サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

e-hon連携キャンペーン ~5/31

  1. hontoトップ
  2. 本の通販
  3. 小説・文学の通販
  4. 小説の通販
  5. 新潮社の通販
  6. 仮想儀礼 The Seisen‐Shinpô‐Kai Case 上の通販

「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。

電子書籍化お知らせメール

商品が電子書籍化すると、メールでお知らせする機能です。
「メールを登録する」ボタンを押して登録完了です。
キャンセルをご希望の場合は、同じ場所から「メール登録を解除する」を押してください。

電子書籍化したら知らせてほしい

  • みんなの評価 5つ星のうち 4.1 61件
  • あなたの評価 評価して"My本棚"に追加 評価ありがとうございます。×
  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2008.12
  • 出版社: 新潮社
  • サイズ:20cm/469p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-10-313361-2

紙の本

仮想儀礼 The Seisen‐Shinpô‐Kai Case 上

著者 篠田 節子 (著)

信者が三十人いれば、食っていける。五百人いれば、ベンツに乗れる—作家になる夢破れ家族と職を失った正彦と、不倫の果てに相手に去られホームレス同然となった矢口は、9・11で、...

もっと見る

仮想儀礼 The Seisen‐Shinpô‐Kai Case 上

税込 1,980 18pt

予約購入とは

まだ販売されていない電子書籍の予約ができます。予約すると、販売開始日に自動的に決済されて本が読めます。

  • 商品は販売開始日にダウンロード可能となります。
  • 価格と販売開始日は変更となる可能性があります。
  • ポイント・クーポンはご利用いただけません。
  • 間違えて予約購入しても、予約一覧から簡単にキャンセルができます。
  • honto会員とクレジットカードの登録が必要です。未登録でも、ボタンを押せばスムーズにご案内します。

予約購入について詳しく見る

ワンステップ購入とは

ワンステップ購入とは、ボタンを1回押すだけでカートを通らずに電子書籍を購入できる機能です。

こんな方にオススメ

  • とにかくすぐ読みたい
  • 購入までの手間を省きたい
  • ポイント・クーポンはご利用いただけません。
  • 間違えて購入しても、完了ページもしくは購入履歴詳細から簡単にキャンセルができます。
  • 初めてのご利用でボタンを押すと会員登録(無料)をご案内します。購入する場合はクレジットカード登録までご案内します。

キャンセルについて詳しく見る

このセットに含まれる商品

前へ戻る

  • 対象はありません

次に進む

商品説明

信者が三十人いれば、食っていける。五百人いれば、ベンツに乗れる—作家になる夢破れ家族と職を失った正彦と、不倫の果てに相手に去られホームレス同然となった矢口は、9・11で、実業の象徴、ワールドトレードセンターが、宗教という虚業によって破壊されるのを目撃する。長引く不況の下で、大人は漠然とした不安と閉塞感に捕らえられ、若者は退屈しきっている。宗教ほど時代のニーズに合った事業はない。古いマンションの一室。借り物の教義と手作りの仏像で教団を立ち上げた二人の前に現れたのは…。二十一世紀の黙示録的長篇サスペンス。【「BOOK」データベースの商品解説】

【柴田錬三郎賞(第22回)】信者が30人いれば、食っていける。500人いれば、ベンツに乗れる−。すべてを失った男2人がネットで始めた、金儲けのための新興宗教。「救い」は商品となりうるか? 現代人の心の闇に切り込む黙示録的長篇サスペンス。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

篠田 節子

略歴
〈篠田節子〉東京都生まれ。東京学芸大学卒。「絹の変容」で小説すばる新人賞、「ゴサインタン」で山本周五郎賞、「女たちのジハード」で直木賞を受賞。

あわせて読みたい本

この商品に興味のある人は、こんな商品にも興味があります。

前へ戻る

  • 対象はありません

次に進む

この著者・アーティストの他の商品

前へ戻る

  • 対象はありません

次に進む

みんなのレビュー61件

みんなの評価4.1

評価内訳

紙の本

宗教が浮き彫りにする、人の姿

2009/09/22 13:59

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:カフェイン中毒 - この投稿者のレビュー一覧を見る

満足・満腹な、分厚い上下巻でした。
物語が加速度的におもしろくなるので、最初は果てしないと思われた2冊をあっというまに読み終えてしまいます。

著者の『ゴサインタン-神の座-』を読んだときの感覚を思い出しました。
不穏な空気をはらんだまま、じわりじわりと進む物語が一気に弾け、
目を離せないほどの緊張感を持ったままラストへ……。

