紙の本
知のオープン化により皆で強くなる、進化・成長する
2010/10/27 12:47
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MtVictory - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ウェブ進化論」の著者が将棋好きだということは知っていたが、今度は将棋をテーマに本を出した。一連の著作の中で言及されている「ネット上にできた学習の高速道路」論では将棋が事例として挙げられていた。著者の趣味は「将棋鑑賞」とのこと。まあ、プロ野球ファンだって、そういう人のほうが多いだろう。本書からは著者の将棋への愛情が伝わってくる。私は将棋は指さないが、将棋の奥深さはなんとなく感じている。
本書では羽生善治、佐藤康光、深浦康市、渡辺明らトップのプロ棋士を取り上げている。第二章には棋聖戦観戦記(佐藤棋聖vs羽生)、第五章には竜王戦観戦記(渡辺竜王vs羽生)が掲載されている。これらはリアルタイムでウェブに公開されたものだそうだ。野球やサッカー中継と違って将棋は見た目の動きが少なすぎるから派手さや面白みに欠けると私なんかは思ってしまうのだが、きっと将棋ファンには嬉しい試みであったことだろう。
第二章に羽生氏のこんな言葉があり意外だった。「将棋には闘争心はあまり必要ない。相手を打ち負かそうなんて気持ちは必要ない」。やはり、ただの勝負師ではない。第七章はその羽生氏との対談が収録されている。
なるほどなと思ったのは「あとがき」。将棋は二人で作る芸術、一人では絶対に作れない、同志が重要だという点。これは将棋に限ったことではないだろう。スポーツなども含め勝負ごと全てに共通することではないだろうか。相手があっての勝負ごと。それを芸術にまで高めるには互いが志を高くもち、切磋琢磨することが大切だそれが文化を豊かにし、深めることになる。
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梅田望夫の新刊
『シリコンバレーから将棋を観る 羽生善治と現代』を読む。
梅田の書くことについてのサバティカル宣言があったから、
このタイミングで新刊を読めるのは僕には僥倖だった。
この本は梅田がこれまで書いてきたどの本とも違う。
そもそもが梅田の趣味であった「将棋鑑賞」と、
現代将棋界をリードする棋士たちとの
梅田の私的交流から生まれた本なのだ。
僕は自分の仕事をする際、
棋士たちの考え方、行動の仕方をおおいに参考にしてきた。
大山康晴、中原誠、米長邦雄に始まり、
谷川浩司、羽生善治、渡辺明。
広告の企画制作の仕事と、将棋の仕事は、
頭脳スポーツのパフォーマンスという点で共通点があるのか、
迷ったとき、考えあぐねたとき、
彼らの一言一言は実に重みがあり、僕の羅針盤となってくれた。
梅田望夫が棋士たちの発想を
自分の仕事や生き方に取り入れていたことは
彼のブログなどを読んで知っていた。
しかし、この著書を読んで、
将棋の進化とウェブの進化をつなぐ道が地下水脈のように、
これほど確かに結ばれていることを証明されると
僕の感慨もひとしおだった。
僕も将棋を指さない将棋ファンであった。
棋譜を観ても、それによって想像力を刺激されるほど
将棋に詳しい訳でもない。
けれど、梅田の著作を読み、将棋の駒を一揃い購入して
現代将棋の最前線にいる棋士たちの指す将棋を並べて
彼らの思考過程を追ってみたい意欲が湧いてきた。
そうか、「将棋鑑賞」という道があったのか。
この本をまずは通読して一番印象に残ったのは、
「第七章 対談ー羽生善治x梅田望夫」のこんなやりとりだった。
梅田 この十年では特に、本当に未知の局面で、最善手、
またはそれに近い手を思いつける能力のある人が
有利になったということなんでしょうか?
羽生 いや……やっぱりその、
いかに曖昧さに耐えられるか、
ということだと思っているんですよ。
曖昧模糊さ、いい加減さを前に、
どれだけ普通でいられるか、
ということだと思うんです。
(pp.244-245)
羽生 (前略)全体に流れが起きたのは、
本当にここ最近のことです。
あの……何と言えばいいのか、
今の私たちがやっていることって、
ある種、学術的な感じもするときがあるんです。
棋士の人たち、ゲノムかなんかの解析を
やってるんじゃないか、
と思うときもあります。
梅田 そう、そう! 研究者集団のような側面は
ありますよね。
(pp.270-271)
梅田はこの本でまたしても前代未聞のことに挑戦した。
すなわち、この本を外国語に訳して発表するとき、
どの言語に訳す際もいっさい著作者の了承を得ずにやって構わない
と自身のブログで宣言したのだ。
おそらく将棋のグローバル化のために自分ができる、
もっとも有効である戦略、方法を選択したのだろう。
この決断は素晴らしい。
こうした試みが点から線、線から面につながっていくことで
世界による将棋の再発見が起こることだろう。
と、ここまで書き終えたところで
梅田のブログに行ったところ、事態は急展開していた。
梅田がブログで宣言した4月20日からわずか15日。
英訳、仏訳プロジェクトがすでにスタートして
その進捗が確認できるのだ。
英訳に至っては、この連休中に第一稿の下訳を
自主グループで完成してしまった!
