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オッド・トーマスの霊感 (ハヤカワ文庫 NV)
オッド・トーマスは南カリフォルニアの町ピコ・ムンドに住む20歳のコック。彼には特異な能力があった。死者の霊が目に見え、霊が伝えたいことがわかるのだ。ある日、オッドは勤務先...
オッド・トーマスの霊感 (ハヤカワ文庫 NV)
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商品説明
オッド・トーマスは南カリフォルニアの町ピコ・ムンドに住む20歳のコック。彼には特異な能力があった。死者の霊が目に見え、霊が伝えたいことがわかるのだ。ある日、オッドは勤務先のレストランで悪霊の取り憑いた男を見て、不吉な予感を覚える。彼は男の家を探し出して中に入るが、そこで数多の悪霊を目撃した。そして翌日に何か恐ろしいことが起きるのを知るが…巨匠が満を持して放つ最高傑作シリーズ、ついに登場。【「BOOK」データベースの商品解説】
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紙の本
見えるだけ、それなのにがむしゃらに立ち向かっていくオッドは切ないヒーローなのだろう
2010/05/06 11:22
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mayumi - この投稿者のレビュー一覧を見る
死者の霊が見える20歳の青年、オッド・トーマス。
シリーズ、1作目。
務めるレストランで、悪霊に囲まれた男を見たオッドは、男の家を探す。そこにはさらなる悪霊が集まっていた。
死者の霊が見えるだけで、他に能力はないオッド。だが、彼は突き動かされるように最悪を回避するために行動する。
読んでいてずっと「デッド・ゾーン」を思い出していた。
それも、キングの小説ではなく、TVシリーズの方を。
「デッド・ゾーン」では警察の信用を得られるまでが随分長かったが、オッドはすでに警察署長から信用を超えて、息子に対するような愛情まで得ている。美しく聡明な恋人もいる。オッドは、「デッド・ゾーン」のジョン・スミスのような絶望の中にはいない。つつましい幸せの中にいるといってもいいだろう。
なのに、彼は死者の、霊の、メッセージを無視することができない。
それはオッドの優しさであり、生い立ちからくる傷のせいなのだろう。
オッドの一人称で語られ、「この原稿はぼくの存命中には発表されず」と暗い先行きが暗示されているにも関わらず、不思議な安堵に満ちている。
結末も、今までのクーンツでは考えられなかったものだ。
けれど、それはオッドはもちろん、誰も絶望にたたき落とすものではない。
多分、光に満ち満ちている場所より、薄暗い場所の方が落ちつくと感じる、そういう感覚に近いものなのだろう。
紙の本
ジェイムズ・F・デイヴィッド『時限捜査』の解説を読んでいたら、この作品をクーンツ復活を示すロスジャンル系のエンタテインメントの傑作と書いてありました。読めば納得できる一冊です(二冊か?)
2009/09/07 20:05
4人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
キングとは全く違う作風ながら、アメリカンモダン・ホラーの巨匠として並び称されるディーン・クーンツ。持ち味は、ノンストップ、ジェット・コースター・ノベルといわれるスピード感。そのサスペンスフルな物語世界は、健在なのでしょうか。なぜか、30年近く彼の作品を読みつづけてきた私としては気になるところです。
カバー折り返しの紹介文は
オッド・トーマスは南カリフォル
ニアの町ピコ・ムンドに住む20歳
のコック。彼には特異な能力があ
った。死者の霊が目に見え、霊が
伝えたいことがわかるのだ。ある
日、オッドは勤務先のレストラン
で悪霊の取り憑いた男を見て、不
吉な予感を覚える。彼は男の家を
探し出して中に入るが、そこで数
多の悪霊を目撃した。そして翌日
に何か恐ろしいことが起きるのを
知るが……巨匠が満を持して放つ
最高傑作シリーズ、ついに登場!
