紙の本
経済学を揺るがすマクロ理論の提案
2018/05/25 17:59
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投稿者:病身の孤独な読者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ノーベル経済学賞を受賞したジョージ・アカロフの代表作である。ケインズの書籍にも示唆されている「アニマル・スピリット」を考慮した理論が、現代経済には欠かせないことが理解できる書籍。「アニマル・スピリット」は経済学の論文でもたびたび登場する言葉である。現在で言えば、「人間の非合理的な行動」というものに近い言葉である。どこかで聞いたことがあると思われますが、それをミクロ次元ではなくマクロ次元で論じるという挑戦的な試みを行っている。経済学に興味を持つ読者には刺激的な書籍となると思われる。
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ガマの油売り
2020/02/20 11:01
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投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
10年以上前に出版された本マクロ経済学理論書において、アニマルスピリットとは非経済的な動機や不合理な行動であるとケインズ経済学の政府の必要な介入に既に言及していた。現代の経済学は進歩しているのだろか。
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アニマルスピリット
・非経済的な動機や不合理な行動。
・行動への突発的な衝動。
・10年後の収益なんて推計できない。不確実ななか、決断を下すのはアニマルスピリット。
・5つの側面=安心、公平さ、腐敗と背信、貨幣錯覚、物語
社会主義者
・政府は、自ら人を雇うことで失業を解消する。
アダム・スミス
・「見えざる手」
・民間市場は政府の介入なしに自分の力で「見えざる手によるかのように」完全雇用を保証してくれる。
・自由市場資本主義は基本的には完璧で安定している。政府が介入する必要はまったくない。
・人々が、自分の経済的利益を合理的に追求すれば、「相互に有益な生産と交換」が行われ、完全雇用になる。
合理的な労働者=自分の生産よりも低い賃金を受け入れる労働者 ← 合理的な雇用主なら、雇用し、生産を増やす。
ジョン・メイナード・ケインズ
・「アニマルスピリット」
・『雇用・利子および貨幣の一般論』
・政府が借金をして消費すれば、失業者に仕事を取り戻せる。
・ほとんど経済活動が合理的な経済動機から生じることを認めつつも、
多くの経済活動がアニマルスピリットに動かされていることを指摘。
===
安心
合理的な意思決定以上の行動を指す。
ケインズ乗数
政府支出の影響
1+MPC+MPC^2・・・=1/(1-MPC) MPC:限界消費性向
安心の指標・・・ミシガン大学消費者信頼感指数
経済を完全雇用に戻すには十分な金融政策と財政政策が必要だが、安心の低下による極度の信用収縮はそれだけでは不十分。
公平さ
罰を下すと幸せを感じる。報酬を期待するときに活性化される背側線条体のスイッチが入る。
衡平理論
取引のどちら側も、投入した分と得した分が等しくなるべきだ。
低技能者は高技能者に相談しない。感謝を述べることにより衡平にしようとする。
腐敗と背信
1991・・・貯蓄貸付組合(S&L)
2001・・・エンロン
2007・・・サブプライムローン
物件購入者、ローン提供者、ローン証券化業者、格付け機関、不動産担保証券購入者 --すべてで均衡が成立してた。
貨幣錯覚
意思決定が名目金額の影響を受けるときに生じる。
合理的なら、名目金額で市場で売買できるもの にだけ左右されるはず。
賃金の額面カットに対する抵抗=賃金の下方硬直性
物語
人間は物語をもとに考えるよう作られている。
物語の拡散は伝染病みたいに。
物語は事実を説明するだけにとどまらず、それ自体が事実になる。
===
なぜ経済は不況に陥るのか?
「安心」の崩壊が経済的な失敗の「物語」の記憶尾関連するが、
その物語の中には不況に先立つ年月に起きた「腐敗」増加の物語も含まれる。
経済政策が「不公平」だという感覚が高まり、消費者物価下落の結果を
理解できないという「貨幣錯覚」が生じる
なぜ中央銀行は経済に対���て(持つ場合には)力を持つのか?
なぜ仕事の見つからない人がいるのか?