このプロジェクトによって
Web2.0におけるオープンソースの力の凄まじさを
またも僕は知ることになった。
群衆の叡智による、このスピード感ときたらどうだろう。
情熱を原動力に僕たちはまだまだ未知の領域を開拓できるのだ。
(文中敬称略)
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将棋を観ることの面白さ奥深さを書かせたら、梅田さんの右に出る者はいないと思います。観戦記がものすごく面白いんだー!
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09/04/26読了 将棋の世界の変革。その内因と外因をしっかり捉えて、将棋ファン以外にもわかる言葉で書いている。名著だと思った。
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作者は『ウェブ進化論』(未読)で「Web 2.0」を流行らせて有名になった人です。現在はネットの世界から身を引いてるそうです。本書は、素人にわかりやすく現代将棋の楽しさを紹介してくれます。「将棋を指さない将棋ファン」のために、現代将棋の最高峰を究めたプロ棋士たち(特に羽生義治)の活躍が描かれます。昔将棋にハマった人は、きっと面白いと思うはず。
作者のネットでの発言は、過激に反応されることがよくあるけど、私は共感することの方が多い。
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大好きな梅田望夫さんの著書。日系ビジネスでも米倉(一橋)教授が推薦されていた。
著者が、将棋への愛に溢れ、永年の夢ともいえる将棋との本格的な関わりを心から喜んでいることがわかる。私は将棋のルールは全くわからないけど、2008年の将棋の名戦の「リアルタイム観戦記」には、「この次どうなったの?!」とぐいぐい引き込まれた。
しかし、梅田さんは、人の描写が本当にすばらしい。例えば、124ページの棋士に共通する気質の描写。208ページの渡辺明棋士についての描写。そもそも人物観察ができないと書けない記述だけど、表現がとても豊富。この描写方法をお手本にしたいと思う。
他の梅田さんの本のインパクトがあまりに強く、本著はそれらと比較するとインスパイア度は低かったので、星を3つとしておく。
でも、心にひっかかる記述がひとつあった。
「将棋の世界では、情報に関する革命的な変化が急激に起きており、時間が非常に凝縮して、インターネットの世界のスピードよりも速く動いている。(中略)
そして、グーグルに対抗できる日本最高知性は、産業界にいるのではなくて、羽生善治なのだ。」
〜 今後の日本を考えて行くうえでは、どうこの情報を処理したらいいんだろう。いつか何かの形で結びつくと思う。記憶の片隅にとどめておこう。
読んだ日: 8月11日
読んだ場所: 平塚→東京の東海道線内
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(2009年08月21日読了)
・参考「人間における勝負の研究」米長邦雄。P10
・世の中には沢山の「指さない、そして隠れた、将棋ファン」がいる。P14
・羽生が問題視していたのは、将棋界に存在していた、日本の村社会にも共通する、独特の年功を重んずる伝統や暗黙のルールが、盤上の自由を妨げていること。P29
・参考「羽生の頭脳」P39
・羽生「高速道路を走りきった先に大渋滞がある」。情報を重視した最も効率の良い、しかし同質の勉強の仕方でたどりつける先には限界があり、そのあたりまで到達した者達同士の競争となると、勝ったり負けたりの状態となり、そこを抜け出すのは難しく、次から次へと追いついてくる人たちも加えて、「大渋滞」が起きる。その大渋滞を抜け出すにはそこに至るまでの成功要因とは全く別の要素が必要になるはず。P43
・参考「歩を『と金』に変える人材活用術」P45
・創造って、手間も時間も労力もものすごくかかるから、簡単に真似されると報われません。私も対局で新しい試みをやるんですが、ほとんどはうまくいかない。仮にうまくいっても周囲の対応力が上がっているので厳しいものがある。効率だけ考えたら創造なんてやってられない。。でも逆に考えると創造性以外のものは簡単に手に入る時代だともいえる。それ以外のことでは差をつけようがないので、最後は創造力の勝負になる。P46
・現代将棋の要諦は「後回しに出来る手は、出来るだけ後にまわす」ことであると言う。最近私は仕事をする時に、できるだけこの「現代将棋の要諦」を参考にした「優先順位付け」をするように心掛けている。P78
・参考「野球術」ジョージ・ウィル。P99
・参考「勝負の視点」青野照一。P127
・シリコンバレーの技術者連中の中にも10人に1人くらいの割合で、優れて社会性を秘めたタイプがいる。こういう人たちがのちに技術者出身ながらの経営者に転ずる事が多い。弱に若い頃からあまりにも社会性を強く持ちすぎていると、一つのことへの集中と没頭が途切れやすく、一途に一つの技術的専門を究めていく競争の段階で負けてしまいがちで、一流技術者になれないケースが多い。物静かだけれど芯が強くて、しかも社会性を秘めたタイプが、若き日の膨大な時間を投資して技術を究め、そして40歳を過ぎてから人間の総合力を発揮して経営者になっていく。P136
・個人の手に負えないほど大きなことが周囲で起きた時に、私たち一人一人にできる事とはそれほど多くないと言う事。P143
・参考「定跡からビジョンへ」羽生・今北。P146
・参考「好機の視点」P170
・参考「決断力」羽生。P182
