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商品説明
ディスカスを知ることで、世界の全てと繋がろうとした涼一。だが、恋人の由真は、彼の元を去って行った—。『パイロットフィッシュ』から7年。再び、著者が人生をかけた美しいモチーフを通して贈る、至高の長編恋愛小説。【「BOOK」データベースの商品解説】
熱帯魚の王様・ディスカスを知ることで、世界の全てと繫がろうとした涼一。だが、恋人の由真は彼の元を去っていった…。美しいモチーフを通して贈る、長編恋愛小説。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
大崎 善生
- 略歴
- 〈大崎善生〉1957年北海道生まれ。『将棋世界』編集長を経て、「聖の青春」でデビューし、新潮学芸賞を受賞。「パイロットフィッシュ」で吉川英治文学新人賞を受賞。
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紙の本
草食系男子のロマン?
2009/03/02 14:21
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:A-1 - この投稿者のレビュー一覧を見る
題名は、個人的には全く興味を引かれない熱帯魚がらみ。
個人的に、概ね魚というものには、ビジュアル的にも食材的にも好きだけれど、魚(に限らず生き物全般)を飼うということは、繊細で手間が掛かる「生活」だと思っている。
特に、熱帯魚のあの薬品というか鼻を突く独特の匂いと、つぎ込む金額を考えると飼うことにはどうしても腰が引けてしまう。
(填っているらしい人は、周りに何人か居るのですが…)
しかし、やはり表紙の魚の美しさになんとなく手に取ってみた。
主人公はディスカスに填ってしまったせいか、四年目という倦怠期に相まったせいか、つきあっている彼女との恋愛に割く時間がおぼつかなくなっていく自分にとまどいを感じながら、流れに身を任せて行く…というお話。
(またざっくりな要約ですが…(^^;)
内容はオーソドックスな形態の小説のようにも見えるが、主人公がディスカスに思い入れ、匂いと水の透明度を見るだけでPHを言い当てるまでに極めているオタクぶりには、何故か幻想的な雰囲気を盛り上げて面白かったです。
主人公の熱帯魚への入れ込みようについては、昔パソコンのあれこれに手探りで填ったことを思い出して共感出来なくもなかったし…。
しかし、だいたいにおいて、生き物の飼育には明確なノウハウが無いことが多いように思う。
むしろ、(生き物なだけに)数箇条では済まないルールや方法が調べれば調べるほど多岐にあり、完璧にあろうとするほど片手間では済まない感じがある。
メールやブログを放置するように、ペットを放置することは即死にさえ繋がる。
最低限のルール成すために、自分の生活を変えなければならなくなる。
それは「好きである」=「愛情」ということで補填出来ないことには、やっていられるものではない。
それは、「恋愛」も似ているとも思う…。
ディスカスの寿命は5年くらいだという。
つまり、ディスカス云々ではなく、そこに彼の恋愛周期というものを重ね合わせているのか?とも読める。
慎重に、魚が快適なように、病気にならないように、死なないように調整し、愛で、そこに少なくない資金を投じる…。
(これも、「魚」を「恋人」に置き換えても意味は合う内容だ…)
オタク趣味に共通したベクトルではあるが、プラモデルやゲームやアニメキャラクターとは違い、生き物を相手にする趣味には、資金以上に、前者以上に神経や思考をも投じる、ある種究極の身の投じ方だと思う。
どちらにせよ、のめり込めばのめり込むほどに世間と隔絶し、厭世に成らざるを得ないと言う意味では、出家も同じことかも?と、
色は絶っても、あるベクトルの欲はむしろ肥大化して居るから「出家」とは絶対的に違うが、精神世界に入っていくような感じや、そういう極みを目指しているような感じが似ているように思うことがある。
また、趣味に没頭していく主人公の逃避とも取れる態度に、ふと、趣味でなくとも仕事に没頭すればこんな感じだよね…とも感じたり。
幻想小説的な雰囲気がある、ある意味SFにも読める、色々と深読みが楽しいお話でした。
昭和の古い小説でも、平和に慣れ、仕事に疲れた淀んだ日常の主人公の似たものを読んだような感触があるような気がしましたが、ただ、こちらのほうが更に生活感に疲れを感じず、むしろ透明度があって、より身近に感じられて(オタクぶりにw)、恋愛より趣味の世界に身を寄せる主人公が今風だなあという感じはしました。
最後まで自制が効いていて、美しいロマンス小説かな?とも思いましたが、結局は草食系男子の恋愛?
それはそれで、今風な題材ですね。