奇しくも(いや、必然なのでしょか)どちらも宗教をテーマにした物語なのですが、今回の舞台は東京。
しかも職がなく追い詰められた中年男が、思いつきで始めた似非宗教です。

都庁に勤める優秀な公務員だった、鈴木正彦。
覆面作家として、ゲームのノベライズの仕事を副業にしています。
それは文筆業への憧れを抱え続ける彼の、小さな幸せだったのかもしれません。
その彼に、覆面ではなく、オリジナルのゲームブックの執筆を依頼したのが、矢口誠。

出版社の計画倒産に巻き込まれたり、女絡みで職場を追われたり、
ふたりはどん底の状態で、偶然の再会をします。
奇妙な同居生活をしながら、宗教が金になる(とりあえず食べていける)ということに気づいた彼らは、
なにもかもを手作りで、小さな教団を始めます。

「精神の安定というサービスを売り、対価を得る。やる以上は、まっとうな商売をしましょう」

正彦のこの提案どおり、ふたりは駆け込んでくる人たちの切羽詰まった様子に、
自分たちがストレスを抱えながらも対応し、ついに船出してしまいました。

胡散臭さを極力取り除いた彼らの教団は、さまざまな人の出入りにより、幾度かの転機を迎えます。
そしてそこには、大金、プレッシャー、果ては切実な脅しが加わってきます。

食べて行くためだけなら、ここらでやめておけばいいものを……と、
手に汗を握りながら何度思ったことでしょう。
おそらく、主人公たちもそうだったのだと思います。

ところが、金の集まるところにいると、放っておいてもらえないのも世の常。
ビジネスとして独り歩きを始める教団運営と、
一方で、とても抱えきれないであろう悩みや苦しみに救いを求めて集まる人々。

詐欺をはたらいたといっても、良識人である(そして宗教など信じてもいない)彼らは、
しだいに追い詰められていくのですが、
すでに自分たちの手に負えないばかりか、思いもよらぬ展開が待ちかまえています。
その手加減のなさに、こちらは終始ゾクゾクさせられました。

はたして宗教は、人を救うのでしょうか。
救うこともあるのだと思います。
取り巻く状況ではなく、祈る人の心のありようが変わることで、
救われることはたしかに存在すると思うのです。

それでは、救いを求めることと、依存の境界線は、どうやって見極めることができるのでしょう。
自ら生み出した虚構から逃げ出そうとしながらも、放りだせないふたりの男。
人が人をコントロールすることの限界。
考え、判断することを放棄する恐ろしさを、さまざまな角度から描いた物語に拍手です。

最後の一文にまで、問題提起がなされている(と受け取りました)隙のなさ。
人間の弱さ、怖さが存分に描かれたエンターテイメントです。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

生きる場所としての宗教

2009/08/19 12:34

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る

新興宗教を簡単に起こし、瞬く間に信者を集め、
ただ目の前の厄介事や、信者から提供される話に乗っかり、
破滅への道を歩んでいく二人の男を描くサスペンス。

なにしろ、その宗教がでっち上げ。
実直な公務員の職を捨て、ゲームノベライズの
専業作家になった鈴木正彦は、
すぐにその仕事がダメになり、家庭も失います。
その原因となった矢口誠を吊るしあげたものの、
二人で架空の宗教を作り、その利益を夢見ます。

宗教の元となる経典は、ポシャッた5000枚のゲームノベライズ。
正彦が若い頃、半年、インド、ネパール、パキスタンを
放浪した時に感じた宗教観や人生観が元になっています。
一度はゲーム世界に起こしたものを、
実社会に置き換えて解いていきます。