・谷川浩司、棋士には勝負師と研究者と芸術家の3つの側面がある。
・野球などで、どんなに両チームの実力が均衡していたとしても1試合1試合がそんなにギリギリのところで接戦になるわけではないが、将棋はその確立が非常に高い。P240
・羽生「答えがないときに何をすべきか、それが一番悩むところだ」P251
・「超一流」=「才能」*「対象への深い愛情ゆえの没頭」*「際立った個性」P289
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『シリコンバレー』と『将棋』という、一見まったく異質の世界だが、作者によって見事に、つながった。『将棋』については、正直初心者だが、『伝える』こと、『技術の革新』というテーマで読む方には非常に面白い。
ちなみに『どんな才能があふれいてる人であろうとも人生における『機会の窓』がひらくことは多くなく、人によってはたった1回だけというケースもあるということだ。一瞬開いた『機会の窓』を活かせるか否か。残酷なことだけれど、それが人生を決定する。』という言葉が印象的だった・・
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野球やサッカーであれば、自分はそんなプレーができなくても、ましてやそのスポーツを経験したことが無くても、観戦しながらダメだしや評価をする。いわゆる「観るスポーツ」として成り立つ面がある。
なのに将棋となると、観るにあたって将棋ができないと、更に強くないと評価をすること、語ることすらはばかられるような雰囲気がある。
著者はそのことに対し、そんなことはないよ、将棋だって他のスポーツ同様「観る」だけでも楽しんでいいんだよ、と伝えている。しかも観て楽しんでいる人は結構いるようだが、表立ってそれを言う人は少ないらしい(自分は将棋が強くない、という理由で)。
僕もそのようなうちのひとりにあたっていたが、この本を読んで少しほっとした。
読んでいて著者の将棋好きが伝わってくるし、棋士との交流が楽しげである。
また、著者は将棋界とネット社会を関連させて「知のオープン化」について語っていて興味深い。
ネットでは持っている知識を提供し、それを知った他者が更に改良を加えて、よりよいものに発展させる土壌がある。将棋でも現代では新手や構想をオープンにし、よりよい手を皆で探っていく状況にあるという。
オープンになることによって、簡単にある程度までの知識を得ることができるが、その先は混沌としていて地頭が求められる。
「高速道路とその先の大渋滞」
棋士の考えていることが現代社会にも通じるところがあり面白い。
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IT業界の人間から見た将棋の世界……という内容を期待して読むと少し肩透かしですが、プロになる素質は無かったものの将棋という競技を真摯に愛し続けた一人のファンの手記、という視点で読むとなかなか心打つ本です。
一応、「高速道路は整備されたがその先は渋滞」という現在の情報化社会を上手く言い表す表現があったり、観戦記のパーツをweb上に準備して随時引っ張ってくるというクラウドコンピューターの世界を垣間見る部分もありますので、その観点で読むのも無しではないです。
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梅田氏の本。2009年。将棋好きの著者が、将棋全般や戦局について、また、棋士とのインタビュー内容についてまとめたもの。この本からわかるのは、著者が本当に将棋好きであること。棋譜の説明やそのときの考えなどを棋士にインタビューしているところが興味深い。また、戦局をウェブ上でリアルタイムで公開する、リアルタイム観戦記というチャレンジが特に面白い。これによって、ウェブを活用した新しい将棋の形が創られた。
概ね面白いのだが、素人には棋譜がイメージしづらいところがあるので、星3つ。
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モッチーの本で一番面白いよ。
将棋というゲームの賞味期限について、シリコンバレーから見るがゆえに冷静に解析してる。
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はてなのプレゼントで頂きました。 http://d.hatena.ne.jp/masakanou/20090911/p1
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「Web進化論」などでおなじみの梅田望夫氏が観戦者の立場から将棋の対局や棋士(主に羽生善治氏)を取材したものを中心に書かれた本である。
この本を読んで一番印象に残ったのは、やってる者の感覚や緊迫感、集中度などは観戦者から見えるものとは違ったものであるという事だ。
実際に対局した棋士が振り返って見た視点には観戦するだけには分からないものがいろいろとある。そういうのを知ると将棋の楽しみ方が更に広がるのではないかと思う。それは将棋だけではないんだけどね。
将棋を通じて、観る事の奥深さを知る事のできる一冊ではないだろうか。
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梅田さんによる将棋話。
もちろん将棋を知っている方が内容がわかりますが、
将棋のルールを知らない人でも読めるかと思います。
佐藤康光好きとしては話に取り上げられていて嬉しい。
もっと将棋ファンが増えて欲しいです。
自分では将棋を指さないけど、見るのは好きというファン大歓迎。