と、言いますのも、読者に怖さを与える要素を、完璧に排除しているからです。そのスタンスは徹底されており、本書の中には、恐怖映画の評論や紹介にはつきものの、恐ろしいシーンの画像やイラストは一切入っておらず、表紙や文中を飾るイラストも、ほんわかしたもので統一されています。
本書は、「理論社ミステリーYA!」のWEBサイトで連載していたものに、加筆修正がなされたもので、著名な作家である綾辻行人氏と牧野修氏の「交換書簡」のような形で展開されています。もっとも「手紙的」といっても、堅苦しいわけでは一切なく、両氏がホラーを題材に軽妙に話し合うといった感じで、リズムが非常に心地よく、サクサクと読み進めていくことができます。また、「怖さを排除した」、「ナゴム」という本書の基本姿勢は、ここでも徹底されており、ホラーの話をしているはずなのに、怖いのが苦手な私が、一切読むのが辛くならなかったほどで、改めて、「怖くないホラー評論を」という意識の高さを感じ取ることができます。
また、緩く、そして簡単に読める一方で、ホラーの定番キャラであるゾンビを、単なる恐怖の対象としてではなく、「ゆっくり歩く、わらわらと大量に出現する」といった所に着目し、「なごみキャラ」としての対象として考察を加えていたり、一見凄惨に見えるスプラッター映画の非リアル性と「祝祭」としての側面等々、評論としても非常に読み応えがあるものがあります。コメディの色彩が強いホラー映画など、作品のコンセプトそのものが「なごめる」ような映画の紹介もなされており、文中に登場する作品に対するフォローアップ、注釈も丁寧です。
また、本書で示された様々なホラー映画に関する事象からは、「現実で行われるリアルな暴力とホラー映画は全くの別物であり、ホラー映画ファンも実際の暴力を肯定しているわけではない」という、当たり前である一方、しばしば忘れられがちになってしまう重要な事実を再確認することができます。そして、ファンであれば当然知っている事実が、ファン以外でも手に取りやすい、綾辻、牧野両氏の緩いエッセイ集としても通用する本の中で示されていることもポイントです。とかく、悲惨な凶悪事件が起こるたびに、マスメディア等によって槍玉に上げられがちなホラー映画ですが、実際は凶悪な事件とはまるで違うのだ、というファンの叫びがこうして活字になったことは大きいのではないかと思います(何か事件が起こるたびに、特定ジャンルの作品が、あたかも責任転嫁されたように叩かれるのは珍しいことではないだけに)。
こういった主張を含め、ホラー映画の作品毎の作風の違いなど、ファン以外には分かり辛いテーマを、怖さを一切排除することで、苦手な人にも分かりやすく解説し、しかも、軽妙かつ優れた評論を加えている本書は、入門書として、また、「怖さゼロのホラー評」という実験的な試みをまとめた一冊として、非常に有用であると言えます。「怖い映画はほとんど見たことがない、見る気がしない」という人にも、ホラー映画の内実を知ることができる点でお勧めすることができますし、軽妙で柔らかい優れたエッセイを読みたいという方にもお勧めすることができるでしょう。