ネット宗教から、小さな集会場へと発展した「聖泉真法会」は
現代社会を「生きづらい」と感じている若者と
実生活の苦闘に疲れた主婦たちという
二つのカラーの信者を集めることになります。

教祖として桐生慧海を名乗る正彦は、実務に長けた常識人。
「生きづらい系」の若者の甘さに内心、イラツキながらも
常識的なことを教えていきます。

一方、矢口は思いやりのある芸術家タイプ。
たちまち女性たちの癒しの存在となります。

この二人の絶妙な性格と関係性によって
聖泉真法会は中規模企業の創業社長のお気に入りとなり
より大きな本部や車、祭壇といったものを手に入れていきます。

しかし罠はどこにあるかわからず、
また自然と怪しい企業とも繋がっていきます。

内部には、行き場のない女性たちが常に数名、溜まっています。
正彦がふと思いついた、利他行を実践するターラ菩薩を
女たちは忠実に進行し、その貞操さえも他人に与える壊れぶり。
元々、社会に適応できない人なのですから、
宗教に自ら洗脳されていき、歯止めがなくなります。

最後まで正彦も常識を捨て切れず、自分が責任をかぶることになり、
矢口も女たちを捨てることができない。

最後までエンターテインメントに徹し、
ふたりの男と、業を背負った女たちを描きます。


このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

私は基本的に宗教が嫌いで、新興宗教ともなれば全く駄目なんですが、といって排斥したくなる、っていうのとは違って、あそこでなければ救われない人もいるんだろうなあ、とは思うんです。それにしても篠田節子は宗教を扱うのが好きなんだなあ、って思います。

2009/05/22 23:16

5人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

前にもこういう話を篠田で読んだけど、何だったっけ? と思いました。こういう話、では解りにくいのであっさり書いてしまえば新興宗教もの、です。早速、自分のメモ、チェック! 結果、『ゴサインタン──神の座──』『聖域』『転生』、もっとあるかと思ったら、これだけ、案外少ない。『弥勒』はタイトルこそ宗教っぽいですが、ちょっと違う。

でもこれに新堂冬樹『カリスマ』、樋口明雄『墓標の森』、貫井徳郎『夜想』、笠井潔『天使は探偵』、北森鴻『触身仏』、有栖川有栖『女王国の城』、大倉崇裕『警官倶楽部』を加えると(ま、他人様の著作を加える意味あるか、って言われると私も疑問ですが)、なんていうか、ミステリと新興宗教の関係がうっすらと見えてきます。だから、ってこれ以上話は進まない。

閑話休題。っていうか、何だったんだ今の? 前振り? ともかく久し振りです、篠田の本で角背っていうの。それとこの分量。で、カバーなんですが、上下巻で写真が全く違うんです。色合いだけならまだしも、受ける感じが全く違う。作品の内容をそのまま体現しているのは上巻の Photo:Yang Liu/Coorbis/amana images です。こういう灯明みたいなものと宗教っていうのはイメージし易い。

それに対して下巻の Bryan Mullennix/getty images のほうはひたすらクール。色もですが、このまま事故を扱ったノンフィクションの表紙にしても違和感がない。写真を別にすれば、実に存在感のある装幀(Design:Shinchosha Book Design Division
)です。これをそのまま書架において背中だけみせると、カシッと決まって格好いい。そのまんまスックと立つところは帯封した100万円、っていう健気さがあります。ふむ、変な喩えだ・・・。

初出は、「小説新潮」2004年4月号~2007年5月号、とちょうど我が家の長女の高校生だった時期と被っています。ふむ、変な喩えだ・・・。全14章の構成で、章のタイトルはありません。

主人公の鈴木正彦は三十八歳、独身でほんの八カ月前まで都庁に勤め、総務局総務部システム管理課長にまで出世したエリート公務員でした。その彼が趣味と実益を兼ねて余暇に書いていたゲームのノベライズ仕事が人生を狂わせたのです。作家になることを夢見ていた彼は、編集者の言葉を間に受け、都庁を退社、執筆生活に入るのです。