効率賃金理論
やる気への影響を考えると、最低限の水準よりも高めに賃金を支払いたいと、雇い主は考える。
→労働の供給が需要を上回る。
→このギャップが仕事を見つけられない人
企業が完全には従業員を監視できない。
→従業員は、働いてもいいし、サボってもいい。ばれるとクビになる。
→失業がなくてあらゆる企業が同じ給料を払うなら、労働者たちには努力するインセンティブがない。
だから、雇用主は、従業員がサボらないように給料を必要以上に払う。→労働の需給は均衡しなくなる。
実際は、
従業員が公平だと思うものに依存している。公平だと思う賃金は市場の捌ける賃金よりも高い。
賃金が低くく不公平だと感じていると、従業員は職務を自分の責任だと考えにくくなる。
なぜインフレと失業はトレードオフ関係にあるのか?
貨幣錯覚がトレードオフを引き起こす。
なぜ未来のための貯蓄はこれほどいい加減なのか?
なぜ金融価格と企業投資はこんなに変動が激しいのか?
なぜ不動産価格には周期性があるのか?
なぜ黒人には特殊な貧困があるのか?
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いわゆる経済学と思っていたやつからの変化が多角的に理解できた気がする。明日からの新聞ニュースの見方が変わるかも。最近の政策をイメージしながら読んだ。
P14,33,45,49,103,141,171,186,190,239,263
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「貨幣錯覚」について改めて考えるにはうってつけの啓蒙書。
ミクロ経済学寄りな行動経済学をよみたい方にはおすすめできないけれど,マクロ経済学のミクロ的基礎付け的な方面の行動経済学に興味ある方には,興味深い書物ではないでしょうか。
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市場重視の経済学に昔から異論を著してきた2人の著名な米国の経済学者が、斬新な切り口でマクロ経済学を論じた書物である。ケインズのアニマルスピリットの考え方や、最近話題の行動経済学の考え方を使うことで、人間の心理がマクロ経済に与える様々な影響が分析されている。市場万能主義への反省と同時に、市場が抱える問題をどう解決すればよいかは、多くの人々の関心事といえる。「新しい経済学の方向性を示す試み」として高く評価。(日経・福田慎一:2009/12/27)
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アニマルスピリットの重要性に関して、非常に説得力がある。
マクロ経済学に行動経済学を加えたモデルを提供してくれると思いきや、具体的な施策やモデルについては触れていなかった点が残念。
マクロ経済学の不完全さを語っているので、マクロ経済学を知る上でも参考になる。
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(いま流行りの)行動経済学の本です。ところで、書名にもなっているアニマルスピリットとは、安心、公平さ、腐敗、貨幣錯覚、物語だそうです。で、こういったアニマルスピリットが、時として、人を(経済)非合理的に振舞わせることになる源泉になるのです。
で、コンキチがこの本を読んで最も印象に残ったアニマルスピリットのファクターは、ズバリ、貨幣錯覚です。
大衆はインフレ率をちゃんと織り込むことができないということです。
つまり、「実質」ではなく「名目」しか眼中にないということ。物価スライド制とかそんなの関係ねぇって感じです。
ちなみにコンキチは、そういった大衆の盲目性を目の当たりにしたことがあります。それは、小泉政権初期のデフレ経済下、(コンキチの大嫌いな)労組の職場会で、次節の要求を話しあうことになりました。コンキチは、所謂ベア(ベースアップ)とは、賃金におけるインフレ調整機能だと考えていたので(実際には全くそうなっていないが)、ベースダウンすることを主張しました。デフレ下で、要求する側自らがベースダウンを切り出せば、ベアのインフレ調整機能としての役割は確固たる地位を築くことになる、そう考えたのです。そして、景気浮揚時にはなんの問題もなく、システマティックにベースアップが実行に移され、結果、実質賃金(購買力)の安定に寄与するという至極あたり前な主張をしました。しかしながら、120%歯牙にもかけられませんでした。
