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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2009.2
- 出版社: 日刊工業新聞社
- サイズ:21cm/147p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-526-06218-6
紙の本
波に乗れにっぽんの太陽電池 温暖化のリスクをチャンスに変えるシナリオ (B&Tブックス)
著者 櫻井 啓一郎 (著)
「太陽光発電」が持つ特性、力、課題、そしてそれを取り巻く状況について、技術側から解説。経済成長と環境保護を両立させる強力な手段となるその技術を最も経済的に利用する制度「フ...
波に乗れにっぽんの太陽電池 温暖化のリスクをチャンスに変えるシナリオ (B&Tブックス)
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商品説明
「太陽光発電」が持つ特性、力、課題、そしてそれを取り巻く状況について、技術側から解説。経済成長と環境保護を両立させる強力な手段となるその技術を最も経済的に利用する制度「フィードインタリフ」の特徴や使い方も紹介。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
櫻井 啓一郎
- 略歴
- 〈櫻井啓一郎〉1971年生まれ。京都大学大学院工学研究科電子物性工学専攻博士後期課程修了。産総研太陽光発電研究センター評価・システムチーム所属。
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紙の本
太陽光発電に積極的に乗り出すべき時がきた
2011/05/24 06:59
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
福島第一原発事故のあと、再生可能エネルギーが脚光をあびている。本書は2009年2月に発行されたものだが、その時点までの太陽光発電の現状と将来の普及可能性をまとめている。
太陽光発電などの新エネルギーは、世間一般では、技術が未完成であるかのような印象を持たれている。また、発電コストが高いとか、発電が自然任せで不安定だとも言われる。
しかし、著者によれば、すでに実用段階にあり、日本では導入が遅れてしまっていることが分かる。日本は2004年までは太陽光発電の導入量では世界トップだった。その後、ドイツに抜かれ、スペインにも抜かれて第三位になってしまった。その原因は、補助金の廃止や電力買い取り制度の遅れだ。
技術的にはすでに実用に耐える。もちろん、今後の技術改良の見通しにも著者は言及している。著者はもともと技術者だ。
当然、さらに発電効率のよい太陽光発電がこれから出てくるし、コストも下がっていく。しかし、日本がそれを待っていては、海外のメーカーが力をつけるだけで、日本は遅れてしまい、海外製品を輸入する国になってしまう。
補助金や太陽光発電の買い取り制度によって、導入が拡大すれば、日本国内で技術革新が進む。日本で関連産業も育ち、海外メーカーに対して優位に立つことができる。
よく自動車産業は、裾野が広く、自動車メーカー以外にもたくさんの仕事と雇用を生み出すと言われる。太陽光についても、日本がすでに持っている技術で勝負することができ、液晶、ガラス、半導体、蓄電、情報通信技術などたくさんの産業を引き連れることができる。
本書によれば、再生可能エネルギー全体で、ドイツでは25万人の雇用が生まれているという。
ドイツにならうべき点は、FITと呼ばれる「固定価格買い取り制度」だ。太陽光で発電された電力をあらかじめ決めた価格、例えば1kwあたり20円といった価格で全量を配電会社が買い取る。こうすれば、太陽光に投資する側でも、コストとリスクの計算ができるので、導入に積極的になることができる。
日本では、2009年11月から余剰電力に限って買い取る制度が導入されて、普及の後押しになっているが、ドイツの全量買い取り制度にくらべれば弱い。著者はスペインなどの事例も研究して、FITのよい点、悪い点を洗い出す。こうした先行事例に学べば、日本はよりすぐれた制度を取り入れることができるだろう。
発電コストの高い太陽光を受け入れると、電気料金が高くなると警戒されそうだが、著者はドイツの例を紹介し、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料代を年間50億ユーロ節約できているとしている。
一方、再生可能エネルギーの投資額は年間70億ユーロとしている。差し引き20億ユーロだが、再生可能エネルギーは燃料代が無料なので、運用コストがわずかであり、初期投資額を回収したあとは、むしろ大きな利益を生み出していくことを指摘する。
解決すべき点はあるのだろうが、海外では相当な勢いで普及が進み、技術が更新され、コストも下がっていっている。この現状を見れば、ここで出遅れれば、日本の産業にとっては打撃となりそうだ。
ひとつひとつの問題点の解決は日本は得意なのだから、導入を後押しする制度を取り入れることで、まずはしっかりとした一歩を前に進めてはどうか。
本書は、かなり分かりやすく書かれてあり、読みやすい。ところどころに著者のユーモアもまじるのも好感が持てた。