ペンネームは桐生慧海、彼が書いたゲームの原作「グゲ王国の秘法」は原稿枚数500枚にも上る大作でした。しかし、彼が払った犠牲は大きかったのです。作家、というのは本が出て初めてその人間の職業となります。著作がなければただの無職。収入もありません。勝手に役人を辞めた夫に愛想をつかして、妻が離れていきます。そして、正彦にゲームの原作を書くことを勧めた編集者の矢口誠が姿を消します。

矢口を探していた正彦が知ったのは、彼が大手出版社の社員ではなく、フェニックスランドという出版社の下請け、マツプロダクションの編集業務を請負うフリー編集者でしかなく、本の出版を餌に詐欺まがいの行為をしていた、ということでした。そして就職のあても、原稿の出版の目途もない正彦が出会ったのが、金も、誇りも失ったホームレス、矢口だったのです。

そして、なぜか正彦は、女性に甘いというか女癖が悪い軽薄なだけが取柄の美大卒の40歳、独身の矢口と共同生活を始めてしまうのです。その時、二人が交わしたのが

信者が三十人いれば、食っていける。
五百人いれば、ベンツに乗れる。

という言葉でした。そして二人が作り上げたのが聖泉真法会。ただし、宗教法人ではありません。都庁に勤務していた正彦は、その難しさを熟知しているのです。そして限りなく宗教に近い活動が始ります。その教理の基となったのが正彦が自ら書き上げた「グゲ王国の秘法」だったのです。

まず、山本広江が活動に参加します。テレビ局の重役の夫を持つ良識派の女性で、正彦たちは彼女を「人間性」おばさんとあだ名します。彼女はアパートの大家でもあります。そして後に様々な問題を起こす竹内由宇太がやってきます。京都にある密教の秘儀とか修法を研究している会の寒修業に参加などし、自分に敵対する人間を呪殺しようとするなど攻撃的な面と、苛められて孤立する弱い面をもつ高校生です。

そして、公立病院の事務長である父と母と意見が合わないことから新興宗教に走ったこともある真実、山口県出身の大物代議士である父とその秘書である兄・重房、二人と関係を持ちつづける徳岡雅子、IT関係の社長から雪子と名付けられホテルで飼われていたサヤカ、五十過ぎだがいつも若作りをしている妖艶な板倉木綿子、30代後半らしい霊感の強い占い師・如月秋瞑といったその後会の活動を担うことになる人間があつまって来ます。

そして会発展にもっとも大きな影響を及ぼす人間、株式会社モリミツ社長 森田源一郎が登場します。拡大する会の活動は、挫折した芥川賞作家、カルト宗教評論家、噂の多い古美術商、新興大教団の教祖、議員の息子などを巻き込み、予想外の事態を招いていくことになります。

出版社はそれを

この国には、「救われたい」人間が多すぎる――。現代人の本質を抉る渾身長篇!

男二人が金儲けのために始めたネット宗教。しかし、信者の抱える闇は、ビジネスの範疇を超えていた。家族から無視され続けた主婦、愛人としてホテルで飼われていた少女、実の父と兄から性的虐待を受ける女性……居場所を失った女たちが集う教団は、次第に狂気に蝕まれてゆく。圧倒的密度と迫力! 二十一世紀の黙示録的長篇サスペンス。

とまとめます。篠田は単純に新興宗教を胡散臭いものとして描きません。それがたとえ営利目的のものであっても、人がそれによって救われることがある限り、否定をしません。

むしろ、それを利用して金だけを吸い上げようとする政治家、利益のためなら人命さえ軽視する宗教家、宗教に走った人間と宗教団体に全てを押し付け自分を省みようとしない人間、そして視聴率さえ稼げればいいと考えるテレビ局やマスコミ、そしてその情報を鵜呑みにする大衆をこそ告発していきます。

それがラストに繋がります。救われたい人がいる、救ってあげたいと思う人間がいる、だから数多くの宗教団体が生まれ、そこに人間の本質を見出した作家たちが注目して作品を書く。結果として、冒頭に掲げたように数多くの新興宗教を扱った小説が生まれるのです。ふふふ、これで決して無意味な前振りではないことが分かったかね、明智くん・・・