ま、そんなもんなんでしょうね。時の政府も、貸金業規制法改正とか、派遣規制とかの愚策にご執心(とまではいかないか)であったようだし。物事の表層しか見ていないのだ。
皆さんも本書を読んで、アニマルスピリットを学んでみませんか?大衆の非合理性を理解することができるかもしれませんよ♥
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人々が経済合理的に活動するという前提で構築されたマクロ経済理論に対する批判の書で、リーマンショックを含めた経済危機を説明するものとして世間でも高く評価されています。
読む前までは、「アニマルスピリッツが必要」ということを、勝手に非合理的だが冒険的な投資行動が経済には必要だということを言うのかと思っていました。しかし、ここでの「アニマルスピリッツ」の定義はそういうものではなく、もっと広い非合理的な行動のことを指しています。
具体的には、アニマルスピリッツ(非合理的行動)の5つの側面として、
1)安心、2)公平さ、3)腐敗と配信、3)貨幣錯覚、4)物語、を挙げています。これが本書の主張の肝になります。後半では実際に経済分野で生じている現象にアニマルスピリッツが及ぼしてるであろう影響を例を挙げて論じていきます。
著者らは全編を通して、合理的期待や効率的市場といったものを前提としたマクロ経済理論に、本書で挙げたアニマルスピリッツの原理を組み込まないといけないと結論付けています。ただ、その具体的方法については私の理解では曖昧にされたままです。
山形さんの訳もいいのか悪いのか分からない出来で、世間の評価から期待が大きかっただけに、何だか読みにくいというマイナスの印象が残りました。内容や主題は悪くないのですが...
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2010.5.4
今までの経済学の中で無視されてきたアニマルスピリット。
安心、公平、腐敗、貨幣錯覚、物語。
これらの要素に注目すると、今までの経済学では解けなかった問題の構造が理解できる。
訳者もあとがきで書いてるけど、こうゆう考え方があることを念頭において、まずは既存の理論を勉強しよう。
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経済の仕組みと、それを管理して繁栄する方法を理解するには、人々の考え方や感情を律する思考パターン、つまりアニマルスピリットに注目しなければならない。アニマルスピリットとは、経済の中の不穏で首尾一貫しない要素をさしている。それには下記の5つの側面がある。
1.理論の礎となるのは安心であり、安心と経済のフィードバック機構である。この機構は不穏さを拡大する。
2.賃金や価格の決定は公平さに大きく左右される。
3.腐敗と配信行動への誘惑も認識するし、それが経済でどんな役割を果たすかも考慮する。
4.貨幣錯覚も理論のもうひとつの礎石。インフレ、デフレで混乱し、その影響について理詰めで考えない。
5.自分が何者で何をやっているかという現実感覚は自分や他人の人生のストーリーと絡み合っている。そうした物語の総和が国の物語や国際的な物語となって、経済で重要な役割を果たすようになる。
これらを元に、不況、中央銀行、失業、インフレ、貯蓄、不動産価格、黒人の貧困等を読み解く。
本当の具体的な具体策は述べられていないが、これらのヒントは今後為政者や金融監督機関にとって重要な示唆を与えるであろう。
ジャックウェルチの引用が面白かった。
彼が重視しているのは「死んだ本」の知識や書類ではなく、議論に掛ける情熱であったことと、投資回収分析のOHPにバッテンをつけて無限という言葉をなぐり書きし投資に対する収益が永遠に続くのだという事を強調した事。
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著者の2人はともにアメリカ経済界の重鎮で、
Robert J. Shiller はアメリカ株式市場のバブルを10年前から指摘し、
George A. Akerlof は『情報の経済学』の始祖であり、
レモン市場理論と限定合理性の理論を説き、
2人ともこれまでとは違う経済理論の可能性を開拓しました。
本稿は2部構成で、
第一部でアニマルスピリットを説明します。
安心・公平・腐敗/背信・貨幣錯覚・物語の5つを挙げ、
経済学の切り口プラス、
おもに心理学、社会学、哲学、人類学の考えを取り入れ、
既存の経済理論を修正しています。
第二部では、金融恐慌に対する8つの論点を解説し、解決策を提示します。