となっています。TOM Hallmanのカバーイラスト、松昭教のカバーデザインはハヤカワ文庫NVとしては平均的なもので、クーンツらしさはあまり感じさせません。キング作品には藤田新策というベストマッチングのイラストレータがいますが、クーンツにはそういう強い味方がいない点は寂しい限りです。
ただし、今回は全67章の本文のあとに強い味方が登場します。そう、巻末で解説「オッド・トーマス、きみは21世紀のヒーローだ」を書いている瀬名秀明がその人です。最近、大ヒット作を書いていないので若い読者の中には「そんな作家、知らない」という人がいるかもしれませんが『パラサイト・イヴ』といえば、ああ、あの、と思い出す方もいるでしょう。
正直、私などはこの本を読むまで、瀬名がクーンツの熱烈という形容詞がピッタリの愛読者だとは全く知りませんでした。解説を読めば、瀬名がクーンツの作品をいかに愛好しているかがよくわかります。原書で読んでいるものもありそうで、相手が海外の作家とはいえ同業者の作品をここまで手放しで褒める例をあまり知りません。しかもただ褒めるのではなく、しっかり案内をしています。
その瀬名が絶賛するのが今回の本であり、今後、翻訳されるであろう『オッド・トーマス』のシリーズというのですから、面白さは保証つきです。で、私は冒頭にキングとクーンツの作風の違いをあげましたが、この作品では何度もキングの作品を思い浮かべました。文章は全く違います。スピード感も違うのですが、でも連想を誘う。
もしかすると「霊感」を扱ったことが原因かもしれません。でも、もっと大きいのがボブ(ロバート)・ロバートスンの存在です。トーマスが働く〈ピコ・ムンド・グリル〉で驚異的な食欲を見せた謎の男で、色白で頭のてっぺんには汚い黄色い短い髪をはやしていて、見ただけで周囲を不安にさせる何かを持っていて、オッドは彼をキノコ男と呼びます。キングの小説に出てきそうなキャラではないでしょうか。
ほかに印象的な人物といえば、やはり体重400ポンドで、6本の指をもつミステリ作家リトル・オジー(P・オズワルド・ブーン)でしょう。オッドが高校時代の時に文才があると思い、依頼、彼に小説を書くことを勧める。オッドが回想録を書くことになったのも、オジーによるそうですが、私は短絡的に青柳いづみこ『六本指のゴルトベルク』を連想しました。
当然のごとく脱線しますが、青柳の本は第25回講談社エッセイ賞に輝いた優れもののエッセイ集。内容はピアニストである青柳の本業のことから文学、映画、買物、ミステリと多岐にわたる、読みやすくて面白いものです。カバーデザインがこれまた素晴らしくて、センスという点で岩波本のなかの歴代トップではないかと思います。装幀はミルキィ・イソベ。
閑話休題。ついで忘れられないのが〈ピコ・ムンド・グリル〉のオーナーで、オッドの雇い主であり、料理の師であり、母親代わりであり、友人でもある。また、オッドのためのエルヴィス・プレスリーの情報源であもある41歳の女性テリー・スタンボーです。エルヴィスの42年間の一日一日をそっくり記憶しているのですが、病的な感じが全くなくて、私も憧れます。
あとは、ピコ・ムンド警察署の署長で、オッドの能力を理解し、彼が知らせる危険に対処するワイアット・ポーターと、彼の妻ですらりとした美女、どんな時でも平穏で静かな楽観主義のオーラを放つカーラでしょうか。それと、ネイルアーティストで、美容院のアシスタント・マネージャーに昇進したばかりで、オッドのことをよく知っているリゼット・レインズがいます。
それに比べると、主人公のオッド・トーマスと恋人のストーミー・ルウェリンはフツー。まだ、オッドのほうはいい。〈ピコ・ムンド・グリル〉のコックで20歳、両親は離婚して、父親は若い女に熱をあげ、美しい母親は自分の世界に閉じこもっているというのはいかにもアメリカ的ですが、語り手でもあるし死者の霊が目に見え、霊が伝えたいことがわかるんですから。
その点、ストーミー・は、両親が死亡している点はともかく、16歳の時から〈バーク&ベイリーズ〉で働き、20歳の今は店長で、夢は24歳で自分の店を持つことというのは、今時の女性としてはありがち。オッドの能力を完全に理解していて、お互いにソウル・メイトだと信じているというのも珍しくはありません。ちなみに、私はつい最近まで、「ソウル・メイト」を韓国人の友だち、と勘違いしていました。
それはともかく、名優がしっかり脇を固める謎とスリルに満ちた霊感の世界。次作の訳出が待ち遠しいシリーズの開幕です。
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映画化されましたね
2016/12/22 22:33
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投稿者:肋骨痛男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
わたしの好きな一節。
「この時点で、ぼくに聞こえるのは、自分の体内から発せられるものだけになったようだ。心臓がどくどく打つ音、耳の奥で血が勢いよく流れる音。そこで逃げるべきだった。この有害な気配のただよう家の不気味な消音効果が、ぼくに警告を発してしかるべきだった。」