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

篠田節子の『弥勒』『ホーラ 死都』は宗教を通じた異文化コンタクトを扱った秀作だった。これは私たちの身近にある宗教をなまなましく描き出した異色作である。

2009/05/19 23:19

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

作家になる夢破れ家族と都庁管理課長の職を失った鈴木正彦、不倫の果てに相手に去られホームレス同然となった矢口誠。すべてを失った男二人がネットで始めた金儲けのための新興宗教。古いマンションの一室。借り物の教義と手作りの仏像で教団・聖泉真法会を立ち上げた二人の前に現れたのは………。信者が30人いれば食っていける。500人いれば、ベンツに乗れる………。

こういう装丁帯の解説文を読んで篠田節子が新興宗教をネタにしたクライムノベル、そうでなければコンゲームに挑んだ新ジャンルかと思ったとしても、それは当然でしょう。

ところがこの二人は至極真面目に悩める人々に対し、それなりの教義に基づく救済活動をすすめるではないか。そこでこれは「小説・実践的宗教事業入門」とも呼ぶべき異色のエンタテインメントかとも思われた。

二つの私の思い込みは見事にくつがえされた。ストーリーも予測を超えて広く深く展開する。私は神仏への信仰心などまるで持ち合わせていないのだが、宗教というものが現に存在し、それがとてつもなく大きな影響を与えている社会現象への興味は人一倍あるほうだ。篠田は、教え導く宗教者とそこに救いを求める信者をリアルに描き出し、双方の真剣な信仰心が信者の期待通りに光をもたらすこともあるが、むしろ破滅への異様なエネルギーが蓄積されていくことを恐るべき感受性をもって語るのだ。

教祖・正彦、いかにも元役人らしく信念も信仰心もないのだが世間的良心はしっかりとある。このキャラクターが秀逸だ。
聖泉真法会の教義も理論的になかなかのものだ。
ひとつは親、先祖、世間への感謝を大切にし、世俗的な成功と幸福を祈願する。この保守的倫理観でもってたまたま祈願が成就した経営者や子金もちのおばさんたちの支援が集まってくる。
もうひとつの教義、それは一般社会からの脱落者、寄る辺なさ、漠然とした不安、悩みを抱えたものたちに対し、世間の常識から超越した論理でもって精神の安定を与えようとするもの。
矢口のキャラクターは女性に対し自分の身を犠牲にしてもとことん尽くす、ホトケ様タイプ。

そして世間からの脱落者として強烈な個性をもった女性たちが登場する。
「家族から無視され続けた主婦、ホテルで飼われていた少女、実の父と兄から性的虐待を受ける女性………。居場所を失った者たちが集まる教団は次第に狂気に蝕まれていく。」

虚実混沌としながら物語は読者の予想を裏切り続けて展開する。

「俺は詐欺師だ。もう勘弁してくれ、目を覚ましてくれ」

正彦にとって宗教とは何だったのか。

「宗教は素人に扱えるものではないんですよ」
そのとおりだ。こんなに怖いことが起こるなんて………。

正彦ではないが、私も読み終えて宗教とは何なんだろうと自問する。
そこに昔の聖人、賢人によって説かれた永遠の真理を見出すことがある。
現実に参加している葬儀や祖先の供養といった慣習化した文化でもある。
あるいはわが家族が折節に家内安全、安産や結婚祈念などささやかなご利益をお願いするパフォーマンスでもある。
信仰に精神の安らぎを見出す人々が私の周囲にはいる。
一方でオカルト教団が身の毛のよだつ事件を起こしている。
そして政治や国家、人種や民族の問題を宗教抜きには考えられないのが現代の社会である。
そこでは宗教が狂気や暴力の源泉でもあるのだ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

2009/02/18 10:34

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2009/02/24 22:28

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2009/04/13 13:52

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2009/05/01 17:41

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2009/05/05 01:15

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2009/07/07 16:46

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2009/07/21 00:32

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2009/09/03 23:33

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2009/09/07 12:36

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2009/11/18 11:42

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2010/04/18 21:20

投稿元:ブクログ

レビューを見る

×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。