昨年前期に大学院経済学研究科を10単位ほど、背伸びして履修しました。そこで使用したTextをこの時期に読み返したのも、売れ筋ランキング経済部門で2009トップとの記事を見たからです。
2008年金融危機批判は、ともすれば
『人々は合理的になりすぎてお金に目が眩んだせいだ』といったような、
「合理性」と「目先のお金しか考えない」「弱肉強食」の話を混同した、
支離滅裂な経済学批判になりがちですが、
これは長期的利益やお金以外の効用を含めて説明することで、簡単にひっくり返ってしまう浅はかな批判です。
本書はそういった批判に加担するものでなく、
戦後60年間、地球上のすべての資本主義経済を雇用率90%以上でまわしてきたマクロ経済学理論の力を認めたうえで、
その不備をいかに補い、いかなる攻撃にさらされても動じない完全理論に近づけるかを、新分野の行動経済学のツールを使って考察します。
人々が完全には合理的になりきれないことを、
心理学、社会学、哲学、人類学をメインに説明していますが、
そういったアニマルスピリットをかつてエコノミストが採り上げなかったのは、
彼らがそれを知らなかったからではなく、
どう理論モデルに数学的に組み込んでいけばいいのかが皆目分からなかったからなんだと僕は思います。
自分たちも昨年夏は、ここで一番苦労したのですが、
本稿でそこに対する具体的ツールについて何ら触れられていないのは少し意外でした。新興分野ゆえのおもしろさ的なのがここにあります。
裏を返せばビギナー向けです。
経済学の盲点はどこにあって、人間の弱さを補うための社会経済政策に、既存理論の精緻化だけでなく、アニマルスピリットを加味して政策的インプリケーションにどれくらい留保をつけるべきか、今まさに中央銀行と経済官僚が模索している、その姿を見てみたい人に薦めます。
ほんといい本でした。
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行動経済学の紹介の常として、合理的経済人を前提とした今までの経済学では不十分、という書き方をする。それは確かにそうだけど、それは今までの経済学が間違っている、ということじゃない。
合理的経済人を仮定した経済学はどんどん発展しているし、たくさんの経済事象を説明できる。政策立案や制度設計の役にも立っている。ただ、それだけじゃ、全ての経済事象を説明しきれないから、もっと人らしい人を仮定して分析してみよう、ということ。そういう前提がこの本にはある。従来の経済学の成果と限界との両方を最先端でわかっている学者だからこそ書けたわけで、経済学の可能性を示した本であって、間違っても経済学批判の本じゃない。
そういうのを知らない人がこの本を読んだなら、今までの経済学は間違ってる、役に立たない、と思いかねない。そういう勘違いが起こったなら、きっと著者たちの意図とは正反対だろうなあ。
と思って読んでいたら、訳者あとがきでちゃんと説明してくれていた。このあとがきを読んで、ちゃんと普通の経済学も勉強してみよう、ってことになれば、それが一番いいんだろう。
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目次
第I部アニマルスピリット
第1章 安心とその乗数
第2章 公平さ
第3章 腐敗と背信
第4章 貨幣錯覚
第5章 物語
第II部 八つの質問とその回答
第6章 なぜ経済は不況に陥るのか?
第7章 なぜ中央銀行は経済に対して(持つ場合には)力を持つのか?
付記 目下の金融危機とその対策
第8章 なぜ仕事の見つからない人がいるのか?
第9章 なぜインフレと失業はトレードオフ関係にあるのか?
第10章 なぜ未来のための貯蓄はこれほどいい加減なのか?
第11章 なぜ金融価格と企業投資はこんなに変動が激しいのか?
第12章 なぜ不動産価格には周期性があるのか?
第13章 なぜ黒人には特殊な貧困があるのか?
第14章 結論
テーマはどれもすごく面白い
経済学の未来が詰まっている話ばかり
個人的に興味を持ったのは公平さと貨幣錯覚
公平さに加えて競争の心理についても語って欲しかった
ただまとめ方が上手いとは言えない
こっからさらにメシノタネを生むことが大事
何気に一番説得力があったのは訳者あとがき
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面白く興味深い一冊だが、急いで読んだせいか理解しきれなかった。
頭悪くなったのかなぁ。。。
山形浩生は嫌いではない。